カラダの恋人

フジキフジコ

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【番外編】卒業旅行

4.ビールで乾杯

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トモを追いかけて、脱衣場で浴衣を着ながら必死に謝った。
「うっせーな、もういいよ。おまえのせいでのぼせた。喚くなよ、もう」
それから浴衣の着方に二人で四苦八苦して部屋に戻ると、仲居さんがテーブルに料理を並べていた。

「お~旨そう。そういえば加藤と四ノ宮、どこいったんだろ」
「ゲーセンで夢中になってんじゃねーか。ったく、ガキだからなあ、あいつら。いいからトモ、先、ビールやっちゃお」

風呂上りのせいか一発抜いてすっきりしたせいか、トモの浴衣姿はかなりイケてる。

よく冷えたビールを一気に飲んで、「うめ~」なんて言うところはオヤジっぽいけど、頬が桜色に染まって、テーブルに並んだご馳走よりはるかに旨そうだ。

これで、部屋に加藤と四ノ宮がいなければ、今夜はトモと一晩中、獣のように愛し合えたのに。
悔しさについつい力が入り、持っていた割り箸を折ってしまった。

その時、部屋のドアが開いて、浴衣姿の加藤と四ノ宮が入ってきた。
見ると、四ノ宮が、頭一つ分背の高い加藤を肩で支えている。
風呂上りにしては、加藤の顔色は青白い。

「どうしたんだよ、のぼせたのか」
どうでもよかったが一応聞いてやった。
「それがさあ、陸ったら、誰もいないからって調子に乗って露天風呂で泳いで、足がつって溺れたんだよ」
「お湯、飲んじゃった。ゲップ」
それを聞いて、トモは飲んでいたビールを吹き出した。
「バカじゃねーの」
オレはひゃっひゃっと笑ってやったものの、なんか面白くない。
なんだろ、やっぱこれもジェラシー?



それからオレたちは大いに飲んで食って、食い終わったあとは温泉旅館らしく浴衣姿で卓球大会をした。
ダブルスでの試合はオレとトモのペアの圧勝だった。

そのあと、もう一度風呂で汗を流して部屋に戻ると、部屋には4組の布団が整然と並んで敷いてあった。

「トモは一番、端な。こっち、窓際の」
「なんで紺野君が仕切るんだよー」
「うるせえ」
おまえらの隣に寝かせて、マチガイがあったらどーすんだ。
オレは当然そのトモの隣の布団に潜りこんだ。
「おまえらは勝手にしろよ」

しかし、修学旅行かクラブ合宿じゃあるまいし、なにが悲しくて男4人で枕を並べて寝なきゃいけないんだろう。

あまりに虚しいので、とっとと寝てしまおうと思った。
なのに、なんだか頭が冴えて眠れない。
身体はクタクタに疲れているのに、静かになった部屋の外の、雨音がいやに気になる。

オレの隣の布団からは、加藤の健康的な鼾が聞こえてきた。
なんて寝つきの早いヤツだ。
ちょっと上体を起して加藤の向こうの四ノ宮を見ると、口を半開きにしてヨダレを垂らして眠っている。
まさか、狸寝入りでこんな見苦しい寝方はしないだろうから、マジ寝してるに違いない。

トモは、オレに背中を向けて、縁側の仕切りの障子の方を向いて寝ている。
呼吸するたびに、布団がかすかに動く以外に気配はしないけど、なんとなく、まだ起きてるんじゃないかって気がした。
結構神経質なトモは枕が変わるとなかなか寝付けないタイプのはずだし。
オレはそーと自分の布団を出て、トモの布団に侵入した。




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