92 / 105
【番外編】恋かもしれない(高校生編Ⅱ)
3.優しい拒絶
しおりを挟む
駅までの道を並んで歩きながら、晶は浮かない表情だった。
「なんでそんな顔してるの?ちゃんと断ったのに」
雅治が言う。
女の子に告白されることなんて、雅治は多分、慣れているのだろう。
普通の男子高校生が、道端で女子高生にいきなり告白されたら、驚いたり狼狽えたり、照れたりすると思うのだが、雅治は驚きも狼狽えも照れもしなかった。
ただ、一刀両断、というような完全な拒絶をした。
「なんか、彼女、ハルカちゃん?可哀想だった」
雅治は晶の言葉に驚いた顔をした。
「かわいそう?」
「断るにしても、もうちょっと優しく断ってやればよかったんじゃね?」
「なんのために?」
「なんのためって。だって、おまえのこと好きになってくれたんだよ。嬉しいとか、ありがとうって気持ちはないのか」
「好きになって欲しいなんて、頼んでないけど」
「そりゃあ、そうだろうけど…」
「オレ、自分が知らない女の子から告白されること結構あるけど、彼女たちは自分の妄想に恋してるんだと思ってる。話したことすらないのに、好きになるか?外見だけを見て、想像して、自分の妄想に夢中になってるんだろ」
「外見だけで好きになることなんか、あるよ」
晶は断言した。
「オレだって、雅治には一目惚れだった」
「えっ!?」
雅治は驚いたあと、少し考えこんだ。
「でも、晶はオレに告白しなかったじゃないか。想像や妄想に恋をするのは別に構わない。その気持ちを押し付けられるのが、迷惑なんだ」
「好きって言われるのが、迷惑だっていうのか?」
「そうだな、わりと迷惑だ」
「好きって伝えるのは、勇気がいるんだぞ?すっごく」
「そんな勇気を奮うより、その行為が相手の気持ちの負担にならないか、配慮すべきだと思う。ただ気持ちを伝えたいなんて、自己満足だし利己的だ」
噛み合わない会話を続けているうちに、晶が電車に乗る駅についてしまった。
「雅治は、意外に冷たいんだな」
なぜか、拗ねたような声音で晶が言った。
「うん、そうだな。オレは、晶が思っているような、優しい人間じゃないよ。どうする?やめるか?オレと付き合うの」
晶は目を見張った。
「バカ!やめねーよ。まだなんにもしてねえのに。もったいない」
雅治は一瞬、呆けたような真顔になって、そのあと爆笑した。
「晶と付き合ってから、オレ、すごく笑ってる気がする」
晶にはそれが褒め言葉なのか判断出来ず、微妙な表情で大笑いしている雅治を見ていた。
「じゃあ、晶。まだ、オレと付き合ってくれるなら、今度の週末、うちに泊まりに来ないか」
「えっ、雅治のうちに、泊まりに?」
「両親と弟が伊豆だか箱根だかに一泊旅行に行くんだ。兄貴はいるけど、気にしなくていいから」
「わ、わかった。行く、雅治んちに。泊まりに」
すでに緊張した面持ちで、晶は答えた。
雅治はまた目尻を下げて、笑った。
「なんでそんな顔してるの?ちゃんと断ったのに」
雅治が言う。
女の子に告白されることなんて、雅治は多分、慣れているのだろう。
普通の男子高校生が、道端で女子高生にいきなり告白されたら、驚いたり狼狽えたり、照れたりすると思うのだが、雅治は驚きも狼狽えも照れもしなかった。
ただ、一刀両断、というような完全な拒絶をした。
「なんか、彼女、ハルカちゃん?可哀想だった」
雅治は晶の言葉に驚いた顔をした。
「かわいそう?」
「断るにしても、もうちょっと優しく断ってやればよかったんじゃね?」
「なんのために?」
「なんのためって。だって、おまえのこと好きになってくれたんだよ。嬉しいとか、ありがとうって気持ちはないのか」
「好きになって欲しいなんて、頼んでないけど」
「そりゃあ、そうだろうけど…」
「オレ、自分が知らない女の子から告白されること結構あるけど、彼女たちは自分の妄想に恋してるんだと思ってる。話したことすらないのに、好きになるか?外見だけを見て、想像して、自分の妄想に夢中になってるんだろ」
「外見だけで好きになることなんか、あるよ」
晶は断言した。
「オレだって、雅治には一目惚れだった」
「えっ!?」
雅治は驚いたあと、少し考えこんだ。
「でも、晶はオレに告白しなかったじゃないか。想像や妄想に恋をするのは別に構わない。その気持ちを押し付けられるのが、迷惑なんだ」
「好きって言われるのが、迷惑だっていうのか?」
「そうだな、わりと迷惑だ」
「好きって伝えるのは、勇気がいるんだぞ?すっごく」
「そんな勇気を奮うより、その行為が相手の気持ちの負担にならないか、配慮すべきだと思う。ただ気持ちを伝えたいなんて、自己満足だし利己的だ」
噛み合わない会話を続けているうちに、晶が電車に乗る駅についてしまった。
「雅治は、意外に冷たいんだな」
なぜか、拗ねたような声音で晶が言った。
「うん、そうだな。オレは、晶が思っているような、優しい人間じゃないよ。どうする?やめるか?オレと付き合うの」
晶は目を見張った。
「バカ!やめねーよ。まだなんにもしてねえのに。もったいない」
雅治は一瞬、呆けたような真顔になって、そのあと爆笑した。
「晶と付き合ってから、オレ、すごく笑ってる気がする」
晶にはそれが褒め言葉なのか判断出来ず、微妙な表情で大笑いしている雅治を見ていた。
「じゃあ、晶。まだ、オレと付き合ってくれるなら、今度の週末、うちに泊まりに来ないか」
「えっ、雅治のうちに、泊まりに?」
「両親と弟が伊豆だか箱根だかに一泊旅行に行くんだ。兄貴はいるけど、気にしなくていいから」
「わ、わかった。行く、雅治んちに。泊まりに」
すでに緊張した面持ちで、晶は答えた。
雅治はまた目尻を下げて、笑った。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
天国地獄闇鍋番外編集
田原摩耶
BL
自創作BL小説『天国か地獄』の番外編短編集になります。
ネタバレ、if、地雷、ジャンルごちゃ混ぜになってるので本編読んだ方向けです。
本編よりも平和でわちゃわちゃしてちゃんとラブしてたりしてなかったりします。


市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる