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本編
23.【Jリーガー】水野光司再び②
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ところがそれから一ケ月後、晶は街で偶然、光司の彼女を見かけた。
若い男と腕を組んで歩いていた。
「なんだよ、W不倫の先越されてんじゃねえか」
毒づきながら、最近連絡のない光司の様子を見に行こうと思いついた。
光司が2年前に買った台場のタワーマンションは芸能人も住んでいることで有名で、値段に見合って外観も設備も素晴らしい。
高級ホテルのロビーのような豪奢なエントランスで晶は「すげえな」と感嘆した。
常駐のコンシェルジュに取り次いでもらい部屋を訪ねると、光司は驚いた顔で言った。
「晶君、どうしたの。部屋までくるなんて珍しいね。初めてじゃない?」
「近くまで来たから、ついでにね」
どことなくバツの悪そうな顔をしている光司を押し避けて中に入ると、部屋の中は雑然としていた。
いかにも高級そうなローテーブルやソファの上に、脱ぎっ放しの服や食べ残しのコンビニ弁当、ビールの空き缶、読みかけの新聞や雑誌が無造作に置かれている。
半分だけ開いたカーテンもいかにも不健康なかんじがする。
「なんか…散らかってないか」
「それがその…」
光司は頭を掻きながら、照れたように笑っている。
「実は彼女が出ていっちゃって」
よく見れば光司の格好もパジャマ替わりに着ているような上下揃いのトレーナーに、ボサボサの髪、薄っすらと不精ヒゲまで生えていて、だらしない。
「なんで?」
男と仲良く歩いていたのを見たことは黙って聞くと、光司は「なんでかなあ」とのんびりした口調で言いながら、「飲み物持ってくるから適当に座って」とカウンターキッキンの方に行った。
「要するに、思っていたほど楽しくなかったんじゃないかな、オレが」
ソファに座ってビールを飲みながら光司は、自分の色恋の失敗をまるで他人事のようにそう分析した。
「グランドでプレイしているときと違って、意外に地味なんだよ、オレは。現役の時は付き合いもあってクラブなんかはよく行ったし、それなりに楽しかったけど、実を言うとみんなでお酒飲んで騒ぐより、一人で部屋で映画見たりプラモ作ったりする方が好きなんだよね」
「まさか、おまえもガンオタか!?」
「そうだよ、知らなかった?青山さんとは行きつけのプラモ屋の紹介で知り合ったんだ。そこがレア物回してくれる店でさ」
と、しばらく光司はプラモデルへの熱い思いを語った。
「あれ、興味ない?」
「ねーよ!」
光司は苦笑した。
「まあ、仕方ないかなと思って。彼女や、ファンの女の子たちが好きだったのはJリーガーのオレであって、本当のオレじゃないんでしょ」
「光司……」
「だけど、自業自得だよね。オレも、彼女を愛してたわけじゃない。利用しようとしたんだから」
そう言う口調は投げやりではなく、明るいと言ってもいいほどだった。
晶はソファから立ち上がって、光司の前に移動した。
光司の両肩に手を置いて、言う。
「オレは、おまえがJリーガーだから、付き合ってたわけじゃないよ?」
光司は長い睫毛のくっきりした目をパチパチさせたあと、ニッコリ微笑んだ。
「そっか、晶君はオレのカラダ目当てだもんね」
「人をスケベジジィみたいに言うな!なんだよカラダ目当てって」
「ごめんごめん。じゃあ、なに?」
前屈みになって、光司の顔に、自分の顔を近付けて言う。
「おまえって、なーんにも悩みがなさそうで、天真爛漫で、一緒にいてすげえ、気が楽なんだよね」
「ホント?」
「ホントホント。気前もいいし、優しいとこも好き」
言って、晶は光司の唇に軽く口ずけた。
「でも…」
と言いながら、肩に置いた手で首に触れ、優しく頬を包むように触る。
「エロいカラダも好き。エッチも上手いし」
「やっぱりカラダ目当てじゃん」
クスクス笑いながら、光司は、晶の首に腕を回した。
そしてそっと、引き寄せる。
今度はディープなキスだった。
口を大きく開いて、舌を舐め合い、吸う。
強く、浅く。
深く、味わうように。
キスしてるだけなのに、呼吸が乱れて、はぁはぁと声が漏れる。
名残惜しげに唇を離して、晶は言った。
「シャワーを浴びて、その似合わない無精髭を剃ってこいよ。ベッドの上で、愉しもうぜ」
***
昼下がりに真っ裸でベッドの上にいるだけで、エロチックで隠微な空気は簡単に出来上がる。
晶は、光司の身体の上に跨って、手のひらを広くて逞しい胸に這わせた。
「おまえって、痩せて見えるのに、胸筋すげえよな」
と、言いながら、その手を腰のほうに移動させる。
「ウエストは相変わらず引き締まってるし、腹も出てない。今でもちゃんと鍛えてるんだろ」
光司は目を細めて笑って、晶の顔に手を伸ばした。
「長年の習慣だよ。このマンション、ジムがあるんだ。やることもないから、通ってた。それより、晶君、きて」
誘われて、晶はゆっくり身体を倒し、光司の唇に唇を重ねた。
満足のいくまで深い口付けを交わしたあと、晶は、身体をずらしながら、光司の首筋や、胸の間、臍、と下肢に向かって舌の愛撫を移動させる。
その舌が、上を向いて勃起しているペニスに触れると、光司は「ああ…」と、艶っぽい声を漏らした。
しつこいくらいに竿を舐めたあと、先端を口に含んで、しゃぶる。
「あっ、気持ち…いい。晶君、オレ、久しぶりだから、あんまり、持たないかも…」
光司が、甘苦しそうに、そんな弱音を吐いた。
「いいよ、オレも、もう欲しい。なんか、おまえのしゃぶって興奮した」
晶は言って、光司のペニスにゴムをはめると、上になったまま、位置を合わせた。
「え?大丈夫?ほぐしてないけど」
「ジェルつきのゴムだから、大丈夫。…あっ」
光司のペニスの先端が、晶の中に挿った。
じんわりと、そこから快感が広がるのを味わうように、晶は一度動きを止めてから、ゆっくり腰を落とす。
「…あっ、入る…入ってくよ…光司…」
「う…ん、気持ちいい、晶君」
「光司の…おっきい…ああ、気持ちいい…」
晶は、恍惚とした表情を浮かべて、喉を反らした。
光司を咥えただけで晶のペニスも、完全に勃起していた。
「晶君、動いてみて」
促されて、晶は腰を動かした。
前後に、上下に、快楽だけを追いかけるように動く。
「ああ、やばい…気持ち、良すぎ」
「オレも…なんか…すげえ感じる…あっ、あっ、あん」
光司は、繋がったまま上半身を起こして、晶を抱きしめると、そのまま晶を柔らかく押し倒して自分が上になった。
「晶君、後ろだけでイケそう?」
晶は眉を寄せた恍惚とした表情で、頷いた。
「うん…おまえのが、すげえ、いいとこに当たって…気持ち、いい。光司、このまま、突いて…」
「わかったよ」
光司は、真上から快感に蕩けた晶の表情を楽しんで、ときどき、戯れみたいなキスをして、緩やかに腰を動かした。
すぐにも出したかったけれど、快楽を共有できるこの時間を愛しむように、晶と自分自身をぎりぎりまで焦らした。
そのせいか、射精の瞬間のエクスタシィは絶大で絶品だった。
はあはあと息を乱し、汗ばんだ身体を重ねて、光司は久しぶりに解放感を味わっていた。
怪我をして以来、いろんな人間がいろんな言葉を使って自分を慰めてくれたけど、こんなに心が軽くなったのははじめてだ。
そう気づいて、やっと光司は自分が少なからず傷ついていたのだと、わかった。
なんでもない、大丈夫だと言いながら、本当は辛かったのだ。
光司は、晶を強く抱きしめた。
極上の快感と温もりで、自分を慰めてくれた、細い身体を。
「光司、苦しいよ」
晶は笑いながらそう言って、それでも、受け止めてくれるように背中を抱いてくれる。
「ねえ、晶君は、もしかして、オレを慰めてくれたの」
この人が、どうして自分のものじゃないのかな、と光司は思った。
「そんなワケねえだろ。おまえとヤリたかっただけだよ。雅治のヤツ、出張だとか言って3日も帰って来てねーし。どこ行ってんだか」
晶はそう言って、光司は苦笑した。
晶を抱くたびに、愛しい、という想いが自分の中にあることを確信する。
同時に、決して、手に入らないことも、わかっていた。
「そんなこと嘘でしょう。愛されて、満たされてますって顔してるよ」
光司がそう言ってからかうと晶は赤面した。
すぐあとで、しんみりした顔で言う。
「オレは欲張りだから、いくら愛されてるってわかっていても、いつも足りないんだ。もっと欲しいって、思う。雅治の愛情とか、情熱が全部欲しい。オレのこと以外、何にも考えないで欲しい」
「晶君は求めすぎるから、寂しいんだよ」
晶は頷いた。
「わかってるよ。雅治には仕事があって、オレはその雅治の稼ぎで養ってもらってるって。だけど、雅治が仕事をするのはオレのためばかりじゃない」
「そうなの?」
「雅治にとって仕事は生活のためというより、挑戦なんだ」
「挑戦?」
「うん。雅治は、いつも高いところを目指しているし、近づくために努力もしている。オレは、雅治のそういうところも好きなんだよね」
「なんだ、結局ノロケ?」
「オレにはよくわかんないけど、おまえにとってはサッカーが、そういうもんなんじゃないかなって思っただけ」
「晶君…」
光司は、やっと晶が何を云いたかったのか理解したようにはっとした。
「別に、おまえが諦めるって言うのなら、オレが口出しすることじゃないけど。だけど、おまえを見ていると、諦めたようには見えないぜ。他人のためじゃなくて、自分のために、チャレンジするのもアリじゃねえのか。だいたいなあ、こんなに動けるなら、大丈夫だろ。今日の、いつもと全然変わりなかった。リハビリに通え。覚が今、医師会理事の親のコネ使って、病院探してるから」
「まさか、オレの体力測るためにセックスしたの?!」
「だから、オレはそんなお節介じゃねーって。おまえとヤリたかっただけだって言ってるだろー!」
「わかったよ。ヤリたいヤリたいって何度も言わないでよ。またムラムラして来た。ね、もう1回、いいかな?」
「おまえ、スタミナも落ちてねえじゃねえか」
晶は呆れた顔でそう言ったが、光司の髪をくしゃくしゃとしたあと、笑いながら光司にキスした。
もう一回はもう始まっていた。
To be continued➡
若い男と腕を組んで歩いていた。
「なんだよ、W不倫の先越されてんじゃねえか」
毒づきながら、最近連絡のない光司の様子を見に行こうと思いついた。
光司が2年前に買った台場のタワーマンションは芸能人も住んでいることで有名で、値段に見合って外観も設備も素晴らしい。
高級ホテルのロビーのような豪奢なエントランスで晶は「すげえな」と感嘆した。
常駐のコンシェルジュに取り次いでもらい部屋を訪ねると、光司は驚いた顔で言った。
「晶君、どうしたの。部屋までくるなんて珍しいね。初めてじゃない?」
「近くまで来たから、ついでにね」
どことなくバツの悪そうな顔をしている光司を押し避けて中に入ると、部屋の中は雑然としていた。
いかにも高級そうなローテーブルやソファの上に、脱ぎっ放しの服や食べ残しのコンビニ弁当、ビールの空き缶、読みかけの新聞や雑誌が無造作に置かれている。
半分だけ開いたカーテンもいかにも不健康なかんじがする。
「なんか…散らかってないか」
「それがその…」
光司は頭を掻きながら、照れたように笑っている。
「実は彼女が出ていっちゃって」
よく見れば光司の格好もパジャマ替わりに着ているような上下揃いのトレーナーに、ボサボサの髪、薄っすらと不精ヒゲまで生えていて、だらしない。
「なんで?」
男と仲良く歩いていたのを見たことは黙って聞くと、光司は「なんでかなあ」とのんびりした口調で言いながら、「飲み物持ってくるから適当に座って」とカウンターキッキンの方に行った。
「要するに、思っていたほど楽しくなかったんじゃないかな、オレが」
ソファに座ってビールを飲みながら光司は、自分の色恋の失敗をまるで他人事のようにそう分析した。
「グランドでプレイしているときと違って、意外に地味なんだよ、オレは。現役の時は付き合いもあってクラブなんかはよく行ったし、それなりに楽しかったけど、実を言うとみんなでお酒飲んで騒ぐより、一人で部屋で映画見たりプラモ作ったりする方が好きなんだよね」
「まさか、おまえもガンオタか!?」
「そうだよ、知らなかった?青山さんとは行きつけのプラモ屋の紹介で知り合ったんだ。そこがレア物回してくれる店でさ」
と、しばらく光司はプラモデルへの熱い思いを語った。
「あれ、興味ない?」
「ねーよ!」
光司は苦笑した。
「まあ、仕方ないかなと思って。彼女や、ファンの女の子たちが好きだったのはJリーガーのオレであって、本当のオレじゃないんでしょ」
「光司……」
「だけど、自業自得だよね。オレも、彼女を愛してたわけじゃない。利用しようとしたんだから」
そう言う口調は投げやりではなく、明るいと言ってもいいほどだった。
晶はソファから立ち上がって、光司の前に移動した。
光司の両肩に手を置いて、言う。
「オレは、おまえがJリーガーだから、付き合ってたわけじゃないよ?」
光司は長い睫毛のくっきりした目をパチパチさせたあと、ニッコリ微笑んだ。
「そっか、晶君はオレのカラダ目当てだもんね」
「人をスケベジジィみたいに言うな!なんだよカラダ目当てって」
「ごめんごめん。じゃあ、なに?」
前屈みになって、光司の顔に、自分の顔を近付けて言う。
「おまえって、なーんにも悩みがなさそうで、天真爛漫で、一緒にいてすげえ、気が楽なんだよね」
「ホント?」
「ホントホント。気前もいいし、優しいとこも好き」
言って、晶は光司の唇に軽く口ずけた。
「でも…」
と言いながら、肩に置いた手で首に触れ、優しく頬を包むように触る。
「エロいカラダも好き。エッチも上手いし」
「やっぱりカラダ目当てじゃん」
クスクス笑いながら、光司は、晶の首に腕を回した。
そしてそっと、引き寄せる。
今度はディープなキスだった。
口を大きく開いて、舌を舐め合い、吸う。
強く、浅く。
深く、味わうように。
キスしてるだけなのに、呼吸が乱れて、はぁはぁと声が漏れる。
名残惜しげに唇を離して、晶は言った。
「シャワーを浴びて、その似合わない無精髭を剃ってこいよ。ベッドの上で、愉しもうぜ」
***
昼下がりに真っ裸でベッドの上にいるだけで、エロチックで隠微な空気は簡単に出来上がる。
晶は、光司の身体の上に跨って、手のひらを広くて逞しい胸に這わせた。
「おまえって、痩せて見えるのに、胸筋すげえよな」
と、言いながら、その手を腰のほうに移動させる。
「ウエストは相変わらず引き締まってるし、腹も出てない。今でもちゃんと鍛えてるんだろ」
光司は目を細めて笑って、晶の顔に手を伸ばした。
「長年の習慣だよ。このマンション、ジムがあるんだ。やることもないから、通ってた。それより、晶君、きて」
誘われて、晶はゆっくり身体を倒し、光司の唇に唇を重ねた。
満足のいくまで深い口付けを交わしたあと、晶は、身体をずらしながら、光司の首筋や、胸の間、臍、と下肢に向かって舌の愛撫を移動させる。
その舌が、上を向いて勃起しているペニスに触れると、光司は「ああ…」と、艶っぽい声を漏らした。
しつこいくらいに竿を舐めたあと、先端を口に含んで、しゃぶる。
「あっ、気持ち…いい。晶君、オレ、久しぶりだから、あんまり、持たないかも…」
光司が、甘苦しそうに、そんな弱音を吐いた。
「いいよ、オレも、もう欲しい。なんか、おまえのしゃぶって興奮した」
晶は言って、光司のペニスにゴムをはめると、上になったまま、位置を合わせた。
「え?大丈夫?ほぐしてないけど」
「ジェルつきのゴムだから、大丈夫。…あっ」
光司のペニスの先端が、晶の中に挿った。
じんわりと、そこから快感が広がるのを味わうように、晶は一度動きを止めてから、ゆっくり腰を落とす。
「…あっ、入る…入ってくよ…光司…」
「う…ん、気持ちいい、晶君」
「光司の…おっきい…ああ、気持ちいい…」
晶は、恍惚とした表情を浮かべて、喉を反らした。
光司を咥えただけで晶のペニスも、完全に勃起していた。
「晶君、動いてみて」
促されて、晶は腰を動かした。
前後に、上下に、快楽だけを追いかけるように動く。
「ああ、やばい…気持ち、良すぎ」
「オレも…なんか…すげえ感じる…あっ、あっ、あん」
光司は、繋がったまま上半身を起こして、晶を抱きしめると、そのまま晶を柔らかく押し倒して自分が上になった。
「晶君、後ろだけでイケそう?」
晶は眉を寄せた恍惚とした表情で、頷いた。
「うん…おまえのが、すげえ、いいとこに当たって…気持ち、いい。光司、このまま、突いて…」
「わかったよ」
光司は、真上から快感に蕩けた晶の表情を楽しんで、ときどき、戯れみたいなキスをして、緩やかに腰を動かした。
すぐにも出したかったけれど、快楽を共有できるこの時間を愛しむように、晶と自分自身をぎりぎりまで焦らした。
そのせいか、射精の瞬間のエクスタシィは絶大で絶品だった。
はあはあと息を乱し、汗ばんだ身体を重ねて、光司は久しぶりに解放感を味わっていた。
怪我をして以来、いろんな人間がいろんな言葉を使って自分を慰めてくれたけど、こんなに心が軽くなったのははじめてだ。
そう気づいて、やっと光司は自分が少なからず傷ついていたのだと、わかった。
なんでもない、大丈夫だと言いながら、本当は辛かったのだ。
光司は、晶を強く抱きしめた。
極上の快感と温もりで、自分を慰めてくれた、細い身体を。
「光司、苦しいよ」
晶は笑いながらそう言って、それでも、受け止めてくれるように背中を抱いてくれる。
「ねえ、晶君は、もしかして、オレを慰めてくれたの」
この人が、どうして自分のものじゃないのかな、と光司は思った。
「そんなワケねえだろ。おまえとヤリたかっただけだよ。雅治のヤツ、出張だとか言って3日も帰って来てねーし。どこ行ってんだか」
晶はそう言って、光司は苦笑した。
晶を抱くたびに、愛しい、という想いが自分の中にあることを確信する。
同時に、決して、手に入らないことも、わかっていた。
「そんなこと嘘でしょう。愛されて、満たされてますって顔してるよ」
光司がそう言ってからかうと晶は赤面した。
すぐあとで、しんみりした顔で言う。
「オレは欲張りだから、いくら愛されてるってわかっていても、いつも足りないんだ。もっと欲しいって、思う。雅治の愛情とか、情熱が全部欲しい。オレのこと以外、何にも考えないで欲しい」
「晶君は求めすぎるから、寂しいんだよ」
晶は頷いた。
「わかってるよ。雅治には仕事があって、オレはその雅治の稼ぎで養ってもらってるって。だけど、雅治が仕事をするのはオレのためばかりじゃない」
「そうなの?」
「雅治にとって仕事は生活のためというより、挑戦なんだ」
「挑戦?」
「うん。雅治は、いつも高いところを目指しているし、近づくために努力もしている。オレは、雅治のそういうところも好きなんだよね」
「なんだ、結局ノロケ?」
「オレにはよくわかんないけど、おまえにとってはサッカーが、そういうもんなんじゃないかなって思っただけ」
「晶君…」
光司は、やっと晶が何を云いたかったのか理解したようにはっとした。
「別に、おまえが諦めるって言うのなら、オレが口出しすることじゃないけど。だけど、おまえを見ていると、諦めたようには見えないぜ。他人のためじゃなくて、自分のために、チャレンジするのもアリじゃねえのか。だいたいなあ、こんなに動けるなら、大丈夫だろ。今日の、いつもと全然変わりなかった。リハビリに通え。覚が今、医師会理事の親のコネ使って、病院探してるから」
「まさか、オレの体力測るためにセックスしたの?!」
「だから、オレはそんなお節介じゃねーって。おまえとヤリたかっただけだって言ってるだろー!」
「わかったよ。ヤリたいヤリたいって何度も言わないでよ。またムラムラして来た。ね、もう1回、いいかな?」
「おまえ、スタミナも落ちてねえじゃねえか」
晶は呆れた顔でそう言ったが、光司の髪をくしゃくしゃとしたあと、笑いながら光司にキスした。
もう一回はもう始まっていた。
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