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本編
18.【弁護士】小田切雅治再び②
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「ただいま………」
雅治は様子を伺うようにそっと、家の中に入ってきた。
廊下もリビングも電気が消えて、家の中はシーンとしていて薄暗かった。
「晶、いないの」
同じように電気の消えた寝室を覗くと、ベッドが人の形に盛り上がっている。
「晶」
足音を立てないように静かに近づいて毛布の端をめくり寝顔を覗くと、ベッドサイドの小さくて淡い照明に照らされ、晶の閉じた目の下に乾いた涙の跡が見えた。
ふとベッドの下に散乱する紙切れに気づいて手に取ると、自分のゴシップを書いたスポーツ新聞であることがわかって、それを破り捨てた晶の気持ちを思い、雅治は胸が痛んだ。
けれど雅治は晶に対して自分が悪いことをしたという意識はなかった。
そもそもこの記事はモデルあがりのタレント志望の女の事務所が、売り込みのために週刊誌に流したネタで、事実ではない。
しかし、こんなことはテレビで仕事をする人間には、逃れられないリスクで税金のようなものだと思う。
晶と結婚する前も何度もあったし、これが晶を泣かすほどのダメージになるとは考えていなかったのだが、考えが甘かったようだ。
何年付き合っても、雅治にとって晶はビックリ箱のような存在だった。
喜怒哀楽はわかりやすく、単純かと思うと、その感情のスイッチの在処がつかめない。
どんなことを喜んで、どんなときに怒って、どんなときに泣くのか、未だに理解の範疇を超えている部分がある。
でも、だからこそ晶は、雅治にとって手応えのある希少な相手だった。
晶とならいつまでもワクワクするような恋が続けられると思った。
男女の愛情のように、時間とともに穏やかに互いを慈しむような関係に落ち着いていく愛情も、それはそれで美しいと思う。
けれど自分には合わない。
いつまでも同じ相手と、恋を続けたい。
晶とならそれが出来ると思ったから、一緒に生きたいと思った。
「晶……」
寝ている晶の耳元に囁きながら、雅治は晶のこめかみや瞼にキスを落とす。
そう、きっと晶となら、いつまでも恋を続けられると思う。
「晶ってば…」
「……う、ん」
眠いのか、晶はむずかってイヤイヤをするように首を振る。
雅治は毛布を完全に捲くってベッドの上に乗り上げ晶の身体を跨ぎ、構わずに頬や首にキスを散らした。
「や…だって」
嫌がる仕草が、誘っているときよりも色っぽいと思いながら、雅治は晶の身体を弄る手を止めない。
「どうして嫌なの」
まだ寝惚けている晶は雅治の身体を押し離そうとする。
その晶の両方の手首を掴んで頭の上にひとつにまとめ、雅治は本格的に唇を貪った。
「んっ…ん…あ」
息苦しさに身を捩りながら、すっかり口内に侵入している雅治の舌に無意識のうちに反応を返す。
まだ完全に覚醒していないのに、すでに身体は奥の方から熱を帯びはじめていた。
雅治の舌が口の中から出て行こうとするのを引き止めるように、晶の舌は自分からそれを捕らえようとして、半開きの唇から出る。
それなのに舌先がとうとう離れて、不満を言うためのように、そこでやっと晶の両眼はぱっちりと開いた。
「雅治!」
「はい?」
自分の身体の上に乗って、すでにシャツのボタンを外しにかかっている雅治に晶は今更驚いて見せる。
「おまえっ!何してるんだよ!帰ってくるなり、なんなんだっ。オレに何か言うことねーのかっ!オレに!!」
雅治は晶のシャツのボタンを外す手は止めずに「ん?」という顔で晶を見て、にっこり笑った。
「言うこと?そうだなあ…」
のんびりと言って、晶の耳元に唇を寄せ耳朶を舐めながら言う。
「いますぐ、晶が欲しい」
晶は、一瞬、蹴り倒してやろうかと考えたが、悔しいことにすでに身体にはしっかり火がつけられていた。
しかもなんだか両手の自由が利かないと思ったら、頭上にまとめられて雅治に押さえられている。
雅治の愛撫にはとことん弱い自分の身体を呪って、晶は歯軋りした。
雅治は、すっかりボタンを下まで外し終えたシャツを左右に開いて、露になった晶の胸にてのひらを滑らせている。
滑らかな肌の触り心地を楽しんだあとで、突起に唇を近付けて舌先で突いた。
「あっ…ん」
晶の身体が跳ね上がる。
すぐに反応してしまったことに照れたように晶はプイッと顔を逸らした。
「晶ってさあ、ビ・ン・カ・ン」
嬉しそうに言って雅治は晶の身体に本格的な愛撫を施しはじめた。
「やあ、雅治…やだ、やだっ!」
身体はもうすっかりその気になっているのに、晶はポーズだけの半端な抵抗をやめない。
今更やめられる方がツライとわかっているが、協力的になるにはやはり心に引っ掛かるものがある。
「晶、可愛い。めちゃめちゃにしたいくらい」
晶の抵抗を封じるように、ぎゅっと抱きしめて雅治は言う。
雅治にこんなふうにされて、それでも許さずにいられない人間なんていないと、晶はそれが惚れた欲目というものだということも知らず、本気でそう思っている。
「雅治……」
雅治を好きになって、片思いだと思っていたあの頃は、雅治が自分を好きになってくれるならどんな努力も出来ると思っていた。
だけど、愛情を求める気持ちにはキリがない。
愛されているとわかっていても、もっと愛して欲しいと思う。
愛すれば愛するだけ、貪欲になって、そのせいで心の中の不安や満たされないことの寂しさは大きくなる。
「雅治、手、離して。もう抵抗しないから」
「ほんと?抱いてもいい?」
問いかけにコクンと頷くと、雅治は晶の両手を放した。
解放された両手を雅治の背中に回して、ぎゅっと身体を抱きしめ返した。
「抱いて…」
奪うように強く抱いて欲しい。
愛情は言葉では伝えにくい。
痛いくらい激しく求めてくれたら、今夜は、それで信じられる。
雅治は乳首への愛撫を再開した。
硬くなった小さな粒の周りを焦らすように舐める。
「はぁ…ふぅ…」
声が漏れるのを耐えるために、晶は自分の人差し指を噛んだ。
「我慢すんなよ…声、聞かせて」
雅治は晶が噛んだ指を握り、シーツに押さえつけた。
もう一方の指も絡めあって、晶の両手を再び不自由にして、雅治は舌で乳首を堪能する。
熱い舌で弄られて、敏感になりすぎたそこから、全身に快感が走る。
「あっ…やぁ、も…そこ、ばっか…」
両手の自由を奪われているので晶は身を捩って抗う。
まだ触れられていない下半身が感じすぎているのが恥ずかしくて、雅治から身体を離したかった。
それなのに雅治は乳首を味わいながら、腰をぐいぐい押し付けてくる。
雅治のズボンの下のそれも硬くなっていることが、押し付けられている部分でわかった。
無意識に太腿を動かして、布越しに雅治のそれを刺激する。
「ねえ、雅治も、脱いで」
早く雅治を感じたくなって、晶はねだるような目線で言った。
それにもう自分の方は上半身のシャツのボタンは完全に開かれ、肩の半分まで落ちているし、ズボンもいつのまにか腰まで降ろされているというのに、雅治の方は上着こそ着ていないが、まだネクタイもしたままなのだ。
「晶が脱がせて」
そう言われて、目許を赤くしながらも、晶は起き上がって雅治のネクタイに手をかけた。
手触りの良い絹のタイは指に馴染んでスルスルと解ける。
ベッドの下に放り投げて、次はYシャツのボタンを外した。
シャツを肩から落とし、下に着ていたランニングシャツの裾を持ち、雅治に両手をあげさせて脱がせる。
見慣れているはずなのに、雅治の裸体の上半身は何度見ても晶には魅力的だった。
雅治は首を上下に振って、長めの髪をかきあげながら後ろに撫で付ける。
そんな仕草も俳優のように決まっている。
晶は、自分の夫に見惚れて、初恋をしている女学生のように頬を染め、うっとりと目を細めた。
「晶、下は?」
雅治に言われて、慌てたように細い指でズボンのファスナーをつまんだ。
二人きりの静かな部屋に、ジッという淫らな音が響いた。
雅治は晶が脱がせやすいように膝を立てて座る。
晶は雅治のズボンを一気に膝まで下ろした。
調度目の高さに雅治の股間があって、晶は、ボクサーパンツの上から膨らみに触れた。
「欲しいの?」
「うん……」
「待って。脱いじゃうから」
雅治は晶に膝まで下ろされたズボンと下着を自分で脱いで、膝立ちして晶の顔の前に半勃しているそれを突き出した。
晶は、やがて自分の中を満たすそれに、唇を開いて、赤い舌先を見せながら、顔を寄せる。
最初は皮膚の表面だけをそっと舐めるように唾液に濡れた熱い舌を押し当てた。
それから先端を唇に挟んで吸う。
優しく、キスをするように。
しばらく戯れのような愛撫を繰り返していると、珍しく焦れたのか雅治が「中に入れて」と言って、晶の頭を軽く押さえた。
晶は素直にそれを口内に含んで、唾液が唇の端からこぼれるのも構わず顔を動かして刺激を送った。
「気持ちいい。晶、上手だね」
手を使わずに口だけで奉仕する格好はとても扇情的で、視覚でも雅治の欲情を煽る。
「…いい、すげえ。あぁ、気持ちいい…」
雅治は、感じていることを伝えるように優しく晶の頭を撫でる。
「このままイッてもいい?」
マナーの良い雅治は、断りなしに口の中に出すことはしない。
晶は雅治のそんなところも好ましく思う。
雅治のものを咥えたまま、コクンと頷いた。
「んっ…はぁ…出る…よ、晶…」
晶の小さな頭を両手で軽く支えて、小刻みに腰を揺すり晶の口を犯して雅治が達した。
「んんっ…」
晶は当たり前のように雅治のものを飲みこんだ。
雅治が腰を引いて晶の口の中から退くと、雅治を潤んだ瞳で見上げて、快感に蕩けそうな表情を見せる。
「可愛い、晶」
濡れた唇を愛撫するように指で拭ったあと、雅治は自分の唇を重ねた。
交わりの深いキスを続けながら、半端のままの晶の服をスマートに取り払い、晶をベッドに寝かせる。
てのひらで全身を羽根のように優しく撫でたあと、晶の脚を開かせ、股間に顔を埋めた。
息を吹きかけられたり、側面を舐められたり、そこからは際限のない快感が生み出される。
その快楽に身を任せたら身体が溶けてしまうのではないかと、不安になるほど。
「あぁ…ん…はぁ…そこ…や、…だめぇ…まさ…はるぅ」
前を舌で愛されながら、秘所にはすでに雅治の指が2本入り、微妙なイイところを探られている。
後ろをかき回されて前を弄られると、いつもたまらずに晶はイッてしまう。
「あっ、ああ!いっ…いく…いっちゃう!出ちゃう!」
快感を生み出す箇所がドクドクと脈打って、今度は晶が雅治の口の中に放った。
「晶、よかった?」
はぁはぁと荒い呼吸をしている晶の顔を上から覗き込んで、雅治が聞く。
返事の代わりに晶は両腕を上げて、抱きしめて、とねだる。
雅治が微笑みながら身体を重ねると、背中に腕を回してぎゅっと抱きついてきた。
「すげえ、よかった。でも、雅治が欲しい。もっと欲しい」
欲しい、ともう一度掠れた声で言って、右手を雅治の股間に伸ばす。
「好きなだけやるよ。これは、晶だけのモノなんだから。オレはいつだって、晶のことしか愛してない」
そう、雅治はオレだけのものだ。
愛されるたびに晶は確信していく。
過去も未来も、おまえはオレだけのものだと。
不安に思うのは欲張りな自分自身の問題だ。
どんなに愛されても、もっと愛して欲しいと望む傲慢な自分の。
だから。
もっともっと、オレを満たして、愛して、わからせて。
離れている時間も決してオレがおまえの愛を疑うことのないように。
唇を重ね、晶を舌と舌の絡まるディープキスに夢中にさせておいて、雅治は晶の片脚を持ち上げて挿入した。
「……あっ」
先端の部分が挿ったのを感じて、晶の身体が撓る。
「いやぁ…雅治…もっと、ちゃんと、奥まで来て…いっぱいにして…」
心持ち腰をあげて、雅治が挿れやすいように協力する。
「急かすなって」
雅治はゆっくりと、晶の中に自身を沈めた。
「う…ん、…はぁ…いい…気持ちいい」
やっと満たされた充実感に、晶の唇から恍惚とした吐息が漏れる。
雅治のものに満たされるこの一瞬が、一番確かな快感だった。
繋がったままで自分を抱きしめてくる雅治に、色っぽく腰を回して催促する。
「ちょっと、たんま。晶の中、気持ち良過ぎて、もちそうにない」
耳元でそう言われて、晶は嬉しくて雅治の身体を抱きしめた。
幸せだと、心からそう思った。
今、この瞬間は。
そう、翌日発売の週刊誌に、またしても別件で雅治の浮気発覚スキャンダルが載ることを知らない、今は。
To be continued➡
雅治は様子を伺うようにそっと、家の中に入ってきた。
廊下もリビングも電気が消えて、家の中はシーンとしていて薄暗かった。
「晶、いないの」
同じように電気の消えた寝室を覗くと、ベッドが人の形に盛り上がっている。
「晶」
足音を立てないように静かに近づいて毛布の端をめくり寝顔を覗くと、ベッドサイドの小さくて淡い照明に照らされ、晶の閉じた目の下に乾いた涙の跡が見えた。
ふとベッドの下に散乱する紙切れに気づいて手に取ると、自分のゴシップを書いたスポーツ新聞であることがわかって、それを破り捨てた晶の気持ちを思い、雅治は胸が痛んだ。
けれど雅治は晶に対して自分が悪いことをしたという意識はなかった。
そもそもこの記事はモデルあがりのタレント志望の女の事務所が、売り込みのために週刊誌に流したネタで、事実ではない。
しかし、こんなことはテレビで仕事をする人間には、逃れられないリスクで税金のようなものだと思う。
晶と結婚する前も何度もあったし、これが晶を泣かすほどのダメージになるとは考えていなかったのだが、考えが甘かったようだ。
何年付き合っても、雅治にとって晶はビックリ箱のような存在だった。
喜怒哀楽はわかりやすく、単純かと思うと、その感情のスイッチの在処がつかめない。
どんなことを喜んで、どんなときに怒って、どんなときに泣くのか、未だに理解の範疇を超えている部分がある。
でも、だからこそ晶は、雅治にとって手応えのある希少な相手だった。
晶とならいつまでもワクワクするような恋が続けられると思った。
男女の愛情のように、時間とともに穏やかに互いを慈しむような関係に落ち着いていく愛情も、それはそれで美しいと思う。
けれど自分には合わない。
いつまでも同じ相手と、恋を続けたい。
晶とならそれが出来ると思ったから、一緒に生きたいと思った。
「晶……」
寝ている晶の耳元に囁きながら、雅治は晶のこめかみや瞼にキスを落とす。
そう、きっと晶となら、いつまでも恋を続けられると思う。
「晶ってば…」
「……う、ん」
眠いのか、晶はむずかってイヤイヤをするように首を振る。
雅治は毛布を完全に捲くってベッドの上に乗り上げ晶の身体を跨ぎ、構わずに頬や首にキスを散らした。
「や…だって」
嫌がる仕草が、誘っているときよりも色っぽいと思いながら、雅治は晶の身体を弄る手を止めない。
「どうして嫌なの」
まだ寝惚けている晶は雅治の身体を押し離そうとする。
その晶の両方の手首を掴んで頭の上にひとつにまとめ、雅治は本格的に唇を貪った。
「んっ…ん…あ」
息苦しさに身を捩りながら、すっかり口内に侵入している雅治の舌に無意識のうちに反応を返す。
まだ完全に覚醒していないのに、すでに身体は奥の方から熱を帯びはじめていた。
雅治の舌が口の中から出て行こうとするのを引き止めるように、晶の舌は自分からそれを捕らえようとして、半開きの唇から出る。
それなのに舌先がとうとう離れて、不満を言うためのように、そこでやっと晶の両眼はぱっちりと開いた。
「雅治!」
「はい?」
自分の身体の上に乗って、すでにシャツのボタンを外しにかかっている雅治に晶は今更驚いて見せる。
「おまえっ!何してるんだよ!帰ってくるなり、なんなんだっ。オレに何か言うことねーのかっ!オレに!!」
雅治は晶のシャツのボタンを外す手は止めずに「ん?」という顔で晶を見て、にっこり笑った。
「言うこと?そうだなあ…」
のんびりと言って、晶の耳元に唇を寄せ耳朶を舐めながら言う。
「いますぐ、晶が欲しい」
晶は、一瞬、蹴り倒してやろうかと考えたが、悔しいことにすでに身体にはしっかり火がつけられていた。
しかもなんだか両手の自由が利かないと思ったら、頭上にまとめられて雅治に押さえられている。
雅治の愛撫にはとことん弱い自分の身体を呪って、晶は歯軋りした。
雅治は、すっかりボタンを下まで外し終えたシャツを左右に開いて、露になった晶の胸にてのひらを滑らせている。
滑らかな肌の触り心地を楽しんだあとで、突起に唇を近付けて舌先で突いた。
「あっ…ん」
晶の身体が跳ね上がる。
すぐに反応してしまったことに照れたように晶はプイッと顔を逸らした。
「晶ってさあ、ビ・ン・カ・ン」
嬉しそうに言って雅治は晶の身体に本格的な愛撫を施しはじめた。
「やあ、雅治…やだ、やだっ!」
身体はもうすっかりその気になっているのに、晶はポーズだけの半端な抵抗をやめない。
今更やめられる方がツライとわかっているが、協力的になるにはやはり心に引っ掛かるものがある。
「晶、可愛い。めちゃめちゃにしたいくらい」
晶の抵抗を封じるように、ぎゅっと抱きしめて雅治は言う。
雅治にこんなふうにされて、それでも許さずにいられない人間なんていないと、晶はそれが惚れた欲目というものだということも知らず、本気でそう思っている。
「雅治……」
雅治を好きになって、片思いだと思っていたあの頃は、雅治が自分を好きになってくれるならどんな努力も出来ると思っていた。
だけど、愛情を求める気持ちにはキリがない。
愛されているとわかっていても、もっと愛して欲しいと思う。
愛すれば愛するだけ、貪欲になって、そのせいで心の中の不安や満たされないことの寂しさは大きくなる。
「雅治、手、離して。もう抵抗しないから」
「ほんと?抱いてもいい?」
問いかけにコクンと頷くと、雅治は晶の両手を放した。
解放された両手を雅治の背中に回して、ぎゅっと身体を抱きしめ返した。
「抱いて…」
奪うように強く抱いて欲しい。
愛情は言葉では伝えにくい。
痛いくらい激しく求めてくれたら、今夜は、それで信じられる。
雅治は乳首への愛撫を再開した。
硬くなった小さな粒の周りを焦らすように舐める。
「はぁ…ふぅ…」
声が漏れるのを耐えるために、晶は自分の人差し指を噛んだ。
「我慢すんなよ…声、聞かせて」
雅治は晶が噛んだ指を握り、シーツに押さえつけた。
もう一方の指も絡めあって、晶の両手を再び不自由にして、雅治は舌で乳首を堪能する。
熱い舌で弄られて、敏感になりすぎたそこから、全身に快感が走る。
「あっ…やぁ、も…そこ、ばっか…」
両手の自由を奪われているので晶は身を捩って抗う。
まだ触れられていない下半身が感じすぎているのが恥ずかしくて、雅治から身体を離したかった。
それなのに雅治は乳首を味わいながら、腰をぐいぐい押し付けてくる。
雅治のズボンの下のそれも硬くなっていることが、押し付けられている部分でわかった。
無意識に太腿を動かして、布越しに雅治のそれを刺激する。
「ねえ、雅治も、脱いで」
早く雅治を感じたくなって、晶はねだるような目線で言った。
それにもう自分の方は上半身のシャツのボタンは完全に開かれ、肩の半分まで落ちているし、ズボンもいつのまにか腰まで降ろされているというのに、雅治の方は上着こそ着ていないが、まだネクタイもしたままなのだ。
「晶が脱がせて」
そう言われて、目許を赤くしながらも、晶は起き上がって雅治のネクタイに手をかけた。
手触りの良い絹のタイは指に馴染んでスルスルと解ける。
ベッドの下に放り投げて、次はYシャツのボタンを外した。
シャツを肩から落とし、下に着ていたランニングシャツの裾を持ち、雅治に両手をあげさせて脱がせる。
見慣れているはずなのに、雅治の裸体の上半身は何度見ても晶には魅力的だった。
雅治は首を上下に振って、長めの髪をかきあげながら後ろに撫で付ける。
そんな仕草も俳優のように決まっている。
晶は、自分の夫に見惚れて、初恋をしている女学生のように頬を染め、うっとりと目を細めた。
「晶、下は?」
雅治に言われて、慌てたように細い指でズボンのファスナーをつまんだ。
二人きりの静かな部屋に、ジッという淫らな音が響いた。
雅治は晶が脱がせやすいように膝を立てて座る。
晶は雅治のズボンを一気に膝まで下ろした。
調度目の高さに雅治の股間があって、晶は、ボクサーパンツの上から膨らみに触れた。
「欲しいの?」
「うん……」
「待って。脱いじゃうから」
雅治は晶に膝まで下ろされたズボンと下着を自分で脱いで、膝立ちして晶の顔の前に半勃しているそれを突き出した。
晶は、やがて自分の中を満たすそれに、唇を開いて、赤い舌先を見せながら、顔を寄せる。
最初は皮膚の表面だけをそっと舐めるように唾液に濡れた熱い舌を押し当てた。
それから先端を唇に挟んで吸う。
優しく、キスをするように。
しばらく戯れのような愛撫を繰り返していると、珍しく焦れたのか雅治が「中に入れて」と言って、晶の頭を軽く押さえた。
晶は素直にそれを口内に含んで、唾液が唇の端からこぼれるのも構わず顔を動かして刺激を送った。
「気持ちいい。晶、上手だね」
手を使わずに口だけで奉仕する格好はとても扇情的で、視覚でも雅治の欲情を煽る。
「…いい、すげえ。あぁ、気持ちいい…」
雅治は、感じていることを伝えるように優しく晶の頭を撫でる。
「このままイッてもいい?」
マナーの良い雅治は、断りなしに口の中に出すことはしない。
晶は雅治のそんなところも好ましく思う。
雅治のものを咥えたまま、コクンと頷いた。
「んっ…はぁ…出る…よ、晶…」
晶の小さな頭を両手で軽く支えて、小刻みに腰を揺すり晶の口を犯して雅治が達した。
「んんっ…」
晶は当たり前のように雅治のものを飲みこんだ。
雅治が腰を引いて晶の口の中から退くと、雅治を潤んだ瞳で見上げて、快感に蕩けそうな表情を見せる。
「可愛い、晶」
濡れた唇を愛撫するように指で拭ったあと、雅治は自分の唇を重ねた。
交わりの深いキスを続けながら、半端のままの晶の服をスマートに取り払い、晶をベッドに寝かせる。
てのひらで全身を羽根のように優しく撫でたあと、晶の脚を開かせ、股間に顔を埋めた。
息を吹きかけられたり、側面を舐められたり、そこからは際限のない快感が生み出される。
その快楽に身を任せたら身体が溶けてしまうのではないかと、不安になるほど。
「あぁ…ん…はぁ…そこ…や、…だめぇ…まさ…はるぅ」
前を舌で愛されながら、秘所にはすでに雅治の指が2本入り、微妙なイイところを探られている。
後ろをかき回されて前を弄られると、いつもたまらずに晶はイッてしまう。
「あっ、ああ!いっ…いく…いっちゃう!出ちゃう!」
快感を生み出す箇所がドクドクと脈打って、今度は晶が雅治の口の中に放った。
「晶、よかった?」
はぁはぁと荒い呼吸をしている晶の顔を上から覗き込んで、雅治が聞く。
返事の代わりに晶は両腕を上げて、抱きしめて、とねだる。
雅治が微笑みながら身体を重ねると、背中に腕を回してぎゅっと抱きついてきた。
「すげえ、よかった。でも、雅治が欲しい。もっと欲しい」
欲しい、ともう一度掠れた声で言って、右手を雅治の股間に伸ばす。
「好きなだけやるよ。これは、晶だけのモノなんだから。オレはいつだって、晶のことしか愛してない」
そう、雅治はオレだけのものだ。
愛されるたびに晶は確信していく。
過去も未来も、おまえはオレだけのものだと。
不安に思うのは欲張りな自分自身の問題だ。
どんなに愛されても、もっと愛して欲しいと望む傲慢な自分の。
だから。
もっともっと、オレを満たして、愛して、わからせて。
離れている時間も決してオレがおまえの愛を疑うことのないように。
唇を重ね、晶を舌と舌の絡まるディープキスに夢中にさせておいて、雅治は晶の片脚を持ち上げて挿入した。
「……あっ」
先端の部分が挿ったのを感じて、晶の身体が撓る。
「いやぁ…雅治…もっと、ちゃんと、奥まで来て…いっぱいにして…」
心持ち腰をあげて、雅治が挿れやすいように協力する。
「急かすなって」
雅治はゆっくりと、晶の中に自身を沈めた。
「う…ん、…はぁ…いい…気持ちいい」
やっと満たされた充実感に、晶の唇から恍惚とした吐息が漏れる。
雅治のものに満たされるこの一瞬が、一番確かな快感だった。
繋がったままで自分を抱きしめてくる雅治に、色っぽく腰を回して催促する。
「ちょっと、たんま。晶の中、気持ち良過ぎて、もちそうにない」
耳元でそう言われて、晶は嬉しくて雅治の身体を抱きしめた。
幸せだと、心からそう思った。
今、この瞬間は。
そう、翌日発売の週刊誌に、またしても別件で雅治の浮気発覚スキャンダルが載ることを知らない、今は。
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