東京シンデレラ

フジキフジコ

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続・東京シンデレラ

6.昼下がりの訪問者

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ソファでうたた寝していたオレは玄関のインターフォンの音に起こされた。
高杉と一緒に昼めしを食べ、テレビでワイドショーを見ているうちに眠ってしまったらしい。

高杉は原稿が書き上がったと言って、出版社に出かけて行った。
メールでテキストファイルを送ればいいらしいのだが、高杉は毎月律義に持参している。
他にすることもないから暇潰しだろう。
そして出版社に行った日は編集部の人間や盆栽愛好家たちと飲みに行って、真夜中まで帰ってこない。

目を擦りながら玄関のドアを開けると、三ノ宮先生が立っていた。
「あれ、先生。どうしたんですか」
「ちょっと、話があるんだ。入ってもいいか」
「あ、はい。どうぞ」

先生は気の利いたことに、お土産だと言ってケーキをくれた。
「デパ地下で人気の店のケーキじゃないですか。並ばないと買えないやつですよね」
小さな箱に、洒落た小さなケーキが3個入っていた。
高杉の分もあることで、オレは先生がオレと高杉のことを認めてくれたような気がして、ちょっと嬉しかった。

「高杉、出かけてて、いないんです。紅茶入れますね」
オレは先生と自分の分のケーキと紅茶を用意して、ソファの前のローテーブルに置いた。

「椎名、悪いが紅茶に入れる砂糖をくれないか」
「先生、結構甘党なんですね。甘いケーキを食べるのに、紅茶も甘くするんですか」
オレは笑いながら、キッチンに砂糖を取りにいって先生に渡した。

ケーキはブランデーではなく日本酒が使われているそうで、ほのかに日本酒の香りがして美味かったが、かなり甘みが強かった。
「それで、今日はどうしたんですか」

この前、告白されて断って以来、先生には会ってなかった。
なんとなく、もう会わない方がいいんじゃないかと思っていた。

甘いケーキを胃袋に流し込むように紅茶をごくごく飲みながら先生を見ると、三ノ宮先生は何故か無表情だった。
無表情というより、のっぺらぼうのように見える。

うん?
目が、おかしい。
焦点が合わない。
のっぺらぼうの先生が、今度はダブって見えた。
ガチャン、という音が耳の奥、どこか遠くの方で響いた。
多分オレが、カップをソーサーに戻した音。

「薬が効いてきたな。椎名…」
先生の声もひどく遠い。

「…く…すり…って…なに…を…せ…んせ…い」
口が動かない。
身体から力が抜けていく。
オレはずるずるとソファから崩れ落ちるように、床に横になって意識を失った。



***



目が醒めると寝室のベッドの上だった。
オレは裸で、両手は後ろに回され手首のところで縛られていた。

「椎名、大丈夫か。僕が調合した薬だから、身体に負担はないはずだが」
言いながら先生は、オレの顔をぺたぺたと触っている。

「…先生、なんで…こんなこと…するんですか…」
「君が悪いんだ。あんなハレンチな格好を見せつけて。それでいて僕の好意を拒んだ」
首に熱い息がかかる。
ぬめっとした感触。
気持ち、悪い。

「やめて…下さい。高杉が…帰ってきます…よ」
「出版社に行くときは、真夜中まで帰らないと言ってたじゃないか。さっき、浮き浮きしながらマンションを出たのを見た」
クソ、オレめ、なんでそんなこと話したんだ。

先生は、はあはあと荒い息を吐きながら、オレの身体を撫で回し、舐め回した。
嫌悪感に鳥肌が立った。
なんとか逃れようと思うのに、薬のせいか、力が入らない。

先生がオレのペニスを握った。
オレのは何の反応もしていない。
薬のせいか、嫌悪感のせいか、オレは全然、その気にならない。
先生はくたっとしてるオレのペニスを舐めた。
それでも一向に勃起する兆しはない。
オレは安堵した。

多分オレは今からレイプされるのだろう。
痛みは受け入れられる。
けど、快感は受け入れられない。
だから、良かったと思った。

「やっぱり勃たせるのは無理か。残念だよ。せっかくなら、君にも楽しんでもらいたかった」
先生は勝手なことをほざきながら、ベルトを外して、ズボンと下着を脱いで下半身を露出した。
ペニスはもうすっかりヤル気満々だ。

「舐めてもらおうか」
オレの口に、赤黒く勃起したイチモツを押し付ける。
素直に舐めるわけねーだろ。

もちろん、それくらいわかっていたんだろう。
先生は手に物騒な物を持っていた。
よく切れそうな新品の、ちょっと高価そうなカッターナイフだ。
「さあ、椎名、口を開けるんだ。噛んだりしたら、可愛い顔に傷がつくよ」

先生はカッターナイフの銀色に光る刃の部分をオレの頰にピタっとつけた。
オレは無言で先生を睨みながら、口を開いた。
顔を傷つけられたら仕事が出来なくなる。
だから、仕方なかった。

「いい子だ…」
オレの口の中にペニスを押し込む。
遠慮なく奥まで入れられて苦しくてえづいた。
「もっと舌を使えよ。プロなんだろ」
無理だ、そんなサービスはとてもする気にならない。

三ノ宮は自分で腰を使って、オレの口に出し入れをして、勝手に気持ち良くなっている。
「はあ…はあ…」という息遣いに腹が立つ。

「気持ちいいけど、これ以上やると、後ろに挿れてやれなくなるから、これくらいにしておくよ」
そう言って、口からペニスを抜いた。
やっぱり挿れる気だ。
そうだと思ったけど。

無駄だとわかっていたが、自由になった口でオレは言った。
「先生、やめてください。まだ、間に合う。こんなことしたら、オレは先生を軽蔑する」

「椎名、僕の方こそ君には落胆させられたよ。金で男に身体を売るような仕事を臆面もなくしているなんてね。そんな子じゃなかったのに、本当に残念だ」
足を広げられて、腰を持ち上げられる。
蹴り倒してやりたいと思うけど、そこまでの力は湧いてこない。

三ノ宮はオレの尻の穴に突っ込もうとしている。
ろくにほぐしてないし、濡らしてもないから、なかなか入らない。
あれ。
もしかして、こいつ、あんまり経験ないのかな。
長く付き合っていた恋人がいたって、嘘だったのか。

「誰にでもヤラせているんだろ。もったいぶるなよ」
なかなか入らないことにイライラしたのか、先生はそんなことを言った。

三ノ宮は、金で身体を売るような男なら、レイプしても許されるって思ってる。
だけどそれは大違いだ。
金で身体を売るのはオレの意思だけど、こんなのは違う。
暴力。
肉体と精神を同時に犯す最低最悪の暴力だ。

三ノ宮は力尽くで強引に押し入ってきた。
痛みにオレは唇をぎゅっと噛んだ。
根元まで入れると、満足そうな息を吐いて「気持ちいいよ」と気持ち悪いことを言った。

オレの顔を、上を向くように顎を固定して、唇に唇を押し付けてくる。
オレは舌をむかえるふりをして、三ノ宮の舌に噛み付いた。
「…つっ!椎名!」
頬に平手打ち。
痛ってえ。

オレは精一杯、嫌悪の気持ちを込めて、三ノ宮を睨みつけた。

もう一回、情け容赦のない平手打ち。
思い切り唇を噛んだ。
血が唇から顎の方に流れる。
三ノ宮はオレの髪を乱暴に掴んで、振り回した。
「好きなんだろ、男にされるのが!」

情けないことに、オレは怯んだ。
三ノ宮は普通じゃない。
普通の精神状態なら、絶対こんなことは出来ないはずだ。
昔の、オレが知ってる先生じゃない。
壊れている、か、狂っている。
壊れた人間はなにをするかわからない。
本当にあのカッターナイフで切り刻まれるかもしれない。

今頃になって、震えた。
身体の芯から、恐怖心に、ガクガクと震えた。

両手で思い切り足を広げられていて股が痛い。
乱暴に抜き差しされて、尻の穴の中も痛む。
多分、出血してる。
オレは痛みの中で、三ノ宮が変な病気持ちじゃないことを祈った。

「ああ…いい…最高だよ、椎名。…もっと早く、こうすれば良かったんだ…、おまえとなら、やり直せると思ったのに…。もう、おしまいだ、なにもかも…おしまいだよ…」
意味のわからないことをほざきながら、三ノ宮は遠慮なくオレの中に出した。






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