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青は藍より出でて藍より青し
擬宝珠水仙〔3〕
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半年後。
有島優吾の名前で、綾瀬の元に贈り物が届いた。
100号もある大きなカンバスだった。
高谷と二人で、白い布に頑丈に包まれていた包装をほどいて、現れた絵の見事な出来栄えに二人は視線を奪われた。
大きなカンバスに描かれていたのは、綾瀬だった。
少し俯いた横顔の綾瀬が、白い小振りな花を見つめている。
油絵なのに水彩画のように透明でやわらかいタッチだった。
「『擬宝珠水仙』」
絵に添えられたタイトルを読み上げて高谷は眉を寄せる。
「なんのことだ」
「さあな」
擬宝珠水仙。ユーチャリス。
水辺に咲く純白で清楚な彼岸花だ。
「あいつの目に、こんなふうに見えてたんだな、おまえ」
感心したように高谷は言った。
優吾が描いた綾瀬の表情は、泣いてるようにも笑っているようにも見えた。
優しくもあり寂しくもあり、懐かしくもあった。
一緒に入っていた手紙には子供っぽい粗野な字で『金賞をもらい2百万の値段がつきました。謹んで進呈いたします』と、書かれていた。
「綾瀬、おまえの負けだな。あいつは、自分の道を行くよ」
綾瀬は憮然とした表情で、絵に背中を向けて呟くように言った。
「…ちっとも似てねえ」
高谷は綾瀬のために、嬉しそうに笑った。
有島優吾の名前で、綾瀬の元に贈り物が届いた。
100号もある大きなカンバスだった。
高谷と二人で、白い布に頑丈に包まれていた包装をほどいて、現れた絵の見事な出来栄えに二人は視線を奪われた。
大きなカンバスに描かれていたのは、綾瀬だった。
少し俯いた横顔の綾瀬が、白い小振りな花を見つめている。
油絵なのに水彩画のように透明でやわらかいタッチだった。
「『擬宝珠水仙』」
絵に添えられたタイトルを読み上げて高谷は眉を寄せる。
「なんのことだ」
「さあな」
擬宝珠水仙。ユーチャリス。
水辺に咲く純白で清楚な彼岸花だ。
「あいつの目に、こんなふうに見えてたんだな、おまえ」
感心したように高谷は言った。
優吾が描いた綾瀬の表情は、泣いてるようにも笑っているようにも見えた。
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一緒に入っていた手紙には子供っぽい粗野な字で『金賞をもらい2百万の値段がつきました。謹んで進呈いたします』と、書かれていた。
「綾瀬、おまえの負けだな。あいつは、自分の道を行くよ」
綾瀬は憮然とした表情で、絵に背中を向けて呟くように言った。
「…ちっとも似てねえ」
高谷は綾瀬のために、嬉しそうに笑った。
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