青は藍より出でて藍より青し

青は藍より出でて藍より青し

姉の秘密〔４〕

一週間後、退院したその足で、高谷は桐生邸を訪ねた。

綾瀬は呆れた表情で高谷を迎えた。
「のこのこと、よく来たな。ヤクザに係わるとロクな目にあわないってわかっただろう」
「おまえに、聞きたいことがある」
はじめて来たときと同じ、綾瀬の部屋で、高谷は綾瀬に向かいあった。

「朋子がチンピラに騙されてること、おまえ、知ってたよな。なんでだよ」
つまらないことを聞く。
綾瀬の顔はそう言っている。
「おまえのことを調べたら、ついでにわかっただけだ」
「なんでオレを調べたんだ！」

病院で、高谷はそればかり考えていた。
綾瀬が朋子を自分の姉だと知っていたことから、興信所をつかったのか、自分の手でしたのかはわからないが、綾瀬が自分の身辺を調査したのだということは間違いないと思った。

けれどその理由が考えても考えても高谷にはわからなかった。
自分のなにが綾瀬の興味を引いたのか。

綾瀬は高谷を馬鹿にしたように唇の端で笑う。
「おまえが欲しかった」
凄いことを、真顔で言った。

しかし、それでは全く理由になっていない。
高谷の頭の中は、未だ謎に満ちている。

なぜ自分が綾瀬に選ばれたのか、綾瀬は、自分をどうするつもりなのか。

けれど綾瀬の顔を見ていたら、質問ばかりしている自分が馬鹿らしくなった。
時間はいくらでもある。
いつか聞き出してやる。
そう決心して、取りあえず、ソファーに深く腰掛けた。

またしてもいいタイミングで葉月がお茶を運んでくる。
絶対に盗み聞きしているに違いないと高谷は確信した。

「いらっしゃい。今日はゆっくりしていってくれますね」
高谷は葉月を無言で睨んだ。
綾瀬は欲しがり方を知らない、だって？
とんでもない。
綾瀬は望んだものを手に入れた。