お妃さま誕生物語

すみれ

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本編

ステファニー

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「いやよ、平民のとこに行くなんて、それもお父様を殺した革命軍の監視つきなんて。」
「平民に文字なんて必要ないわ、なぜ私が教えないといけないの。」
「街なんて、ならずものでいっぱいよ、そこになんて行きたくない。」
広間に集められたのは5人の令嬢。
教会で子供達に文字や計算を教える為に集められた令嬢達だ。
不満や不安、拒否を口にして抵抗をしている。



「いつまでも、貴族気分でいられても困るな。
すでに領地、財産没収をされて、屋敷もすぐに住めなくなる。能力のあるものだけが、貴族でなくなっても生き残れる、あなたたちはどうかな?」
アクセン伯爵の言葉に、5人が息をのむ、父達のように処刑されるのかと。

「アクセン伯爵、裏切り者、王を処刑して満足ですか。」

「この国は死にかかっている、それがわからないか?
王政がなくなって、延命しただけだ。
この国の借金がいくらあるか知っているか?
昨年の餓死者がどれぐらいか知っているか?
北部地方の風土病が街に向かってる、これに対抗できる薬を手に入れるルートをこの国は持ってない、王は薬の産地の隣国を見下していたせいで拒否されている。病気は貴族も平民も区別をつけないぞ。
革命軍は貴族を処刑した、だが、革命軍は平民の苦しみから生まれたものだ。
原因が王や貴族なんだ、それをわからないと恨みしかない、これから生きていくのに必要なのは希望なんだ。
それは、あなた達にも、私にも。」





古びた教会には、たくさんの子供が集められていた。
聖女と呼ばれる女が、10人の子供の手をひいて、私のもとにやってきた。
「きゃーーーー。汚い手でドレスをさわらないで。」
なんなの、痩せた子供のくせに目がギラギラしてる、こわい。

「おまえ、警備のためにきたんでしょ、私を守りなさいよ。」
「俺はおまえなんてじゃない、クリスってんだ、いい加減覚えろ。
もしかして、俺が切った貴族の中にはアンタの父親もいたかもな、逃げることしかできないヤツばかりだった。」
真っ青になった私の顔を小さな手がなでる。
「俺の父ちゃんも死んだよ、貴族様はなんにも働かないのに、むちをふるうんだよ、鞭の傷につける薬も買えないんだ、働いてもお金はくれないんだよ。
父ちゃんが死んだときは、悲しかった。お姉ちゃんも父ちゃんが死ぬと悲しんだね。貴族様なのに。」
「貴族だって、同じ人間なのよ!悲しいわよ。」
同じ・・・・
同じなんだ・・・
どこが違うんだろう、手も足も顔も個人差があるだけ。
同じ言葉をしゃべって、今は、私の命も彼らが握っている、この前まで貴族が握ってた。
立場が逆転して初めてわかった、どんな理不尽なことか。

言葉が漏れ出る、認めたくなかった言葉
「ごめんなさい、ごめんなさい、汚い手なんて言ってごめんなさい。」
「・・・・・・アンタ素直なんだな、これから街や革命のことを知って欲しいと思う。
俺もアンタを貴族女なんて腐ったヤツと決めつけてた、悪かった。」
お父様、私は間違ってたの?

「何も間違ってなかったわよ。」
聖女が、私の心を読んだかのように答えた。
「間違ってなかったけど、真実を知らなかった。
私も知らなかったの、だから知りたいの、自分のために。」

自分のために。
自分はどうなるの? 
財産は没収され、父も兄も行方知れず、生きてるのか、死んでいるのかさえもわからない。
使用人達は、家の家財を持って出ていった。
使用人に殺された貴族の家もあるというから、私はいい方だった。
明日からの食べ物もわからない、母は寝込んだまま、私までもいなくなるわけにいけない。

「文字を教えるわ、数の数え方も。」
「お姉ちゃん、オイラ母ちゃんにパンを食べさせたいんだ、いつも自分は食べずにオイラにくれるから、働いてお金が欲しいんだ。」
「お姉ちゃんもお母様にパンをあげたいわ。」
「お姉ちゃんも働いたらパンが買えるぜ。」
この子達に強さを分けてもらおう。
私もこれから働かねばならない、というのがわかった気がする、もう貴族はいないんだ。

「おら。」
警備兵のクリスが小汚ない布を出してきた、涙をふけというらしい、余計に汚れそう。
「私はステファニーというの。」
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