お妃さま誕生物語

すみれ

文字の大きさ
上 下
7 / 96
本編

1週間

しおりを挟む
「1週間内にこの国を出ます、その前にグレネド邸で結婚式をあげましょう。
家族に花嫁姿をみせてあげなさい。
私が見たいのです。」
リヒトール様が私の手を取り告げた。
「1週間!」
声を荒げたのは父だ。

「女性を美しくさせるのはお金がかかるのです、男爵令嬢しかり。
王太子の目にとまるようなドレスや宝飾となるといかほどか。
男爵家にはさるところから、援助が続いてたのですが、それは、すでに打ち切られました。
王太子が彼女から目が覚めるのは、案外早いかもしれません。」
リヒトール様がまるで全て知っているかのように語る。



この国から出るのは7日後となった。
父と兄がごねて、最大にひきのばしたのだ。
式は6日後になったけど、王家や他の貴族にばれると心配していたら、
「5日後早朝に、ブリューダル王国で革命の火ぶたがきられるかもしれません。
あちらでは、威圧された国民達の不満があふれかえってます、彼らは生きるために、現状を変えるしかないのです。
早馬で、この国に情報が届くの1日かかります。
国境を接するこの国でも混乱が起きるはずです、この混乱に乗じて結婚式と国外への逃避をしましょう。」
まるで私のために革命が起きるような情報だ。
マクレンジー商会おそるべし!

父も兄も私も同じことを考えている、きっとそれは当たっているのだろう。
5年の準備と言っていた、それはどこまでの準備なんだろう。

リヒトール様は私兵を公爵邸に配備して帰って行った。


王家も今夜は大変な夜を迎えているはずだ、王女のいない王家ではずいぶんかわいがられた。
アランだって決してできが悪いわけじゃない。
ちょっと情熱的なとこがあるだけで、私がもっと交流をしてたら、違っていたのかもしれない。

17年暮らした公爵家を離れる。
しかも逃げるように、国外逃亡だ。
このまま、アランと結婚して王太子妃なるかもしれないと覚悟してた。
そうなったら、それが運命だったと国に尽くそうと思ってた。
王妃教育の10年は無駄になるけど、あれがあったからリヒトール様に会えた。

小娘だけど、恋の喜びも、恋の悲しみも知っている、今夜はなかなか眠れない。
リヒトール様の様々な噂を聞いた、恐い話も、たくさんの女性と浮名を流してることも。
誰もの恋がかなうことわけじゃない、私は幸運なのだ、でも思ってしまう。
私のどこがよかったの?
私は他の女の人と違うの?
女性問題で派手な噂の多い人だから捨てられる不安におびえてしまうけど、好きな人にプロポーズされたんだ自信を持ちたい。



翌朝、父は王宮に呼び出された。
王から謝られたけど、牽制けんせいもされたそうだ。
「シーリアには、ゆっくり養生して、心のケアをしてほしい。アランもきっと気づくから、見捨てないでやって欲しい。シーリアを側妃などとんでもない、正妃にしか考えてない。
シーリアを我が娘と思って成長を見守ってきたんだ。」
それでも、父はねばって婚約の取り消しを勝ち取ってきた。
「大勢の目の前で婚約破棄を言い渡され、倒れたシーリアには、このまま婚約を続けるほど周りの目にさらされ、つらいものはない。シーリアの為に、ともかく婚約をなくしてほしい。
婚約破棄を言いわたされても、しがみついてると思われることにシーリアは耐えれません、娘をもつ親としても許せません。
アランにいろいろ思うところはあるが、小さい頃から知っている甥だし、今後のことはその時に話し合いましょう。」


「昨日、シーリアを運んだのは、グレネド伯爵だったようだが。」
王が含むところがあると言わんばかりに聞いてくる。
多分、一国の王より忙しいマクレンジー商会長が頻繁ひんぱんにセルジオ王宮に出てくる、というのは有名なことで、何かあると、セルジオ王国でも近隣諸国でも思われていた。
「お礼を用意いたしました。」
それは娘ですとは、口が裂けても言えないが。

「王妃様の容態はいかがですか?」
「昨日すぐに気が付いたが、ショックが大きくって今も静養しておる。
アランも部屋で謹慎している、昨日の建国記念パーティーには各国の要人が来ていた、あそこだからこそ、確実に婚約破棄ができると踏んだんだろうが、王太子としての信用は地に落ちた。
アランの噂は報告されていたが、遊びも結婚までのものだと思っていた。」
そこまでして、手に入れたい程の女かと思うが、人の好みはそれぞれだ。
男爵令嬢の顔を思い出そうとするが、特筆すべきほどの美人ではなかったぐらいしか思い出せない。

デュバル公爵は、その場で王に婚約解消の書類にサインをさせたので、即日に正式なものとなった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです

古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。 皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。 他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。 救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。 セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。 だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。 「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」 今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

処理中です...