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ブドウ畑のある町
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結局、男達と町のブドウ畑を見に行く事になったアレクセイは、シンシアが心配でならない。
自分がいない間に男達が忍んで来るのではないかと不安にかられる。
家には厳重に魔法で防御をかけた。黄金竜の魔力を破れるものなど、たくさんはいない。しかもアレクセイはその中でも魔力が秀でている。それでもシンシアに関しては不安がつのる。
父が母のことを心配するのがわかる、父はもっと顕著であるが、と思うと我ながら笑えてくる。
父は番である母に会うまで3000年かかった、父の行動は当たり前の結果だと理解できる。
ブドウの立ち枯れは思っていたよりも被害が大きかった。
もっと早く手を打たなかったのか、と思うばかりだ。
「領主様が薬を撒いてくださったが、ダメだったんだよ。」
「薬?
これは何の病気かわかっているのか?」
「イヤ、それはわからないが薬代も払ったし。」
領民の畑を守るのに金を取ったのか、ブドウが枯れても税金もとるだろうに、アレクセイは呆れてしまった。ここの税金は他地方より高いのだ。
強欲な男ほど女が好きな事が多い、アレクセイはイヤな予感に、絶対にここの領主にシンシアを見せてはならないと思うばかりだ。
「これは根腐れ病だと思うぞ、葉に薬をかけるより根っこだ。
ほっとけばどんどん広がる伝染病だ、炭の灰はあるか?」
「あるが、どうするんだ?」
「炭の灰のアルカリで土のペーハーを変える。」
言ってるアレクセイも農民達が理解できるとは思っていない。これはマリコの記憶から得た知識だ、この世界ではない。
「ともかく、炭の灰を立ち枯れしている木の側で、まだ生きている木の根の周りに撒くんだ。」
ほら早く用意しろ、と男達を追い払うと、アレクセイは後ろを振り向いた。
「そこにいる奴出て来い。」
「ほお、俺の魔法を破るとは大した奴だな。
お前が町で噂の色男か。」
出て来たのは鬼族の男だろうか、大柄な体で異質な空気を生んでいる。
これが領主の一族か、獣人の農民達が立ちうちできるはずもないな、と納得する。
だが、小物だ、相手の力量も解らないとは。アレクセイは魔力のほとんどを隠している、その気配もわからないらしい。
「悪い事は言わん、連れの女を差し出せ。町を歩く姿を見た、天女かと思うほど美しかった。」
ぬけぬけとシンシアを差し出せという男。
ニヤリとアレクセイが笑う。
「バカか、アレは私の家族だ。」
アレクセイが自分を言うのが僕から私に変わっている、アレクセイも大人になったのだ。
その時になって男はアレクセイが醸し出す気配に気づく。
アレクセイの美貌に潜む影が現れると、男は目を見張った。
「お前は誰だ。」
「鬼風情に名乗る言われはない。」
アレクセイが指を動かすと、鬼が一瞬で縦に斬れ炎も上がらずに燃えた。
先程の3人の男達も炭の灰を持って戻って来た。
「そこにも灰が出来ているから一緒に撒いてくれ。」
アレクセイの指示に抵抗もなく従う男達、そこは鬼がいた場所だったが灰の塊があるだけだ。
アレクセイは立ち枯れした木を魔力で燃やし、領主の館に向かった。
破壊竜の気持ちがわかるな、怒りでどうにかなりそうだ、一瞬で全てを燃やしてしまいたい。
シンシアを差し出せ、だと。
領主の館は火の手があがると、あっという間に館全てを包み、誰も逃げきれなかった。
町の噂になるだろうが、それもいつかは忘れられる。
アレクセイは家が見えてくると、まず魔力でかけた防御のチェックをする、自分のいない間に誰か来てはいないか、無理やり入ろうとした賊はいないか。
家の防御はどこもほころびもなく、リビングのソファで寝ていたシンシアがアレクセイが帰って来た事に気が付いたようだ。
嬉しそうに起き上がり、アレクセイに駆けよって来るのを見ると心の中の怒りが静まっていくのがわかる。
「いい子にしていたようだね。」
「もちろんよ、お腹すいてない?
ローストポークを作ってあるの。」
「それは美味しそうだね。」
ウフフ、と笑うシンシアは美しい。きっとこれからも油断できないだろう。
「いい香りだ。」
「でしょ!席に座って待ってて、すぐにお皿を用意するから。」
シンシアがキッチンに向かうのを見送りながらアレクセイは呟く。
シンシア、君以上にいい香りはないよ、甘い香りは繁殖期の証だ。
シンシアは一カ月経っても繁殖期は終わらなかったが、魔力は安定している。
母親のマリコと同じように繁殖期が続くのだろう。
竜と人間のハーフのシンシアは人間の血が濃いのかもしれない、アレクセイは間違いなく竜の血が濃い。
「そろそろ出発しようか。」
アレクセイがシンシアを抱き上げ馬の背に乗せると自分はその後ろに乗り手綱を持った。
次に戻ってくる時はブドウの収穫シーズンになるはずだ。
ジョシュアと関脇を呼んで手伝わそう、きっと喜んで来るだろう。
自分がいない間に男達が忍んで来るのではないかと不安にかられる。
家には厳重に魔法で防御をかけた。黄金竜の魔力を破れるものなど、たくさんはいない。しかもアレクセイはその中でも魔力が秀でている。それでもシンシアに関しては不安がつのる。
父が母のことを心配するのがわかる、父はもっと顕著であるが、と思うと我ながら笑えてくる。
父は番である母に会うまで3000年かかった、父の行動は当たり前の結果だと理解できる。
ブドウの立ち枯れは思っていたよりも被害が大きかった。
もっと早く手を打たなかったのか、と思うばかりだ。
「領主様が薬を撒いてくださったが、ダメだったんだよ。」
「薬?
これは何の病気かわかっているのか?」
「イヤ、それはわからないが薬代も払ったし。」
領民の畑を守るのに金を取ったのか、ブドウが枯れても税金もとるだろうに、アレクセイは呆れてしまった。ここの税金は他地方より高いのだ。
強欲な男ほど女が好きな事が多い、アレクセイはイヤな予感に、絶対にここの領主にシンシアを見せてはならないと思うばかりだ。
「これは根腐れ病だと思うぞ、葉に薬をかけるより根っこだ。
ほっとけばどんどん広がる伝染病だ、炭の灰はあるか?」
「あるが、どうするんだ?」
「炭の灰のアルカリで土のペーハーを変える。」
言ってるアレクセイも農民達が理解できるとは思っていない。これはマリコの記憶から得た知識だ、この世界ではない。
「ともかく、炭の灰を立ち枯れしている木の側で、まだ生きている木の根の周りに撒くんだ。」
ほら早く用意しろ、と男達を追い払うと、アレクセイは後ろを振り向いた。
「そこにいる奴出て来い。」
「ほお、俺の魔法を破るとは大した奴だな。
お前が町で噂の色男か。」
出て来たのは鬼族の男だろうか、大柄な体で異質な空気を生んでいる。
これが領主の一族か、獣人の農民達が立ちうちできるはずもないな、と納得する。
だが、小物だ、相手の力量も解らないとは。アレクセイは魔力のほとんどを隠している、その気配もわからないらしい。
「悪い事は言わん、連れの女を差し出せ。町を歩く姿を見た、天女かと思うほど美しかった。」
ぬけぬけとシンシアを差し出せという男。
ニヤリとアレクセイが笑う。
「バカか、アレは私の家族だ。」
アレクセイが自分を言うのが僕から私に変わっている、アレクセイも大人になったのだ。
その時になって男はアレクセイが醸し出す気配に気づく。
アレクセイの美貌に潜む影が現れると、男は目を見張った。
「お前は誰だ。」
「鬼風情に名乗る言われはない。」
アレクセイが指を動かすと、鬼が一瞬で縦に斬れ炎も上がらずに燃えた。
先程の3人の男達も炭の灰を持って戻って来た。
「そこにも灰が出来ているから一緒に撒いてくれ。」
アレクセイの指示に抵抗もなく従う男達、そこは鬼がいた場所だったが灰の塊があるだけだ。
アレクセイは立ち枯れした木を魔力で燃やし、領主の館に向かった。
破壊竜の気持ちがわかるな、怒りでどうにかなりそうだ、一瞬で全てを燃やしてしまいたい。
シンシアを差し出せ、だと。
領主の館は火の手があがると、あっという間に館全てを包み、誰も逃げきれなかった。
町の噂になるだろうが、それもいつかは忘れられる。
アレクセイは家が見えてくると、まず魔力でかけた防御のチェックをする、自分のいない間に誰か来てはいないか、無理やり入ろうとした賊はいないか。
家の防御はどこもほころびもなく、リビングのソファで寝ていたシンシアがアレクセイが帰って来た事に気が付いたようだ。
嬉しそうに起き上がり、アレクセイに駆けよって来るのを見ると心の中の怒りが静まっていくのがわかる。
「いい子にしていたようだね。」
「もちろんよ、お腹すいてない?
ローストポークを作ってあるの。」
「それは美味しそうだね。」
ウフフ、と笑うシンシアは美しい。きっとこれからも油断できないだろう。
「いい香りだ。」
「でしょ!席に座って待ってて、すぐにお皿を用意するから。」
シンシアがキッチンに向かうのを見送りながらアレクセイは呟く。
シンシア、君以上にいい香りはないよ、甘い香りは繁殖期の証だ。
シンシアは一カ月経っても繁殖期は終わらなかったが、魔力は安定している。
母親のマリコと同じように繁殖期が続くのだろう。
竜と人間のハーフのシンシアは人間の血が濃いのかもしれない、アレクセイは間違いなく竜の血が濃い。
「そろそろ出発しようか。」
アレクセイがシンシアを抱き上げ馬の背に乗せると自分はその後ろに乗り手綱を持った。
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