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第五章 魔剣と魔人

第1話 青い瞳、銀の髪

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「セナ!」
「アーシャさん! ケンタローさん!」

 広場に辿り着くと赤布と数人の男。そして一人の女性が視界に入る。
その後方、ちょうど広場の中央あたりにはセナと、ジンメイやバイハド村の住人達が一か所に固まるように集められている。
さらにその人達を囲むように、男達が立ち並ぶ。
赤布の男以外にも何人か見た顔がいた。
やはりこいつらはあの時の盗賊だ。

 今ここから炎ビームを撃てば赤布や盗賊どもを簡単に倒せる。
しかしセナや村の人々も巻き込んでしまうだろう。
ちくしょう、位置関係が悪い。
何とかしてセナ達と盗賊どもを引き離さなければ。

 素早く冷静に状況判断をするアアアーシャだったが、その思考とは別に、正面にいる一人の女性が気になって仕方なかった。

 その女性はものすごく美人でやたらと露出の高い格好をしていて、しかもちょっと宙に浮いていた。
さらには椅子にでも座るように空中に腰掛け、白く長い足を組んでいる。

「……えーとアアアーシャさん……あの人、魔人では……」

 アアアーシャだけでなく、健太郎もその女性を凝視してしまう。

 月の光のような青い瞳。雪のように真っ白な銀髪。
触れることを拒むような冷たい美しさは、それでも目をそらすことを許さない魅惑の輝きを放っているのだ。

「……ああ、魔人だよな、あいつ……」

 身にまとう着衣は同じくベリーダンスで見るようなオリエンタル風の衣装。
やはり方も腹もガッツリ露出しているが、この寒さの中で平然としている。
アアアーシャと違うのは胸の部分がサラシではないことだ。
全て同じ素材の衣装を着ている。

 二人の視線に気付いた女性は笑顔で手を振ってきた。
首飾りや腕輪、ピアスなどの装飾品も多く身に着けていて、彼女が動くたびにそれらが揺れて綺麗な音を出す。

「……手を振っていますけど……お知り合いじゃないんですか」
「知らん。アタシ様に魔人のダチはいねぇし」
「よく思い出してください。アアアーシャさんが友達だと思っていても向こうはそうじゃないかもしれないじゃないですか」
「悲しいな! つーか逆だろオイ!」

 美貌や服装などアアアーシャとの共通点も多いが、やはり宙に浮いているのが決定的だ。
間違いなく魔剣の魔人だろう。
一体どんな力を持っているか。
マホルは誰なのか。
厄介事が増えた感じだ。
 
 色々と気になる事はある。
だが今はセナ達を助けることに集中しなくては。

「そこの赤いヤツ! さっさとみんなを解放しな! そしたら愛刀の恨みは忘れてやるよ!」
「……アアアーシャさん、それ今言いますか……?」
「うっせぇな! こんな状況じゃなきゃぶっ殺してやるところだぞ!」

 魔人はひとまず無視して、アアアーシャは盗賊のリーダーと思われる赤布と会話を試みた。

「……ふふっ、よく来てくれた。会えて嬉しいよ」
「あぁん?」

 しかし答えたのは赤布ではなく、その前にいた若い男だった。
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