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第四章 バイハド村
第6話 浮いている女
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村役場にある一室。
そこにジンメイは閉じ込められた。
ドアの前には盗賊が二人、見張りとして置かれている。
他の仲間とは引き離されてしまった。
村のみんなはどうなったのだろうか。
掴まってはしまったが、こうして考える時間を得る事ができたのは幸いだ。
ジンメイは考える。
広場で盗賊たちに指示を出していたのは頭に赤い布を巻いた男。
「お前ら、いつまでも笑ってねぇでさっさとこいつらを捕まえろ!」
「へいっ!」
おそらくあの赤布がリーダーだ。
そしてやはりあれは笑い声だったのだ。
赤布を倒すことができればまだこちらにもチャンスはある。
そのためには何とかここから抜け出し、仲間と合流しなくては……。
考えがまとまりかけた時、唐突にドアが開いた。
入ってきたのは一人の若い男。
「やめておきなよ、村長さん」
「なに?」
「アンタ、まだ諦めていないって顔してるからさ。心配になってね」
警戒するジンメイ。
その男の持つ雰囲気や服装は他の盗賊と比べると大きく異なるが
ここに入ってこれたということは当然、奴らの仲間のはずだ。
「この程度で済んだんだしさ、もういいじゃん」
「……この程度だと!?」
その若い男は何でもないような口調で言うがジンメイは聞き流すことなどできない。
皆で苦労してここまで造ってきた村を一瞬で壊されたのだ。
「何がこの程度だ! 我らの村をこんな姿にしておいて!!」
「熱いねぇ。でもここは諦めたフリをして反抗の意思がないことを装った方が賢いんじゃないか?」
今にも飛びかかりそうな勢いで吠えるジンメイだったが、若い男は動じた様子もない。
「でもさ、犠牲者は一人も出ていないんだよ?」
「……なに!?」
「ああそうか、アンタは村の人のこと、分からないか」
「……」
「本当だ。怪我をした人はいるけれど死んだ人はいない」
「……口では何とでも言える」
「おや、今度はちゃんと冷静じゃないか」
まぁ今は信じてもらうしかないんだけど、と男は肩をすくめる。
「村なんてものはまた作ればいい。家は建てればいい。俺は人の命が一番大事だと思うなぁ」
「……それは……」
「アンタが抵抗すれば、アンタ自身が、もしくは仲間の誰かが、命を落とすかもしれないよ?」
命が一番大事。
それはその通りだ。
「……お前たち盗賊どもが我らを殺さないという保証はないだろう」
「いや、そんなつもりはない。アンタがこれ以上何もしなければ誰も死なない。傷つかないんだ」
男の言葉は妙な説得力があった。
これ以上の抵抗は、かえって村人の為にならない。
それを信じてしまった。
ジンメイ自身もそう思ってしまった。
「……っ!」
「分かってくれたようだね。村長さん」
男は満足そうに頷くと、後方に声をかける。
「これでまた一つ願いが叶ったよ、ルルルシア」
「そのようね、ゼシィ」
「!?」
いつからそこにいたのか、ジンメイは全く気が付かなかった。
ものすごく美人でやたらと露出の高い格好をしていて、しかもちょっと宙に浮いているその女性に。
「……は? 浮いている?」
思わず二度見するが、見間違いなどではなかった。
その女性は確かにちょっと宙に浮いていた。
一見すると普通に立っている。が、その足は地に着いていない。
「あーー満たされた! ルルルシア、そっちはどうだ?」
「……あああ、いいわ、いいわぁゼシィ。また私も強くなれたわ……」
恍惚の表情を浮かべる女。
体も小刻みに震えている。
「な、なんだ? なんなんだお前らは!? まさかその女は……!」
「俺はゼシィ・ホーブン」
問わずにいられないジンメイに、男は名前だけ答えた。
「誰も殺すわけがないよ。全て俺のもの。全て俺の所有物。一つたりとも無駄になんてしないからよ」
そして満足げに体を伸ばすと、ゼシィはニヤリと笑った。
そこにジンメイは閉じ込められた。
ドアの前には盗賊が二人、見張りとして置かれている。
他の仲間とは引き離されてしまった。
村のみんなはどうなったのだろうか。
掴まってはしまったが、こうして考える時間を得る事ができたのは幸いだ。
ジンメイは考える。
広場で盗賊たちに指示を出していたのは頭に赤い布を巻いた男。
「お前ら、いつまでも笑ってねぇでさっさとこいつらを捕まえろ!」
「へいっ!」
おそらくあの赤布がリーダーだ。
そしてやはりあれは笑い声だったのだ。
赤布を倒すことができればまだこちらにもチャンスはある。
そのためには何とかここから抜け出し、仲間と合流しなくては……。
考えがまとまりかけた時、唐突にドアが開いた。
入ってきたのは一人の若い男。
「やめておきなよ、村長さん」
「なに?」
「アンタ、まだ諦めていないって顔してるからさ。心配になってね」
警戒するジンメイ。
その男の持つ雰囲気や服装は他の盗賊と比べると大きく異なるが
ここに入ってこれたということは当然、奴らの仲間のはずだ。
「この程度で済んだんだしさ、もういいじゃん」
「……この程度だと!?」
その若い男は何でもないような口調で言うがジンメイは聞き流すことなどできない。
皆で苦労してここまで造ってきた村を一瞬で壊されたのだ。
「何がこの程度だ! 我らの村をこんな姿にしておいて!!」
「熱いねぇ。でもここは諦めたフリをして反抗の意思がないことを装った方が賢いんじゃないか?」
今にも飛びかかりそうな勢いで吠えるジンメイだったが、若い男は動じた様子もない。
「でもさ、犠牲者は一人も出ていないんだよ?」
「……なに!?」
「ああそうか、アンタは村の人のこと、分からないか」
「……」
「本当だ。怪我をした人はいるけれど死んだ人はいない」
「……口では何とでも言える」
「おや、今度はちゃんと冷静じゃないか」
まぁ今は信じてもらうしかないんだけど、と男は肩をすくめる。
「村なんてものはまた作ればいい。家は建てればいい。俺は人の命が一番大事だと思うなぁ」
「……それは……」
「アンタが抵抗すれば、アンタ自身が、もしくは仲間の誰かが、命を落とすかもしれないよ?」
命が一番大事。
それはその通りだ。
「……お前たち盗賊どもが我らを殺さないという保証はないだろう」
「いや、そんなつもりはない。アンタがこれ以上何もしなければ誰も死なない。傷つかないんだ」
男の言葉は妙な説得力があった。
これ以上の抵抗は、かえって村人の為にならない。
それを信じてしまった。
ジンメイ自身もそう思ってしまった。
「……っ!」
「分かってくれたようだね。村長さん」
男は満足そうに頷くと、後方に声をかける。
「これでまた一つ願いが叶ったよ、ルルルシア」
「そのようね、ゼシィ」
「!?」
いつからそこにいたのか、ジンメイは全く気が付かなかった。
ものすごく美人でやたらと露出の高い格好をしていて、しかもちょっと宙に浮いているその女性に。
「……は? 浮いている?」
思わず二度見するが、見間違いなどではなかった。
その女性は確かにちょっと宙に浮いていた。
一見すると普通に立っている。が、その足は地に着いていない。
「あーー満たされた! ルルルシア、そっちはどうだ?」
「……あああ、いいわ、いいわぁゼシィ。また私も強くなれたわ……」
恍惚の表情を浮かべる女。
体も小刻みに震えている。
「な、なんだ? なんなんだお前らは!? まさかその女は……!」
「俺はゼシィ・ホーブン」
問わずにいられないジンメイに、男は名前だけ答えた。
「誰も殺すわけがないよ。全て俺のもの。全て俺の所有物。一つたりとも無駄になんてしないからよ」
そして満足げに体を伸ばすと、ゼシィはニヤリと笑った。
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