20 / 54
第二章 美少女剣士
第10話 馬車が欲しい
しおりを挟む
ーマキの店ー
「マキぃ~~ちょいと相談なんだけどさぁ」
「……なるほど、馬車かぁ。うちは牧場もやってるし馬は譲ってあげてもいいけど。荷車の方は仕事で使うからなぁ」
「他に馬車が手に入りそうな所はないのですか?」
そう質問してはいるが、この小さな宿場町で馬車の余剰があるとは健太郎も思っていなかった。
「無理じゃないかしら。どこも馬車は仕事に必要だからねぇ」
「……そうですか……」
乗り合い馬車も今日の最終便が行ってしまった。
今日、この宿場町を出発するのであれば何かしらの移動手段を見つけなければならない。
「……アアアーシャさんが無計画に動くからですよ」
「わりぃ……いい考えだと思ったんだよ」
ふと、一台の荷車が健太郎の目に止まった。
マキの店の隣、あの小屋は納屋だろうか。その扉の前に荷車が無造作に置かれている。
二輪のリヤカーみたいな簡素な造りのものだ。
車輪が外されていて、車体も所々痛んでいるように見えた。
「あれは使えないんですか」
「ええ、見ての通り。残念ながら壊れてるの。そのうち直すつもりだったんだけどね」
他にアテもないし、あるかどうか分からないものを探して歩き回るのも時間の無駄だ。
それならば。
「……ではあそこに置いてある荷車と馬を一頭、譲ってもらえませんか」
「えぇ? あの荷車なら別に構わないけど」
「どうすんだよ。まさか修理すんのか?」
「はい。直しましょう」
「オマエ、んなことできんのかよ!?」
「……ええ、前に仕事で似たような事をやってましたから」
壊れているとはいえ車輪が外れているとか側板が無いとかそんな程度だ。
荷車の構造は想像できるので、おそらく問題はない。
「け、ケンタローさんっ! セナも手伝います!」
セナが手伝いを名乗り出る。
「……お願いします、セナさん」
「はいっ!」
「工具ならうちのを使ってよ!」
「……ありがとうござます、マキさん」
「しゃーねーな、アタシ様も手伝ってやるぜ!」
「結構です」
「なんでだよ!」
やる気満々で指をポキポキ鳴らしていたアアアーシャは納得できない。
「あなた破壊と殺戮の魔人でしょう? 直すより壊しそうなんですが」
「破壊と殺戮はやめろっつったろ! つーか偏見だ! 魔人差別だ!」
「……では村に持っていく食料を購入し、運べるように箱詰めする準備をお任せしていいですか」
「おっしゃぁ! やってやるぜ!」
どうにも言動がいちいち物騒と言うか、やはりアアアーシャは破壊のイメージが強いのだった。
「……ふう」
しばらくして
「……できました」
「完成ですっ!」
「早いな! どれどれ……って幌ついてるじゃねーか!」
「これがあの荷車!? 器用なのねぇ健太郎クン」
「もう修理というか改造だろこれ。四輪になってるしよ!」
二輪の簡素な荷物運び用の荷車だったが、車輪を増やし幌をつけ御者台を設置。
人も物資も運べる馬車に作り変えた。
アアアーシャが興味深そうに荷車の上やら下やらを覗きこんでいる。
「数日かかる移動なら日差しや雨を防げるようにしたいですから。食料を運ぶのであれば尚更です」
「健太郎……!」
「……まぁ、食料を運ぶという考えそのものは僕も賛成ですので……」
「ありがとな!」
またアアアーシャが乱暴に肩を組んできた。
笑顔も間近で見ると魅力が増す。
「……では僕は馬車の修理で疲れ果てたので少し休みます。タコを倒したら起こしてください」
「そこは着いたら、だろうが! 全部終わるまで寝てるつもりか!」
御者台にはセナとアアアーシャが座る。
荷台には食料を積めるだけ積み、スキマに健太郎が収まった。
「よーし、出発だ! 馬と荷車、あんがとなマキ!」
「ああ、気を付けてね。今度は亭主がいる時に遊びに来てよ!」
「マキぃ~~ちょいと相談なんだけどさぁ」
「……なるほど、馬車かぁ。うちは牧場もやってるし馬は譲ってあげてもいいけど。荷車の方は仕事で使うからなぁ」
「他に馬車が手に入りそうな所はないのですか?」
そう質問してはいるが、この小さな宿場町で馬車の余剰があるとは健太郎も思っていなかった。
「無理じゃないかしら。どこも馬車は仕事に必要だからねぇ」
「……そうですか……」
乗り合い馬車も今日の最終便が行ってしまった。
今日、この宿場町を出発するのであれば何かしらの移動手段を見つけなければならない。
「……アアアーシャさんが無計画に動くからですよ」
「わりぃ……いい考えだと思ったんだよ」
ふと、一台の荷車が健太郎の目に止まった。
マキの店の隣、あの小屋は納屋だろうか。その扉の前に荷車が無造作に置かれている。
二輪のリヤカーみたいな簡素な造りのものだ。
車輪が外されていて、車体も所々痛んでいるように見えた。
「あれは使えないんですか」
「ええ、見ての通り。残念ながら壊れてるの。そのうち直すつもりだったんだけどね」
他にアテもないし、あるかどうか分からないものを探して歩き回るのも時間の無駄だ。
それならば。
「……ではあそこに置いてある荷車と馬を一頭、譲ってもらえませんか」
「えぇ? あの荷車なら別に構わないけど」
「どうすんだよ。まさか修理すんのか?」
「はい。直しましょう」
「オマエ、んなことできんのかよ!?」
「……ええ、前に仕事で似たような事をやってましたから」
壊れているとはいえ車輪が外れているとか側板が無いとかそんな程度だ。
荷車の構造は想像できるので、おそらく問題はない。
「け、ケンタローさんっ! セナも手伝います!」
セナが手伝いを名乗り出る。
「……お願いします、セナさん」
「はいっ!」
「工具ならうちのを使ってよ!」
「……ありがとうござます、マキさん」
「しゃーねーな、アタシ様も手伝ってやるぜ!」
「結構です」
「なんでだよ!」
やる気満々で指をポキポキ鳴らしていたアアアーシャは納得できない。
「あなた破壊と殺戮の魔人でしょう? 直すより壊しそうなんですが」
「破壊と殺戮はやめろっつったろ! つーか偏見だ! 魔人差別だ!」
「……では村に持っていく食料を購入し、運べるように箱詰めする準備をお任せしていいですか」
「おっしゃぁ! やってやるぜ!」
どうにも言動がいちいち物騒と言うか、やはりアアアーシャは破壊のイメージが強いのだった。
「……ふう」
しばらくして
「……できました」
「完成ですっ!」
「早いな! どれどれ……って幌ついてるじゃねーか!」
「これがあの荷車!? 器用なのねぇ健太郎クン」
「もう修理というか改造だろこれ。四輪になってるしよ!」
二輪の簡素な荷物運び用の荷車だったが、車輪を増やし幌をつけ御者台を設置。
人も物資も運べる馬車に作り変えた。
アアアーシャが興味深そうに荷車の上やら下やらを覗きこんでいる。
「数日かかる移動なら日差しや雨を防げるようにしたいですから。食料を運ぶのであれば尚更です」
「健太郎……!」
「……まぁ、食料を運ぶという考えそのものは僕も賛成ですので……」
「ありがとな!」
またアアアーシャが乱暴に肩を組んできた。
笑顔も間近で見ると魅力が増す。
「……では僕は馬車の修理で疲れ果てたので少し休みます。タコを倒したら起こしてください」
「そこは着いたら、だろうが! 全部終わるまで寝てるつもりか!」
御者台にはセナとアアアーシャが座る。
荷台には食料を積めるだけ積み、スキマに健太郎が収まった。
「よーし、出発だ! 馬と荷車、あんがとなマキ!」
「ああ、気を付けてね。今度は亭主がいる時に遊びに来てよ!」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。


凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる