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第一章 魔剣で魔人で美人で超ヤンキーで。

第7話 ヤンキー魔人の特技とは

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「えええ……」

 いかにも「何でも叶えてやるよ!」的な雰囲気を出しておいて、何だこれは。
これでは「願いを叶えてくれる」というよりは「願いが叶うように協力してくれる」と言った方が正しい気がする。
基本、自分でも努力すれば何とかなるモノばかりだ。
 
 しかも料理や恋人に関してはどうしても暴力的手段を用いる気がして仕方がないのだが。
お金に関しては普通に働くより圧倒的に効率が良いので、何か願うなら金銭関係が一番良いのかもしれない。

「なんつーかオマエ、平和な願いばっかだな」
「……そうでしょうか。人の願いなんて結局こんなものだと思いますよ」
「せっかくアタシ様という魔人に願うんだぜ? オマエの場合なら会社をぶっ壊したいとかムカつく上司をぶっ殺したいとか、あんじゃねーか?」

 アアアーシャは何かを潰すように拳を握り、ニヤリと笑った。
そういう能力なのだから当然なのかもしれないが、この魔人はホント物騒な願いばかり勧めてくる。

「……世界征服よりはマシですが……でも殺しはちょっと……」

 仕事を始めたばかりのころはそういう感情もあったが、今となっては思うことは何もない。
だがそれは憎しみや恨みが消えたのではなく、ただ感情がマヒしているだけだ。

 それはともかく、思わぬことで魔剣の魔人が叶えられる願いや能力を知ることになった。
しかしこの量の魔石をどうやって運ぶか問題は解決していない。

「……魔剣の能力では魔石を運べないことが分かったわけですが……」
「そりゃそうだ。魔剣だからな」
「先ほど基本的には、と言いましたよね。アアアーシャさんは他にも出来る事があるのでは?」 

 魔獣を呼び寄せる"スキル"も使っていた。
それは炎の魔剣とは系統の異なる能力に思える。

「あるぜ! 挑発・威圧・ヤキ入れ・夜露死苦・喧嘩上等!」
「……なんですかそれは……」
「魔剣の能力ではなく魔人としての力、つまりアタシ様のオリジナルスキルっつーの? そんな感じだ!」

 オリジナルスキルというかほとんどヤンキー用語、ヤンキーの特技である。
"挑発"や"威圧"はスキルっぽい印象だが、後半のはどんな効果があるのか。
しかし名前からして魔石を運ぶのに役立つものではないだろう。

「さっきは"挑発"スキルを使ってたんだ。これの発動中は魔獣がひょいひょい寄ってくるんだよ。狩りに便利だよな」
「……なるほど」

 つまり魔剣と魔人はそれぞれ別の能力を持っている。
炎の魔剣『エゲスヤチメ』は炎ビームのような破壊や殺戮系の力。
魔人アアアーシャはヤンキーのような"スキル"が使えるというわけだ。
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