初恋の先へ

咲 カヲル

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真面目な顔をしているアスベルトを見て、モーガンが苦笑いを浮かべ始めると、騎士団長の手が、その頭に乗せられた。

「昔、サイフィスに行った事があるが、その頃のサイフィス騎士団は、強さを求める者を同士だと呼び、他国の人間も受け入れる程、貴族でありながらも、とても気さくな人達だった。だが、いつしか、貴族という身分に、自らを磨く事をやめ、騎士である誇りが失われた。あの国で、唯一、タラス公爵だけが、真の騎士と呼べよう」

モーガンが、真っ直ぐ見つめると、騎士団長は、困ったように、目尻を下げながら、瞳を細めた。

「彼に教えを願えないのかい?」

「確かに、僕が願えば、タラス公は、喜んで、その胸を貸してくれるでしょう。でも、今のサイフィスの騎士達をまとめる為、タラス公自身、とても忙しい上、その子息が、それを許さない。彼は、王子である僕を求めてる。僕自身が強くなれば、彼の思い描いている姿になることが難しくなる。彼は、弱い王を守る強い騎士の自分でいたいのです。だから、必ず、彼は、一緒に強くあろうとすることを拒む」

モーガンが顔を向けると、アスベルトは、寂しそうに瞳を細めた。

「僕は、そんなデュラベル家臣よりも、共に強くなろうと、手を引いてくれるアスベルトを選びたい。たとえ、それが、父上の意志に背き、母上を失望させたとしても、僕は、アスが、指差してくれる方に向かう。だから、タラス公ではなく、皆さんに教えてほしい。アスが、誇っているウィルセンの指導者達から、たくさんのことを学ばせてほしい。だから、よろしくお願いします」

モーガンが頭を下げると、騎士達の瞳が、キラキラと輝いた。

「頭を上げて。そこまで言われたら、我々は、断れないよ」

モーガンが頭を上げると、騎士団長は、ニカッと歯を見せるように笑った。

「それに、坊っちゃんが、そんな風に言ってるなら、ウィルセンの誇りに懸けてやらねばな」

「やったな。ガン」

アスベルトが、肩を組むと、モーガンは、嬉しそうに、ほんのり頬を赤くしながら、ニコッと微笑んだ。

「それじゃ、充分に体を動かしたから、次は、ゆっくり、体を柔らかくしよう」

「はい」

騎士達と一緒に、柔軟運動を始めると、アスベルトよりも、柔らかいモーガンを見て、騎士団長は、顎を擦りながら、首を傾げた。

「では、次。体を解したら、剣を持って、予行練習。二人は、こちらへ」

〈キン!カン!カキィン!〉

騎士達が剣を抜いて、それぞれから、鉄のぶつかり合う音が響く中、騎士団長は、モーガンとアスベルトを手招きした。

「まず、今使ってる剣は、刃を潰しただけで、本物と全く同じ重さにしてある。真剣だと思って、扱うように」

モーガンが鞘から抜いた剣を見つめ、キラキラと瞳を輝かせた。

「これが真剣の重さなんだ」

「へ?ガンって、真剣触ったことないの?」

「ないよ」

「ウソだ~。いつも腰に下げてるでしょ」

「あれは飾り。形だけでもって、お祖母様がくれたんだよ」

「それは難儀で」

「僕が真剣を持っても、意味がないですから」

「それって、王室として、どうなのって話なんだけど」

「サイフィスでは、子供に剣を贈ると、後継者として認めたってことになるんだよ。デュラベルの剣も、勝手に自分で買ったやつで、タラス公からは贈られてないんだ」

「それ、ダメなんじゃないの?」

「本当はね?でも、デュラベルは、誰の言うことも聞かないし、決めたら反発してでも、突き通すから」

「我儘放題な愚息ってところか。それでよく、騎士になろうとしてるもんだ」

「彼は、ただタラス公の後を継ぐのは、自分だと思ってるからでしょう」

「なんとも単純」

「アスなら分かるでしょ?周りが言うから、そうなんだって」

「そうなんだよなぁ。ほんと、何も考えてない感じ」

「そういえば、一つ、お聞きしたいですが」

「何か?」

「前に、タラス公が、騎士の後継者は、必ずしも、血族である必要性はないと言ってたんですが」

「うむ。確かに、一昔前までは、騎士とは、家系や血筋にこだわらず、その素質で選ばれていたが、門家を持ち、貴族として扱われるようになってからは、一応、子息令嬢から選ぶようになったのだよ」

「では、もし、騎士団の中で、素質を持った者が現れたとしたら?」

「その時は、養子として迎え入れ、後継者として据えるのみだ」

「なるほど。そうすれば、一応、門家の人間になるから、後継者として認められるんですね?」

「その通り。騎士とは、元々貴族ではなく、実力と素質を持った個人の事で、それらが集まったのが騎士団と呼ばれるのだ」

モーガンが、何度も頷くと、騎士団長は、困ったように、眉尻を下げた。

「サイフィスでは、そんな初歩的な歴史さえ語らないのかい?」

「全く。僕を教えていた人は、これをやれ。あれをしてみろ。これをやってみろ。って感じで、歴史や剣のことも教えてくれませんでした」

「そいつ、ほんとにクズだな」

アスベルトが怒ったように、眉尻を上げると、モーガンは、苦笑いを浮かべ、騎士団長は、大きなため息をついた。

「だから、あんな体に負担が掛かっていたのか。どうしようもないなぁ」

「それでも、ガンは、やろうとしてたんだから、凄いよ」

「そんなことは」

「いや。大いにある。まず、何の説明もせずに、物事を動かそうとすれば、必ず失敗する。今の王子の状態を戦争で例えれば、事前になんの説明もせず、お前はここでこれを、お前はあっちでこう、お前はそこでこれをしろ。と言うだけで、それ以外、何も指示が出されていない事になる。そんな状態で、状況を把握し、どんな作戦なのか分からなければ、統制が取れず、必ず綻びが生まれる。多少、持ち堪えたとしても、長くは続かない。疲弊した騎士に、隙が生まれた瞬間、敵に攻められ敗北する。だが、きちんと内容を知れば、どんな時に、その行動をするのか明確になり、統制を取ることが出来る。そして、騎士は、正確に動けるようになり、勝利に導けるようになるのだよ」

「そうか。言われたからって、知らないことをやって、失敗したら、甚大な被害が出てしまうんですね?」

「そう。ガンは、分からないのをやろうとして、上手くならないからって、無理をしてたから、体の負担になってたんだよ。それを体力がないと思ってただけだった」

「つまり、やり方や扱い方を覚えてしまえば、今まで出来なかった事も、出来るようになる可能性がある」

「これは、ガンが悪いんじゃなくて、指示を出すほう、つまり、教えるほうが悪いんだよ」

「教えるのが下手なヤツ程、その実力は、底辺に近いものだ」

「何故ですか?」

「教えるのが上手いってことは、それを熟知してるからだよ」

「そっか。完全に理解してるから、自分でもできるし、相手に伝えることもできるんだね?」

「そうゆうこと。つまり、ガンに教えてたのは、ウィルセンでいえば、騎士団に入ったばかりの見習い騎士って感じ」

「まぁ、ウィルセンの見習いでも、そんな教え方はせんがね。さて、そろそろ、説明の続きをしても?」

「あ。すみません。お願いします」

苦笑いしながら、モーガンが頭を掻くと、騎士団長は、ニコッと笑った。

「それでは、まず、この重さを振れるようになるところからにしよう。これは、知ってるかい?」

「打ち込み人形ですよね?」

「そう。では、剣技は気にせず、打ち込んでみよう。まずは、坊っちゃんがお手本を」

「は~い」

〈トン…ドン!ドン!ドン!〉

剣を構えて、アスベルトが打ち込み始めると、モーガンは、首を傾げた。

「アスって、いつも、片手じゃなかったっけ?」

「無理」

更に、首を傾げたモーガンを見下ろし、騎士団長は、クスッと笑った、

「ちょっと触ってみよう」

騎士団長が指差した人形に近付き、そっと触れたモーガンは、瞳を大きく開いた。

「…柔らかい」

「そう。ウィルセンの打ち込み人形は、異国から取り入れたバブラという、とても柔軟性のある植物を使っている。本体を柔らかくする事で、植物に与える衝撃を小さくしてあるが、反動で、人形が戻って来るようになっているのだよ」

モーガンが人形を押すと、すぐに、元の位置まで、静かに戻った。

「大きな力を加えれば加える程、大きく撓り、その分、反動も大きくなり、速さも増す。片手でやろうもんなら、人形に叩かれてしまう」

「なるほど。力と振る速さを一定にして、戻った人形に打ち込まないと、自分に当たるってことですね?」

「その通り、だから、坊っちゃんでも、打ち込みは両手なんだ」

ひたすら打ち込んでるアスベルトを見て、モーガンは、剣を握る手に力を入れた。

「最初は、軽く打ち込んで、戻って来た人形を打ち返す程度でいい。やってみるかい?」

「はい」

〈トン…トン、トン、ドン!〉

モーガンが剣を構え、打ち込みを始めると、騎士団長は、徐々に、瞳を大きく開いた。

「…うそだろ」

一心不乱に剣を振るモーガンは、アスベルトと変わりない速さで、騎士達も、手を止めて、その様子に見入った。

「あの子、本当は、凄く強いんじゃないか?」

ただ夢中になって、打ち込む二人の背中を見つめ、騎士団長は、頬をヒクヒクと引き攣らせながら、苦笑いを浮かべた。

〈ゴン!〉

「ったぁ~…だぁーーー!疲れた~。腕、しんどい」

アスベルトが剣で人形を受け止めて、手を振る横で、モーガンは、ただ真っ直ぐ前を見つめて、剣を振るい続けた。

「ガン?おーい。ガン」

「坊っちゃん、彼は、今、自分の世界に入ってるようなので、呼んでも無駄ですよ」

「でも、そろそろ止めないとでしょ」

「あれを止めれるなら、もう止めてますよ」

取り付く暇もない程、モーガンが、剣を振るのを見て、アスベルトは、困ったように目尻を下げて笑った。

「坊っちゃん、その子、どこで拾って来たんだよ」

「ガンは、サイフィスの王子だからな」

「そこって、坊っちゃんが、今行ってる国だっけか?」

「そうだよ」

「こんな王子いるなんて、聞いた事ないぞ」

「僕だって、初めて知ったよ」

「友達なのにか?」

「だって、普段のガンって、ちょっとオドオドしてる感じだから」

「坊っちゃん、それは、彼の育った環境の問題で、彼自身ではありませんよ」

「あ~なるほどね?」

〈ドンドンドンドン〉

打ち込み人形が、大きく傾き、湾曲するように戻ると、モーガンは、片手で打ち返した。

「…ねぇ、グレームス卿、国王は、ガンの実力を知ってると思う?」

「さぁ?ただ話を聞く限りでは、何も知らないでしょうね」

「やっぱり?王妃は、どうなのかな?」

「知っていても、見ないようにしてるのかもしれませんね。もしかしたら、彼の実力を隠したのは、王妃かもしれません」

「内情の問題ってやつ?」

「えぇ。多分、王妃は、国の為、自分の為に、王子を守りたいのでしょう」

「王子さえ生きてれば、たとえ、内情が崩壊しても、大丈夫って感じ?」

「そうかもしれませんね。ただ、私達は、こうして、憶測や想像をするしか出来ませんから、真実は、当事者しか分かりませんよ」

「つくづく、ガンは、かわいそうだね」

「しかし、坊っちゃんと出会った事で、彼は、大きく変われると思いますよ?」

「もし、ガンが、王になったら、あの国は、きっと安泰だよね?」

「そうですね。ですが、彼が、王になるには、多くの敵を倒さなればなりません。果たして、あの子に、それが出来ますかね?」

「大丈夫。ガンならできるよ。僕が、保証する」

「そうですか。では、私も、あの子が、大空を羽ばたける翼を得られるよう、尽力致しましょう」

「よろしくね。グレームス卿」

〈バキン!〉

剣を振り抜くと、人形が、根本から傾いてしまい、モーガンは、肩で息をしながら、それを見下ろした。

「あ~あ。やっちゃった」

「っ!ごめんなさい!」

「大丈夫だよ」

慌てて振り返ったモーガンに向かって、アスベルトが、ニカッと歯を見せて笑った。

「僕も、何回かやったことあるから」

「でも、僕、壊しちゃ」

「こんなのしょっちゅうだから、気にすんなよ」

騎士が、地面に刺さってた部分を引き抜き、取り出した杭を割って、モーガンに、中身を見せた。

「こんな風に、杭の中に、人形の先端を入れ込んで、地面に刺してるだけなんだよ。だから、この接合部ってのは壊れやすいんだ」

「しかも、壊れるのは、大体、杭の方で、人形自体は無事なのさ」

「だから、杭さえ直せば、人形は、また使えるから大丈夫」

「でも、僕」

「しかし、初めてで、ここまでやれるなんてなぁ?」

「凄い事だよな?」

「坊っちゃんでさえ、出来なかったのにな?」

騎士達が、ニカッと笑うのを見つめて、モーガンは、瞳を大きく開いた。

「だから、年が違うって」

「そういや、あの時の坊っちゃんは、何回も人形がぶつかってたなぁ」

「そうそう。それで、ぶつかる度、転げ回ってたよな?」

「頭に命中した時なんか、ギャーって大泣」

「そこまで言うな!」

「まだ幼かったのですから、そんなもんでしょう」

「だからって、そんな言わな」

「年齢の違いを出したのは、坊っちゃんでしょうに」

「それは、お前らが」

「つい、この前でしょう?やっと、折れるようになったの」

「それを言うなって」

「やり続けてれば、いつかは出来ますよ」

「そりゃ」

「それを初めてなのに、出来ちゃったんですよ?」

「だから、それは」

「坊っちゃん」

「…ガンは、凄いよ」

頬を赤くするアスベルトを見つめ、モーガンの肩から力が抜けると、騎士達は、ニコニコと笑った。

「でも!それとこれと話が別だからな!」

「事実を言っただけでしょうが」

「今言うなよ!せめて、僕がいないときに」

「坊っちゃんが居なかったら、この子も居ないでしょうが」

「もう!なんなんだよ!みんなして!」

ガハハハと、豪快な笑い声が響くと、モーガンも、クスッと笑った。

「ガン、あんまり笑うと連れて来ないぞ」

「そしたら、ロムさん達を頼るよ」

「裏切るのか」

「裏切らないよ?アスに、ダメって言われたから、なんとか、連れて来てってもらえるようにしてほしいって、相談するだけ」

「お前さ~、また僕が言われるだろ?」

「じゃ、これからも、たまに連れて来てよ。ね?」

「断れねぇじゃん!」

プクッと頬を膨らませるアスベルトに、モーガンが、アハハと大声で笑うと、騎士達は、ニコニコと、嬉しそうに微笑んだ。

「それじゃ、次に移ろう。皆は、各自、通常訓練を行うように。さて、君は、魔法を使えるのかい?」

「あ。グレームス卿、実は、サイフィスとウィルセンだと、魔力の扱い方が、かなり違うんだ」

「サイフィスだと、どのように使うんだい?」

「制御して使う感じだよな?」

「そう。必要な時に、必要な分だけを使う感じで」

「制御して使うとなると、相当、神経を使うな。それに、まだ未熟な体で、そのやり方は、かなりの負担になる」

「どうしてですか?」

「まず、魔法の原理は分かるかな?」

「魔法とは、自分の魔力で、術式を展開させることで、想像物を具現化させる方法」

「その通り」

アスベルトの答えに、モーガンが、何度も頷くと、騎士団長は、優しく微笑んだ。

「更に、術式というのは、法則に添った形になっている為、基礎的初級魔法でも、魔力の強さによっては、最大魔法を超える程の効力を発揮する事もある。階級が上がれば、それだけ、術式は複雑になり、発動させる為の魔力も増える。だから、難しいと思われているが、例えば、火炎系の最大魔法を発動するには、術式の展開と魔力伝導させるのに、時間を要するが、簡単な防御魔法を大きく展開し、多くの魔力を伝導させれば、それを防ぐ事もでき、更に、基礎的攻撃魔力を複数展開し、魔力伝導させれば、相手が、次の魔法を発動させるよりも、先に、攻撃に転ずる事も出来る」

「そっか。だから、アスは、ローデンよりも、早く攻撃できたんだ」

「そう。結界は、防御としては、とても強いけど、維持するのに、結構魔力を使うんだ。僕は、騎士がするように、彼らからの攻撃を避ければいいだけだから、攻撃系の術式を複数展開させただけなんだよ」

「その上、簡単な防御魔法ならば、熟練度が上がれば、片手でも発動させられるようになる。賢者や熟練度の高い魔法使いは、杖を振らなくても、指を動かしただけで、防御魔法や初級攻撃魔法を発動させるだろ?何故だと思う?」

「…術式、伝導、熟練…そっか。別に杖を使わなくても、術式を展開することも、魔力伝導させることも出来るから、初級魔法で、杖を使う必要がないんだ」

モーガンの瞳が、キラキラと輝くと、騎士団長とアスベルトは、ニコッと笑った。

「そう。つまり、彼らにとって、初級魔法や中級魔法で、杖を振るというのは、無駄な行動なのだよ」

「指を鳴らしたり、ちょっと動かすだけで、術式を展開するには、魔力伝導率をあげなきゃいけない。制御していたら、魔力の伝導率が悪くなる」

「だから、ウィルセンでは、魔力が覚醒すると、外に流すんだね?魔力伝導が、自然に出来るように」

「その通り。更に、体内から生まれる魔力を内に留めていたら、自分の限界を見誤る可能性もある。そうなれば、人は、自分の命さえ、削ってでも、限界以上の魔法を発動させようとしてしまう」

「アスと喧嘩した時のローデンだね?」

「そう。あの時のアイツは、魔力が底を突いたから、ぶっ倒れたけど、あのまま、使い続けてたら、確実に死んでたね」

「自分の限界を知り、一定量を放出させ、体内の魔力を細部まで巡回させる事で、保有量を増やす事も可能になる。そして、常に巡回させてる事によって、常に新しい魔力が生まれる事で、すんなり使う事も出来るようになる」

「例えば、ずっと同じ容れ物に入れた水は、時間が経つと、濁って汚くなって、容れ物から出しにくくなるでしょ?それを出すのに、容れ物を振ったり、叩いたり、壊したり、新しい水を入れたりするよね?魔力も同じなんだ。出にくくなった魔力は、汚れた水と同じで、それを使うとなると、自分の体に負担を掛けて、押し出す形になるんだよ」

首を傾げたモーガンが、何度も頷くと、二人は、苦笑いを浮かべた。

「そんな魔力だと、伝導させるのにも、時間が掛かっちゃうんだね?」

「そう。ガンが、魔法が上手く使えないのは、濁った魔力を使おうとしてるからで、決して、出来ないんじゃないんだよ」

「そっか…そうだったんだ」

何度も頷いて、指で顎を撫でるモーガンを見て、アスベルトは、ニカッと笑った。

「さっき、魔力交換したから、今なら、初級魔法くらいなら、すんなり使えると思うよ?」

アスベルトが、空を指差すと、モーガンは、自分の手のひらを見つめてから、空に視線を向けた。
手のひらを空に向け、モーガンが、真っ直ぐ伸ばした先から、人一人分の光の壁が浮かび上がった。
瞳を大きく開いて、浮かぶ光の壁を見つめたモーガンは、キラキラと瞳を輝かせた。

「…坊っちゃん、本当に、なんて化け物連れて来たんですか」

「ガンが、こんなに出来るなんて、知らなかったんだから、仕方ないでしょ」

訓練所の上に、ハッキリと、青白い光を放ちながら、大きな防御魔法を広げたモーガンは、それをボーっと見つめていた。

「…まずいな。また、自分の世界に入ってしまったな」

「ガン!やめろ!ガン!ガン!!」

騎士団長に腕を掴まれ、驚いた顔をして、モーガンが、視線を下げると、スーッと青白い光が消えた。

「僕、いま…」

フラッと体が傾いたモーガンを支えながら、騎士団長は、困ったように、目尻を下げた。

「ガン!」

「だい、じょうぶだよ。ちょっと、目が回っただけ、だから」

弱々しく、眉尻を下げて、苦笑いを浮かべたモーガンの顔は、血の気が引いたように、青白くなっていた。

「アホか!一気に使うなよ!まだ体が慣れてないんだから!」

「とりあえず、少し補給した方がいいな」

「そうだね。ガン、いいか?どこでもいいから、周りにある魔力を拾うんだ」

「…拾う?」

「なんでもいいよ。落ちた林檎とか、風に漂う布とか、何でもいいから、それを手にする想像して」

モーガンが、静かに瞳を閉じると、少しずつ、頬に赤みが戻り始めた。

「よし。もういいぞ」

スッと瞳を開き、アスベルトに視線を向けたモーガンは、瞳を大きく開いた。

「…ねぇ、アス」

「今度は、どうしたの?」

「今、アスの周りが、凄く、キラキラ輝いて、見えるんだけど」

「…は?」

一瞬、シーンと静まり返り、モーガンが、首を傾げると、騎士団長や騎士達は、アハハと大きな声で笑い、アスベルトは、顔を真っ赤にして頭を掻いた。

「ガン、僕だけじゃなくて、ゆっくり、視線を動かしてみな」

モーガンが、視線を動かすと、零れ落ちそうな程、瞳を大きく開き、空に顔を向けた。

「そのキラキラしてんのが魔力。人の周りには、いっぱい見えるでしょ?」

「アスと団長さんの周りが、一番、キラキラしてる」

「それは、魔力の放出量の違いだ。保有量が多ければ、放出量も増やす」

「前に、リリに、説明したこと覚えてる?人の魔力は、強大になりやすいっての」

「…魔力、強大…実り、魚、家畜…あ。そっか、常に放出してれば、自然に、魔力が馴染んで、それらに、少しずつ、魔力を与えることが出来るんだね?」

「そう。だから、保有量が多い人は、少し多めに放出してるんだよ」

モーガンは、キョロキョロと、周りを見渡して、首を傾げた。

「この周りに見えるのは?」

「…ガン、周りにも見えんの?」

モーガンが、不思議そうな顔をして、コクンと頷くと、アスベルトは、大きなため息をついた。

「アスは見えないの?」

「見えるよ?ガン、周りにあるキラキラは、どんな感じ?」

「えっと…地面の近くとか、木の近くとか、風が吹くほうに流れて行くのとか、空に浮いてるのとか、小さいキラキラが、周りにいっぱいある感じ」

「ガンってさ、本当は、僕と同じくらい強いんじゃないの?」

モーガンが、ブンブンと首を振ると、騎士団長が、大きなため息をついた。

「指導者、もしくは、国が違っていたら、君は、坊っちゃんよりも、優れた人になっていたかもしれない」

モーガンが、更に、コテンと首を傾げると、アスベルトは、困ったように、目尻を下げて苦笑いした。

「前に、リリに話してたでしょ?生きていれば、誰もが、魔力を持ってるんだよって」

「…もしかして、このキラキラが、自然の魔力?」

「そうだよ。さっき、目が回ってたのは、一気に魔力を放出したせいで、ガンの保有する魔力が減ったからなんだよ。それを周りにある魔力を吸収、拾ったことで、補充したから、少し楽になったでしょ?」

「そういえば…さっきより、体が軽く感じる」

「自分の魔力を放出して、自然の魔力を補充したから、ガンの体の中が、綺麗になったんだよ」

「自然の魔力には、浄化の力があるのだよ。それを体内で回す事で、浄化されて綺麗になるんだ。そのおかげで、細部にまで、魔力を巡らせる事が出来たから、軽くなったように感じるのだ」

「そっか。リリアンナが、あったかくて、体が軽くなったら、元気になったって言ってたよね?凄いな。こんなに違うんだね。今なら、なんでもできそうな気がする」

「さっきまで、フラフラしてたんだから、調子に乗るなよ」

「でも、これ、凄く楽しい」

モーガンが、キラキラと瞳を輝かせて、嬉しそうに笑うと、アスベルトは、鼻で、小さなため息をついた。

「楽しいのは、分かったから無理するなよ。それに、自分の世界に入らないでくれるかな?結構、肝が冷えるんだけど」

「ごめん。気を付けるよ」

モーガンが、シュンと肩を落とすと、アスベルトは、困ったように、目尻を下げて、優しく微笑んだ。

「んで?どうする?続きする?」

「やる!やりたい!」

ほんのりと頬を赤くしながら、モーガンが、嬉しそうに、明るい笑顔を浮かべると、アスベルトは、騎士団長に視線を向けた。

「一つ確認だが、君は、どこまで習ってたんだい?」

「一応、この前、中級の風系攻撃魔法を習いました」

「なら、あの的に向かって、放ってみてくれるかい?」

「はい」

モーガンは、手のひらを向けようとしたが、ジーッと的を見つめて、顔の横で、指を小さく振った。

〈ビュン…パキ…ゴトン!〉

風の音だけが響くと、的にヒビが入り、大きな音を発てながら、地面に落ちた。

「…あのさ、指だけで出来るなんて、聞いてないんだけど」

「僕も、今、初めてやってみたんだけど、ちょっとビックリ」

驚いた顔をしてるモーガンを見て、アスベルトは、パチパチと何度も瞬きをしてから、アハハと大きな声で、騎士達と一緒に笑った。

「自分でやっててビックリすんなよ」

「だって、出来ると思ってなかったから」

「なら、なんでやったんだよ」

「なんとなく、やってみようかなって」

「天才か」

「なのかな?」

大きな声で笑う二人を見つめ、騎士達も、ニコニコと微笑んでいた。

「これ程の事が出来るなら、主剣魔法をやってみてもいいかもな」

「主剣魔法って、アスがやってたやつだよね?」

「あぁ、んとね。正確には、剣を杖の変わりにするんだ。主に、魔剣士が使う魔法なんだよ」

また、モーガンの瞳が、キラキラと輝き始めると、騎士団長の手が頭に乗せられた。

「その前に、さっきみたいにならないように、周囲と魔力巡回をしようか」

モーガンは、唇に指を当て、アスベルトの足元に視線を止め、ジーッと見つめると、腕を下ろし、静かに瞳を閉じた。

「…坊っちゃん」

「僕は、何も悪くない」

木々の葉が擦れ合って、サワサワと、心地良い音が鳴り、モーガンの周りで、風が優しく舞い上がり、サラサラと髪が揺れた。

「…気持ちいい…」

頬の赤みが増し、空に顔を向けて、優しく微笑みながら、薄く瞳を開けたモーガンを包むように、優しく風が吹き抜けた。
風が落ち着き、モーガンが、アスベルトに視線を向けると、困ったような、嬉しそうな、複雑な笑みを浮かべた。

「ガンって、ほんと、周りの人に恵まれなかったんだね」

「そうだね」

モーガンが、寂しそうに瞳を細めると、騎士達は、悲しそうに目尻を下げた。

「でも、僕、それに感謝してるよ」

「なんでよ。こんなに出来るのに、今まで」

「今までは、凄く苦しくて、辛くて、何もかも諦めてた。やめてしまいたいともって思ってたけど、アスに出会えた。人の温かさも、自然の優しさも、ウィルセンの凄さも。全部、アスと出会えたから、友達になれたから、知ることができた」

ニコッと笑ったモーガンを見て、アスベルトは、眉尻を下げて、唇に力を入れた。

「もし、サイフィスが普通の国で、僕も、普通の王子だったら、アスと出会えなかったと思う。サイフィスが、神殿や神託を頼るような国だから、傲慢な貴族が多くいたから、国王が何も見ない人だから、僕は、アスやみんなに出会えて、たくさんのことを学んで、色んなことを感じれた。今の僕は人形じゃない。一人の人なんだって、改めて思えるよ」

悲しそうな顔をするアスベルトを見つめて、モーガンは、パーっと明るい笑顔を浮かべて、両手を広げた。

「だから、僕は、みんなに出会わせてくれた人達に、僕を導いてくれた人達に、感謝してるんだ。今までありがとう。お疲れ様。これからは、僕が、サイフィスをウィルセンのような国にする為に導く。そう決めたんだ」

「…ガンが治めたら、サイフィスは、きっといい国になるよ」

二人が、ニコッと笑い合うのを見つめ、騎士団は、優しい微笑みを浮かべた。

「そうかな?」

「できるできる。だって、ガンは、僕の友達だから」

「ありがとう…隣に、キアナ皇女がいてくれたら、もっと、嬉しいんだけど」

頬をポリポリと掻き、モーガンが、恥ずかしそうに、へニャっと笑うと、アスベルトは、ニカッと笑った。

「まぁ、それは、これからのガン次第って感じじゃない?」

「そうだね。アスもだもんね」

「そうだよね~。でも、僕は、あきらめないよ」

「坊っちゃんより、王子の方が、早いかもしれませんけどね」

「それ言わないでよ」

困ったように、頭を掻くアスベルトとケタケタと大きな声で笑うモーガンを囲んで、騎士達も、ゲラゲラと笑っているのを城の二階から、皇女と皇后が見下ろしていた。

「…どう?キア」

「私は、いいと思うよ?素直で、努力家で。何より、凄く優しそう」

騎士達に混ざって、アスベルトと剣を持って、夢中になってるモーガンを見つめて、皇女が、嬉しそうに微笑むと、皇后も、嬉しそうに、瞳を細めた。

「彼なら、キアの全部を大事にしてくれそうよね」

「分かる。私が大切にしてるの全部、大事にして、ぜぇ~んぶ、まるっと、守ってくれそう」

「気に入った?」

皇女が、皇后に顔を向けて、ニコッと笑った。

「凄く」

「そう。なら、キアは、逃さないようにしなきゃ。ね?」

「分かってるよ」

窓辺に頬杖を着いて、皇女が、モーガンを見下ろすと、皇后も、同じように頬杖を着いて、訓練所を見下ろした。

「…彼、クッキーとか好きかな?」

「キアからなら、なんでも好きになってくれるわよ」

「そっか。いっぱい作ろ」

「ドルには、バレないようにね?」

「分かってるよ。パパって、本当に過保護だよね」

「仕方ないのよ。父親にとっては、娘って特別なのよ?」

「でもさ?私は、パパとママの実子じゃないのよ?」

「赤ちゃんの時から一緒だったんだから、実子じゃなくても、キアは、ドルにとって、大事な娘なのよ」

「そんなもんなの?」

「そうよ?それにね、アスは、男の子だから、多少、手荒に扱っても大丈夫だと思ってたみたいだけど、キアの時は、抱っこするだけでも、オドオドしてたのよ」

「そんな?」

「もう、こっちが呆れるくらいよ。アスには、ベタベタ触ってた人が、キアに触る時は、オドオドしながら、そっとそっとって感じで。キアが、ドルの指を掴んだ時なんか、膝から崩れて、プルプルしながら、ニヤニヤしちゃって」

「凄く怖いんだけど」

「ね?キアが、お嫁に行く時、この人、崩壊するんじゃない?って思ったくらいよ」

「その時は、ママに任せるからね?」

「まぁ、頑張ってはみるけど」

「そうだ。もう一人、娘ができれば大丈夫じゃない?」

「そうねぇ」

「ママ、もう一人作ろ」

「でも、こればっかりは、授かりものだからねぇ」

「大丈夫。ママならできる」

両手に拳を握りながら、皇女が、キラキラと、期待の眼差しを向けると、皇后は、フッと鼻で小さなため息をついて、小さく微笑んだ。

「仕方ないわね。キアの為に、ちょっと頑張ってみるけど、あまり、期待しないでいてよ?」

「は~い。それじゃ、私、ちょっと、お菓子作ってくるねぇ」

ニコニコと微笑みながら、手を振って、皇女が出て行くと、皇后は、小さく微笑んで、腹を擦った。

「…もう少し、黙ってた方が良さそうね」

肩越しに、チラッと訓練所に視線を向けてから、皇后は、机に向かい、子守唄を歌いながら、書類を確認し始めた。
皇后が、静かに歌う子守唄を聞きながら、皇女は、調理場に向かって、小さく、嬉しそうな微笑みを浮かべた。

「…早く会いたいなぁ」

ニコニコと微笑み、調理場の扉を開けて、皇女も、子守唄を口ずさみながら準備した。

〈カシャカシャカシャ〉

扉の隙間から、子守唄を歌いながら、楽しそうに料理する皇女を見て、メイド達は、静かにクスッと笑い合い、そっと扉を閉めた。
それぞれが、それぞれの時間を過ごし、夕暮れが近付き始めると、モーガンは、アスベルトと一緒に部屋に向かった。

「…ねぇ、アス、明日の予定は?」

「とりあえず、今日と変わらないかな」

「じゃ、明日は、朝食も一緒していい?」

「いいよ?ロム達にも伝えておくから」

〈ガチャ〉

「お帰りなさいませ。坊っちゃん、モーガン様、こちらへ、どうぞ」

ニコニコと微笑む執事と侍女に、二人は、視線を合わせて、首を傾げながらも、引かれた椅子に座った。

「お嬢様より、モーガン様に、差し入れでございます」

ケーキやクッキーなどが、テーブルに置かれると、その甘い香りに、モーガンは、瞳を大きく開きながらも、キラキラと輝かせた。

「坊っちゃんにも、ついでに、どうぞ。との事でした」

「ついでって、僕の扱い雑じゃない?」

「お嬢様は、頑張ってるモーガン様にと、お作りになってましたからね」

「本当なら、坊っちゃんではなく、モーガン様にお渡ししたかったでしょうね」

「しかし、ドルト様の事もございますから、仕方なかったのでしょう」

湯気の上がるカップが、それぞれの手元に置かれると、モーガンは、ボーっと視線を上げて、執事を見上げた。

「皇女が、僕に?」

「はい。張り切って作っておりましたよ」

「そう、なんだ」

頬を赤くしながら、嬉しそうに微笑んだモーガンを見つめて、アスベルトは、唇を尖らせた。

「いいなぁ。ガンばっか」

「今度、お茶会でもする?」

「僕も、リリアンナの手料理食べたい」

「そこは、僕にも」

「ガンとリリが、兄妹だったら良かったのに」

「頼んでみようか?」

「それはそれで、虚しいんだけど」

「…なら、アスから贈り物してみたら?」

アスベルトが、カップを持ったまま、首を傾げると、モーガンは、ニコッと笑った。

「リリアンナなら、贈り物したら、必ず、お返しを考えるはずだから」

ニコニコと微笑みながら、一口大のタルトを摘んだモーガンを見つめて、アスベルトは、カップに口を付けた。

「ただ、リリアンナは、料理ってしたことないと思うから、最初は、期待しないほうがいいかな。ん~。ベリーの酸っぱさにクリームが最高。凄く美味しい」

モーガンが、フニャと笑いながら、タルトを頬張り、スッとカップを傾けると、ニコッと微笑んだ。

「この紅茶は、タルトの香りとも、良く合うね。なんか、疲れてた体に染み渡る」

クッキーやショコラを口に運ぶモーガンを見つめて、侍女と執事が、驚いたように、瞳を大きく開いてから、嬉しそうに微笑んだ。

「お気に召されましたか?」

「凄く。クッキーとも、ショコラとも合うし、どれも凄く美味しいです」

「それ程、喜んで頂けましたら、私共も、とても嬉しゅうございます」

フフフっと笑って、ニコニコと、クッキーを頬張るモーガンを見つめて、アスベルトは、頬杖を着いた。

「そんなに美味しい?」

「美味しいよ?毎日でも食べれる」

「いつか、お会いした際には、直接、お伝え下さい。お嬢様も、きっと、お喜びになりますので」

「もちろん。でも、会えるようになるまでは、伝えてもらえますか?美味しいお菓子をありがとうございます。また作って下さい。って」

明るい笑顔を向けると、侍女は、ほんのり頬を赤くしながら、嬉しそうに瞳を細めた。

「もちろん、お伝えさせて頂きます」

「ところで、キアナ皇女は、お菓子とか何かを作る以外に、何か好きなことありますか?」

「そうですねぇ…綺麗なアクセサリーやお洋服も、お好きではありますが」

「…茶器とかは?」

「そういえば、最近は、ボルトラ産の銀食器を良くお使いになりますね」

「ボルトラか…なら…あそこの陶器がいいかな…」

「なに?何か贈るの?」

「当たり前でしょ?こんな美味しい、しかも、こんなに、いっぱい、お菓子を貰ったのに、お返しもしないなんて、皇女に失礼でしょ」

「そんなもん?」

「…もしかして、貰っても返さないの?」

「モーガン様、坊っちゃんは、ドルト様を見て育ちましたので、お返しの概念がございません」

モーガンが、納得したように頷くと、アスベルトは、視線を泳がせた。

「だから、皇后も、皇女も、あんなに怒ってたんだね。アス、女性から何かを受け取ったなら、ちゃんと返さないとダメなんだよ?」

「でも、父上は、母上に物を贈ってたのは、ルアンダにいる頃だけで」

「そうじゃなくて、どんなときも、気持ちが大事なんだよ。与えるだけ、贈るだけなら、誰でもできるけど、ちゃんと、気持ちを贈り合うのは、大切な人同士だからできるんだよ?」

執事と侍女が、パチパチと拍手をすると、アスベルトは、プクッと頬を膨らませた。
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