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8話
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稲荷の腕の中で、涙を流していると、葉に打ち付ける水の音で、顔を上げた。
「雨だ」
稲荷の呟きに顔を上げると、大粒の雨が、夕暮れの晴れた空から降り注いだ。
「天気雨か」
「…狐の嫁入りだね」
稲荷は、少し驚いた顔が、すぐに優しく微笑んだ。
雨の中、その胸に頬を着け、ギュッと抱き付くと、稲荷は、頭に優しく頬張りした。
「ありがと」
雨が止み、濡れた髪から、雫が滴り落ちる。
「…ックシュン!!」
くしゃみをすると、稲荷は、ポンポンと、頭に優しく触れてから、肩を押して体を離した。
「このままじゃ、風邪引くな。宿に戻ろう」
「うん」
手を繋ぎ、歩き出そうとすると、強い風が吹き抜けた。
さっきまでは、指を絡めるだけだった手は、しっかりと握り合い、寄り添いあって来た道を戻る。
小さな影が、その背中を見つめていたが、それを知らずに、2人で、微笑み合っていた。
旅館に着くと、仲居から、タオルを渡され、2人で、髪を拭きながら、部屋に戻った。
「風呂行って来た方がいいな」
「そうだね。夕食まで時間あるし」
着替えを持ち、手を繋いで、大浴場に向かう。
稲荷と分かれ、女湯に入ると、ゆっくりと湯船に浸かった。
雨で冷えた体を1時間程かけて、ゆっくりと温めてから、火照った頬を手で扇ぎながら、女湯を出ると、向かいの壁に、稲荷が、寄り掛かって待っていた。
「お待たせ。ごめんね?待ったでしょ?」
「大丈夫。今、出たばかりだ」
優しい微笑みを浮かべた稲荷は、湿った長い髪が下ろされ、薄らと赤い頬に、浴衣の合わせ目からは、しっとりした肌が覗いている。
いつもと変わらない優しい微笑みのはずが、その姿で、妖艶な微笑みに見え、ドキッとした。
「そろそろ、夕食だから、戻ろう…リンカ?」
「へ?あっうっうん」
差し出された稲荷の手に、手を重ねようとすると、首筋に、小さな痛みが走った。
首筋に手を当てると、稲荷が、慌てて顔を覗き込んできた。
「どうした!?」
「分からない。なんか、チクって」
「ちょっとごめん」
押さえていた手をどけ、稲荷は、顔を歪めた。
「なに?どうしたの?」
不安になったが、稲荷は、優しくニッコリと笑った。
「何でもない。行こう」
手を引いて、先に歩く背中を見つめて、頭の中から、さっきの稲荷の顔が消えなかった。
部屋に戻ると、テーブルいっぱいに、豪華な料理が並んでいた。
「わぁ~~美味しそう」
「そうだね。さぁ。食べようか」
向かい合って座り、手を合わせた。
「いただきまぁ~す。ん~美味しい」
「それはよかった」
稲荷が、徳利から水のような酒を猪口に注ぐと、静かに、口に着け、猪口を傾けた。
無駄のない仕草から、目が離せなくなった。
「どうした?」
不思議そうに、稲荷が首を傾げた。
早くなる鼓動を抑え込んで、赤くなった頬を隠すように、下を向いた。
「お酒飲むの、初めて見たなぁ~って、思っただけ」
刺身を口に放り込んだ。
「そうだったか。初めてか…」
そう呟くと、嬉しそうに頬を緩めて、また、猪口に口を着け、酒を飲んだ。
なるべく、酒を飲む稲荷を見ないようにしながら、料理を食べ続けた。
料理を食べ終える頃、仲居が来て、空いた食器を片付けると、綺麗な水饅頭が出された。
稲荷が、自分の水饅頭を小さく切って、口元に近付けてきた。
「え」
「はい」
更に、口元に近付けられ、水饅頭を口に含むと、ほんのり甘くて、滑らかな舌触りが、口いっぱに広がった。
「どう?」
「美味しい」
「そう。よかった。ん。美味い」
水饅頭を稲荷も食べ、優しく微笑んだ。
水饅頭を食べ終えると、お腹が一杯で、少し苦しくなった。
「少し、散歩でも行くか」
稲荷と手を繋いで、旅館の庭をゆっくり、1周して部屋に戻ると、二組の布団が、ピッタリと、くっ付けるように敷かれていた。
その布団を見て、稲荷も、気恥ずかしくなり、どちらともなく、静かに、布団を少しだけ離した。
赤くなった頬を隠すように、2人とも、無言のまま、布団に潜り込んだ。
人の姿のまま、隣で寝てる稲荷が、動く度に聞こえる微かな布の擦れる音に、なかなか寝付けなかった。
「今日は、どうだった?」
稲荷も同じように、寝付けないことを嬉しく感じる。
「楽しかった。それに、色んな事を思い出せて嬉しかった。イナリは?」
「私もだ。昔に戻ったようだった」
「そっか…また来ようね?」
「あぁ」
「明日は、どこ行くの?」
「まだ決めてない。どこかあるか?」
「一緒なら…どこでもいい…」
小さな声で囁くと、稲荷が、起き上がった。
「なんてね!!どこでもいいよ!!おやすみ。」
頭からすっぽりと、布団を被った。
しばらく、背中に稲荷の視線を感じていたが、いつの間にか、寝息を発てて、眠っていた。
真夜中に息苦しさを感じ、ゆっくりと、目を開けたが、真っ暗で何も見えなかった。
寝返りを打とうとした時、目の前の暗闇に、人影が浮かんだ。
「イナリ?」
呼び掛けても、何も返ってこなかった。
次第に目が慣れると、その人影が、ハッキリと見えた。
「お…おがみさん…」
いるはずのない姿に驚くと、覆い被さるようにして、口元だけに笑みを作る錦に、頬を撫でられた。
「そんなに、アイツが好きか」
普段とは違う口調で、無表情になった錦に、鳥肌が立った。
「何故アイツなんだ。何故俺じゃない。何故俺よりアイツを選ぶ」
何の感情も含まない声色に、恐怖を覚え、体が震えそうになる。
「俺を選べ。俺を求めろ。俺を愛せ。お前は、俺のモノだ」
「…私は…モノじゃない」
震える声を堪えながら、しっかりと、錦を見つめ返した。
「私はモノじゃない。私の事は私が決める」
錦の目が、大きく開かれた。
「…どうして…」
肩に指が食い込み、顔を歪めると、錦は、怒りに肩を震わせた。
「どうして…よりによって…アイツを選ぶ…俺から全てを奪った…アイツを…どうして選ぶんだ!!」
怒りで声を震わせながら、怒鳴った錦の言葉が、私の心を揺さぶった。
「うば…た…」
「そうだ!!アイツは俺から全てを奪った!!家族も!!住処も!!お前も!!何もかも!!全てを奪ったんだ!!」
何があったのか気になったが、怒りに震える錦の目が、細められ、恐怖で声が出なくなった。
「お前がアイツを選ぶなら、このまま、お前を殺してやる」
錦の顔が近付き、首に噛み付こうとした時、パチンと音が聞こえ、目の前に稲荷の顔が見えた。
「イナリ…」
「大丈夫か?」
寝る前と、変わらない旅館の部屋で、稲荷の腕に抱かれている。
さっきまで、目の前にいた錦がいない。
「…リンカ」
訳が分からず、ボーッとしていると、稲荷が肩を離し、向かい合うように座った。
「すまない。私がいながら、怖い思いをさせて」
小さく頭を下げる稲荷は、ゆっくりと話し始めた。
「昔。私は、まだ幼い大蛇を驚かせては、泣かせていたのだ」
稲荷の表情は、深く後悔しているようだった。
「何度も泣かせては、バカにして…ある日、痺れを切らした大蛇の両親が、私に襲い掛かった。本気で殺そうとは、していなかった大蛇の両親を私は、焦りから、殺してしまった…」
その時、胸の奥がチクリと痛んだ。
「己の未熟さに、絶望した私は、もう、そんな事が起きないように、たまたま、見付けたあの古寺に、しばらくの間、身を隠していたが、居心地の良さに、そこを住処にした。だか、あの古寺は、大蛇の住処だった。それを知ったのは、大蛇が姿を消してからだった。私は、知らなかったとは、言え、大蛇を追い出してしまった…」
苦しそうに下を向く稲荷は、弱々しかった。
「リンカがいなくなる少し前、ある噂を耳にした。リンカの家に大蛇に似た妖怪が住み着き、そこの子供とよく、一緒にいる。もしやと思い、私は、急いで、リンカの家に向かったが、そこには、誰もいなかった。リンカも大蛇もいなくなっていた…」
肩を震わせる稲荷は、泣いているようにも見えた。
「1度は、リンカを諦めようとも思った。だが、諦めきれなかった。気付けば、リンカの事を考え、リンカを探していた。そして、大蛇よりも先にリンカを見付け、リンカに近付いた…私は…大蛇の気持ちを知っていた…私は…私は…」
震える稲荷の首に腕を回し、優しく、包み込むように抱き締めた。
「りん…か…」
「過去は消せない」
稲荷の肩が、小さく揺れた。
「でも、それを受け入れて、後悔したなら、これからをちゃんと、生きればいいんだよ」
目を閉じた稲荷は、肩に頭を乗せた。
その頭に頬を寄せ、静かに涙を流す稲荷の手を握った。
顔を見ず、稲荷の哀しみが落ち着くまで、そのまま、互いの体温を分け合った。
稲荷が離れて、手の甲で拭った目は、少し赤くなっていた。
「ウサギみたい」
「狐だ」
2人で笑うと、不意に、稲荷が真面目な顔をした。
「リンカ」
「ん?」
少しドキドキしながら、見つめていると、首筋に触れた。
「ちょっと、痛むかも知れないが、我慢してくれ」
「へ?え!?」
稲荷の顔が近付き、首筋に唇が触れると、チクリと痛んだ。
小さく肩を揺らすと、稲荷の顔が離れた。
「…何…したの?」
「上書きだ」
意味が分からず、首を傾げると、稲荷は、苦笑しながら、優しく頭を撫でた。
「首筋の傷痕は、簡単に言えば、マーキングの痕」
「まっマーキング!?」
「そう。人間もよくするだろ?首の所に」
「まぁ。恋人にわざと、付ける人は、いるかもしれないけど…」
「それと同じ。私たちは、動物に近いから、恋人や夫婦になる相手。もしくは、好きな相手に付けるんだ。動物が、縄張りを示すような感じで」
「へぇ~。それで?」
「時間が経てば、自然と消えるが、いつにならか分からない。だから、取り敢えず、上書きしたんだ。何かと厄介だから」
「厄介?」
「大蛇のような妖怪は、マーキングの時に術を掛ける事が出来る。意識の中に、直接、出入りしたり、知らない間に操られたりする」
背筋が、ゾクッとした。
「リンカの痕には、幻術が掛かってたと見て、間違いない。多分、近くに大蛇が潜んでいると思う」
キョロキョロと周りを見ると、稲荷は、クスッと笑った。
「すぐに見付かるような奴じゃないよ。それに、印を上書きしたリンカに幻術は、使えない。大丈夫」
優しく髪を撫でられ、頬に触れ、微笑む稲荷に微笑みを返した。
「さぁ。もう安心して。寝よう」
「うん」
布団に横になると、急に心細くなり、自分の布団に向かおうとする稲荷の浴衣を掴んだ。
「…リンカ?」
黙ったまま、ただ掴んだまま、稲荷から視線を反らした。
手を離そうかと思った時、布が擦れる音がし、手を暖かなモノが包んだ。
顔を上げると、優しく微笑む稲荷が、座っていた。
「大丈夫。今日は、ずっとこうしてるから。大丈夫」
その優しい声色に、さっきまで感じていた不安や心細さが薄れ、稲荷の手の暖かさに、静かに目を閉じた。
だが、時間が経つにつれ、次第に、稲荷をすぐ近くに感じ、ドキドキし始めた。
しばらくして、薄目を開けると、稲荷は、手を握り、座ったまま寝ていた。
起き上がり、稲荷の肩を揺らすと、驚いたような顔をした。
「眠いなら、布団で寝ていいよ?」
「ダイ…ジョブ」
稲荷は、眠そうに目を擦った。
普段、稲荷のそんな仕草を見た事がなく、新鮮だった。
「眠いくせに」
無防備な稲荷の膝に、手を伸ばし、触れるか触れないかくらいで、指をサワサワと動かした。
肩がビクッと揺れ、掴んでいた手を離して、膝を覆った稲荷を見て、ケタケタと大笑いした。
「やったな。この」
稲荷は、一瞬、悔しそうな顔をして、手を伸ばしてきた。
「や!ちょっ!やめ!ごめん!ごめんってば!」
脇の下で、指を動かされ、くすぐったくて、稲荷の腕を掴んで、体を捩り、逃げようとすると、バランスを崩してしまった。
「危ない!!」
頭をぶつけないように、稲荷の手が、頭を包むと、そのまま横に倒れた。
稲荷の整った顔が、すぐ目の前にあり、赤い瞳から目が離せなかった。
見つめ合い、どちらともなく、顔を近付け、口付けをしようとした。
その時、部屋の外で、ガタンと物音がして、動きを止めると、稲荷も同じように止まっていた。
「すまない」
そう呟いて、起き上がろうとした稲荷に、腕を伸ばして抱き付いた。
「りりりリンカ!!なな…」
「今日だけ。このまま寝よう」
「なら、狐の姿になって…」
「いいよ。今日は、このまま」
抱き付いたままでいると、戸惑いながらも、恐る恐る、稲荷の腕が背中に回った。
「ちょっとごめん」
1度、頭を撫でて、体を起こすと、布団を引き寄せ、体に掛けると、稲荷は、隣に横になった。
稲荷の腕に頭を乗せて、抱き付くと、その鼓動が聞こえた。
静かに目を閉じ、稲荷に包まれながら、やっと、眠りに落ちた。
次の日の朝。
目が覚めると、互いの顔が目の前にあり、頬を赤くしながら、起き上がり、背中を向けて、崩れた浴衣を直した。
「朝風呂でも行くか」
振り返ると、照れながら、頭を掻く稲荷の後ろ姿が、嬉しくて抱き付いた。
一瞬、驚いていたが、困ったような顔になった稲荷は、頭を優しく撫でた。
「ほら。行くぞ」
「うん」
着替えを持ち、稲荷と手を繋いで入浴場に向かった。
さっぱりして、あのワンピースに着替え、髪を拭きながら出ると、あの服に着替えた稲荷が待っていた。
何も言わず、並んで、手を繋ぎ、部屋に戻り、荷物を置くと、大広間に向かった。
大広間の出入口で、仲居に声を掛け、空いてるテーブルに腰を下ろした。
「おいひぃ~」
しばらくして、テーブルに朝食が、並べられ、焼き魚を食べて頬が緩む。
「ホント、美味いな」
稲荷も味噌汁を飲んで、優しく微笑んだ。
「今日、どうするの?」
次々に、料理を口に運ぶ。
「そうだな…何か、思い出に残るような所がいいな」
「うん」
「それでしたら、遊覧船なんて、いかがでしょうか?」
近くのテーブルを片付けていた仲居に、2人で首を傾げた。
「遊覧船?」
「えぇ。あまり、有名ではありませんが、湾内を1周する船から見える景色が、とても綺麗なんですわ」
「へぇ」
「あと、近くに植物公園もありまして、色々と珍しいお花を御覧になる事も出来ますね」
「へぇ。ねぇ。公園行って、遊覧船に乗れば、いいんじゃない?」
「そうだな。じゃ、そうしよう」
「ありがとうございました」
「いいえ。ごゆっくり」
頭を下げて、仲居は、ニッコリと笑い、食器を片付けに大広間を出て行った。
朝食を終え、旅館を出ると、仲居に教えてもらった植物公園に来た。
温室や小さな池があり、蓮やラベンダーなど、8月が見頃の草花が、色鮮やかに咲き誇り、幻想的な世界が広がっていた。
夢見心地のまま、ゆっくり歩き、遊覧船乗り場に着くと、ちょうど、停泊していた船に乗り込み、然程待たずに出航した。
頬に受ける風が気持ちよくて、水面に反射する光が、ユラユラと揺れる。
その景色をただ黙って見つめていると、背中に腕が回り、静かに肩を抱き寄せられた。
隣を見上げると、肩を抱き寄せた稲荷は、ただ前の景色を見つめていた。
そんな稲荷の肩に頭を寄せ、寄り添うように、ただ流れる景色を忘れないように、記憶に焼き付ける為、見つめ続けた。
予定通り、湾内を1周して、船を降りると、夕暮れが近付いていた。
旅館に戻りながら、舞子たちのお土産を買おうと、昨日も立ち寄った商店街に来ていた。
「ねぇ。なんか、浴衣の人、多くない?」
色々と店を見て回っていると、浴衣を着た人が、増えてきたように感じた。
「そういえば、そうだな」
「なんか、あんのかな?」
「さぁ?分からないな」
そんな話をしながら、舞子たちのお土産を買って、旅館に戻ると、今朝、色々と教えてくれた仲居が、前を通り掛かり、話し掛けてきた。
「どうでしたか?楽しめましたかな?」
「はい。とっても」
「それはよかったですな」
「あの。何かあるんですか?」
「え?」
「浴衣姿の人が多かったので」
不思議そうに首を傾げていた仲居が、何度も頷いて、ニッコリと笑った。
「それは、あれですな」
仲居の視線の先の掲示板を見ると、そこには、花火大会のポスターが貼ってあった。
「近くの川原で、9時から始まるんです。少ないですけど、出店もあるんですが、そちらは6時からなんですよ」
「あ。それで、時間潰しに商店街に」
納得して頷いていると、稲荷は、顎に指を添えて、黙っていた。
「…イナリ?」
袖をツンツンと引っ張り、視線を向けて、じっと、見つめると、稲荷は、フワリと笑って、頭に手を置いた。
「夕飯の後、行こうか」
「え。でも…」
「大丈夫ですか?」
視線を戻すと、仲居は、ニコニコと笑っていた。
「えぇ。もちろんです」
「よかった。仲居さんも、こう言ってるし、夕飯の後に行こう」
ニッコリ笑った稲荷に押し切られるような形で、夕食後、花火大会に行くことになった。
その日の夕飯も、豪華で美味しかった。
稲荷は、出掛けることもあり、酒は飲まなかった。
終始、2人で笑いあって、夕飯を楽しんだ。
「雨だ」
稲荷の呟きに顔を上げると、大粒の雨が、夕暮れの晴れた空から降り注いだ。
「天気雨か」
「…狐の嫁入りだね」
稲荷は、少し驚いた顔が、すぐに優しく微笑んだ。
雨の中、その胸に頬を着け、ギュッと抱き付くと、稲荷は、頭に優しく頬張りした。
「ありがと」
雨が止み、濡れた髪から、雫が滴り落ちる。
「…ックシュン!!」
くしゃみをすると、稲荷は、ポンポンと、頭に優しく触れてから、肩を押して体を離した。
「このままじゃ、風邪引くな。宿に戻ろう」
「うん」
手を繋ぎ、歩き出そうとすると、強い風が吹き抜けた。
さっきまでは、指を絡めるだけだった手は、しっかりと握り合い、寄り添いあって来た道を戻る。
小さな影が、その背中を見つめていたが、それを知らずに、2人で、微笑み合っていた。
旅館に着くと、仲居から、タオルを渡され、2人で、髪を拭きながら、部屋に戻った。
「風呂行って来た方がいいな」
「そうだね。夕食まで時間あるし」
着替えを持ち、手を繋いで、大浴場に向かう。
稲荷と分かれ、女湯に入ると、ゆっくりと湯船に浸かった。
雨で冷えた体を1時間程かけて、ゆっくりと温めてから、火照った頬を手で扇ぎながら、女湯を出ると、向かいの壁に、稲荷が、寄り掛かって待っていた。
「お待たせ。ごめんね?待ったでしょ?」
「大丈夫。今、出たばかりだ」
優しい微笑みを浮かべた稲荷は、湿った長い髪が下ろされ、薄らと赤い頬に、浴衣の合わせ目からは、しっとりした肌が覗いている。
いつもと変わらない優しい微笑みのはずが、その姿で、妖艶な微笑みに見え、ドキッとした。
「そろそろ、夕食だから、戻ろう…リンカ?」
「へ?あっうっうん」
差し出された稲荷の手に、手を重ねようとすると、首筋に、小さな痛みが走った。
首筋に手を当てると、稲荷が、慌てて顔を覗き込んできた。
「どうした!?」
「分からない。なんか、チクって」
「ちょっとごめん」
押さえていた手をどけ、稲荷は、顔を歪めた。
「なに?どうしたの?」
不安になったが、稲荷は、優しくニッコリと笑った。
「何でもない。行こう」
手を引いて、先に歩く背中を見つめて、頭の中から、さっきの稲荷の顔が消えなかった。
部屋に戻ると、テーブルいっぱいに、豪華な料理が並んでいた。
「わぁ~~美味しそう」
「そうだね。さぁ。食べようか」
向かい合って座り、手を合わせた。
「いただきまぁ~す。ん~美味しい」
「それはよかった」
稲荷が、徳利から水のような酒を猪口に注ぐと、静かに、口に着け、猪口を傾けた。
無駄のない仕草から、目が離せなくなった。
「どうした?」
不思議そうに、稲荷が首を傾げた。
早くなる鼓動を抑え込んで、赤くなった頬を隠すように、下を向いた。
「お酒飲むの、初めて見たなぁ~って、思っただけ」
刺身を口に放り込んだ。
「そうだったか。初めてか…」
そう呟くと、嬉しそうに頬を緩めて、また、猪口に口を着け、酒を飲んだ。
なるべく、酒を飲む稲荷を見ないようにしながら、料理を食べ続けた。
料理を食べ終える頃、仲居が来て、空いた食器を片付けると、綺麗な水饅頭が出された。
稲荷が、自分の水饅頭を小さく切って、口元に近付けてきた。
「え」
「はい」
更に、口元に近付けられ、水饅頭を口に含むと、ほんのり甘くて、滑らかな舌触りが、口いっぱに広がった。
「どう?」
「美味しい」
「そう。よかった。ん。美味い」
水饅頭を稲荷も食べ、優しく微笑んだ。
水饅頭を食べ終えると、お腹が一杯で、少し苦しくなった。
「少し、散歩でも行くか」
稲荷と手を繋いで、旅館の庭をゆっくり、1周して部屋に戻ると、二組の布団が、ピッタリと、くっ付けるように敷かれていた。
その布団を見て、稲荷も、気恥ずかしくなり、どちらともなく、静かに、布団を少しだけ離した。
赤くなった頬を隠すように、2人とも、無言のまま、布団に潜り込んだ。
人の姿のまま、隣で寝てる稲荷が、動く度に聞こえる微かな布の擦れる音に、なかなか寝付けなかった。
「今日は、どうだった?」
稲荷も同じように、寝付けないことを嬉しく感じる。
「楽しかった。それに、色んな事を思い出せて嬉しかった。イナリは?」
「私もだ。昔に戻ったようだった」
「そっか…また来ようね?」
「あぁ」
「明日は、どこ行くの?」
「まだ決めてない。どこかあるか?」
「一緒なら…どこでもいい…」
小さな声で囁くと、稲荷が、起き上がった。
「なんてね!!どこでもいいよ!!おやすみ。」
頭からすっぽりと、布団を被った。
しばらく、背中に稲荷の視線を感じていたが、いつの間にか、寝息を発てて、眠っていた。
真夜中に息苦しさを感じ、ゆっくりと、目を開けたが、真っ暗で何も見えなかった。
寝返りを打とうとした時、目の前の暗闇に、人影が浮かんだ。
「イナリ?」
呼び掛けても、何も返ってこなかった。
次第に目が慣れると、その人影が、ハッキリと見えた。
「お…おがみさん…」
いるはずのない姿に驚くと、覆い被さるようにして、口元だけに笑みを作る錦に、頬を撫でられた。
「そんなに、アイツが好きか」
普段とは違う口調で、無表情になった錦に、鳥肌が立った。
「何故アイツなんだ。何故俺じゃない。何故俺よりアイツを選ぶ」
何の感情も含まない声色に、恐怖を覚え、体が震えそうになる。
「俺を選べ。俺を求めろ。俺を愛せ。お前は、俺のモノだ」
「…私は…モノじゃない」
震える声を堪えながら、しっかりと、錦を見つめ返した。
「私はモノじゃない。私の事は私が決める」
錦の目が、大きく開かれた。
「…どうして…」
肩に指が食い込み、顔を歪めると、錦は、怒りに肩を震わせた。
「どうして…よりによって…アイツを選ぶ…俺から全てを奪った…アイツを…どうして選ぶんだ!!」
怒りで声を震わせながら、怒鳴った錦の言葉が、私の心を揺さぶった。
「うば…た…」
「そうだ!!アイツは俺から全てを奪った!!家族も!!住処も!!お前も!!何もかも!!全てを奪ったんだ!!」
何があったのか気になったが、怒りに震える錦の目が、細められ、恐怖で声が出なくなった。
「お前がアイツを選ぶなら、このまま、お前を殺してやる」
錦の顔が近付き、首に噛み付こうとした時、パチンと音が聞こえ、目の前に稲荷の顔が見えた。
「イナリ…」
「大丈夫か?」
寝る前と、変わらない旅館の部屋で、稲荷の腕に抱かれている。
さっきまで、目の前にいた錦がいない。
「…リンカ」
訳が分からず、ボーッとしていると、稲荷が肩を離し、向かい合うように座った。
「すまない。私がいながら、怖い思いをさせて」
小さく頭を下げる稲荷は、ゆっくりと話し始めた。
「昔。私は、まだ幼い大蛇を驚かせては、泣かせていたのだ」
稲荷の表情は、深く後悔しているようだった。
「何度も泣かせては、バカにして…ある日、痺れを切らした大蛇の両親が、私に襲い掛かった。本気で殺そうとは、していなかった大蛇の両親を私は、焦りから、殺してしまった…」
その時、胸の奥がチクリと痛んだ。
「己の未熟さに、絶望した私は、もう、そんな事が起きないように、たまたま、見付けたあの古寺に、しばらくの間、身を隠していたが、居心地の良さに、そこを住処にした。だか、あの古寺は、大蛇の住処だった。それを知ったのは、大蛇が姿を消してからだった。私は、知らなかったとは、言え、大蛇を追い出してしまった…」
苦しそうに下を向く稲荷は、弱々しかった。
「リンカがいなくなる少し前、ある噂を耳にした。リンカの家に大蛇に似た妖怪が住み着き、そこの子供とよく、一緒にいる。もしやと思い、私は、急いで、リンカの家に向かったが、そこには、誰もいなかった。リンカも大蛇もいなくなっていた…」
肩を震わせる稲荷は、泣いているようにも見えた。
「1度は、リンカを諦めようとも思った。だが、諦めきれなかった。気付けば、リンカの事を考え、リンカを探していた。そして、大蛇よりも先にリンカを見付け、リンカに近付いた…私は…大蛇の気持ちを知っていた…私は…私は…」
震える稲荷の首に腕を回し、優しく、包み込むように抱き締めた。
「りん…か…」
「過去は消せない」
稲荷の肩が、小さく揺れた。
「でも、それを受け入れて、後悔したなら、これからをちゃんと、生きればいいんだよ」
目を閉じた稲荷は、肩に頭を乗せた。
その頭に頬を寄せ、静かに涙を流す稲荷の手を握った。
顔を見ず、稲荷の哀しみが落ち着くまで、そのまま、互いの体温を分け合った。
稲荷が離れて、手の甲で拭った目は、少し赤くなっていた。
「ウサギみたい」
「狐だ」
2人で笑うと、不意に、稲荷が真面目な顔をした。
「リンカ」
「ん?」
少しドキドキしながら、見つめていると、首筋に触れた。
「ちょっと、痛むかも知れないが、我慢してくれ」
「へ?え!?」
稲荷の顔が近付き、首筋に唇が触れると、チクリと痛んだ。
小さく肩を揺らすと、稲荷の顔が離れた。
「…何…したの?」
「上書きだ」
意味が分からず、首を傾げると、稲荷は、苦笑しながら、優しく頭を撫でた。
「首筋の傷痕は、簡単に言えば、マーキングの痕」
「まっマーキング!?」
「そう。人間もよくするだろ?首の所に」
「まぁ。恋人にわざと、付ける人は、いるかもしれないけど…」
「それと同じ。私たちは、動物に近いから、恋人や夫婦になる相手。もしくは、好きな相手に付けるんだ。動物が、縄張りを示すような感じで」
「へぇ~。それで?」
「時間が経てば、自然と消えるが、いつにならか分からない。だから、取り敢えず、上書きしたんだ。何かと厄介だから」
「厄介?」
「大蛇のような妖怪は、マーキングの時に術を掛ける事が出来る。意識の中に、直接、出入りしたり、知らない間に操られたりする」
背筋が、ゾクッとした。
「リンカの痕には、幻術が掛かってたと見て、間違いない。多分、近くに大蛇が潜んでいると思う」
キョロキョロと周りを見ると、稲荷は、クスッと笑った。
「すぐに見付かるような奴じゃないよ。それに、印を上書きしたリンカに幻術は、使えない。大丈夫」
優しく髪を撫でられ、頬に触れ、微笑む稲荷に微笑みを返した。
「さぁ。もう安心して。寝よう」
「うん」
布団に横になると、急に心細くなり、自分の布団に向かおうとする稲荷の浴衣を掴んだ。
「…リンカ?」
黙ったまま、ただ掴んだまま、稲荷から視線を反らした。
手を離そうかと思った時、布が擦れる音がし、手を暖かなモノが包んだ。
顔を上げると、優しく微笑む稲荷が、座っていた。
「大丈夫。今日は、ずっとこうしてるから。大丈夫」
その優しい声色に、さっきまで感じていた不安や心細さが薄れ、稲荷の手の暖かさに、静かに目を閉じた。
だが、時間が経つにつれ、次第に、稲荷をすぐ近くに感じ、ドキドキし始めた。
しばらくして、薄目を開けると、稲荷は、手を握り、座ったまま寝ていた。
起き上がり、稲荷の肩を揺らすと、驚いたような顔をした。
「眠いなら、布団で寝ていいよ?」
「ダイ…ジョブ」
稲荷は、眠そうに目を擦った。
普段、稲荷のそんな仕草を見た事がなく、新鮮だった。
「眠いくせに」
無防備な稲荷の膝に、手を伸ばし、触れるか触れないかくらいで、指をサワサワと動かした。
肩がビクッと揺れ、掴んでいた手を離して、膝を覆った稲荷を見て、ケタケタと大笑いした。
「やったな。この」
稲荷は、一瞬、悔しそうな顔をして、手を伸ばしてきた。
「や!ちょっ!やめ!ごめん!ごめんってば!」
脇の下で、指を動かされ、くすぐったくて、稲荷の腕を掴んで、体を捩り、逃げようとすると、バランスを崩してしまった。
「危ない!!」
頭をぶつけないように、稲荷の手が、頭を包むと、そのまま横に倒れた。
稲荷の整った顔が、すぐ目の前にあり、赤い瞳から目が離せなかった。
見つめ合い、どちらともなく、顔を近付け、口付けをしようとした。
その時、部屋の外で、ガタンと物音がして、動きを止めると、稲荷も同じように止まっていた。
「すまない」
そう呟いて、起き上がろうとした稲荷に、腕を伸ばして抱き付いた。
「りりりリンカ!!なな…」
「今日だけ。このまま寝よう」
「なら、狐の姿になって…」
「いいよ。今日は、このまま」
抱き付いたままでいると、戸惑いながらも、恐る恐る、稲荷の腕が背中に回った。
「ちょっとごめん」
1度、頭を撫でて、体を起こすと、布団を引き寄せ、体に掛けると、稲荷は、隣に横になった。
稲荷の腕に頭を乗せて、抱き付くと、その鼓動が聞こえた。
静かに目を閉じ、稲荷に包まれながら、やっと、眠りに落ちた。
次の日の朝。
目が覚めると、互いの顔が目の前にあり、頬を赤くしながら、起き上がり、背中を向けて、崩れた浴衣を直した。
「朝風呂でも行くか」
振り返ると、照れながら、頭を掻く稲荷の後ろ姿が、嬉しくて抱き付いた。
一瞬、驚いていたが、困ったような顔になった稲荷は、頭を優しく撫でた。
「ほら。行くぞ」
「うん」
着替えを持ち、稲荷と手を繋いで入浴場に向かった。
さっぱりして、あのワンピースに着替え、髪を拭きながら出ると、あの服に着替えた稲荷が待っていた。
何も言わず、並んで、手を繋ぎ、部屋に戻り、荷物を置くと、大広間に向かった。
大広間の出入口で、仲居に声を掛け、空いてるテーブルに腰を下ろした。
「おいひぃ~」
しばらくして、テーブルに朝食が、並べられ、焼き魚を食べて頬が緩む。
「ホント、美味いな」
稲荷も味噌汁を飲んで、優しく微笑んだ。
「今日、どうするの?」
次々に、料理を口に運ぶ。
「そうだな…何か、思い出に残るような所がいいな」
「うん」
「それでしたら、遊覧船なんて、いかがでしょうか?」
近くのテーブルを片付けていた仲居に、2人で首を傾げた。
「遊覧船?」
「えぇ。あまり、有名ではありませんが、湾内を1周する船から見える景色が、とても綺麗なんですわ」
「へぇ」
「あと、近くに植物公園もありまして、色々と珍しいお花を御覧になる事も出来ますね」
「へぇ。ねぇ。公園行って、遊覧船に乗れば、いいんじゃない?」
「そうだな。じゃ、そうしよう」
「ありがとうございました」
「いいえ。ごゆっくり」
頭を下げて、仲居は、ニッコリと笑い、食器を片付けに大広間を出て行った。
朝食を終え、旅館を出ると、仲居に教えてもらった植物公園に来た。
温室や小さな池があり、蓮やラベンダーなど、8月が見頃の草花が、色鮮やかに咲き誇り、幻想的な世界が広がっていた。
夢見心地のまま、ゆっくり歩き、遊覧船乗り場に着くと、ちょうど、停泊していた船に乗り込み、然程待たずに出航した。
頬に受ける風が気持ちよくて、水面に反射する光が、ユラユラと揺れる。
その景色をただ黙って見つめていると、背中に腕が回り、静かに肩を抱き寄せられた。
隣を見上げると、肩を抱き寄せた稲荷は、ただ前の景色を見つめていた。
そんな稲荷の肩に頭を寄せ、寄り添うように、ただ流れる景色を忘れないように、記憶に焼き付ける為、見つめ続けた。
予定通り、湾内を1周して、船を降りると、夕暮れが近付いていた。
旅館に戻りながら、舞子たちのお土産を買おうと、昨日も立ち寄った商店街に来ていた。
「ねぇ。なんか、浴衣の人、多くない?」
色々と店を見て回っていると、浴衣を着た人が、増えてきたように感じた。
「そういえば、そうだな」
「なんか、あんのかな?」
「さぁ?分からないな」
そんな話をしながら、舞子たちのお土産を買って、旅館に戻ると、今朝、色々と教えてくれた仲居が、前を通り掛かり、話し掛けてきた。
「どうでしたか?楽しめましたかな?」
「はい。とっても」
「それはよかったですな」
「あの。何かあるんですか?」
「え?」
「浴衣姿の人が多かったので」
不思議そうに首を傾げていた仲居が、何度も頷いて、ニッコリと笑った。
「それは、あれですな」
仲居の視線の先の掲示板を見ると、そこには、花火大会のポスターが貼ってあった。
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「あ。それで、時間潰しに商店街に」
納得して頷いていると、稲荷は、顎に指を添えて、黙っていた。
「…イナリ?」
袖をツンツンと引っ張り、視線を向けて、じっと、見つめると、稲荷は、フワリと笑って、頭に手を置いた。
「夕飯の後、行こうか」
「え。でも…」
「大丈夫ですか?」
視線を戻すと、仲居は、ニコニコと笑っていた。
「えぇ。もちろんです」
「よかった。仲居さんも、こう言ってるし、夕飯の後に行こう」
ニッコリ笑った稲荷に押し切られるような形で、夕食後、花火大会に行くことになった。
その日の夕飯も、豪華で美味しかった。
稲荷は、出掛けることもあり、酒は飲まなかった。
終始、2人で笑いあって、夕飯を楽しんだ。
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