上 下
188 / 191
第二十章

第四話 コーウ! いったいどうした! クッ俺まで

しおりを挟む
 ~レオ視点~



 俺ことレオは、襲ってくる敵兵を次々と倒す。

「今日は調子が良いぜ!」

「やるな、レオ。さすが俺を倒した男だぜ」

 俺と同じバーサーク部隊にいるコーウが、俺を褒める。

 当たり前だ。いつまでもシロウに差をつけられてたまるかよ。あいつに敗北して以来、俺は親父から地獄のような特訓を受けた。

 今の俺は、あのときの俺を凌駕している。

 俺は強くなったんだ!

「食らえ! 一閃突き!」

 技を放つと、敵兵たちは次々と吹き飛ばれていく。

「俺も負けていられない。おりゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 コーウは義手に魔力を送ったようで、腕から四本の刃が現れる。

 彼が前方に走る度に、敵兵は次々と斬られていった。

 コーウも中々やるじゃないか。面白くなってきた。

「コーウ、どっちが多くの敵を倒せるか、勝負をしないか」

「おう良いぜ。どうせ俺が勝つだろうがな」

「それはどうかな」

 俺は剣を水平に構えると、一閃突きを放つ。

「俺に倒されたいやつは前に出て来い! このレオが相手になってやる」

「へぇーなら、あたしの相手をしてくれるかしら」

 この声は女か? 女が相手だと本気になれそうもないが、まぁいい。すぐに倒して俺のスコアに加算させてやる。

 女の声が聞こえ、声がした方に顔を向ける。

 嘘だろう。どうしてお前が戦場にいるんだよ。

 俺の前に現れたのは、金髪ロングで手には鞭を握っている女だった。

「どうして、ここに女王メイがいやがる!」

「どうしてって、別に良いじゃない。大将が戦場に出てはダメという決まりはないわ」

 女王メイがニヤリと笑みを浮かべると、足を下げて一歩交代する。

 落ち着け、あまりにも意外だったせいで驚いてしまったが、考え方によっては大手柄を上げることができる。

 この女を倒せば、シロウの活躍を奪うことができる。あいつにちょっとしたざまぁができるというわけだ。

 そう考えれば、俄然やる気が出てくる。だけど、相手はまともに護衛をつけないで俺たちバーサーク部隊に立ち向かおうとしている。油断は決してできない。

「コーウ、お前も手伝え! 二人でこの女を倒すぞ」

「分かった。俺たちのコンビネーションを見せようではないか」

「あら、二対一で足りるの? あたしを倒そうとするなら、もっと必要なんじゃないの?」

 女王メイの言葉に、イラッとした。

「俺たちをバカにするな! お前なんか、俺とコーウがいれば瞬殺だ!」

「そう、なら宣言して上げるわ。瞬殺されるのはあなたたちの方よ」

「その言葉そのまま返してやるぜ!」

 俺とコーウは同じタイミングで地を蹴り、跳躍して剣を振り下ろす。

 さぁ、これで終わりだ! くっ、こんなタイミングで目にゴミが入りやがった。

 急に目に痛みを感じ、瞼を閉じる。

「女王を見たものは、いかなるものでも下僕になる。くらいなさい。メイちゃんビーム!」

 くそう。あの女は何かしやがった。

 地面に着地した俺は、目が痛いのを我慢して瞼を開ける。

 俺の攻撃は目測を誤っていたが、コーウの腕から生えた刃は、彼女の首に触れようとしていた。

 しかし、彼はそこから腕を振って、彼女の首を刎ねようとはしなかった。

「おい、コーウ! どうしてそのまま首を刎ねない!」

 声を上げて彼に問い詰めると、コーウはメイ女王の首から刃は離し、一歩下がった。

「メイ女王最高! 萌え萌え!」

 はぁ?

「メイ女王に踊りを捧げます」

 突然コーウは奇妙な踊りを始めた。腕を左右に動かしたり、首を左右に動かしたりなど、動きが激しい。

「本当にいい子ね。コーウと言ったかしら? あなたはあたしの何?」

「俺は、女王メイ様の忠実なる下僕であります」

「おい、コーウ! ふざけるなよ!」

「その言葉は俺のセリフだ! 女王メイ様の御前であるぞ。頭が高い!」

 本当にどうしてしまったんだよ。

「お前! 俺たちを裏切る気なのか!」

「裏切るも何も、俺は最初から女王メイ様の忠実なる下僕なのだが!」

「ふざけやがって! 最初から俺を騙していたのかよ!」

 ライバルであり、唯一腕を競え合える仲間だと思っていたのに、最初から女王メイの手下だったってわけか。

「もういい! お前もろとも女王メイを斬ってやる。食らえ! 大切斬!」

 地を蹴って跳躍をすると、剣を振り下ろした。

 しかし、俺の技はコーウの腕から生えた刃に防がれてしまう。

「あたしを守ってくれるなんて、なんていい子なのかしら。気に入ったわ。そっちのレオもなかなか使えそうだし、そのまま押さえつけていてね」

「仰せのままに、女王メイ様!」

 くそう。このままやられてたまるか!

 コーウの刃を弾き、後方に跳躍して距離を開ける。

「離れてもムダよ! 女王を見たものは、いかなるものでも下僕になる。くらいなさい。メイちゃんビーム!」

 女王メイが右手をチョキにして目元に持ってくるとウインクをした。しかし、ビームと言っておきながら、俺の身体はどこも痛むところはなかった。

 外した……のか?

 そう思った瞬間、どこからか甘い匂いが漂ってくる。

 なんだこの匂いは!

 急に匂ってきた香りの正体を探っていると、俺の視界に女王メイの姿が映った。彼女を見た瞬間、心臓の鼓動が激しくなる。

 この胸の高鳴るドキドキ感はまさか!

「メイ女王最高! 萌え萌え!」

 気が付くと、コーウが言っていたことと同じことを口走る。

 今の俺なら、どうしてコーウが女王メイ様の下僕になったのかが分かる。

 女王メイ様は、とても魅力的な女じゃないか。

 俺は彼女を守る騎士となる。

「女王メイ様をお守りするぞ!」

 俺は女王メイの軍団に寝返り、ブリタニア、デンバー連合軍の兵士を次々と斬って行く。

 さぁ、シロウ! この戦争でリベンジマッチと行こうじゃないか。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...