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第十九章
第六話 どうして苦戦しているのよ!
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~女王メイ視点~
「ご報告します! 右翼、四本の刃を持つ男に苦戦中!」
「ご報告します! 左翼、奇妙な呪術を使うケモノ族に苦戦中!」
「ご報告します! 中央、怒涛の如く火球を放たれて敵の本陣に近付くことができません!」
あたしこと女王メイは、次々と聞かされる報告に苛立ちを覚えていた。
「もう! 何でブリタニアの兵があんなにいるのよ! 事前に聞かされていた情報と全然違うじゃない!」
あたしはあまりにもイライラしているせいで、握っている鞭を勢いよく地面に叩きつける。
「それが、同盟を結んでいるデンバー国も来ているようです」
「デンバーが! でも、それでも数が合わないわよ!」
「そんなことを言われましても」
「言い訳無用! さっさと戦場に戻って、一人でも多くの敵兵を倒しなさい!」
あたしはもう一度、地面に向けて鞭を放つ。
パンっと音が弾け、その音を聞いた兵士たちが一斉にあたしから離れた。
「落ち着け。敵兵の数が多いと言うことは、他のところから助っ人を呼んだのだろう。それなら数が合うはずだ」
苛立っているあたしに、幼馴染のプー・クー・ディンが声をかける。
「プーちゃん」
「プーちゃん言うな!」
彼の愛称を口にすると、プー・クー・ディンは声を荒げていつもの反応を返す。
確かに彼の言うとおりね。ブリタニアやデンバーが、他の国から兵士を募ったとするならば、事前の情報と食い違っているのも頷ける。
だけどあのふた国の王が、そんなに人望が厚いとは思えないわ。
唯一考えられるとするならば、あたしが屈服させて下僕にしたいと思っている男、シロウだけね。
つまり、その他の軍勢はシロウが集めたことになる。
「益々欲しくなったわ。シロウ、必ずあたしの下僕にして上げる。プーちゃん、控えている主力メンバーをここに呼んで!」
「だからプーちゃんと呼ぶな!」
彼は嫌そうな顔をするも、この場から離れて控えている彼らを呼びに行く。しばらくしてプーちゃんは、主力となる四名を連れてきた。
一人はローブを着て、フードで顔を隠している男、もう一人は小さい少女、そして彼女の背後に控えている筋肉隆々の男が二人。
「お呼びでしょうか? 女王メイ様」
クリーム色の長髪の少女が、あたしに声をかけてくる。
「ええ、呼んだわ。ミーリア、あなたはバーサーカーを引き連れて、敵陣に突っ込みなさい」
「え!」
彼女に命令すると、ミーリアは驚いたような表情をした。
この子、自分がまだ子どもだから、戦争には参加しないと思っていたのかしら?
「あなたはバーサーカー使いとして優秀です。あなたが突撃すれば、きっと敵は撹乱して指揮が乱れるでしょう」
「で、でも……」
ああ、もう! イライラさせないでよ! 奴隷の分際で、このあたしに口答えをするの!
「いいから行きなさい! でなければ、あなたを下級の奴隷に引き下げるわよ!」
本日三回目となる鞭を、地面に叩きつける。
子どもだもの。この音を聞けば、ビビって言うことを聞くはず。だけどまぁ、念のためにもっと心をざわつかせるとしましょう。
「下級の奴隷に戻るのは嫌でしょう? 人権もないクソのような生活には戻りたくはないでしょう?」
「はい」
ミーリアは小さい声で返事をする。
「女王メイ様大丈夫ですよ。私が彼女のサポートをするので、必ずや勝利を掴み取ってみせます」
今まで一言も喋らなかったローブを羽織っている男があたしに声をかける。
こいつ、帰って来てからローブを着て、顔まで隠しているのよね。何かあったのかしら?
まぁ、そんなことあたしにとってはどうでもいいわ。あたしが今求めているのは、勝利の報告のみ。
「あなたがサポートするのなら、間違いないわね。なら、あなたも一緒に行きなさい」
「かしこまりました。さぁ、行きますよミーリア」
「は……い」
男はミーリアを引き連れ、この場から離れて行く。
「本当にあの男に任せていいのかよ。俺は嫌な予感がしてならねぇのだけどな」
四人を戦場に向かわせると、プーちゃんが心配そうに声をかけた。
「あの男ならきっと、ミーリアとバーサーカーを使って勝利に導くはずよ」
そう、あの男は魔術師としてはとても優れている。彼が動けば、この戦況が変わるはず。
「ご報告します! 第一陣の左翼、壊滅しそうです。エルフたちの雨のような矢に、次々と倒れています」
「ご報告します! 第一陣の右翼、壊滅しそうです。魔王と名乗る女に、指一本触れることができません!」
「ご報告します! 第一陣の中央、壊滅しそうです。飛行船からワイバーン部隊が現れ、空中から攻撃されてなす術がありません!」
「ハハハ! こりゃ参ったな! まさか第一陣が壊滅しそうになるとはな! メイ、一度兵を退いて、態勢を立て直した方はいいんじゃないのか?」
「もう! 笑っている場合じゃないわよ!」
でも、確かにプーちゃんの言うとおりだわ。今回の敗因は、敵を舐めてまともに考えないで編成したのが原因。ここは一度撤退して、体制を立て直す必要があるわ。
「全軍に伝えなさい! ミーリアとバーサーカーを殿にして撤退します」
「ご報告します! 右翼、四本の刃を持つ男に苦戦中!」
「ご報告します! 左翼、奇妙な呪術を使うケモノ族に苦戦中!」
「ご報告します! 中央、怒涛の如く火球を放たれて敵の本陣に近付くことができません!」
あたしこと女王メイは、次々と聞かされる報告に苛立ちを覚えていた。
「もう! 何でブリタニアの兵があんなにいるのよ! 事前に聞かされていた情報と全然違うじゃない!」
あたしはあまりにもイライラしているせいで、握っている鞭を勢いよく地面に叩きつける。
「それが、同盟を結んでいるデンバー国も来ているようです」
「デンバーが! でも、それでも数が合わないわよ!」
「そんなことを言われましても」
「言い訳無用! さっさと戦場に戻って、一人でも多くの敵兵を倒しなさい!」
あたしはもう一度、地面に向けて鞭を放つ。
パンっと音が弾け、その音を聞いた兵士たちが一斉にあたしから離れた。
「落ち着け。敵兵の数が多いと言うことは、他のところから助っ人を呼んだのだろう。それなら数が合うはずだ」
苛立っているあたしに、幼馴染のプー・クー・ディンが声をかける。
「プーちゃん」
「プーちゃん言うな!」
彼の愛称を口にすると、プー・クー・ディンは声を荒げていつもの反応を返す。
確かに彼の言うとおりね。ブリタニアやデンバーが、他の国から兵士を募ったとするならば、事前の情報と食い違っているのも頷ける。
だけどあのふた国の王が、そんなに人望が厚いとは思えないわ。
唯一考えられるとするならば、あたしが屈服させて下僕にしたいと思っている男、シロウだけね。
つまり、その他の軍勢はシロウが集めたことになる。
「益々欲しくなったわ。シロウ、必ずあたしの下僕にして上げる。プーちゃん、控えている主力メンバーをここに呼んで!」
「だからプーちゃんと呼ぶな!」
彼は嫌そうな顔をするも、この場から離れて控えている彼らを呼びに行く。しばらくしてプーちゃんは、主力となる四名を連れてきた。
一人はローブを着て、フードで顔を隠している男、もう一人は小さい少女、そして彼女の背後に控えている筋肉隆々の男が二人。
「お呼びでしょうか? 女王メイ様」
クリーム色の長髪の少女が、あたしに声をかけてくる。
「ええ、呼んだわ。ミーリア、あなたはバーサーカーを引き連れて、敵陣に突っ込みなさい」
「え!」
彼女に命令すると、ミーリアは驚いたような表情をした。
この子、自分がまだ子どもだから、戦争には参加しないと思っていたのかしら?
「あなたはバーサーカー使いとして優秀です。あなたが突撃すれば、きっと敵は撹乱して指揮が乱れるでしょう」
「で、でも……」
ああ、もう! イライラさせないでよ! 奴隷の分際で、このあたしに口答えをするの!
「いいから行きなさい! でなければ、あなたを下級の奴隷に引き下げるわよ!」
本日三回目となる鞭を、地面に叩きつける。
子どもだもの。この音を聞けば、ビビって言うことを聞くはず。だけどまぁ、念のためにもっと心をざわつかせるとしましょう。
「下級の奴隷に戻るのは嫌でしょう? 人権もないクソのような生活には戻りたくはないでしょう?」
「はい」
ミーリアは小さい声で返事をする。
「女王メイ様大丈夫ですよ。私が彼女のサポートをするので、必ずや勝利を掴み取ってみせます」
今まで一言も喋らなかったローブを羽織っている男があたしに声をかける。
こいつ、帰って来てからローブを着て、顔まで隠しているのよね。何かあったのかしら?
まぁ、そんなことあたしにとってはどうでもいいわ。あたしが今求めているのは、勝利の報告のみ。
「あなたがサポートするのなら、間違いないわね。なら、あなたも一緒に行きなさい」
「かしこまりました。さぁ、行きますよミーリア」
「は……い」
男はミーリアを引き連れ、この場から離れて行く。
「本当にあの男に任せていいのかよ。俺は嫌な予感がしてならねぇのだけどな」
四人を戦場に向かわせると、プーちゃんが心配そうに声をかけた。
「あの男ならきっと、ミーリアとバーサーカーを使って勝利に導くはずよ」
そう、あの男は魔術師としてはとても優れている。彼が動けば、この戦況が変わるはず。
「ご報告します! 第一陣の左翼、壊滅しそうです。エルフたちの雨のような矢に、次々と倒れています」
「ご報告します! 第一陣の右翼、壊滅しそうです。魔王と名乗る女に、指一本触れることができません!」
「ご報告します! 第一陣の中央、壊滅しそうです。飛行船からワイバーン部隊が現れ、空中から攻撃されてなす術がありません!」
「ハハハ! こりゃ参ったな! まさか第一陣が壊滅しそうになるとはな! メイ、一度兵を退いて、態勢を立て直した方はいいんじゃないのか?」
「もう! 笑っている場合じゃないわよ!」
でも、確かにプーちゃんの言うとおりだわ。今回の敗因は、敵を舐めてまともに考えないで編成したのが原因。ここは一度撤退して、体制を立て直す必要があるわ。
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