Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十八章

第十話 戦争は回避不能

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 ポイズンモスを倒し、今度はギガマンティスを見る。

 ギガマンティスは、間合いに入らない限り攻撃を受けることはない。鎌を振るのは早いが、歩行速度が遅い。だから一定の間隔を開けつつ、遠距離から攻撃をすれば、比較的に安全に倒すことができる。

 だけど、俺はこの魔物を自由に歩かせるつもりはない。

「リストレイント!」

 拘束の魔法を唱えると、巨大な虫網が現れた。網は魔物に覆いかぶさり、ギガマンティスを捕まえる。

 元々が虫だから、拘束方法が虫網なのか。

 どうやらこの虫網は、蜘蛛の糸のように粘着性が高いみたいだ。ギガマンティスが暴れるほど、魔物の体に絡みつく。

 これでやつは動くことができない。今のうちに遠距離から攻撃だ。

「ウォーターカッター」

 狙いを定め、直径一ミリほどの細い水を放つ。

 一点に集中させた水は威力が凝縮され、ギガマンティスに触れた瞬間、首を吹き飛ばす。

「これでお前の魔物は全て倒したぞ」

「おやおや、やはりランクBの魔物は、あなたにとってはクソザコでしたか。仕方がありませんね。本当はあなたとは戦いたくはないのですが、私が相手をするとしましょう」

 メッフィーが両手を上げると、空中に五つの火球が現れた。そして彼の手の動きに合わせて円形に動く。

 まるでサーカスのジャグリングだな。まぁ、道化の格好をしているお前にはお似合いだ。

「さぁ、喰らいなさい」

 五つの火球は一斉に放たれる。

 たく、こんなところで火遊びなんかするなよ。また他の店で火事になったらどうしてくれるんだ。

「ウォーターボール」

 魔法を唱えて水球を五つ生み出し、敵の攻撃に当てて相殺に持ち込む。

「やはり、火球ではダメージを与えることができませんか。なら」

 メッフィーが片手を上げると、空中に巨大な鎌が現れる。その鎌には目が付いており、禍々しいオーラを放っていた。

「さぁ、行きますよ」

 道化の男は地面を駆け、俺との距離を縮める。

 基本的に魔法を使う俺は、近距離攻撃が苦手だと考えたのだろうな。だけど、肉体強化の魔法を使えば、接近戦でも普通に戦うことができる。

「エンハンスド……」

「ファイヤー」

 敵の攻撃に備え、肉体強化の呪文を使おうとしたときだ。メッフィーの口から炎が噴き出され、一旦避けることになる。

 呪文を中断させられたか。この曲芸野郎が。

「斬り裂きなさい。デスサイズ」

 メッフィーが鎌を振るう。すると刃から斬撃が放たれ、俺に向かってきた。

 炎ならともかく、この斬撃は危険だ。俺は避けたら被害が大きい。

「エンハンスドボディー」

 素早く呪文を唱え、肉体を強化させる。腕をクロスしてやつの斬撃をわざと受けると、腕が裂けて血が噴き出た。

「クッ」

「アハハハ! さすが英雄シロウ。自分が避ければ町民が死ぬかもしれない。その自己犠牲は賞賛します。ですが、弱い者を守るせいで貴方は弱くなる。このチャンスを活かし、あなたを拘束させてもらう」

 男の言葉を聞き、俺は口角を上げた。

 こいつ、俺がわざと血を流したとも知らないで喜んでいやがる。だけど、それが油断につながるんだ。

「ブラッドニードル」

 呪文を唱えると、流れ出た血が集まって球体となる。そして血液内の凝固因子により、血が固まって棘となった。

「グハッ!」

 固まった血がメッフィーの肉体を貫き、彼は吐血する。

「俺が弱い? バカなことを言うなよ。俺は様々な状況であっても、それらを全て利用することができる知識がある。膨大な知識量がある限り、俺が弱くなることはない。ネイチャーヒーリング、ブラッドプリュース」

 敵が怯んでいるうちに、二種類の回復魔法を唱える。

 細胞が活性化されて切り裂かれた皮膚を修復し、骨髄から新たな血液が生成される。

 これで完全回復だ。

「さすが……英雄シロウ……女王メイ様が……屈服させたいと……思うはず……です。ですが、これであなたの目指す……戦争回避は……潰えた。使者を倒した……のです。戦争をするきっかけには……十分です」

 メッフィーの言葉に、俺は大きく目を見開く。

 こいつ、戦争を引き起こすために最初から俺に倒されるつもりでいたのか。

「戦いに負け……勝負に勝つ。これで私の目的は達成された」

 メッフィーは地面に倒れると、それから彼の肉体が動くことはなかった。

 ミーリアはどうするのだろう。

 振り返ると、商店街の道に彼女の姿がない。

「ミーリア!」

 彼女の名前を呼んでしばらく探してみたが、ミーリアの姿を見つけることができなかった。

「エコーロケーション」

 探査魔法を唱え、前方に超音波を飛ばす。ミーリアの反応が返ってくるのを待ってみるも、彼女のものと思われる反応が返ってくることはなかった。

 バーサーカーの反応もない。もしかしたらあの二体が、彼女をどこかに連れて行ったのかもしれない。

 そうであってほしいと心の中で祈りつつ、俺はマリーたちのいる宿屋に急いで戻ることにした。

 宿に向かって走っていると、視界の先に複数人の兵士が宿屋の前にいることに気付く。

 その中に見知った顔が一人いる。

「プルタルコス!」

「シロウ。出かけていたのか。今ちょうどお前を呼びに行こうとしていたところだ」

 ブリタニアの騎士団長であるプルタルコスは、真剣な表情で俺を見た。

「女王メイとの戦争だが、話し合った結果、我が国が敗北する未来しかないと言う結論に至った」
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