Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

文字の大きさ
上 下
172 / 191
第十八章

第八話 言っておくがこれはデートではない

しおりを挟む
 さてと、アイスも食べて頭も冷えたことだし、今度こそ戦争を回避する方法を探さないといけないよな。

 俺は座っていたベンチから立ち上がる。

「シロウお兄ちゃんもう行くの?」

 まだアイスを食べ終えていないミーリアが声をかける。

「ああ、一秒でも時間をムダにできないからな」

「待って、わたしも行く」

 ミーリアは急いで残っているアイスを口に含む。

「あうう! 頭が痛い」

 まったく、急いで食べるからアイスクリーム頭痛になるんだ。世話が焼けるな。妹を持つ兄とはこんな感じなのだろうか? 一人っ子の俺にはなんだか新鮮だな。

 アイスを食べ終わると、ミーリアもベンチから立ち上がる。

「お待たせ、さぁ行こう」

 ミーリアは満面の笑みを俺に向けた。

 遊びに行くんじゃないのだけどなぁ?

「次はどこに行くの?」

「商店街だ」

 魚介類を販売している店の主人が、女王メイのいる大陸出身だという情報を掴んだ。もし、彼から女王メイや大陸について話しを聞くことができれば、何か突破口が見つかるかもしれない。

 商店街にたどり着き、買い物客たちを見る。

「それにしても、今日はやけに人通りが多いな。何かセールでもやっているのか?」

 商店街は多くの人が歩いており、賑わっていた。

「あ、あのう。シロウお兄ちゃん」

「どうした?」

「手を繋いでもいいですか? 逸れるかもしれないので」

 まぁ、彼女はここの土地勘がないからな。逸れたら色々と面倒なことになりそうだ。

 あの変態男みたいなやつが現れて、ミーリアを助けようとしてバーサーカーが暴れるなんてことにもなりかねない。

「分かった。手を繋ごうか」

 左手を差し出し、彼女の手を握る。

 その瞬間、また一段と俺に向けられる殺気が強まった。

 本当にバーサーカーたちの考えが読めない。殺気を放つだけに止まって、俺に危害を加えようとはしない。

 隣にミーリアがいるからなのだろうか? まぁ、襲ってきたところで簡単にあしらうことができるし、今のところはなるべく気にしないようにしておこう。

 それにしても、ミーリアの手は柔らかいな。マリーやクロエとは違い、子ども特有のプニプニとした柔らかさだ。

「シロウじゃないか。見かけないお嬢ちゃん連れているけど、新しいハーレムメンバーか?」

 道を歩いていると、肉屋の店主が店先から俺をからかってくる。

「アホ! この子はちょっとした縁で今だけ一緒にいるだけだ! 仮にハーレムメンバーだったら犯罪じゃないか! そもそも、俺はハーレムを作った覚えなんて一度もないぞ!」

「シロウお兄ちゃん、ハーレムって何ですか?」

 しまった! ついおっさんのからかいに乗って、ツッコミを入れてしまった。

 子どもにハーレムを教えるのは、今後の成長に悪影響を及ぼす。ここは教えないほうがいいに決まっている。

「ハーレムって言うのは、まだミーリアが知らなくていい言葉だ。この言葉の意味を知るのは大人になってからだ」

 言葉の意味を教えないと言うと、ミーリアは子どもぽく頬を膨らませる。

「わたしはもう、大人ですよ! その証拠に胸も膨らんできています」

 いや、胸が膨らみ始めたからと言って、それが大人の証ではないんだぞ。ちゃんと国の法律に則って、十六歳になるまでは体格に関係なく、子ども扱いになるのだからな。

「とにかくハーレムの意味は教えないからな。ほら、先を急ぐぞ」

 強引に話題を断ち切り、商店街を歩く。

「シロウ、今日はまた違った子とデートかい? 英雄色を好むけど、マリーたちの相手もしてあげないと、刺されるかもしれないよ。あ、あんたは強かったね」

「シロウ君! その子、まさか君の隠し子か! 母親はいったい誰なんだね!」

 商店街を歩くと、なぜか店の店主たちが声をかけてくる。

 いったい彼らに何が起きたんだ? 普段なら、俺が通っても挨拶をする程度なのに、今日はやけにからかってきやがる。

 気のせいかもしれないが、店主たちが声をかける度に、バーサーカーからの殺気が強まっているような気がするのだが。

 店主たちの言葉を無視して先に進むと、目的地の魚屋に辿り着く。

「おっちゃん。ちょっと話しを聞きたいのだけど」

「お。英雄シロウじゃないか。情報が欲しいのか? だけどただではあげられないな」

 ちゃっかりしているな。情報が欲しいのなら、何か商品を買えと言ってきやがった。

「分かったよ。それじゃ、食べて元気になりそうなものでも買おうかな」

「なら、こいつはどうだ? ズッポン。食べれば元気になるぞ。お前のムスコもハッスルだ」

 元気って、精力的に元気という意味じゃないからな!

「シロウお兄ちゃん、その年で子どもがいるの! お相手はエルフの人? それとも魔族の人?」

 ほら、純粋なミーリアが誤解してしまったじゃないか! いったいどうしてくれるんだよ。

 軽く店主を睨む。すると彼は苦笑いを浮かべた。

「ハハハ、まぁ、冗談はこの辺にしてこの魚なんてどうだい? 今朝競り落としてきたばかりで、新鮮だ」

「なら、それをもらうよ」

 魚代の料金を払い、早速本題に入る。

「おっちゃん、女王メイがいる大陸出身だったよな。女王のことや、大陸のことに付いて教えてくれないか?」

 女王や大陸のことに付いて聞いてみると、彼は顔を引き攣らせる。

 おっちゃんの顔を見る限り、あんまり話したくはなさそうだな。そんなに酷いのか?

「あんたが英雄シロウだから特別に教えるが、あの大陸に住む連中には関わらない方がいい」

 おっちゃんは周囲を警戒しながら小声で話す。

「俺は実際に女王様を見たことはないが、女王は大陸中の若い男を集めては下僕にしているらしい。そしてあの国は今どき珍しいが、奴隷制度を使っている。上級国民が下級国民を奴隷にしているんだ」

「奴隷だと」

 おっちゃんの言葉に、俺は驚きを隠せなかった。

 未だに奴隷制度を使っている国があるなんて。

「奴隷には人権がないに等しい。契約者の言いなりとなって、朝から晩まで働かされる。俺は中級国民だったから、奴隷にならずにこうして商売をすることができているのだがな」

 奴隷か。仮に戦争になれば、戦うほとんどの敵が奴隷であると考えたほうがいい。

「そして奴隷の中にも階級が存在する。ユニークスキルなどに恵まれた奴隷は、奴隷の中でも上位だ。使い捨ての道具のように扱われないが、女王の忠実なる下僕にされてしまう」

 話を聞いている最中、ミーリアが表情を暗くしているような気がした。

「ミーリア、どうかしたか?」

「な、何でもないよ。ちょっと疲れちゃって」

 ミーリアはムリに笑う。

 まぁ、この気温の中で、商店街を歩き回ったんだ。子どもなら疲れもするだろうな。

「おっちゃん、ありがとう」

 店主に礼を言うと、俺は店を出た。

 数メートルほど歩いたその時。

 ドカーン!

 後方から爆発音が聞こえ、振り返る。

 先ほどまで居た魚屋が爆発し、炎が店を飲み込んでいた。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

処理中です...