Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十八章

第二話 狙われたシロウ

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 ~シロウ視点~



「俺をメイ女王に引き渡さないと、この国は戦争をすることになる」

 呆然としている中、ようやく俺は言葉を口にすることができた。

「そんなのダメに決まっていますわ!」

「そうだよ! シロウさんは私たちのものだもの! 絶対に渡さないんだから」

「どのような理由でシロウを求めているのかは分からないが、ろくでもない理由に決まっている」

「そうですわ。きっとそうに違いまりませんもの」

「ご主人様はキャトのご主人様だワン。神獣であるキャッツがお守りするワン」

 リピートバードの言葉を聞き、俺が捕えられると思ったのだろうな。マリーたちが俺の周りに集まると、王様や控えている兵士を睨む。

「そうだ! 英雄シロウは絶対に渡さん!」

 マリーたちが王様たちを警戒していると、王様は拳を握って大声で叫ぶ。

 あれ? どうして王様までマリーたちと同じことを言う? 普通なら、戦争を回避するために俺を捕えるものだろう?

「王様、俺が言うのも少し変ですが、どうして俺を捕えようとしないのですか? このままでは戦争になるのですよ?」

「戦争? 上等だ! あの毒女にシロウを渡すくらいなら、戦争をしたほうが遥かにマシだ! この国の兵士なら、シロウのために戦い、シロウのために死ぬ覚悟はできている!」

 王様は堂々とした振る舞いで、兵士たちは俺のために死ぬことは本望であると言う。

 いや、それはきっと王様の妄想だから。いくら何でも、冒険者一人のために命をかけて戦おうと思う兵士は、ほとんどいないと思うぞ。

「お前もそう思うであろう」

「はい! 英雄シロウ様のためなら、この命なんて惜しくありません!」

 うーん。本当に心の底から思っているのだろうか? 王様から問われたから、仕方なくあんなふうに答えたように見えてしまう。

「そうと決まれば戦争準備だ! プルタルコスを呼べ! 戦争に向けての会議を始める!」

「はっ!」

 王様が叫ぶと、一人の兵士が敬礼して謁見の間から離れていく。

「それではシロウ。ワシはお主のために戦争の準備を進める。安心しろ、絶対にあの毒婦の魔の手から守ってみせる」

 そう言うと、王様は謁見の間から離れて行った。

 王様! 俺のことを想うのであれば、戦争なんて止めてくれ! 平和に話し合いで解決しよう!

 心の中で叫ぶが、当然心の中での叫びであるため、王様には聞こえない。

 大変なことになってしまった。とにかく戦争になれば、多くの人々が血を流すことになる。それだけは回避しないと。

 解決方法を見出そうと、思考を巡らせる。

 王様は戦争をすることしか考えていない。なら、俺が戦争を回避するために動くしかないな。

「みんな、俺は戦争を回避したい。協力してくれないか?」

「それは、戦争を回避するためにシロウが犠牲になる。そのための協力して欲しいと言うことですの?」

「いや、ここで自己犠牲をするのはバカだ。王様たちが戦争の準備を進めている間、どうにかメイ女王の使者と交渉して、戦争を回避する。そのための手助けをして欲しい」

 自分の身を犠牲にするつもりはないことを告げると、女性陣は顔を見合わせる。そして溜め息を吐いた。

「わかりましたわ。シロウが自分を犠牲にするつもりであったのなら、拒否するところでしたが」

「まぁ、戦争を回避するための手助けなら、力を貸さないわけにはいかないよね」

「そうなると、まずは情報収集をしなければならないね。使者が城を訪れる前に、先に合流して交渉をしないと」

「それなら、お父様と伯父様に協力してもらいましょう。貴族の力を使えば、きっと先に情報を得られるかもしれませんわ」

「そう言えば、マリーと一応エリーザは貴族であったワンね」

 キャッツが余計な一言を添えて、二人が貴族の令嬢であること言う。

「キャッツ! 確かに騎士爵は平民に毛が生えた程度ですが『一応』は傷つきますわよ」

「まぁ、まぁ、エリ、事実なのですから、そこは堪えてください」

 機嫌を損ねるエリーザを、マリーが宥める。

 とりあえずこれで今後の方針は決まった。戦争なんてやっていいはずがない。絶対に回避しなければ。

「よし、早速行動に出よう」



 王様が戦争をすることを決めてから一週間が過ぎた。その期間の間、情報を集めつつ、オルテガが溜め込んだ依頼を全て終わらせた。

「さすがシロウだ! 助かった! 本当にお前はこのギルドの救世主だ!」

 最後の依頼の報告を終えると、オルテガは何度も俺を称賛してくる。

「シロウさんを否定するわけではないのですが、まさかこの短期間で、あれだけの依頼をこなしてしまうなんて思ってもいませんでした。本当に凄いです」

 オルテガの隣にいた受付嬢が、彼に続いて俺を褒める。

 まぁ、少しだけ忙しかったけど、俺にとってはちょうどいい感じの量だった。だからどちらかと言うと楽しかったかな。

「シロウ! 全ての依頼を達成した記念に、今夜は飲みに行こう! ナイスバディの姉ちゃんがいる店に連れて行ってやる。しかも、触り放題だぞ!」

「いやー、悪いな。俺はこれから用があって、夜は時間を作れないかもしれないんだ。また今度誘ってくれ」

 オルテガの誘いを断って踵を返すと、ギルドから出て行く。

 本音を言えば、オルテガの誘いに乗りたかった。彼の女性を見る目は確かだ。チェンジと言いたくなるような女性がいるような店には決して行かない。

 俺だって男だ。時には女体に触れて癒されたい。本当にタイミングが悪かったな。

 だけど、気持ちを切り替えなければな。もうすぐ女王メイの使者が、船着場に来るのだから。

 波止場に行くと、先に来ていたマリーたちと合流する。

「マリーどうだ? 船は見えたか?」

「いえ、まだ見当たりませんわ。予定時刻よりも、遅れが出ているようですわね」

 船がまだ来ていないと聞き、海を見る。

 うん? 小さくてまだ判断できないけど、船のようなものが見えたな。もしかしたらあれかもしれない。

 様子を伺っていると、こちらに近づいているようで、次第に大きく見える。

 船で間違いない。漁師の使う船ではないみたいだから、あの船に使者が乗っていると考えていいだろう。

 体感で十分くらい経っただろうか。こちらに向かっていた船が波止場に止まり、乗船客が降りてくる。

 今のところ乗客の中には、情報にあった人物が降りて来ていないな。もしかして船に乗り損ねていないよな。

 そう思っていたが、そんなことは杞憂に終わる。

 最後に降りてきた二人組の男女が、情報にあった使者だ。

 情報どおりだけど、本当に使者っぽくないな。男の方は、白い肌に顔には星マークが付いている道化風だし、女の方はまだ少女だ。

 だけど見た目で判断をするのはよくないよな。一応クロエやミラーカだって、見た目以上に歳をとっている。

「すみません。あなたたちが女王メイからの使者ですね」
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