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第十八章
第一話 メイ女王とプーちゃん
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~プー・クー・ディン視点~
俺ことプー・クー・ディンは、この国の女王であるメイから呼び出され、玉座の間に向かっていた。
たく、メイのやつ。俺を呼び出していったい何の用だ? また面倒臭いことをさせられそうで、嫌な予感がするのだが。
あいつは昔から、俺を呼び出して面倒臭いことをさせやがる。今回も碌なことではないはずだ。
嫌な予感が拭えないまま、扉を開けて玉座の間に入る。
「メイ、来てやったぞ。要件はなんだ?」
「あん! いいです。女王様! 卑しいわたしにもっと罰を与えてください」
「もう、しょうがないブダ野郎ね。そんなに欲しいのなら、もっと鞭を叩き込んであげるわ! ブーブー無様に泣きなさい!」
扉を開けるなり、玉座の間ではメイの調教が行われていた。
よし、ここは見なかったことにして、ひとまず帰ろう。少し時間を開けてからまた来た方がいい。
「あら、プーちゃん? 来てくれたのね」
踵を返して部屋から出ていこうとすると、メイが俺に気付いて声をかけてきた。だが、彼女の言葉が耳に入った瞬間、怒りが湧き上がってくる。
「おい! メイ! 何度も言っているだろうが! 俺のことをプーちゃんと言うな!」
俺は声を荒げる。
そう、彼女は昔から俺のことをプーちゃんと呼ぶのだ。しかし、俺はその呼び名が嫌いだ。
「えーどうしてそんなに気に入らないのよ? プーちゃんって可愛いじゃない? あたしは好きよ」
「お前が気に入っていても、俺が気に入らないんだよ! プーちゃんって響きが、ただ飯食らいのダメ男と呼ばれているようで、ムカつくんだ!」
「もう、変なところを気にするわね。あたしはそんな風に言っているのではないのだけどなぁ? なら、クーちゃんにする?」
「そっちは祖父の名だろうが! クーちゃんはもっとダメだ!」
「もう、わがままね」
「普通に苗字のほうでいいだろうが! ディンと呼べ!」
「嫌よ。ディンなんて可愛くないもの」
要求をキッパリ断るメイに、頭が痛くなる。
毎回これだ。彼女が俺をプーちゃんと呼ぶせいで、カッとなって喧嘩腰になる。
そのせいで一向に話が進まず、会議が長引くことが頻繁に起きる。
ムダに時間を割くことはできない。とにかく、一度冷静になって話しを聞かなければな。
「もういい! さっさと要件を言え、俺は忙しい」
「そうだったわね。ごめんなさい。あなた、シロウとか言うSランク冒険者を知っているかしら?」
「シロウ? 誰だそいつは? 全然聞かない名だな」
「何でも、復活した魔王を倒したらしいのよ。そして魔族たちから邪神と崇められているわ。あたし、彼が欲しくなっちゃった」
あー、また始まったよ。メイの悪い性癖が。こいつの趣味は、強い男を屈服させて己に跪く男に調教することだ。
先ほど鞭で打たれているあの男も、元はSランクの冒険者だった。最初はメイに牙を向いていたが、今では彼女の従順な下僕となっている。
「お・ね・が・い。ブリタニア王にはリピートバードで伝えているから、使者として行って来てくれない?」
メイは片目を瞑って色っぽくウインクをする。
そこら辺にいる男なら、一発で言うことを聞くだろう。だが、俺には効かない。
「いやだね。誰がそんな面倒臭いことをしないといけないんだよ」
「お願い! 幼馴染であるあなただけが頼りなのよ!」
「何度言われようが、俺の意思は変わらない。わざわざ大陸を渡るような、面倒臭いことなんてやってられない」
「おやおや? 女王メイ様に逆らうのですか? プー・クー・ディン騎士団長」
扉の方から、突然男の声が聞こえてくる。
この声はメッフィーか。あいつ、戻って来やがったか。
振り返ると、一人の男と少女がこちらに歩いてきた。
「あら? メッフィーじゃない。遠征から戻って来ていたのね」
「はい。つい先ほど帰りました。今回も、女王メイ様の好みの男共を捉えてあります」
「そう、それは楽しみね」
「それで先ほどの話しなのですが、この私がプー・クー・ディン騎士団長の代わりに、使者として向かっても構わないでしょうか?」
「別にいいけど、あなた先ほど帰ったばかりでしょう? 疲れているんじゃない?」
「いえいえ、女王メイ様のご命令であればこのメッフィー、体に鞭を打ってでも動いて見せます。ねぇ、ミーリア」
メッフィーは少女の名を呼び、彼女に訪ねる。
「はい……女王メイ様のお望みのままに」
「本当! ありがとう、ミーリア! 次に戻ってきたときには、一緒にお茶をしましょう」
二人の返事に、メイは顔を綻ばせて笑顔を作る。
男を虜にするための作られた笑みではなく、自然体の彼女の笑顔が一番可愛いのだがな……って、俺は何を考えているんだ!
まぁ、二人が俺の代わりに行ってくれるのであれば助かる。だけどミーリアの顔色が少し悪くないか? メッフィーのやつ、ちゃんと休憩をさせているのだろうか?
「では、早速行って参ります」
メイに背中を向けると、メッフィーとミーリアは、玉座の間から出て行こうとする。
「ええ、お願いね! もしムリだった場合は戦争をするから、気を張らないでちょうだい」
はああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
メイの言葉が耳に入り、心の中で叫ぶ。
おい、待てよメイ。男一人の勧誘に失敗しただけで、戦争を引き起こすなんて冗談だよな?
「メ、メイ? 今の言葉冗談だよな? いくら何でも戦争なんてしないよな?」
「あたしは本気よプーちゃん」
メイは片目を瞑ってウインクをした。彼女が何を考えているのか分からなかった俺は、背筋に寒気を覚えた。
俺ことプー・クー・ディンは、この国の女王であるメイから呼び出され、玉座の間に向かっていた。
たく、メイのやつ。俺を呼び出していったい何の用だ? また面倒臭いことをさせられそうで、嫌な予感がするのだが。
あいつは昔から、俺を呼び出して面倒臭いことをさせやがる。今回も碌なことではないはずだ。
嫌な予感が拭えないまま、扉を開けて玉座の間に入る。
「メイ、来てやったぞ。要件はなんだ?」
「あん! いいです。女王様! 卑しいわたしにもっと罰を与えてください」
「もう、しょうがないブダ野郎ね。そんなに欲しいのなら、もっと鞭を叩き込んであげるわ! ブーブー無様に泣きなさい!」
扉を開けるなり、玉座の間ではメイの調教が行われていた。
よし、ここは見なかったことにして、ひとまず帰ろう。少し時間を開けてからまた来た方がいい。
「あら、プーちゃん? 来てくれたのね」
踵を返して部屋から出ていこうとすると、メイが俺に気付いて声をかけてきた。だが、彼女の言葉が耳に入った瞬間、怒りが湧き上がってくる。
「おい! メイ! 何度も言っているだろうが! 俺のことをプーちゃんと言うな!」
俺は声を荒げる。
そう、彼女は昔から俺のことをプーちゃんと呼ぶのだ。しかし、俺はその呼び名が嫌いだ。
「えーどうしてそんなに気に入らないのよ? プーちゃんって可愛いじゃない? あたしは好きよ」
「お前が気に入っていても、俺が気に入らないんだよ! プーちゃんって響きが、ただ飯食らいのダメ男と呼ばれているようで、ムカつくんだ!」
「もう、変なところを気にするわね。あたしはそんな風に言っているのではないのだけどなぁ? なら、クーちゃんにする?」
「そっちは祖父の名だろうが! クーちゃんはもっとダメだ!」
「もう、わがままね」
「普通に苗字のほうでいいだろうが! ディンと呼べ!」
「嫌よ。ディンなんて可愛くないもの」
要求をキッパリ断るメイに、頭が痛くなる。
毎回これだ。彼女が俺をプーちゃんと呼ぶせいで、カッとなって喧嘩腰になる。
そのせいで一向に話が進まず、会議が長引くことが頻繁に起きる。
ムダに時間を割くことはできない。とにかく、一度冷静になって話しを聞かなければな。
「もういい! さっさと要件を言え、俺は忙しい」
「そうだったわね。ごめんなさい。あなた、シロウとか言うSランク冒険者を知っているかしら?」
「シロウ? 誰だそいつは? 全然聞かない名だな」
「何でも、復活した魔王を倒したらしいのよ。そして魔族たちから邪神と崇められているわ。あたし、彼が欲しくなっちゃった」
あー、また始まったよ。メイの悪い性癖が。こいつの趣味は、強い男を屈服させて己に跪く男に調教することだ。
先ほど鞭で打たれているあの男も、元はSランクの冒険者だった。最初はメイに牙を向いていたが、今では彼女の従順な下僕となっている。
「お・ね・が・い。ブリタニア王にはリピートバードで伝えているから、使者として行って来てくれない?」
メイは片目を瞑って色っぽくウインクをする。
そこら辺にいる男なら、一発で言うことを聞くだろう。だが、俺には効かない。
「いやだね。誰がそんな面倒臭いことをしないといけないんだよ」
「お願い! 幼馴染であるあなただけが頼りなのよ!」
「何度言われようが、俺の意思は変わらない。わざわざ大陸を渡るような、面倒臭いことなんてやってられない」
「おやおや? 女王メイ様に逆らうのですか? プー・クー・ディン騎士団長」
扉の方から、突然男の声が聞こえてくる。
この声はメッフィーか。あいつ、戻って来やがったか。
振り返ると、一人の男と少女がこちらに歩いてきた。
「あら? メッフィーじゃない。遠征から戻って来ていたのね」
「はい。つい先ほど帰りました。今回も、女王メイ様の好みの男共を捉えてあります」
「そう、それは楽しみね」
「それで先ほどの話しなのですが、この私がプー・クー・ディン騎士団長の代わりに、使者として向かっても構わないでしょうか?」
「別にいいけど、あなた先ほど帰ったばかりでしょう? 疲れているんじゃない?」
「いえいえ、女王メイ様のご命令であればこのメッフィー、体に鞭を打ってでも動いて見せます。ねぇ、ミーリア」
メッフィーは少女の名を呼び、彼女に訪ねる。
「はい……女王メイ様のお望みのままに」
「本当! ありがとう、ミーリア! 次に戻ってきたときには、一緒にお茶をしましょう」
二人の返事に、メイは顔を綻ばせて笑顔を作る。
男を虜にするための作られた笑みではなく、自然体の彼女の笑顔が一番可愛いのだがな……って、俺は何を考えているんだ!
まぁ、二人が俺の代わりに行ってくれるのであれば助かる。だけどミーリアの顔色が少し悪くないか? メッフィーのやつ、ちゃんと休憩をさせているのだろうか?
「では、早速行って参ります」
メイに背中を向けると、メッフィーとミーリアは、玉座の間から出て行こうとする。
「ええ、お願いね! もしムリだった場合は戦争をするから、気を張らないでちょうだい」
はああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
メイの言葉が耳に入り、心の中で叫ぶ。
おい、待てよメイ。男一人の勧誘に失敗しただけで、戦争を引き起こすなんて冗談だよな?
「メ、メイ? 今の言葉冗談だよな? いくら何でも戦争なんてしないよな?」
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