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第十七章

第八話 野盗たちの正体

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 人間のものとは思えないような雄叫びを上げ、二人の野盗が斧を振り上げながら襲ってきた。

「私が矢で牽制するよ」

 クロエが弓を構えて矢を放つ。彼女の放った矢は野盗の右腕に当たると、そのまま擦り抜けた。

「ウソ! 矢が擦り抜けちゃった」

 依頼書にあったとおりだな。攻撃が通じないみたいだ。だけど、全ての攻撃に耐性を持っているとは考えられない。何かが効くはずだ。

「ミラーカはファイヤーボールで攻撃してくれ。俺はアイシクルを使う」

「わかった。ファイヤーボール!」

「アイシクル!」

 ミラーカが魔法を使って火球を放つと、俺は氷柱を生み出して野盗に攻撃する。

 火球と氷柱は、野盗の肉体に触れるも、そのまま通り過ぎていく。

 属性魔法も効かないか。なら、効果は薄いかもしれないが、これ以上近づかれるわけにもいかない。試しに拘束させてもらう。

「シャクルアイス!」

 氷の拘束魔法を唱えると、野盗の足元を凍らせる。だが、足元が凍って動けないはずなのに、奴らは氷をすり抜けて接近してきた。

 拘束も効かないのか。

「シ、シロウさん。あの二人はきっと幽霊ですわよ。攻撃が効かないのがその証拠ですわ!」

 エリーザが、あの二人は幽霊なのではないかと言ってきた。

 さすがに幽霊ってことはないだろう。だって、まだ昼間だぜ。まぁ、森が太陽光を遮っているから薄暗いけど。幽霊ということはないはず。

「こんなときのために、わたしは用意してありますわ! この十字架を見て、浄化されなさいですわ!」

 エリーザがリュックの中から十字架を取り出すと、野盗たちに見せつける。

 すると二人は一度立ち止まり、顔を引き攣らせた。

 マジかよ。本当に幽霊なのか! 十字架を見て動きを封じたぞ。

『グオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

『グオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

   一度動きを止めた野盗であったが、額に青筋を浮かべる。そして斧を振り上げながら、人間のものとは思えない雄叫びを上げた。

「ご主人様、奴ら『十字架なんてものを見せやがって! おちょくるのもいい加減にしろ!』『俺たちは幽霊であって幽霊ではない! 魔物が十字架を見ただけでやられるかよ!』と言っているワン」

「キャッツ、あいつらの言葉が分かるのか!」

「ご主人様、これでもキャッツは元神獣だぞ。人語以外の言語もマスターしてある」

 まさか、キャッツがあいつらの言葉が分かるとは思わなかった。だけど、お陰で対処法が思いついた。

 幽霊のような特性があるのなら、聖なる武器なら通用するはず。

「ウエポンカーニバル」

 魔法を発動させ、空中に数多くの得物を展開させる。そしてそのうち二本の剣を前に持ってきた。

「放て! ウエポンアロー!」

 二本の剣を発射して幽霊となっている野盗に向けて放つ。

『グオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

『グオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

 幽霊型の魔物となっている野盗に、二本の剣が突き刺さると、二人は雄叫びを上げる。

 やつらは光に包まれて消え去った。

 思ったとおりだ。聖なる剣であれば、幽霊型の魔物を浄化して倒すことができる。

 俺のウエポンカーニバルは、異世界の伝説にある武器を具現化させている。野盗たちを倒したのは、聖剣と呼ばれるクラウ・ソラスとクルージーン・カザド・ヒャンと呼ばれるものだ。

 この二つは光の剣とも呼ばれ、霊的存在を斬ることができる。

 キャッツのお陰で助かったな。お陰でなんとか倒すことができた。

 これで倒せない野盗の正体がわかった。ウエポンカーニバルから生み出される光の剣を使えば、この依頼も容易く終わらせることができるだろう。

 それにしてもあの野盗たち、どっかで見たことがあるんだよな。

 まぁ、野盗の顔なんてみんな似たような顔つきだし、そんな風に思ってしまうのだろう。

「この先にも、まだまだ幽霊型の魔物となっている野盗たちがいるはずだ」

 森の奥に進み、見つけた幽霊の野盗を次々と倒していると、洞窟を見つけた。

「あんなところに洞窟があるな」

「シロウ、見てください。幽霊野盗が中に入って行きますわ」

 マリーが洞窟を指差すと、幽霊野盗が中に入るのが見えた。

「もしかしたら、あの洞窟が奴らのアジトなのかもしれない。中に入ってみよう」

 仲間たちに洞窟の中に入ることを告げ、周辺を警戒しながら洞窟に近づく。

 中を覗いて見ると、奥は暗く様子を伺うことができない。

 あいつらは幽霊と化しているからな。わざわざ明かりをつける必要がないのだろう。

「ファイヤーボール」

 火球を松明代わりに使い、周辺を明るく照らす。

「シロウさん。うめき声が聞こえる。多分、魔物と化した野盗たちだと思う。数的に三人くらいかな?」

 奥に進もうとすると、クロエが洞窟の奥から声が聞こえると言う。

「クロエ、どんな感じに聞こえるのだワン? キャッツが通訳をするから、教えてほしいワン」

「えーとねぇ、グオオオオ、グオ、グオグオ、グオオオオオ、かな?」

「ふむふむ。なるほど、なるほど。ご主人様、あいつらはこんな会話をしているワン『あら、奥様その美しいネックレス何処で手に入れましたの?』『この前セールで安く売っていたので、旦那に内緒で買いましたの』『あら、よかったですわね。私も今度こっそりと何か買おうかしら?』と言っているワン」

「井戸端会議をしているおばさんかよ!」

 俺は思わず声を上げてツッコミを入れる。

 しまった! ついノリツッコミをしてしまった。これでは敵に俺たちの存在が気づかれてしまう。

 幽霊野盗が襲ってくるかもしれない。そう判断した俺は、戦闘に備えて構えた。

 しかし、様子を伺っても敵が来ることはなかった。

 運よく聞こえなかったのか?

 まぁ、それならよかった。多分、クロエも魔物の声を真似することが上手くできなかったのだろう。微妙に発音などを間違えて、それでキャッツがあんな風に通訳したに違いない。

「幽霊野盗は来ないみたいだから、先を進もう」

 何が起きてもすぐに対処ができるように、警戒しながら奥に進む。

 洞窟の中は基本的に一本道だな。壁には扉が設置されてあるけど、魔物がいる気配がないから、スルーしてもいいだろう。

 突き当たりに扉がある。もしかしたら、あそこが洞窟の最終地点なのかもしれないな。ダンジョンではないから、地下への階段とかは多分ないだろう。

 さぁ、この奥で幽霊野盗とラストバトルだ。

 俺は思いっきり扉を開ける。扉の先には、首にかけているネックレスや、指輪などを互いに見せ合っている幽霊野盗たちの姿があった。

 まさか、キャッツの通訳って本当に合っていたのか?
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