Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十七章

第二話 どうしてキャッツがケモノ族になっている!

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「お前、もしかしてキャッツなのか」

 俺は信じられない思いに駆られながらも、全裸のケモノ族の女の子に問う。

「そうだワン」

「どうしてキャッツがケモノ族になっているんだよ!」

「ケモノ族?」

 キャッツは一度首を傾げると、頭を下げて目線を下に向ける。

「ニャニャー! キャッツの身体が人になっているワン!」

 自分の身体が変わっていることに気付き、キャッツは驚く。

 獣だったころの名残なのか、驚いたときの声は猫のようになるみたいだな。

「ご主人様、見てくれなのだワン! キャッツに大きい胸がついているワン! ボヨンボヨンなのだワン!」

「こ、こらー! 服を離して俺に見せつけようとするな!」

「シロウ、大丈夫ですの? 何だか騒がしいので、心配して来ましたわ」

 まずい。マリーたちが来てしまった。この状況を彼女たちに見られたら、間違いなく悪い展開になってしまう。

「シロウさーん! 大丈夫ですか?」

「全然返事が返ってこないね。この部屋の合鍵をもらってこよう」

「それなら、わたしがもらってきますわ」

 エリーザが合鍵を取りに行ってしまう。扉が開けられる前に、キャッツをどうにかしないと。まずは服を着せるところからだ。

「キャッツ、今から服を着せる。両手を上げてくれ」

 廊下側にいるマリーたちに聞こえないように、小声で腕を上げるように言う。

「こうかワン?」

 俺の指示に従い、キャッツはバンザイした。

 よし、あとはこの服を彼女に着せるだけだ。

 焦りを感じる中、急いで服をキャッツの腕に通す。

「エリ、悠長に鍵を持ってくる時間はないですわ。騒ぎがあったあとに、静かになりましたのよ。シロウの身に何かあったのかもしれませんわ」

「マリーさんの言うとおりだよ!」

「私がこの扉を壊そう。スライム! 扉を溶かせ!」

 ミラーカの声が聞こえたあと、扉の隙間から煙が入ってきた。そして数秒後に扉が倒れ、彼女たちが入ってくる。

「シロウ大丈夫ですの!」

「シロウさん、大丈夫!」

「シロウ無事かい!」

「シロウさん大丈夫ですの!」

 部屋の中に入るなり、彼女たちは固まってしまった。

 マジかよ。俺、このあとどうしようか。

「シロウ、これはどう言うことなのか、ご説明していただけますわよね」

 先に硬直が治ったマリーが、俺に近付く。

 彼女は笑顔を浮かべているが、俺にはわかる。絶対に怒っている。

「マ、マリー落ち着け!」

「まさかシロウが、ケモノ族の女の子が好みだとは思いませんでしたわ!」

 え?

「シロウの好みの胸は、手に収まる程度の大きさだということは知っていますが、まさか外見はケモノ族がいいとは知りませんでした。これは早速ケモミミと尻尾を調達しなければなりませんわ」

 ちょっと待て! どうしてマリーが俺の好みの胸のサイズを知っている!

「あう、私はシロウさんの胸に収まりすぎます。手のフィット感が重要視しているのであれば、小さすぎます」

「わたしもクロエさんよりなので、同じですね」

「逆に私はシロウの手には収まりきれない」

「「「はぁー」」」

 マリーのせいで、俺の性癖がクロエたちに知られてしまった! それにどうして彼女たちが落ち込む! 普通は怒るだろうが!

 予想外の展開に、逆に俺の方が感情を顕にしたい気分だ。

 彼女たちが怒っていないことはありがたいけれど、逆にどうしたらいいのかが全然分からない。

「ご主人様、キャッツは一人で服を着ることができたワン」

 この場の空気をぶち壊すように、キャッツが俺の服を着たことを告げる。

「そ、そうか。偉いぞキャッツ」

「「「「キャッツ!」」」」

 キャッツを褒めた瞬間、マリーたちが驚きの声を上げた。

 そしてこちらに近づくと、四人とも彼女をマジマジと見る。

「あなた、本当にキャッツですの?」

「マリーさん。よく見て、耳はキツネだけど、あのモフモフの尻尾は犬だよ。この特徴のケモノ族は、この町にはいなかったはずだよ」

「それにしても興味深い。どうして獣からケモノになったのか調べて見たい。学者としての好奇心が抑えきれない。シロウ、彼女に麻酔を打って、お腹を掻っ捌いてもいいかい?」

「ダメに決まっているワン! フシャー!」

 ミラーカの言葉を聞いた瞬間、キャッツは猫のように威嚇する。

 うん、この光景は前にも一度見たことがあるな。

「それにしても、どうして急にキャッツがケモノ族になったのでしょうか?」

 エリーザが訊ねてくるが、正直俺にも分からない。

「いや、俺にも分からない。今朝目が覚めていたら、キャッツがケモノ族になっていた」

「何か変なものでも拾い食いしたのでしょうか?」

 クロエの言葉を聞いた瞬間、数日前のことを思い出す。

 あれが直接関係あるとは断言できないが、彼女はアッテラからもらった五百年前の木の実を食べた。俺の知る限り、彼女が拾い食いをした記憶はない。

 どうしてキャッツがケモノ族になってしまったのか、異世界の知識を使えば何かわかるかもしれない。

 ユニークスキル【魔学者】を発動して関係ありそうなものを探してみる。しかし、異世界の知識でも解明することはできなかった。

 辛うじて『擬人化』というワードは出てきたけど、あれは異世界人が人外を無理やり人として妄想した姿だ。病気でも突然変異でもない。

「とにかく、キャッツがケモノ族になってしまった以上は、シロウと同じ部屋で寝泊まりをすることを禁じますわ」

「それもそうだよね。今まではペットだから許されていたことだもの」

「次からは、誰がキャッツと相部屋になるのか決めないといけないね。誰も候補がいないのなら、私が同じ部屋になってもいいよ」

「ミラーカさん。それではキャッツが落ち着いて、部屋の中にいることができなくなりますわ」

「そうだワン。ミラーカだけはお断りするワン」

 キャッツが拒否すると、ミラーカは懐からキャロットを取り出す。

「へー、別にいいけれど。私と同じ部屋でない限りは、もうキャロットをあげる機会は減る」

「キャロット!」

 大好物のキャロットを見た瞬間、彼女の表情が変わった。顔が綻び、目がとろけている。

 キャッツのやつ、本当にキャロットが好きだよな。まるで恋する乙女のようだ。

「さぁ、取って来い!」

「ワン、ワン!」

 ミラーカが廊下にキャロットを投げると、キャッツは急いで廊下に出る。

「さて、私たちも一度部屋に戻ろう」

 ミラーカが部屋に戻るように促すと、彼女たちはこの部屋を出ていく。

 女性陣がいなくなったその時、どうしてマリーが俺の性癖を知っているのかを思い出した。

 そう言えば、オルテガと飲み会をしていたときにしゃべってしまったな。認識阻害の魔法をかけたけど、マリーには効かないんだった。
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