Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十六章

第四話 スカーヤさんは元に戻りました

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 白銀の九尾と化したスカーヤさんを元に戻すべく、思考を巡らせる。

 考えろ、絶対に何か方法があるはずだ。

 魔神木となったレオを助けたときは、本体がまだ体内に残っていた。もし、あれと同じケースであれば、あの中にスカーヤさんがいるはず。

「パースペクティブ」

 透視魔法を唱えた。人の目は、物質が電磁波を吸収した波長を色として見る。

 魔法で白銀の九尾に対して電磁波の吸収、散乱が生じないようにさせ、魔法の使用者である俺にだけ透けて見えるようにした。

 ダメだ。あの中にスカーヤさんはいない。

 透視をしても見つけられないと言うことは、魔神木とまた違ったケースということだ。

 なら、次のパターンを試すか。

「シロウ、危ないですわ!」

 マリーが危険を知らせて俺はハッとなる。目の前に火球が迫っていた。

「ウォーターポンプ」

 水圧の強い魔法を唱え、火球を蒸発させる。

 白銀の九尾の尻尾から火球が生み出されているな。九つあるから一度に九人を狙えると言うわけか。

「あーん、全然当たらないよ!」

 クロエが狙いを定めて矢を放っているが、直前で躱されている。

 額にも現れた目で、あらゆる角度から周囲を見ることができているみたいだな。これでは攻撃を当てるのにも、少しだけ難しいかもしれない。

 さっさと次の手段を試すとするか。あんまり攻撃を回避されてばかりだと、彼女たちの戦意が失われる。

 白銀の九尾を見る。すると彼女は素早く動き、俺の視界から姿を消す。

 視線にも敏感なのか。無敵貫通系の魔法は、対象となる相手を認識しておく必要がある。

 まずは動きを封じる方が先か。俺の考えている戦法のほとんどが、姿を捉えていないといけないからな。

 面倒臭いけれど、まずはそこからするとしますか。

「ダイナミックビジュアルアキューイティー!」

 動体視力を向上させる魔法を唱え、俺は白銀の九尾の動きを捉える。

 これで、なんとかなりそうだな。だけど念には念を入れるとしますか。慢心はよくないからな。

「ウオーター」

 水の呪文を唱え、空気中の水分子を集めて水を作る。彼女の動きを先読みしながらそれを地面に設置することで泥濘ぬかるみができる。

 すると予想どおり、白銀の九尾はそこに足を置いた。彼女は足を滑らせて転倒する。

 拘束をするなら今だ!

「リストレイント」

二度と使わないと決めた魔法をもう一度唱える。

 拘束するのであれば、氷の拘束であるシャクルアイスが効果的だ。だけど、あの拘束をしてしまうと、彼女の細胞を破壊してしまう恐れがある。そんなことになってしまっては、スカーヤさんを元に戻すことができない可能性があったからだ。

 魔法が発動すると、現れたのは猿轡さるぐつわや縄ではなく、巨大な網だった。

 網が白銀の九尾の身体を覆うと、彼女は身動きが取れなくなる。

 もしかしてこの魔法、対象となる相手や状況によって拘束方法が変わるのか?

 もしそうなら封印をする必要はないかもしれないな。

『グルルルル』

「スカーヤさん。今戻してやるからな」

『ガウ! ガウ!』

 白銀の九尾に声をかけると、彼女は吠える。五つの目は俺を睨みつけていた。

「スカーヤ! どうしてそんな目をするのですか。シロウさんはあなたを元に戻そうとしてくれているのですよ」

『グルルルルル』

 妹のコヤンさんが声をかけるも、彼女の威嚇は治らない。

『ワーウン?』

「キャッツ?」

 どうしたものかと考えていると、キャッツが俺たちのところにやって来た。

『ワン、ワン、ワン、ワワン』

『ガウ、ガウガウ!』

『ワワワーン、ワンワン』

『ガウ、ガウ』

 キャッツとスカーヤさん、会話をしているのか? 俺には何を言っているのかさっぱりわからない。

『ワン、ワン、ワワーン』

『ガウー』

 見守っていると、スカーヤさんは睨みつけるのを止め、目を閉じる。するとキャッツは俺の肩に飛び乗ると、頬ズリをしてきた。

「ありがとう。説得してくれたんだな」

 キャッツの頭を撫で、白銀の九尾となったスカーヤさんをもう一度見る。

「セルリワインド」

 スカーヤさんに生物限定で効果を発揮する時の魔法を使う。すると、彼女の細胞分裂が巻き戻り、身体がどんどん小さくなっていく。

 今度は九つあった尻尾が一つになると、額の目も消え、裂けた口も元に戻る。

 ふぅ、どうにか俺の予想が当たってくれてよかった。

 魔神木のようなパターンじゃないとなると、細胞自体が弄られているのではないのかと思った。きっと細胞に細工がされる前に戻っているはずだから、彼女が白銀の九尾になることは二度とないだろうな。

 異世界の知識には感謝しないといけないな。お陰でスカーヤさんを助けることができた。

 スカーヤさんを捕まえている網を消すと、彼女は立ち上がった。そして顔を合わせづらいのか、顔を俯かせている。

 こんなとき、なんて声をかけてあげればいいのだろう。

 悩んでいると、コヤンさんが前に出た。

 パーン!

 彼女は無言でスカーヤさんの頬を叩く。

 俺は驚いて一瞬言葉を失った。

「スカーヤ、どうしてわたくしがあなたを引っ叩いたかわかりますか?」

「ごめん……なさい」

 スカーヤさんは小さく頷くと、か細い声で謝る。

「あなたの身勝手な行動で、シロウさんたちにも迷惑をかけました。それだけではなく、この世界を危機に晒してしまったのですよ」

「ごめんなさい」

「コヤンさん、その辺にしてあげよう。スカーヤさんも反省している」

「ですが!」

「大丈夫だ。絶対に魔王復活なんてさせない。もし、復活したとしても、俺がなんとかしてみせる」

 ジッとスカーヤさんを見つめ続ける。

「わ、分かりました。あなたがそこまで言うのでしたら、これ以上は咎めません。ですが、それなりの償いをしてもらいます。わたくしと一緒に、魔術の達人の末裔として、シロウさんのサポートに回ってもらいます。よろしいですね」

「はい」

 うーん。コヤンさんが妹のはずなのに、まるで真逆だな。

「今日のところは町に戻って休もう。明日、ソロモンたちのいるアジトに向かう。満月の日は近いからな」

 俺たちは最終決戦に備えるためにも、一度町に帰ることにした。
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