上 下
139 / 191
第十五章

第六話 キャプテンモネの思い

しおりを挟む
「これはいったい何の冗談かな?」

「冗談でこんなことをすると思うか? 俺は本気だ」

 俺は今、本気でキャプテンモネに壁ドンをしている。

 彼女に視線を向けていると、キャプテンモネも逸らさずに見つめてきた。

「キャプテンモネ、あなたはわざと戦い辛い環境で俺たちを戦わせたな」

「何を根拠にそんなことを言うのだい?」

「根拠ならあるさ。気流が荒い場所で戦闘を行なっていた際、すぐにあの場から離れようとはしなかった」

 説明を聞いた彼女は小さく息を吐く。

「やれやれ、そんなことでわざとやっていたと言われるとは悲しいよ。あのときのボクは、操縦で手一杯だった。船を水平に保つことばかり考えていたからね」

「それは嘘だな。船を水平に維持すること以外何もできなかったのなら、スカイドラゴンのテールアタックを避けることはできないはずだ。つまり、あなたは操縦に余裕があった。これが俺の言える根拠だ」

 力強く答えると、彼女は顔を俯かせる。

「まさか。あの一回で見抜かれてしまうとは思ってもいなかった。そうだよ、あれはわざとだ。わざと環境が悪い中、君たちをスカイドラゴンと戦わせた」

「どうしてそんなことをしましたの?」

 俺の代わりに、マリーが訊ねる。

「空の旅はいつも穏やかではない。気流が荒くなるときもあるし、そんなときに限って魔物に襲われることもある。だから、君たちの適応力を確かめさせてもらった。このボクの命を預けるに相応しい人物なのかを知るために」

 キャプテンモネが素直に答えると、壁ドンを止めて彼女から離れる。

「事情は分かった。だけど、自分勝手な行動で仲間たちを危険に晒したことは許せない。あの場で戦ったことで、仲間が飛行船から投げ出されそうになった」

「別に許してもらおうとは思ってもいないさ。空や海の上での戦闘なら、よくあることだからね」

 彼女の言葉に、思わずカッとなりそうになる。

「君やそこにいる彼女たちとは何の絆も存在していない。戦闘で死のうがボクには関係ないよ。ボクたちはあくまでもビジネスパートナ。お互いに対等な関係であり、一歩引いた距離感で今後も接する。もし、これでボクのことを嫌いになったのなら、他をあたってくれ」

 キャプテンモネが船の中に入ると、飛行船は海上から上昇していく。

「シロウさん。大丈夫ですの?」

 エリーザが心配そうに俺を見て声をかけてきた。

 そういえば、エリーザのときも初めはギクシャクとした関係だったよな。だけど、今回はあの時以上のマイナスからのスタートだ。

 キャプテンモネ以外に頼る人はいないし、ここは俺も彼女に合わせるしかない。

「ああ、大丈夫だ。初めて空で戦ったからな。それで少し疲れただけだ」

「シロウさんありがとう」

『ワン、ワン』

 クロエとキャッツが近づくと礼を言ってくる。

 急にどうした? 別に礼を言われるようなことはしていないはずなんだけど? それに何だか妙に嬉しそうだ。

「どうした? 別に礼を言われるようなことはしていないだろう?」

「シロウさん。本気で怒ってくれたじゃない。それだけ私たちのことを大事にしてくれているんだなぁと思うと、何だか嬉しくなって。だからお礼を言ったの」

 な、なるほど。そう言う解釈もできるのか。

 確かにみんなは俺にとって大切な仲間だ。だからこそ、ついあんな態度をとってしまった。

「まぁ、俺はチームエグザイルドのリーダーだからな。仲間たちを大事にするのは、リーダーとして当たり前だ」

 何となく気恥ずかしさを覚えたので、リーダーとして当たり前だと彼女に伝え、視線を逸らす。

「もう、素直ではありませんわねシロウ。ですが、そんなところもワタクシは大好きですわ」

「うん。仲間思いで優しいところも私も大好き!」

「それだけではない。シロウは強敵にも立ち向かう勇気と男らしい力強さがある。そんなところが私は大好きだ」

「わたしも、人の立場になって親身になってくれるところが大好きですわ」

『ワン、ワン、ワワン!』

「皆さん。シロウさんのことが大好きなのですわね。さすが、魔王復活を阻止しようとする英雄様です」

 マリーたちが俺に好意の言葉を告げると、コヤンさんがからかう。

 彼女たちの気持ちは正直に嬉しい。だけど、みんなの好きは友人関係の好きに過ぎない。

 マリーは元々から俺のユニークスキルが目当てだったし、クロエは呪いを解いたから慕ってくれているだけだ。

 ミラーカは初めて人間に敗北したことがきっかけで、俺に興味を持っている。

 エリーザは、最初は仲が悪かった。だけど美少女コンテストがきっかけで信頼関係を築き、マイナスからゼロに上がった。

 どう考えても、彼女たちの好意が恋愛に発展したものだとは思えない。

「みんなありがとう。俺も大好きだぞ」

 彼女たちに感謝の言葉と、俺の気持ちを伝える。

 すると、なぜかマリーたちは顔を赤らめた。

「みんなエグザイルドのメンバーだからな。ある意味家族のような感じだから、俺も兄妹愛のようなものを感じるよ」

 続けて兄妹愛のようなものだと言うと、コヤンさん以外は固まったかのように動かなくなった。

「あらあら、ご期待していたものとは違った感情だったので、ショックを受けられたみたいですね。シロウさんは本当に罪なお方ですわ」

 どうしてマリーたちが固まったのか、コヤンさんには心当たりがあるようだ。

 だけど俺には分からない。いったい彼女たちに何が起きたんだ?
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...