Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

文字の大きさ
上 下
138 / 191
第十五章

第五話スカイドラゴンとの空中戦

しおりを挟む
 うーん、これは困ったな。

 事故とはいえ、今の俺はマリーたちに押し倒され、身体中から女の子の柔らかい感触が伝わっている。

 落ち着け俺、変に意識してしまっては、俺のムスコが反応してしまう。

 ここはなるべく冷静を装って、普段どおりの俺を演じなければ、気まずい空気にしてしまう。

「あいたた。ワタクシはいったい何にぶつかってしまったのですの?」

「あれ? 何か硬いものが当たっているような?」

「まさか雲の中を直行するなんて、運転が荒いじゃないか」

「どうやら、わたくしたちはお互いにぶつかってしまったようですわね」

 どうやらみんな気がついたようだな。彼女たちの口振りからして、まだ俺を下敷きにしていることに気付いていないみたいだ。

「みんな、悪いけれど離れてくれないか?」

「「「「!」」」」

 彼女たちに声をかけると、ようやく状況を理解したようだ。四人は慌てて俺から離れる。

「シ、シロウ! すみませんですわ。気付かなかったとは言え、あなたの上に乗っかっていたなんて」

「ごめんなさい! シロウさん!」

「あはは、まさかこんなことになるなんて凄い確率だね」

「申し訳ありません。何と謝罪すればよいのか」

「いや、別に気にしなくていい。事故だったのだから仕方がないよ」

 あ、危なかった! あともう少し遅かったら、完全にムスコが戦闘態勢に入るところだった。

 俺たちは互いに苦笑いを浮かべ、しばらくの間沈黙が流れる。

 ど、どうしようか。どっちにしても気まずい空気になってしまった。

『ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォン!』

 この空気をぶち壊すかのように、何者かの雄叫びが真上から聞こえてきた。

 顔を上げると、目を大きく見開く。

 で、でかい。

 真上を飛行している生き物は、全長三十メートルはあるのではないかと思うほどの巨大な竜だった。

 翼は生えてはいないが、蛇のように長い胴体には肢体があり、口元の髭はナマズのように長い。

 この特徴を持つ竜は、確かスカイドラゴンと呼ばれる竜種。空の王者とも呼ばれる竜が、飛行船の真上を飛んでいる。

 スカイドラゴンは飛行船に気付いているようで、顔を下げていた。

 ドラゴンと目が合うと、やつは突っ込んで来る。

 キャプテンモネが縄張りに侵入した者を襲うと言っていたけれど、こいつが討伐対象か。

 ドラゴンが迫る中、瞬時に作戦を考える。

 どうする? 普通なら結界魔法のライトウォールで船を包み込むのが一番だけど、それではキャプテンモネの操縦を邪魔することになる。だからと言って、あれだけの大きさなら、ちょっとした攻撃魔法では効かないはずだ。

 スカイドラゴンは大きく口を開けた。

 口を開けたか。それならこいつを食いやがれ。

「アイシクル!」

 魔法を唱え、巨大な氷柱を作り上げると、ドラゴンの口に向けて放つ。氷柱はスカイドラゴンの口を塞いだ。

 いきなり口に入ってきた氷柱に驚いたようだ。竜の動きが止まり、その間に飛行船はとおり過ぎる。

 ひとまず回避することに成功したか。だけど、次はどのようにして倒すのかを考えないといけないよな。

「私が矢を放つよ」

 クロエが弓を構えて矢を放つ。射出された矢はスカイドラゴンの歯に当たるが、弾かれた。

「全然効いていない!」

「サイズに差があるね。これではいくら攻撃しても、殆ど効果がない」

 ミラーカの言うとおりだ。俺の魔力で、どうにか対等に相手ができるほどのドラゴン。彼女たちがいくら頑張ったところで、微々たるダメージしか与えられないだろうな。

 うん? そうか。問題なのはサイズだ。なら、コンパクトにしてあげれば問題ないじゃないか。

「セルリワインド」

 生物限定で効果を発揮する、時の魔法を使う。すると、スカイドラゴンの細胞分裂が巻き戻り、やつの身体はどんどん小さくなっていく。

 よし、今のあいつは三分の一のサイズになったはずだ。

「これでみんなが攻撃してもダメージが入るはず」

「さすがシロウですわ! 鞭が当たる範囲まで近づいたら、攻撃しますわね」

「それまでの間、私が攻撃をするよ」

「私も遠距離魔法で攻撃するとするか。ファイヤーボール!」

「わたくしも魔法で攻撃するとしましょう。ウォーターボール」

『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 ドラゴンが退化したことで、やつの肉体にダメージが入るようになった。三人の攻撃を受け、スカイドラゴンは苦しむ。

 よし、これなら倒すことができるはずだ。

 そう思ったとき、急に飛行船が揺れ、足場が悪くなる。

 気流が乱れている場所に入ってしまったのか? これでは狙って攻撃を当てることが難しくなる。

 自然も敵に回っている状況の中、ドラゴンは好機だと思ったのだろう。尻尾を使い、船を攻撃してきた。

 だが、キャプテンモネが操縦を頑張ってくれたのだろう。敵のテールアタックはスレスレで当たることはなかった。

「このままではスカイドラゴンにダメージを与えられない」

 乱れた気流から離れることが一番だ。

 やつを倒すにはそれがもっとも効果的となる。それなのに、どうして彼女はこの場から離脱しようとしない?

  もしかして!

 脳内に、とある可能性が思い浮かんだ。

 確かに彼女の立場からすれば当然のことだ。だけど、これはあまりにもやり過ぎている。

 マリーたちも、揺れ動く甲板に立っていられない状況だ。

「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「クロエ!」

 バランスを崩したところに強い風が吹き、クロエが吹き飛ばされる。

 急いで駆け寄り、腕を伸ばして彼女を掴むと、飛行船から落ちそうになったところを助けた。

「シロウさん。ありがとう」

『ワンワンワン!』

 今度はキャッツが吹き飛ばされる。

 直様空いている方の手でキャッチすると、飛ばされないように抱き締めた。

 くそう。これ以上は好き放題にさせるわけにはいかない。こいつで終わらせる!

「ハートラプチュア」

 即死魔法を唱え、スカイドラゴンの心臓の壁に穴を開けて破裂させる。

『グオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

 心臓に穴が空いたドラゴンは、断末魔の声を上げながら落下して行く。

 討伐対象がいなくなると、飛行船は荒れた気流から離れ、そのまま海に着地した。

 海にはスカイドラゴンの死骸が浮いている。

「いやーお見事、まさか本当にあのスカイドラゴンを倒すとはね。君たちの実力は認めよう」

 扉が開き、キャプテンモネとエリーザが甲板に顔を出す。

 ドン!

「シロウさん! 何をやっていますの!」

 俺の行動を見て、エリーザが驚く。

 何せ、キャプテンモネに壁ドンを仕掛けたのだ。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。 そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。 だけどその条件がなかなか厄介だった。 何故ならその条件というのが────

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

処理中です...