Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十五章

第二話 キャプテンモネの造船所

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「そうか、分かったぞ!」

「分かったって何がですの? シロウ」

「なぞなぞだよ。多分キャプテンモネの造船所の場所が分かった」

「凄い! 流石シロウさん! あう、大きな声を出したら余計にお腹が減ってきた」

 クロエ、相当お腹が空いているようだな。テーブルの上に頭を埋めている。

「先に食事をしようか。その後に説明をするよ。あるものも準備をしないといけないし」

 メニュー表を渡し、先に女性陣が注文を決める。最後に受け取った俺はメニューを一通り見て注文を決めた。

「すみません! 注文いいですか?」

「はーい。少々お待ちください」

 しばらくして給仕がやって来ると、料理をオーダーする。

「ありがとうございます。できるまで少々お待ちください」

 給仕が離れると、十数分後に注文の品が運ばれ、テーブルの上に料理が置かれる。

「それじゃあ食べようか」

 料理を食べながら、もう一度窓からの風景を見る。

 うん、もう一度確認したけれど、やっぱり間違ってはいない。俺の予想が当たっていれば、あそこがキャプテンモネの造船所だ。問題があるとすれば、どうやってあそこまで行くのかだけど。まぁ、魔法を使うしかないだろうな。

「美味しかった! 空腹は最高の調味料だね!」

 料理を食べ終わったクロエが満足そうな顔をする。

 どうやら満足したようだな。ようやく話を進めることができる。

 食後に注文した紅茶を飲み干し、通りかかった給仕に声をかける。

「すみません。この町の地図ってありますか。少しの間お借りしたいのですけど」

「地図ですね。ありますよ。少々お待ちください。空いているお皿はお下げしますね」

 空になった皿を給仕が持って行く。そして数分後に戻って来た。

「お待たせしました。この町の地図です」

「ありがとうございます」

 給仕から町の地図を受け取り、テーブルの上に広げる。

 やっぱりそうだ。地図でも確認してみたけれど、俺の脳内マップと一致している。

「この町は三日月の形をしておりましたのね」

「へー、真上から見るとこんな感じなんだ」

「それで、私たちの目的の場所はどこ何だい?」

 マリーとクロエが町の感想を言うと、ミラーカが結論を先に聞いて来る。

「キャプテンモネの造船所はここだ」

 地図のある部分を指差した。

「ここって海ですの? どうして海の中に造船所が」

「エリーザさん。よく見てください。小さいですが、ここに小島のようなものがあります」

 お、コヤンさんは気づいたようだな。

「そう。分かりづらいけど、ここに小さい島がある。だいたいこのあたりが、朝限定で運営しているお店があった場所だ」

「どうしていきなり食堂の話をしますの?」

 突然食堂の話題を出したことで、マリーが困惑する。

「なぞなぞを思い出してみてくれ」

「朝は一体、昼は三体、夜は二体になる動物の中心に向かえ、さすれば汝の求めるものに辿り着くだろう。だったよね? シロウさん」

「クロエ、そのとおりだ。そしてここにはキャッツの像が一つ置かれていた」

「なるほど、そう言うことだったのか。ようやく私にも、シロウが小島にあると言った理由が分かったよ」

 やっぱりミラーカは学者だけあって頭の回転が速いな。今の説明で、どうして俺がこの場所を選んだのかを理解してくれた。

 だけど、他のみんなはどうしてそこなのか理解してはいないみたいだな。よし、一応最後まで説明するとするか。

「そして夜のみ営業しているお店がだいたいこのあたり。ここからだと、キャッツの像が二つ見える」

「なるほど、ようやくわたくしにも理解することができました。朝のみ営業しているお店からは、神獣様の像は一つしか見えない。夜のみ営業しているお店からは、神獣様の像が二つ見えた。つまり、昼の時間帯に営業しているこのお店から外を見ると、神獣様の像が三つ見えると言うわけですね」

「ああ、実際この場所から窓を覗くと、キャッツの像は三つ見ることができた」

 説明すると、彼女たちは窓の外を見る。

「本当ですわね。ここからキャッツの像が見えますわ」

「本当だ! 全然気づかなかった!」

「なるほど、あの女、面白いことを考えるじゃないか」

「こんな手の込んだなぞなぞ、普通はすぐには解けませんわ」

『ワン、ワン』

「偶然歩いたルートが、謎々を解く鍵となっていたなんて、ある意味凄いですわね」

 それぞれが口にすると、俺は続きを語る。

「動物の中心に向かえと言うのは、キャッツの銅像が向いている方向が交差する場所のことを指している。対角線上に辿っていくと、交点となる場所があの小島と言うわけだ。取り敢えず今から行ってみよう」

 通りかかった給仕に会計を伝え、支払いと地図の返却をすると、なるべく小島に近い場所に向かう。

「シ、シ、シロウさん。あんまり海に近づかないでください」

「近づきたくないのなら、俺から離れればいいじゃないか」

 波止場から目的地である小島を眺める。海に近いこともあり、エリーザは俺に抱きついている。

 少しでも離れた場所にいたいのなら、ミラーカがいる場所まで下がって、彼女に抱きつけばいいのに。どうしてそこまでして俺に抱きつこうとするのだろうな。

 まぁいいや。そのことに関しては、今は置いておこう。

 エリーザのことはひとまず置いといて、離れた小島を見る。

 問題はどうやってあそこまで行くかだよな。ボートの貸し出しがあるわけでもないし、さすがにあそこまで泳ぐわけにもいかない。

 そもそも、そんなことを言い出したら、エリーザが卒倒するかもしれない。

「こうなったら、最初に考えていたみたいに、魔法で道を作るか」

 海を見ながら魔法を唱える。

「アブソリュート・テンパラチャー!」

 魔法が発動した瞬間、海の表面が凍って足場となる。

 一部分の海を凍らせただけだから、船の邪魔になることはないだろう。

「これでよし。みんな渡ろうか」

「ええ! 凍った海の上を歩きますの!」

 俺にしがみついているエリーザが驚きの声を上げる。

「大丈夫だ。何かあったときは助けるから」

「嫌ですわ。一歩も動けません」

 参ったなぁ。エリーザがしがみついているから、彼女も歩いてくれないと、先に進めないのだけど。

 こうなったら仕方がない。

「エリーザ、失礼するよ」

「え、え!」

「「「ええー!」」」

 エリーザをお姫様抱っこした途端に、マリーとクロエとミラーカが驚く。

 どうしてマリーたちのほうが驚く。

「エリーザしっかり掴まれよ」

「分かりました。何があっても一生シロウさんから離れません」

「いや、小島に着いたら降りてほしいのだけど」

 氷の上を渡り終え、小島の地を踏む。その後エリーザを下ろした。

 さてと、マリーたちもそろそろ追いつくかな……うっ!

 振り返ってマリーたちを見ると、彼女達は俺を睨んでいるような気がした。

 俺、みんなに睨まれるようなことって何かしたか?

 分からないが、ここは気づかなかったことにしよう。

 彼女たちに背を向け、島にある建物を見る。すると扉が開かれて人が出てきた。

 やっぱりそうだったか。
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