Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十五章

第一話 キャプテンモネの造船所を探すためになぞなぞを解きます

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「お願いだから退いて! ボクの方からでは止まれない!」

 女性が勢いよく坂を駆けてくる。

 退くように言われても、俺が避けたところで何かにぶつかってしまうのは避けようがないだろう?

 ここは助けてやるか。

「危ないからエリーザとキャッツは離れてくれ」

 俺に抱きついている彼女たちに離れるように言う。

 一人と一匹が離れると、坂道を全力疾走している女性に向き合った。

「エンハンスドボディ!」

 肉体強化の呪文を唱え、身体を強固にする。

 これなら彼女を受け止めることができるだろう。

 両手を広げて仁王立ちをすると、女性が俺と接触したタイミングで彼女を抱き締める。

 足が滑って数センチ後方に下がるが、どうにか受け止めることができた。

「大丈夫か?」

「ええ、ありがとう。まさか受け止めてくれるとは思わなかったけれど、お陰で助かった」

 どうやらケガはしていなさそうだな。

 抱き締めた腕を離して女性を解放する。

「ありがとう。それじゃあね!」

 例を言うと、女性は俺から離れて行った。

 道を訊ねるなら今じゃないか。

「ちょっと待ってくれ! 俺たちキャプテンモネの造船所に行きたいのだけど、場所を知らないか?」

 女性に道を訊ねるも、彼女は無言で遠ざかって行く。

 聞こえなかったのかなぁ?

「朝は一体、昼は三体、夜は二体になる動物の中心に向かえ、さすれば汝の求めるものに辿り着くだろう」

 え? 今のって場所を教えてくれたのか?

「それって造船所の場所を教えてくれたのか!」

 大きめの声を出してもう一度訊ねるも、女性は何も答えない。

 うーん。多分造船所の場所を教えてくれたのだよな。

「今のはもしかして、私たちが探している場所のヒントだったりするのだろうか?」

 ミラーカが近づくと、俺に訊いてきた。

「かもしれないな。あの女の人の雰囲気からして、からかって言っているようには思えなかった」

「そうであったとしても、回りくどくありません? 知っているのであれば、普通は教えるものですわ!」

 女性の態度が気に食わなかったのだろうな。マリーの語気がいつもより荒い。

「何はともあれ、これで一歩前進したからよかったではありませんか」

「コヤンさんの言うとおりだ。今はあの人が言った言葉を信じて探そう」

「えーと、確か朝は一体、昼は三体、夜は二体になる動物の中心に向かえ、さすれば汝の求めるものに辿り着くだろう。だったよね?」

 クロエが人差し指を頬に当て、少し首を傾げながら先ほどの言葉を口に出す。

「朝は一体、昼は三体、夜は二体になる動物なんていますの? わたし全然心当たりがありませんわ」

「あれだけ回りくどい言い方をしたんだ。普通に考えてなぞなぞに決まっている。もし、仮に実在しているのだとしたら、研究のために捕獲したいくらいだよ」

 とにかく今は、なぞなぞを解くしか方法はないよな。

 朝は一体、昼は三体、夜は二体。これらは時間帯を表しているのだろうか? 一番にピンと来たのは太陽と影の関係。太陽の位置に合わせて影の向きが変わってくる。だけど、それでは夜に二体になるのはおかしい。つまり、太陽や影、それに時間帯はあまり関係していないかもしれない。

「ぐうー」

 考えごとをしていると、どこからか空腹を知らせる音色が奏でられた。

「あはは。私お腹が空いちゃった」

 若干頬を朱に染めながら、クロエが自己申告する。

「シロウ。なぞなぞの件は一旦置いといて食事にしません? このままではクロエが空腹で倒れるかもしれませんわ」

「そうだな。とりあえず食事ができる場所を探すとするか。クロエが倒れてしまうのは困るからな」

「マリーさん! いくら空腹でも、私はこれくらいでは倒れないですよ! シロウさんも間に受けないでくださいね!」

 うーん。羞恥心を隠すためか、空腹で気が立っているのか分からないけれど、クロエの当たりがいつもより強い気がするな。ここは早く店を探して食事をするとするか。

 なぞなぞを解くのは一旦あとにして、俺たちは食事をする場所を探す。

「あれ、この港町にもキャッツの像が置かれてあるんだ」

 歩いていると、魔除けとして扱われているキャッツの像を発見した。

「神獣様の像は、ケモノ族以外にも伝わっております。きっとこの町の職人の方が作られたのでしょう」

 へぇ、キャッツの像はケモノ族以外にも伝わっているんだ。

「お、あの看板は食堂だな」

「やった! これで空腹から解放される!」

 お店に近づき、扉の前に立つ。

「そんな! このお店、朝しか営業していないの!」

 扉の前には張り紙がされてあり、本日の営業は終了しましたと書かれてあった。

「営業時間が朝の五時から十時までしかやっていないお店、初めて見ましたわ」

 エリーザが営業時間を読み上げる。

「仕方がない。別のお店を探そう」

 俺たちは次の店を探す。しかしなかなか見つからなかった。

 体感で三十分ほど歩いただろうか。ようやく食堂らしき建物を発見することができた。

「ようやく見つかったね。だけどこれだけお腹を空かせたら、きっとご飯も美味しくなるよね」

 クロエが声を弾ませて言うが、俺は嫌な予感がした。

 ちょうどお客がピークになりそうな時間帯のはずなのに、お店の中はやけに静かだ。それに多くの人とすれ違ってはいるが、誰もあの店に入ろうとする人はいない。

 これはもしかして。

 これからの展開が予想できてしまうが、俺は僅かな可能性にかけて店に近づく。

「そんな! 今度は夜限定のお店なの!」

 お店の前に置かれた準備中の札を見て、クロエはがっかりする。

「営業時間は夕方の六時から夜中の十二時までか。今日の私たちは少し運が悪いようだね」

 本当にミラーカの言うとおり、今日の俺たちは少し運が悪い。

 こうなったら、道行く人に営業中のお店を教えてもらうか。

 辺りを見渡し、話かけやすそうな人を探す。

 あれ? ここにもキャッツの像があるんだ。それに朝のみ営業しているお店がここからも見えるな。まぁいいや、それよりも食堂の場所を訊かないと。

「すみません。ちょっとお聞きしたいことがあるのですが」

 気がよさそうな女性を見つけ、彼女に話しかける。

「はい。なんでしょうか?」

「ランチ営業をしているお店を探しているのですが、どこにあるのかご存じでしょうか?」

「あ、それならこの道を真っ直ぐに行ったところに営業中の食堂があります」

「そうですか。ありがとうございます」

 道を教えてくれた女性に礼を言い、マリーたちのところに戻る。

「営業中の食堂を教えてもらった。今から行こう」

「やった! 今度こそご飯が食べられる!」

「お店に着いた途端に営業終了にならなければいいのですが」

「エリちゃん、現実に起きそうなことを言わないでよ。もし、本当になったら、今度こそ倒れるかも」

 クロエが元気をなくしているが、多分大丈夫だろう。時間帯から考えても、営業中のはずだ。

 昼食を食べられるお店に辿り着くと、教えてもらったとおりに営業中になっている。

「よかった。エリちゃんが言ったことが現実に起きなくって」

 食堂の扉を開け、中に入る。

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

「六人と一匹です」

「六人と一匹ですね。お席に案内します」

 人数を伝えると、給仕の人は俺たちを席に案内する。

 敢えてキャッツも人数に加えたけれど、給仕の人は無反応だったな。関わってはいけないタイプの人間だと思われていなければいいのだけど。

 案内された場所は窓側の席で、ここからだと外の風景が見える。

 風景を眺めていると、あることに気付いた。

「そうか、分かったぞ!」
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