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第十四章
第九話 スカーヤの運命は変わらない
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~スカーヤ視点~
ワタクシことスカーヤは、時空の渦を抜けると、見知らぬ土地に来ていました。
「んんん~ん。久しぶりに魔大陸に戻って来ましたが、昔と殆ど変わっていないようで安心しました」
隣りにいるトーマンの独り言が耳に入ります。
魔大陸! 確か魔族が住む大陸でしたわね。断崖絶壁の崖に覆われ、簡単には来ることができない秘境の地に、ワタクシは足を踏み入れたと言う訳ですか。
「それではアジトに向かうとしましょうか。こちらになります。宜しければ手を貸しますが?」
言葉と一緒にトーマンはワタクシに手を差し伸ばしました。ですが、手を握ることなく、先に歩きます。
「いえ、結構です。早く行きましょう」
誰が魔族の手なんか握るものですか。ワタクシは自由を手に入れるために、利用させてもらうだけです。
「んんん~ん。連れないですね。まぁ、余計な気を使う必要が無さそうなので良かったですが」
ワタクシはトーマンに案内してもらい、魔族のアジトに向かいます。
「ここです。どうぞお入りください」
「洞窟ですか?」
「ええ、洞窟をアジトに使っております。ですが、ダンジョンとは違い、中は整備されているのでご安心ください」
洞窟の入り口から奥を覗きます。
等間隔で松明が置かれて、中は予想以上に明るく照らされてありました。
地面を見ても、ほとんど凹凸がなく、歩きやすそうです。
「んんん~ん。僕について来てください。ソロモンのところに案内しますので」
先にトーマンが中に入り、彼の後ろを着いて行きます。
洞窟の中に入ってしばらく立ちますが、誰ともすれ違いませんね。他のメンバーはいないのでしょうか?
「ここです。さぁ、入りますよ。んんん~ソロモン、僕です。最後の宝玉を手に入れました。それとお客さまも連れて来ております」
「分かった入れ」
ソロモンと思われる人物から中に入る許可をもらい、ワタクシはトーマンと一緒に部屋に入ります。
すると、白髪の男がいました。見た目の年齢では三十代から四十代でしょうか?
魔族なので、実年齢はもっと上だと思いますが。
「んんん~ん。お久しぶりですね、ソロモン。こちらはケモノ族の巫女であるスカーヤです。魔王の魂が封印されてある宝玉を、これまで守っていました。ですが、この度譲り受けることになり、お連れしました」
「そうか。この度はご協力感謝する。それでは、宝玉を頂こう」
ソロモンと呼ばれた男が手を前に出す。
ワタクシは近付き、彼に宝玉を手渡します。
「んんん~ん。これでついに魔王が復活し、ソロモンの野望が叶うと言うわけですね」
「いや、まだだ」
「おやおや? それはどういうことなのですか? 魔王を復活させるのには、三つの宝玉さえあればいいのでは?」
「あれから俺なりに調べてみたのだが、どうやら三つ揃っただけでは封印は解けないらしい。だがよくやってくれたトーマン」
いきなり褒められ、トーマンは首を傾げます。どうやらなぜ急に褒められたのか理解していない様子です。どうして彼が急に褒めたのか、さすがのワタクシも分かりません。
「魔王の魂の宝玉の一つを守っていたケモノ族の巫女よ。お前なら知っているはずだ。どのようにすれば、魔王を復活させることができるんだ?」
「んんん~ん。なるほど、だから彼女を連れて来た僕を褒めたと言う訳ですね。納得しました。さぁ、教えてください。どのようにすれば、魔王を復活させることができるのですか?」
二人が訊ねますが、ワタクシにはさっぱり分かりません。
どうやら、この魔族たちは先入観に囚われているようですね。ケモノ族の巫女であり、最後の宝玉を守っていた。そこから考えて、ワタクシなら知っていると思い込んでいるようですが、見当外れもいいところ。全然知りませんわ。
「期待させて申し訳ないのですが、ワタクシは何も分かりません。そもそも、魔王が復活するのに他にも条件があるなど、初耳ですわ」
ワタクシは正直に答えます。
魔王が復活できないのなら好都合。そもそも、ワタクシは宝玉の守りから解放されればそれでいいのです。こんなところさっさと出て、これから自由に生きていきましょう。
「そうか。そうか、知らないのか……ウソ吐くなあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
正直に答えたのにも関わらず、ソロモンはワタクシが嘘を吐いていると言い出します。
この男、頭のほうは大丈夫なのでしょうか? ワタクシが嘘を吐いていないことは、この目を見れば一目瞭然ですのに。きっと、この方は思い込みが激しく、一度こうだと思ったことは覆さない性格なのでしょう。
ああ、そう思うと何だか哀れに思えてきますわ。
「んんん~ん! スカーヤ、嘘を吐いても何もいいことはありませんよ。ソロモンが優しく訊ねているうちに教えてください」
トーマン、あなたの頭もおかしくなっているのですか? 今の彼のどこが優しいと言うのですか。思いっきり怒鳴ったではないですか。
「ですから、先ほどもおっしゃいましたように、ワタクシは何も知りません。もし、知っているのでしたら、すでに教えておりますわ」
「んんん~ん。なるほど、あなたの目的は宝玉から解放されること。だけど魔王を復活させたくはない。だから知らないふりをして、本当のことを話してくれないのですね」
はぁ、どうやらトーマンの目も腐っているようですわね。ワタクシの態度を見て、事実を言っていることがわからないなんて。本当に困りました。どうしましょうか。
「トーマン、そのケモノ族の巫女を閉じ込めておけ! そして方法を教えるまで外に出させるな!」
「了解したよ。ソロモン」
トーマンがワタクシの腕を掴みます。
「は、離してください! ワタクシは本当に何も知らないのですよ!」
解放するように訴えますが、トーマンは聞く耳を持ってもらえません。むりやり引っ張られ、部屋を出て行きます。
「ここまで離れればソロモンにも聞こえないでしょう。あなたが嘘を吐いていないことは最初からわかっていました。ですが、ソロモンの前だったので、あのような態度を取ってしまいました。申し訳ありません」
彼の言葉を聞き、ワタクシはホッとします。
なるほど、演技をしていたのですね。それは良かった。きっと彼はワタクシを解放するために、外に連れ出してくれるのでしょう。
「ですが、あなたには利用価値があります。あなたが知らなくとも、もう一人の巫女は知っているかもしれません。誘き寄せるための人質……いや、ケモノ質になってもらいます」
トーマンの言葉が耳に入った瞬間、ワタクシは血の気が引く思いに駆られました。
「さぁ、着きました。この中に入っておきなさい」
「きゃっ!」
小部屋の中に押し込められると、ガチャリと鍵をかけられる音が聞こえて来ました。
「んんん~ん。大人しくしておいてくださいね。でないと、痛い目に遭うことになりますので」
大人しくするように言うと、トーマンはどこかに行きます。
ワタクシはドアノブを捻りますが、扉が開くことはありませんでした。
「開けなさい! 開けなさい!」
声を張り上げて訴えかけますが、彼が戻ってくることはありませんでした。
どうして……こうなってしまったのでしょう。
ワタクシことスカーヤは、時空の渦を抜けると、見知らぬ土地に来ていました。
「んんん~ん。久しぶりに魔大陸に戻って来ましたが、昔と殆ど変わっていないようで安心しました」
隣りにいるトーマンの独り言が耳に入ります。
魔大陸! 確か魔族が住む大陸でしたわね。断崖絶壁の崖に覆われ、簡単には来ることができない秘境の地に、ワタクシは足を踏み入れたと言う訳ですか。
「それではアジトに向かうとしましょうか。こちらになります。宜しければ手を貸しますが?」
言葉と一緒にトーマンはワタクシに手を差し伸ばしました。ですが、手を握ることなく、先に歩きます。
「いえ、結構です。早く行きましょう」
誰が魔族の手なんか握るものですか。ワタクシは自由を手に入れるために、利用させてもらうだけです。
「んんん~ん。連れないですね。まぁ、余計な気を使う必要が無さそうなので良かったですが」
ワタクシはトーマンに案内してもらい、魔族のアジトに向かいます。
「ここです。どうぞお入りください」
「洞窟ですか?」
「ええ、洞窟をアジトに使っております。ですが、ダンジョンとは違い、中は整備されているのでご安心ください」
洞窟の入り口から奥を覗きます。
等間隔で松明が置かれて、中は予想以上に明るく照らされてありました。
地面を見ても、ほとんど凹凸がなく、歩きやすそうです。
「んんん~ん。僕について来てください。ソロモンのところに案内しますので」
先にトーマンが中に入り、彼の後ろを着いて行きます。
洞窟の中に入ってしばらく立ちますが、誰ともすれ違いませんね。他のメンバーはいないのでしょうか?
「ここです。さぁ、入りますよ。んんん~ソロモン、僕です。最後の宝玉を手に入れました。それとお客さまも連れて来ております」
「分かった入れ」
ソロモンと思われる人物から中に入る許可をもらい、ワタクシはトーマンと一緒に部屋に入ります。
すると、白髪の男がいました。見た目の年齢では三十代から四十代でしょうか?
魔族なので、実年齢はもっと上だと思いますが。
「んんん~ん。お久しぶりですね、ソロモン。こちらはケモノ族の巫女であるスカーヤです。魔王の魂が封印されてある宝玉を、これまで守っていました。ですが、この度譲り受けることになり、お連れしました」
「そうか。この度はご協力感謝する。それでは、宝玉を頂こう」
ソロモンと呼ばれた男が手を前に出す。
ワタクシは近付き、彼に宝玉を手渡します。
「んんん~ん。これでついに魔王が復活し、ソロモンの野望が叶うと言うわけですね」
「いや、まだだ」
「おやおや? それはどういうことなのですか? 魔王を復活させるのには、三つの宝玉さえあればいいのでは?」
「あれから俺なりに調べてみたのだが、どうやら三つ揃っただけでは封印は解けないらしい。だがよくやってくれたトーマン」
いきなり褒められ、トーマンは首を傾げます。どうやらなぜ急に褒められたのか理解していない様子です。どうして彼が急に褒めたのか、さすがのワタクシも分かりません。
「魔王の魂の宝玉の一つを守っていたケモノ族の巫女よ。お前なら知っているはずだ。どのようにすれば、魔王を復活させることができるんだ?」
「んんん~ん。なるほど、だから彼女を連れて来た僕を褒めたと言う訳ですね。納得しました。さぁ、教えてください。どのようにすれば、魔王を復活させることができるのですか?」
二人が訊ねますが、ワタクシにはさっぱり分かりません。
どうやら、この魔族たちは先入観に囚われているようですね。ケモノ族の巫女であり、最後の宝玉を守っていた。そこから考えて、ワタクシなら知っていると思い込んでいるようですが、見当外れもいいところ。全然知りませんわ。
「期待させて申し訳ないのですが、ワタクシは何も分かりません。そもそも、魔王が復活するのに他にも条件があるなど、初耳ですわ」
ワタクシは正直に答えます。
魔王が復活できないのなら好都合。そもそも、ワタクシは宝玉の守りから解放されればそれでいいのです。こんなところさっさと出て、これから自由に生きていきましょう。
「そうか。そうか、知らないのか……ウソ吐くなあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
正直に答えたのにも関わらず、ソロモンはワタクシが嘘を吐いていると言い出します。
この男、頭のほうは大丈夫なのでしょうか? ワタクシが嘘を吐いていないことは、この目を見れば一目瞭然ですのに。きっと、この方は思い込みが激しく、一度こうだと思ったことは覆さない性格なのでしょう。
ああ、そう思うと何だか哀れに思えてきますわ。
「んんん~ん! スカーヤ、嘘を吐いても何もいいことはありませんよ。ソロモンが優しく訊ねているうちに教えてください」
トーマン、あなたの頭もおかしくなっているのですか? 今の彼のどこが優しいと言うのですか。思いっきり怒鳴ったではないですか。
「ですから、先ほどもおっしゃいましたように、ワタクシは何も知りません。もし、知っているのでしたら、すでに教えておりますわ」
「んんん~ん。なるほど、あなたの目的は宝玉から解放されること。だけど魔王を復活させたくはない。だから知らないふりをして、本当のことを話してくれないのですね」
はぁ、どうやらトーマンの目も腐っているようですわね。ワタクシの態度を見て、事実を言っていることがわからないなんて。本当に困りました。どうしましょうか。
「トーマン、そのケモノ族の巫女を閉じ込めておけ! そして方法を教えるまで外に出させるな!」
「了解したよ。ソロモン」
トーマンがワタクシの腕を掴みます。
「は、離してください! ワタクシは本当に何も知らないのですよ!」
解放するように訴えますが、トーマンは聞く耳を持ってもらえません。むりやり引っ張られ、部屋を出て行きます。
「ここまで離れればソロモンにも聞こえないでしょう。あなたが嘘を吐いていないことは最初からわかっていました。ですが、ソロモンの前だったので、あのような態度を取ってしまいました。申し訳ありません」
彼の言葉を聞き、ワタクシはホッとします。
なるほど、演技をしていたのですね。それは良かった。きっと彼はワタクシを解放するために、外に連れ出してくれるのでしょう。
「ですが、あなたには利用価値があります。あなたが知らなくとも、もう一人の巫女は知っているかもしれません。誘き寄せるための人質……いや、ケモノ質になってもらいます」
トーマンの言葉が耳に入った瞬間、ワタクシは血の気が引く思いに駆られました。
「さぁ、着きました。この中に入っておきなさい」
「きゃっ!」
小部屋の中に押し込められると、ガチャリと鍵をかけられる音が聞こえて来ました。
「んんん~ん。大人しくしておいてくださいね。でないと、痛い目に遭うことになりますので」
大人しくするように言うと、トーマンはどこかに行きます。
ワタクシはドアノブを捻りますが、扉が開くことはありませんでした。
「開けなさい! 開けなさい!」
声を張り上げて訴えかけますが、彼が戻ってくることはありませんでした。
どうして……こうなってしまったのでしょう。
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