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第十四章

第六話 宝玉の防衛戦だけど、普通に勝ちます

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「ゼイレゾナンス・バイブレーション」

 魔法を発動した瞬間、巨大な竜の石像が砕け、地面に落ちる。

「そんなバカな! 巨大化したガーゴイルが一瞬にして砕けるなんて!」

 一瞬で砕ける魔物を見たジルドーレは、驚愕のあまりに開いた口が塞がっていなかった。

「お前に理解ができるか分からないけれど、一応教えてやろう。この魔法は、物質の固有振動数と同じ周波数の音を浴びせることにより、対象を破壊するんだ。ガーゴイルと同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、石像が疲労破壊を起こした。だから砕けたんだ」

「ぐぬぬ! 何を言っているのか理解できない! 悔しいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 ジルドーレは悔しそうに歯噛みしている。

「んんん~ん。魔物が一体やられたくらいで狼狽えないでください。こうなることは想定済みです。だけど、まだこちらには巨大な魔物がまだ残っている。さぁ、やってしまいなさい」

『ようやく外に出られたんだ。こいつらを駆逐する』

『負けない、負けない、負けない。戻りたくない。戻りたくない。戻りたくない』

『こいつらを倒せば、俺たちは自由だ!』

 三つの頭に六本の腕を持つ魔物、ヘカトンケイルが無雑作に剣を振り回す。

『『『風神の舞』』』

「きゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 魔物が剣技を使った瞬間、マリーたちが空中に浮く。上空に舞い上がった彼女たちはスカートを押さえて身動きが取れない状態に陥っている。

「何をしますの! 変態!」

「シロウさん、絶対に上を見ないでください」

「まさか、このような手段で私たちの行動を奪いに来るとは誤算だったね」

「ミラーカさん、呑気に分析している場合じゃないですわよ」

『ワン、ワン』

 あの魔物、剣で風圧を生み出したか。そのせいで強い上昇気流が生まれてマリーたちが浮いてしまっている。ならば、こうするまで。

「風には風だ! ストロングウインドウ!」

 強風の魔法を使い、魔物の作り出した風圧を上回る。すると、上昇気流が消えてマリーたちは地面に落下した。

「エンハンスドボディー、スピードスター」

 肉体強化と俊足の魔法を唱え、素早く彼女たちを抱き抱えると順番に地面に下ろす。

「ありがとうございます。シロウ」

「地面にぶつかるかと思ったよ」

「私はシロウが助けてくれると思っていたけれどね」

「私もです」

『ワン』

 彼女たちから礼を言われる中、振り返ってヘカトンケイルを見る。

「お返しといこう。ストロングウインドウ!」

 再び魔法を唱えると、強風が敵に襲いかかる。

『何のこれしきの風』

『反撃、反撃、反撃』

『風神の舞』

 ヘカトンケイルが再び剣技を使い、俺の風に対抗してきた。しかしこちらの風のほうが強く、巨体が吹き飛ばされる。

『がおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!』

 吹き飛ばされたヘカトンケイルは、カオスレオにぶつかる。しかし、それだけでは止まることができなかった。そのまま後方に吹き飛ばされ、ジルドーレとトーマンのところに向かっていく。

「そんなバカなああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「んんん~ん。これはまずいですね。ひとまず逃げたほうがいいでしょう」

 自分たちのほうに吹き飛ぶ魔物を見て、二人は逃げ出す。しかし時すでに遅い。

「ぎゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ぐええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 魔族の二人は巨大な魔物に押し潰された。あれではもう、まともに動くことができないだろう。

 さてと、どうするかな。ヘカトンケイルとカオスレオに押し潰されたことで、あの二人はまともに動くことができないだろう。

 なら、魔物を先に倒しても問題ないよな。

 この魔法はあまりにも強力すぎるから使いたくはない。だけど、手早く済ませるにはちょうどいい。

「ハートラプチュア」

『『『ぐあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』』』

『がおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!』

 魔法が発動した瞬間、ヘカトンケイルとカオスレオは断末魔の悲鳴をあげると動かなくなる。

 どうやら即死魔法が成功してくれたようだ。

 この魔法は、心臓の壁に穴を開けて破裂させる。あまりにも強力な魔法だから、なるべくは使いたくはなかった。だけど面倒臭くなったから、もういいや。

 魔物が倒されて重みがなくなったからだろう。二人は魔物の死骸から抜け出して俺たちを睨む。

「はぁ、はぁ、はぁ」

「はぁ、はぁ、はぁ」

 どうやらバカみたいに騒いでいたせいで、体力を消耗したみたいだな。あいつら、息を切らしている。

「さぁ、終わりにしようか」

 右手を前に出す。

「ファイヤー……」

 魔法を発動しようとした瞬間、ジルドーレとトーマンはニヤリと笑みを浮かべた。

 なんだ? あの笑みは?

 あの不気味な笑みが気になる。どうして追い詰められている状態であんな表情をする。もしかしてまだ、何かの罠が隠されているのか?

 警戒をしていると後方から足音が聞こえた。

 俺は咄嗟に振り返る。

「え? どうしてここにいる?」
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