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第十四章
第四話 ジルドーレ、トーマンとコンビを組みます
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~ジルドーレ視点~
くそう、くそう、くそう! あいつら、よくも私のムスコを虐めたうえに笑いやがったな!
私ことジルドーレは、中々治らない股間の痛みに耐えながら、よろよろと町中を歩いていた。
「ふう、少し休憩するとしますか」
建物の壁に背中を預け、今後の作戦を考える。
トーマンを出し抜いて先に手柄を上げようとしたものの、まさかあいつらがケモノ族の街に来ていたとは計算違いでした。
「だけどまぁ良いでしょう。既に種は撒いてあります。後は芽が出るのを待つだけ」
しかし油断はできませんね。宝玉を手中に収めたとしても、シロウたちは魔王復活の邪魔をしてくるに決まっています。奴らを倒さない限り、我々の計画に遅延が生じるのは明確でしょう。
「不本意ですが、あいつらを倒すにはトーマンの協力が必要です。それにしても、あの男はいったいどこに行ったのでしょうか? ケモノ族の町付近でも、姿を見かけなかったのですが」
「ねぇ、聞いた? トーマンさん捕まったってよ」
「聞いた! 聞いた! 動物を魔物化させてコンテストをメチャクチャにしたのでしょう」
「それだけじゃなくって、売れ残った動物も殺処分していたんだって」
「ウソ! そんなに酷いことをしていたの!」
通りすがりの女性二人組の話し声が偶然にも耳に入った。
何ですって! あのトーマンが捕まった! そんなバカな! いくら人間になりきっているとは言え、仮にもあの男は魔族なのですよ! 人間風情に捕まるなんてあり得ない!
「これは真実を確かめるしかないですね。この町にある牢屋を調べるとしますか」
裏路地に入り、人がいないことを確認して空間を歪める。そして時空の渦の中に身を投じると、この町の牢屋の前に移動した。
「ここが牢屋ですか。さてと、トーマンが本当にいるのかどうか、調べるとしますか」
通路を歩き、突き当たりに差しかかると左右を見る。
「どうやら見張りの兵士はいないようですね。昼寝でもしているのでしょうか?」
人がいないのは好都合です。何せ先ほどシロウたちと一戦やり合ったばかりです。なるべくこれ以上体力を消耗させたくはありません。
さてと、右と左、どちらに向かうとしましょうか。人間は左を好む傾向があります。なので、こういうときは逆に右を選ぶとよいらしいのですが、魔族である私はそんな理論は関係ありません。ここはあえて人間が好む左に進むとしましょう。
私は左の道を歩く。
「んんん~ん。はぁ、退屈です。兵士たちに召喚石を奪われてしまいましたし、私の魔力ではこの牢屋を壊して逃げることもできない。これからどうしましょうか」
通路を歩いていると、あの男の声が聞こえてきた。
どうやら正解だったようですね。さてと、トーマンのバカ面でも拝むとしましょう。
トーマンが閉じ込められている扉の前に立つ。
「これはいったいどうしたのですか? トーマン? ソロモンの右腕とも言われたあなたが、こんなところで人間のゴミと同じ運命を辿っているとは?」
「んんん~ん! この声はジルドーレではないですか! 僕を助けに来てくださったのですね!」
牢屋の中にいる彼は、どうやら私が助けに来たと思い込んでいるようですね。半分正解ではありますが、半分はハズレです。
「ハハハ、私があなたを助けに来たと本気で思っているのですか? おめでたい頭をしていますね。私は無様に人間なんかに捕まった、魔族の恥晒しの姿を拝みに来ただけですよ」
笑いながら半分嘘を吐いて彼を罵倒する。
「このくそ魔道士が! いいからさっさと僕を解放しなさい!」
私の挑発に彼は簡単に乗る。
普段の彼なら冷静に判断して、私がわざと挑発していることに気付けるはず。なのにこんな態度をとると言うことは、相当追い詰められていると言うことですね。
これはいい。この際だから積年の恨みを晴らさせて貰うとしますか。
「あなたは立場が分かって言っているのですか? 私の能力を使えば、あなたを簡単に助けることができる。一生ここで暮らすことになるのかは、私の気分次第なのですよ。助けて欲しければ、誠意を込めてこれまでのことを謝罪してください」
「んんん~ん。背に腹はかえられないですね。今までの非礼は詫びます。だからここから出してください」
トーマンは頭を下げて謝るも、そんなものでは私の恨みは晴れない。
「それが魔族に謝る態度なのですか? 誠意を込めて謝るのは、土下座だと決まっているではないですか」
「ジルドーレ! 調子に乗るなよ!」
「そうですか。それではさよなら。一生牢屋の中で暮らしていなさい」
私は彼が閉じ込められている牢屋から離れる。
「わ、分かった。土下座するから助けてくれ」
彼の言葉に私はニヤリと口角を上げる。そしてもう一度トーマンが囚われている牢屋の前に戻った。
「では、お願いします」
「今までの非礼は詫びます。だからここから出してください」
彼は手を床につけ、頭を下げて謝罪の言葉を述べる。
「あなた、土下座というものが何なのか分かっていますか、土下座というものは土の上でするものです。硬い床の上でやられても土下座にはなりませんよ」
冗談を言うと彼は無言で私を睨みつける。
これは少々やりすぎたかもしれません。最悪呪い殺されるかもしれませんね。
「じ、冗談ですよ。だからそんな怖い顔をしないでください」
脂汗が額から流れ落ちる。
調子に乗るのも大概にしたほうがいいですね。
トーマンと私の前に時空の渦を作り、彼は渦の中に入ると目の前に現れる。
「んんん~ん!ようやく牢屋の中から出ることができました。一応礼は言っておきます」
「それにしても、どうしてトーマンともあろう男が捕まってしまったのですか?」
「んんん~ん! 思い出させないでくださいよ。あの憎き男、シロウのせいです。早くあの男からキャスコを奪い返し、売り捌かなければ」
「なるほど、既にシロウと接触して敗れたと。確かにあの男であれば、トーマンが倒されたことも納得がいきますね」
どおりでケモノ族の町に向かうと言っておきながら見かけなかったわけです。
「んんん~ん。その口振りからして、ジルドーレもシロウと接触したようですね。ああ、そうでした。シロウからあなた宛てに言伝があります」
あの男が私に? いったい何を?
「ジルドーレとは頭のできが違う。お前の研究はクソすぎて笑えると」
「あのガキがああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「正確には『まぁ、そうだろうな。そのジルドーレと言うやつが何者なのかは知らないが、ここが違うんだ』と言って頭を指差しただけですがね」
あのガキ! この私の頭脳をバカにしやがって!
心の中でシロウに悪態をつく。しかし、少し時間が経つと冷静さを取り戻すと、ニヤリと笑みを浮かべた。
まぁ、いいでしよう。あの男がどれだけ頑張ろうとも、既に私たちの勝利は確定しています。あとは時が来るのを待つだけ。
彼の悔しがる顔が目に浮かぶ。
寧ろ抵抗すればするほど、絶望に叩き落とされたときの心のダメージは大きいのです。
「トーマン、早速あなたの力を借りますよ」
「んんん~ん。分かっておりますよ。キャスコを取り返すためにも協力しますとも」
私は時空の渦を新たに出すと、トーマンと一緒に中に入る。
さぁ、リベンジマッチといきましょうか。
くそう、くそう、くそう! あいつら、よくも私のムスコを虐めたうえに笑いやがったな!
私ことジルドーレは、中々治らない股間の痛みに耐えながら、よろよろと町中を歩いていた。
「ふう、少し休憩するとしますか」
建物の壁に背中を預け、今後の作戦を考える。
トーマンを出し抜いて先に手柄を上げようとしたものの、まさかあいつらがケモノ族の街に来ていたとは計算違いでした。
「だけどまぁ良いでしょう。既に種は撒いてあります。後は芽が出るのを待つだけ」
しかし油断はできませんね。宝玉を手中に収めたとしても、シロウたちは魔王復活の邪魔をしてくるに決まっています。奴らを倒さない限り、我々の計画に遅延が生じるのは明確でしょう。
「不本意ですが、あいつらを倒すにはトーマンの協力が必要です。それにしても、あの男はいったいどこに行ったのでしょうか? ケモノ族の町付近でも、姿を見かけなかったのですが」
「ねぇ、聞いた? トーマンさん捕まったってよ」
「聞いた! 聞いた! 動物を魔物化させてコンテストをメチャクチャにしたのでしょう」
「それだけじゃなくって、売れ残った動物も殺処分していたんだって」
「ウソ! そんなに酷いことをしていたの!」
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何ですって! あのトーマンが捕まった! そんなバカな! いくら人間になりきっているとは言え、仮にもあの男は魔族なのですよ! 人間風情に捕まるなんてあり得ない!
「これは真実を確かめるしかないですね。この町にある牢屋を調べるとしますか」
裏路地に入り、人がいないことを確認して空間を歪める。そして時空の渦の中に身を投じると、この町の牢屋の前に移動した。
「ここが牢屋ですか。さてと、トーマンが本当にいるのかどうか、調べるとしますか」
通路を歩き、突き当たりに差しかかると左右を見る。
「どうやら見張りの兵士はいないようですね。昼寝でもしているのでしょうか?」
人がいないのは好都合です。何せ先ほどシロウたちと一戦やり合ったばかりです。なるべくこれ以上体力を消耗させたくはありません。
さてと、右と左、どちらに向かうとしましょうか。人間は左を好む傾向があります。なので、こういうときは逆に右を選ぶとよいらしいのですが、魔族である私はそんな理論は関係ありません。ここはあえて人間が好む左に進むとしましょう。
私は左の道を歩く。
「んんん~ん。はぁ、退屈です。兵士たちに召喚石を奪われてしまいましたし、私の魔力ではこの牢屋を壊して逃げることもできない。これからどうしましょうか」
通路を歩いていると、あの男の声が聞こえてきた。
どうやら正解だったようですね。さてと、トーマンのバカ面でも拝むとしましょう。
トーマンが閉じ込められている扉の前に立つ。
「これはいったいどうしたのですか? トーマン? ソロモンの右腕とも言われたあなたが、こんなところで人間のゴミと同じ運命を辿っているとは?」
「んんん~ん! この声はジルドーレではないですか! 僕を助けに来てくださったのですね!」
牢屋の中にいる彼は、どうやら私が助けに来たと思い込んでいるようですね。半分正解ではありますが、半分はハズレです。
「ハハハ、私があなたを助けに来たと本気で思っているのですか? おめでたい頭をしていますね。私は無様に人間なんかに捕まった、魔族の恥晒しの姿を拝みに来ただけですよ」
笑いながら半分嘘を吐いて彼を罵倒する。
「このくそ魔道士が! いいからさっさと僕を解放しなさい!」
私の挑発に彼は簡単に乗る。
普段の彼なら冷静に判断して、私がわざと挑発していることに気付けるはず。なのにこんな態度をとると言うことは、相当追い詰められていると言うことですね。
これはいい。この際だから積年の恨みを晴らさせて貰うとしますか。
「あなたは立場が分かって言っているのですか? 私の能力を使えば、あなたを簡単に助けることができる。一生ここで暮らすことになるのかは、私の気分次第なのですよ。助けて欲しければ、誠意を込めてこれまでのことを謝罪してください」
「んんん~ん。背に腹はかえられないですね。今までの非礼は詫びます。だからここから出してください」
トーマンは頭を下げて謝るも、そんなものでは私の恨みは晴れない。
「それが魔族に謝る態度なのですか? 誠意を込めて謝るのは、土下座だと決まっているではないですか」
「ジルドーレ! 調子に乗るなよ!」
「そうですか。それではさよなら。一生牢屋の中で暮らしていなさい」
私は彼が閉じ込められている牢屋から離れる。
「わ、分かった。土下座するから助けてくれ」
彼の言葉に私はニヤリと口角を上げる。そしてもう一度トーマンが囚われている牢屋の前に戻った。
「では、お願いします」
「今までの非礼は詫びます。だからここから出してください」
彼は手を床につけ、頭を下げて謝罪の言葉を述べる。
「あなた、土下座というものが何なのか分かっていますか、土下座というものは土の上でするものです。硬い床の上でやられても土下座にはなりませんよ」
冗談を言うと彼は無言で私を睨みつける。
これは少々やりすぎたかもしれません。最悪呪い殺されるかもしれませんね。
「じ、冗談ですよ。だからそんな怖い顔をしないでください」
脂汗が額から流れ落ちる。
調子に乗るのも大概にしたほうがいいですね。
トーマンと私の前に時空の渦を作り、彼は渦の中に入ると目の前に現れる。
「んんん~ん!ようやく牢屋の中から出ることができました。一応礼は言っておきます」
「それにしても、どうしてトーマンともあろう男が捕まってしまったのですか?」
「んんん~ん! 思い出させないでくださいよ。あの憎き男、シロウのせいです。早くあの男からキャスコを奪い返し、売り捌かなければ」
「なるほど、既にシロウと接触して敗れたと。確かにあの男であれば、トーマンが倒されたことも納得がいきますね」
どおりでケモノ族の町に向かうと言っておきながら見かけなかったわけです。
「んんん~ん。その口振りからして、ジルドーレもシロウと接触したようですね。ああ、そうでした。シロウからあなた宛てに言伝があります」
あの男が私に? いったい何を?
「ジルドーレとは頭のできが違う。お前の研究はクソすぎて笑えると」
「あのガキがああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「正確には『まぁ、そうだろうな。そのジルドーレと言うやつが何者なのかは知らないが、ここが違うんだ』と言って頭を指差しただけですがね」
あのガキ! この私の頭脳をバカにしやがって!
心の中でシロウに悪態をつく。しかし、少し時間が経つと冷静さを取り戻すと、ニヤリと笑みを浮かべた。
まぁ、いいでしよう。あの男がどれだけ頑張ろうとも、既に私たちの勝利は確定しています。あとは時が来るのを待つだけ。
彼の悔しがる顔が目に浮かぶ。
寧ろ抵抗すればするほど、絶望に叩き落とされたときの心のダメージは大きいのです。
「トーマン、早速あなたの力を借りますよ」
「んんん~ん。分かっておりますよ。キャスコを取り返すためにも協力しますとも」
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