Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

文字の大きさ
上 下
125 / 191
第十四章

第二話 狙われた宝玉

しおりを挟む
 俺はケモノ族の巫女であるスカーヤさんとコヤンさんに、ケモノ族の町に来た理由を話す。

「なるほど、そう言うことでしたか」

「スカーヤ、この人の話しは信じるに値すると思います。現にわたくしたちの身に起きていることが一致しますもの」

「そうですわね。ワタクシもそう思いましたわ。コヤン」

 双子の巫女の会話を聞き、ホッとする。

 よかった。どうにか信じてもらえて。でも、彼女たちの身に起きていることって何だ? 門番たちの態度を見ても、何かトラブルが起きているのは確実だ。

「あのう。宜しければケモノ族の町に何が起きているのか教えてもらえないでしょうか?」

 よければ事情を聞かせてほしいと頼むと、彼女たちは顔を見合わせる。そして無言で頷いた。

「そうですわね。良いでしょう。あなたの目的は宝玉の防衛。ワタクシたちの使命と一致しております」

「わたくしたちに着いて来てください。社に行きますので」

 二人が立ち上がり、彼女たちに続いて俺も立ち上がる。

 彼女たちの住まいから出ると、真正面にある社の前に来た。

「今、コヤンが鍵を開けますので少々お待ちください」

 扉の鍵を開けてもらい、俺たちは社の中に通される。

「社の中はこんな感じになっておりますのね」

「教会とは全然違うね。大人数では入れそうもないよ」

「私たち全員がどうにか入れそうなぐらいだね」

「皆さん、狭いことを理由に、シロウさんと密着しようだなんて考えないでください」

『ワウーン』

 それぞれが感想を漏らす中、俺は正面にある紫色の透き通った水晶に釘付けになる。

 ガーベラが奪ったものと同じだ。やっぱり、ここにもあったんだ。

「皆様はこの水晶について、どれだけご存知でしょうか?」

「ワタクシは代々家に伝えられてある家宝としか聞いておりませんわ」

「私もお父さんが大事にしている物、と言う認識しかないよ」

 俺の代わりにマリーとクロエが答えてくれる。

「そうですか。では、ワタクシたちが知っている範囲で教えましょう。この水晶には、大昔に倒された魔王の魂の欠片が封印されているのです」

「魔王の魂!」

 スカーヤの口から出た言葉に、俺は驚きの声をあげる。

「ええ、人々が魔王軍と戦っていたころ、魔王を倒して封印することに成功した三騎士がおりました」

 俺が驚くと、今度はコヤンが話しの続きを語る。

 どうやら交互に話すようだな。

「三騎士は、それぞれ得意な得物があり、一人は剣の達人、もう一人は弓の達人、そしてもう一人は――」

「槍の達人だね!」

 答えが分かったかのようにクロエが大きめの声音で言う。

「いえ、最後は魔術の達人です」

 スカーヤが正解を言うと、答えを間違えたクロエは赤面して俺の後ろに隠れた。

「あう、勘違いをして恥ずかしいよ」

「いや、普通三騎士なんて言われたら、剣と弓と槍が一番に思い浮かぶって」

 小声で彼女をフォローするも、ほとんど効果はなかったようだ。クロエは俺の後ろに隠れたまま、顔を出そうとはしない。

「それでは話しを戻しましょう。三騎士は魔王の魂を三分割にすると、持っていた宝玉に封じ込め、二度と復活をしないようにそれぞれが厳重に管理をすることになったのです」

「その内の一つがこの社に奉納され、魔術の達人の末裔であるワタクシたちが、管理をして今日まで守っていたというわけです」

「そうだったのですね。お父様からご先祖様のことは何も聞かされてはいなかったのですが、おそらく、ワタクシは剣の達人の末裔」

「私が弓の達人の末裔かぁ。何だか実感がないな」

「親戚になるわたしも、一応剣の達人の末裔に入るのでしょうか?」

 マリーとクロエ、それにエリーザが言葉を漏らす中、拳を強く握る。

 この宝玉だけは絶対に死守しなければならない。あいつらは、既に二つの宝玉を持っている。これが奴らの手に渡ってしまっては、魔王が復活してしまう。

「そして先日、この宝玉を狙って一人の賊が現れました。どうにか町のみんなで守り抜くことができましたが、またいつ来るのかわかりません」

「わかりました。その防衛に俺たちも参加します。すでにあいつらの手には二つの宝玉がある。絶対に死守しなければいけませんので」

「何ですって!」

「それは本当なのですか!」

 既に二つの宝玉が魔族の手に渡っていることを漏らすと、二人は驚いて顔色を変える。

「ごめんなさい。そんなに重要なものだとは知りませんでしたわ」

「知っていたら、もっと必死になって取り返そうとしたのに」

 重要なものを奪われてしまったことを知り、マリーとクロエが罪悪感を覚えたのか、表情が暗くなり、今にも泣き出しそうだ。

 このままでは暗い雰囲気のままだな。とりあえずは今の空気を変えないと。

「大丈夫だって。この町に俺が来たんだ。今度こそ社の宝玉を守り抜いてみせる」

「シロウさんの言うとおりですわ! これまで何度も魔族と戦ってその度に退けて来ましたもの。シロウさんが居れば、余裕で守り抜いてくれますわね」

「シロウの実力は本物だ。先日現れた賊が何者であろうと、簡単に追い払ってくれるさ」

『ワン、ワン、ワン!』

 俺のやろうとしていることを直感的に感じ取ってくれたようだ。エリーザに続いて、ミラーカとキャッツが大丈夫だと落ち込んでいる四人に言う。

「そうですわね。ワタクシのシロウがいるのですもの。賊なんかには負けませんわ」

「そうだよね。シロウさんは私の神様だもの。守ってくれるに決まっている」

 俺たちの言葉に、マリーとクロエは元気付けられた。

「確かにあなたたちの言うとおりですわね」

「まだ諦めるには早い。わたくしたちが全力で守れば良いだけですもの」

 続いてスカーヤさんとコヤンさんが顔上げ、表情を引き締める。

「巫女様大変です!」

 みんなでやる気を引き出している最中、社の中に男のケモノ族が入ってくる。

「どうしたのですか?」

「あの男が現れました! 町の男たちで食い止めていますが、長く持たないかと思います。なので、巫女様たちはお逃げください」

「わかりました。ですが、ケモノ族を代表する巫女たるもの、尻尾を巻いて逃げるわけには行きません。ワタクシも戦いますわ」

「いえ、その男は俺たちに任せてください。スカーヤさんとコヤンさんは、社の中で宝玉の守りをお願いします。みんな行くぞ!」

 仲間たちに声をかけ、俺は町の出入り口の方に走って行く。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...