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第十三章

第六話 珍獣コンテストに参加することになりました

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 ~シロウ視点~



「ふぅ、やっと解放された」

 トーマンが召喚した魔物を倒してから数時間が経った。

 俺たちはやって来た衛兵から事情聴取を受けることになり、暫くの間拘束されていた。

「まったくもう、どうしてあの衛兵たちはシロウの言うことを信じないですの!」

「本当にそうだよ! シロウさんは何も嘘をついていないのに!」

 マリーとクロエが不機嫌な顔をしながら言葉を漏らす。

「おそらく、あの男はこの町でそうとうな信頼を得ているようだね。私たちの言葉を信じようとはしないなんて」

「他にも目撃者がいましたが、皆さん空から魔物が降って来たと証言しておりますわ。離れた位置からではそのように見えてしまったのでしょう」

 続いてミラーカとエリーザも言葉を漏らす。

 ミラーカの言うとおり、トーマンはこの町では信頼の厚い男なのだろう。人気がある分、余所者である俺たちの言葉は信用するに値しないのだろうな。

「とにかく、今日は宿屋を探して休もう」

「賛成ですわ。魔物と戦い、長時間拘束されたのでワタクシとても疲れております」

「私も」

 俺が宿屋で休むことを提案すると、マリーとクロエが賛成する。

「シロウ、あそこにある看板は宿屋じゃないか?」

 ミラーカが建物の前に置かれてある看板を指差す。するとエリーザが駆け寄り、看板を確認した。

「間違いなく、宿屋の看板ですわね! これで休むことができますよ、シロウさん」

 ひとまず中に入って部屋の手配をするか。今日は疲れたからな。金額が高くてもいいからここで休もう。

「んんん~ん! 見つけましたよ!」

 宿屋のドアノブに手を置いた瞬間、できることなら今日は会いたくない人物の声が耳に入って来た。

 彼はこちらに向かって走っている。

 マジかよ。まさかこんなに早く第二ラウンドを開始することになるなんて。こうなったら、本気であいつをぶっ飛ばして早く休憩するとしよう。

「ファイヤーボール」

 火球の魔法を唱えて先制攻撃を行う。

「んんん~ん。まさかいきなり攻撃してくるとは! ですが、それも仕方がないことですね」

 俺の攻撃を、トーマンは軽々と避けると更に距離を詰めてきた。

 やっぱり簡単には当たらないよな。こうなったら範囲攻撃で倒すか。

「待った! 待った! 別に争いに来た訳ではないので、攻撃しないでください! 今回は話し合いをしようかと」

「話し合いだと?」

 いったいどういうつもりだ? 今更話し合いもないだろう? いきなり襲って来たのはお前のほうからじゃないか。

「その場で止まって話せ! 距離を空けた状態なら話を聞こう」

 一定の距離を空けるように言うと、トーマンはその場で足を止め、俺の指示に従う。

 俺の言うことを素直に聞いたな。本当に話をするだけなのか? だけど油断はできないよな。念のために警戒だけは怠らないようにしないと。

 構えた状態でトーマンが会話を切り出すのを待つ。

「んんん~ん。では、まずはこれを受け取ってください」

 彼は手に持っていた紙を投げた。飛んでくる紙をキャッチすると紙面に目を通す。

 珍獣コンテスト?

「僕は冷静になって考え直したのです。やはり暴力は良くないと。なので、このコンテストで僕のペットと勝負しませんか? もしあなたが勝てば、キャスコを無料でお譲りいたします」

「本当に俺が勝てば、キャッツを諦めてくれるのか?」

「ええ、男に二言はありません。もし、嘘を吐いたらセンボンザクラを呑みましょう」

 トーマンの表情を観察する。

 顔色を全然変えないし、表情筋が不自然な動きをしていないな。彼は本当に嘘を吐いてはいないのだろう。

「分かった。お前を信じよう」

「信じてくださりありがとうございます。では、当日お会いしましょう」

 軽く一礼すると、トーマンは隙だらけの背中を俺たちに向けながら去って行く。

 本当に話しをするだけだったようだな。

「とりあえず宿に入ろうか」

 扉を開け、今度こそ俺たちは宿屋に入った。

「いらっしゃい。何名様ですか?」

「五名です」

 カウンターにいる店主に人数を伝えながら受付に向かう。

「すみません。この珍獣コンテストなのですが、詳しいことを知っていますか?」

 先ほどトーマンからもらった紙を店主に見せる。

 一応参加はするが、完全に信じることはできないからな。できる限り情報収集をしておかないと。

「ああ、それね。この町の町長さんが毎年主催しているコンテストよ。確かトーマンさんがスポンサーになっていたわね。勝敗は生き物の珍しさや美しさ、賢さなんかを観客にアピールして、投票で一番を決めるの」

「へぇー、そうなのですね。ありがとうございます」

 店主に礼を言い、部屋の代金を支払う。

「あの男がスポンサーだなんて本当に大丈夫ですの? 何か裏がありそうな気がしますわ」

「心配だよね」

「裏で観客を買収していた場合は出来レースになる。参加するだけムダだ」

「あの男の余裕な顔を思い出せば、買収している可能性が高いですわ。シロウさん! 止めたほうがいいですわよ。一泊は止めて夜中に出発しませんか?」

 エリーザが夜逃げみたいなことを提案してくる。

 確かにそうかもしれないけれど、やってみないとわからないのも事実だ。勝負を避けて逃げるのは、何だか嫌だ。

「いや、キャッツの魅力ならどの観客もイチコロだ。きっと大丈夫だよ」

 心配ないことを彼女たちに伝え、俺たちは部屋に向かう。

 きっと大丈夫だ。魔神花となったミラーカと戦ったとき、キャッツが小動物呼びをしてネズミを従わせた。

 もし、あの能力に他の可能性を見出せるとしたのなら、何があっても勝てるはずだ。

 だけど、その前にやるべきことをしないといけない。

「マリー、お願いがあるのだけど」

「何でしょうか? 何でも言ってください」

「実は――」

 マリーにあることを頼むと、俺たちは部屋に入って一泊した。





 そして数日が経ち、とうとう珍獣コンテストの日がやってくる。

「観客の皆様、お待たせしました! これより珍獣コンテストを開催します!」

「わあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 司会が開催を宣言すると、観客たちが歓声を上げる。

「んんん~ん。よく来てくれました。逃げ出さないでくれて僕は安心しましたよ」

「当たり前だろう。キャッツを諦めてもらうには、参加するしかないからな」

「では、キャスコをかけて尋常に勝負としましょう」

「ああ、絶対に俺たちが優勝する」

「その威勢がどこまで続くのか見ものですね。では、僕のパートナーをご紹介しましょう」

 トーマンは召喚石を地面に投げ、中から大会用の獣を出す。

「この獣は!」
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