118 / 191
第十三章
第三話 キャッツの名はキャスコ
しおりを挟む
「あなた、いったい誰ですの!」
「シロウさんが嫌がっているよ。離れてよ」
髪が白と黒のツートンカラーの男に抱き締められ、身動きが取れないでいると、クロエが俺から離れるように彼に訴える。
「んんん~ん。これは失礼しました。つい、感情が昂ってしまいましたので。でも、まさかこんなところでキャスコと出会えるとは思ってもいませんでしたよ」
「あのう、そのキャスコって?」
「あなたが抱き抱えている珍獣ですよ。この子は僕のところから逃げ出した商品だったのです。ねぇ、キャスコ」
白黒のツートンカラーの髪色の男がキャッツを見る。
『ウー、ワン! ウー、ワン』
彼が声をかけると、キャッツは吠え出す。
「おやおや、久しぶりの再会だと言うのに冷たいですね。キャスコ」
「えーと?」
「これは申し遅れました。僕の名はトーマン、移動ペットショップを経営しながら世界中を旅している商人です。この度は逃げ出したキャスコと再会させてくださりありがとうございました。どうやら懐かれているようですしどうでしょう? 本当は一千万ギルのところを半額の五百万ギルで販売します」
困惑していると、男はトーマンと名乗った。そしてキャッツを買わないかと言って来る。
「んんん~ん。そうだ。買っていただけるのでしたら、これもおつけしましょう」
トーマンがポケットから半透明の石を取り出すと、俺に手渡した。
「これはペットのお家の役割をしてくれます。キャスコをこの中に入れ、必要なときに呼び出すことができます。この中にいる生き物は仮死状態となるため、餌代もかかりませんよ」
彼が見せた石には見覚えがある。
この石は! 野盗の頭が使っていた召喚石じゃないか!
「お前が野盗の頭にデスファンゴを売っていたのか」
トーマンの手渡したものが召喚石だと言うことに気づき、身構える。
「んんん~ん。野盗の頭かどうかわかりませんが、確かにデスファンゴを売ったことがあります。何でも強い生き物が欲しいとのことでしたので」
「お前が売った魔物のせいで、野盗の頭は殺されたんだぞ」
「おや? そうでしたか。それはお気の毒だ。しかし、野盗だったのだからよかったではないですか。人様から物を奪い、それで生きているようなゴミクズは、死んで当たり前なのですから。厄介者がいなくなり、僕の懐も潤った。まさにウイン、ウイン」
「何だと!」
この男、いったいどんな神経をしやがる。お前が危険な魔物だと分かって販売しなければ、あの男は死なずに済んだ。俺たちが倒し、憲兵に引き渡して更生させることもできた。
「んんん~ん。そう怒っても困りますよ。ちゃんと販売許可は取っております。魔族だって、ワイバーンを愛玩動物にしているじゃないですか? ね! 魔族のお嬢さん」
「確かに……そうだな」
ミラーカは気まずそうに答える。
「そんなことよりも、キャスコを買ってくれませんか? 半額ですよ、半額。こんなサービスは滅多にしませんよ」
「買うわけがないだろう!」
「買わない? では、キャスコをお返しくださると? まぁ、それもよろしいでしょう」
「お前なんかに金を払う価値はない! キャッツが逃げ出したのだって、お前が酷い仕打ちをしたからに決まっている!」
キャッツを抱き締めていた腕に力を入れる。
「んんん~ん! それは困った。流石にタダでお譲りする訳にはいきません。これはどうしたものか……こうなっては仕方がありませんね。せっかくキャスコを連れて来てくださったあなたたちを、犯罪者にするのは可哀想だ。ここは力付くでも奪い返させてもらいましょう」
懐から召喚石を取り出し、トーマンは空に向けて投げた。すると上空から魔物たちが現れる。
「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「魔物だ! 魔物が現れた!」
「どうして街中に魔物が現れる! 誰か早く衛兵に連絡しろ!」
突然魔物たちが現れ、街中は大混乱に陥る。
『ブヒヒ、やっと外に出られた。人間発見、久しぶりにぶっ潰せる』
鋭利な牙を持つイノシシの頭部に、膨れ上がった筋肉、片手には棘のある棍棒を握っている魔物が人の言葉を話す。
『キキキ、キキキキキ!』
サルの顔にコウモリの羽、両手には横笛を持っている獣が鳴く。
『お前たち、ストラテジストである俺の指示をちゃんと聞けよ。でなければ、またあの石の中に封じ込められる。あんな孤独の世界に戻りたくはない』
通常の何倍も大きいスライムが、人の言葉で指示に従うように命令を下す。
召喚石から現れたのはデスファンゴとロアリングフルート、それにマネットライムだ。
「Bランク以上の魔物たちばかりですわ!」
「でも、一度は倒したことがある魔物ばかりだよ」
「もちろん、シロウなら弱点も知っている。早くこいつらを倒して、町民を安心させてやろう」
「頑張ってください。わたしもポーターとして全力で支援しますわ!」
『ワン、ワン、ワン』
「んんん~ん。抵抗しますか。それも良いでしょう。ですが、キャスコは絶対に返してもらいますよ! やれ!」
『ブヒヒ! 細切れにしてくれる!』
『キキキ、キキキキキ!』
『まずはポーターのあの女から倒せ! サポート役さえいなければ、何も怖くない!』
トーマンが右手を前に出すと、魔物たちが一斉に襲いかかって来た。
「必ずキャッツを守り抜く! ファイヤーボール!」
「シロウさんが嫌がっているよ。離れてよ」
髪が白と黒のツートンカラーの男に抱き締められ、身動きが取れないでいると、クロエが俺から離れるように彼に訴える。
「んんん~ん。これは失礼しました。つい、感情が昂ってしまいましたので。でも、まさかこんなところでキャスコと出会えるとは思ってもいませんでしたよ」
「あのう、そのキャスコって?」
「あなたが抱き抱えている珍獣ですよ。この子は僕のところから逃げ出した商品だったのです。ねぇ、キャスコ」
白黒のツートンカラーの髪色の男がキャッツを見る。
『ウー、ワン! ウー、ワン』
彼が声をかけると、キャッツは吠え出す。
「おやおや、久しぶりの再会だと言うのに冷たいですね。キャスコ」
「えーと?」
「これは申し遅れました。僕の名はトーマン、移動ペットショップを経営しながら世界中を旅している商人です。この度は逃げ出したキャスコと再会させてくださりありがとうございました。どうやら懐かれているようですしどうでしょう? 本当は一千万ギルのところを半額の五百万ギルで販売します」
困惑していると、男はトーマンと名乗った。そしてキャッツを買わないかと言って来る。
「んんん~ん。そうだ。買っていただけるのでしたら、これもおつけしましょう」
トーマンがポケットから半透明の石を取り出すと、俺に手渡した。
「これはペットのお家の役割をしてくれます。キャスコをこの中に入れ、必要なときに呼び出すことができます。この中にいる生き物は仮死状態となるため、餌代もかかりませんよ」
彼が見せた石には見覚えがある。
この石は! 野盗の頭が使っていた召喚石じゃないか!
「お前が野盗の頭にデスファンゴを売っていたのか」
トーマンの手渡したものが召喚石だと言うことに気づき、身構える。
「んんん~ん。野盗の頭かどうかわかりませんが、確かにデスファンゴを売ったことがあります。何でも強い生き物が欲しいとのことでしたので」
「お前が売った魔物のせいで、野盗の頭は殺されたんだぞ」
「おや? そうでしたか。それはお気の毒だ。しかし、野盗だったのだからよかったではないですか。人様から物を奪い、それで生きているようなゴミクズは、死んで当たり前なのですから。厄介者がいなくなり、僕の懐も潤った。まさにウイン、ウイン」
「何だと!」
この男、いったいどんな神経をしやがる。お前が危険な魔物だと分かって販売しなければ、あの男は死なずに済んだ。俺たちが倒し、憲兵に引き渡して更生させることもできた。
「んんん~ん。そう怒っても困りますよ。ちゃんと販売許可は取っております。魔族だって、ワイバーンを愛玩動物にしているじゃないですか? ね! 魔族のお嬢さん」
「確かに……そうだな」
ミラーカは気まずそうに答える。
「そんなことよりも、キャスコを買ってくれませんか? 半額ですよ、半額。こんなサービスは滅多にしませんよ」
「買うわけがないだろう!」
「買わない? では、キャスコをお返しくださると? まぁ、それもよろしいでしょう」
「お前なんかに金を払う価値はない! キャッツが逃げ出したのだって、お前が酷い仕打ちをしたからに決まっている!」
キャッツを抱き締めていた腕に力を入れる。
「んんん~ん! それは困った。流石にタダでお譲りする訳にはいきません。これはどうしたものか……こうなっては仕方がありませんね。せっかくキャスコを連れて来てくださったあなたたちを、犯罪者にするのは可哀想だ。ここは力付くでも奪い返させてもらいましょう」
懐から召喚石を取り出し、トーマンは空に向けて投げた。すると上空から魔物たちが現れる。
「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「魔物だ! 魔物が現れた!」
「どうして街中に魔物が現れる! 誰か早く衛兵に連絡しろ!」
突然魔物たちが現れ、街中は大混乱に陥る。
『ブヒヒ、やっと外に出られた。人間発見、久しぶりにぶっ潰せる』
鋭利な牙を持つイノシシの頭部に、膨れ上がった筋肉、片手には棘のある棍棒を握っている魔物が人の言葉を話す。
『キキキ、キキキキキ!』
サルの顔にコウモリの羽、両手には横笛を持っている獣が鳴く。
『お前たち、ストラテジストである俺の指示をちゃんと聞けよ。でなければ、またあの石の中に封じ込められる。あんな孤独の世界に戻りたくはない』
通常の何倍も大きいスライムが、人の言葉で指示に従うように命令を下す。
召喚石から現れたのはデスファンゴとロアリングフルート、それにマネットライムだ。
「Bランク以上の魔物たちばかりですわ!」
「でも、一度は倒したことがある魔物ばかりだよ」
「もちろん、シロウなら弱点も知っている。早くこいつらを倒して、町民を安心させてやろう」
「頑張ってください。わたしもポーターとして全力で支援しますわ!」
『ワン、ワン、ワン』
「んんん~ん。抵抗しますか。それも良いでしょう。ですが、キャスコは絶対に返してもらいますよ! やれ!」
『ブヒヒ! 細切れにしてくれる!』
『キキキ、キキキキキ!』
『まずはポーターのあの女から倒せ! サポート役さえいなければ、何も怖くない!』
トーマンが右手を前に出すと、魔物たちが一斉に襲いかかって来た。
「必ずキャッツを守り抜く! ファイヤーボール!」
11
お気に入りに追加
1,973
あなたにおすすめの小説

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。

救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ
鈴木竜一
ファンタジー
「おまえを今日限りでパーティーから追放する」
魔族から世界を救う目的で集められた救世主パーティー【ヴェガリス】のリーダー・アルゴがそう言い放った相手は主力メンバー・デレクの愛弟子である見習い女剣士のミレインだった。
表向きは実力不足と言いながら、真の追放理由はしつこく言い寄っていたミレインにこっぴどく振られたからというしょうもないもの。
真相を知ったデレクはとても納得できるものじゃないと憤慨し、あとを追うようにパーティーを抜けると彼女を連れて故郷の田舎町へと戻った。
その後、農業をやりながら冒険者パーティーを結成。
趣味程度にのんびりやろうとしていたが、やがて彼らは新しい仲間とともに【真の救世主】として世界にその名を轟かせていくことになる。
一方、【ヴェガリス】ではアルゴが嫉妬に狂い始めていて……

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。
現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。
アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。
しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。
本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに……
そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。
後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。
だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。
むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。
これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う
ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。
そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。
だけどその条件がなかなか厄介だった。
何故ならその条件というのが────

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる