Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十三章

第一話 魔王復活の兆し

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 ~魔族のリーダーソロモン視点~



 魔族のリーダーである俺ことソロモンは、二つの玉を掴みながらニヤリと口角を上げていた。

「ガーベラ、お前を失ったことは痛手だが、よくやってくれた。魔王の魂が封印されている三つの宝玉のうち、二つを人間どもから取り戻すことができた。残りはあと一つ」

 握っていた玉を台座に戻すと、背後から足音が聞こえ、振り返る。

 そこには、ローブを纏っているギョロ目の男がこちらに近づいていた。

「ジルドーレか。何か用か?」

「あのう……ソロモンが私を呼び出したのではないですか」

 彼は元気がなさそうに答える。

 どうやら今日はまだアレを飲んではいないようだな。今の彼はテンションが低い。

「そうだったな。すまない。本題に入る前に聞きたいのだが、今日はまだアレを飲んでいないのか?」

「あー、そう言えば今日はまだ飲んでいませんでしたね。すみません」

 元気なく答える彼に、苦笑いを浮かべてしまう。

 この状態の彼は苦手だ。調子が狂ってしまう。

「今から飲め、俺の調子が狂ってしまう」

「それはすみません。では、失礼ながらここで飲ませてもらいます」

 彼は懐から液体の入った小瓶を取り出し、蓋を開けて中の液体を飲み干す。

「キター!」

 液体を飲み終えた瞬間、彼は声を大にして叫ぶ。

「お待たせしました! ハイテンションのジルドーレです。今日も元気よく人間共を駆逐していきましょう!」

 先ほどとは別人のように、彼の態度はがらりと変わる。

 うん、今のジルドーレの方が俺的にはしっくりとくる。

「それで、私を呼び出していったい何の話ですか?」

「ガーベラがやられた」

 仲間が倒されたことを話すと、ジルドーレは時間が止まったように動かなくなる。

「何ですとおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 数秒間の停止のあと、彼は頭に手を置いて叫んだ。

「ガーベラは、私たちのチームの中で強者の部類に入る! それを倒しただと! こんなことがあっていいのか! いやあり得ないいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 ガーベラが倒されたことが余程ショックだったのか、ジルドーレは叫びながら床に倒れる。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 頭を打ちました! 痛いいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 後頭部を床にぶつけ、彼は左右に転がりながら悶える。

 テンションが高い方が話やすいが、ここまでオーバーリアクションだと、俺のほうが疲れる。

「ジルドーレ、悪ふざけをするなら、出て行ってくれないか。悪ノリをされると話すべきことが話せなくなる」

「これは失礼をいたしました。それでは続きをお願いします」

「彼女は敗れたが、魔王の魂が封じられている三つの玉のうち、二つはこちらの手中にある。残りはあと一つだ」

「おお! ついにここまで来ましたか! これで私たちの野望にまた一つ前進しましたね」

「ああ、残り一つだが、それはまだ見つかっていない。今、トーマンに捜索させているところだ」

「トーマンですか! あの召喚獣使い、中々アジトに顔を出さないから、存在を忘れていましたよ」

 確かにあいつは変わっている。魔族でありながら人間になりきり、やつの存在を知っているのは、チームの中でも俺とジルドーレぐらいしかいない。

 ジルドーレと話していると、一羽のリピートバードが俺たちのところに飛んで来た。

「リピートバード? って! どうして私の頭の上に乗るのですか! 離れなさい!」

 鳥はジルドーレの頭の上に着地をすると、俺を見る。

「ジルドーレ、少しの間だけ我慢していろ」

「仕方がありませんね。この鳥、要件が終わり次第に焼いて食べるとしましょう。私の頭に乗った罰です」

『ソロモン宛にメッセージがあります。お聴きになりますか?』

「誰からなのか検討が付く。話せ」

 メッセージを言うように促すと、鳥は嘴を動かして話だした。

『んんん~ん、ご機嫌ようソロモン。こうしてメッセージのやり取りをするのも久しぶりだね』

 相変わらず、変な咳払いをしながら会話を始めやがるな。

『前に頼まれていた魔王の魂が封印されている宝玉の件だけど、臭う場所は見つけたよ。ジルドーレの体臭のようにね』

「私の体臭が臭いとはどういうことだ! ちゃんと毎日身体を洗ってしますぞ!」

 聞かされたメッセージにジルドーレが声を荒げる。

 リピートバードに文句を言っても意味がないだろう。

『んんん~ん。やだなぁジルドーレ、ちょっとした冗談じゃないか。そんなに怒らないでよ』

 どうやらジルドーレが怒ると予想をしていたようだ。まるで見えているかのようにタイミングよく鳥が嘲笑う。

『でも、怪しい場所を見つけたと言うのは本当だ。ケモノ族の町があるだろう? あそこにある社の巫女さんが守っている宝があるらしい。魔王の魂が封印されている宝玉の可能性が高い』

 ケモノ族のある町か。確かあそこは東の島国だったな。

『んんん~ん。そう言う訳だから。僕はついでにケモノ族の町に向かってみるよ』

「ああ、分かった。頼む」

『因みにこのリピートバードは、用件が終わり次第、ジルドーレの目玉を攻撃する。やれ!』

 メッセージを言い終えると、リピートバードは嘴でジルドーレの目を突付く。

「ぎゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 目が、目がああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 目玉を突かれた彼は床に転がり悶え苦しむ。

 リピートバードはジルドーレの頭から離れると飛び去って行った。

「おのれトーマン! よくも私にこんな酷い仕打ちをしてくれたな! 絶対に許さない! ソロモン! 私も東の島に向かいます! トーマンの手柄を横取り……じゃなかった。サポートをしてきます」

 ジルドーレは俺が許可を出す前に、踵を返してこの部屋から出て行く。

 魔王の復活まであともう少し。

「わはははははは、あーはははは」
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