Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

文字の大きさ
上 下
113 / 191
第十二章

第六話 たくさんの子どもを産むなんて、お盛んなのもいい加減にしろよ

しおりを挟む
 シャーマンの大量発生の原因を突き止めるべく、俺は一人で蛮族の集落に向かっていた。

 オルテガのギルドがある町でも、魔物が大量に発生して襲撃してきた。だけど、あのときとは異なるところがある。

 第一に魔物がシャーマンだけと言うこと、第二に職業持ちがいることだ。これらを考えるに、魔物の大量発生の原因はキングクラスが誕生したことによるものと考えていい。

 キングクラスは同じ種族をたくさん産み落とすことができる。

 キングを倒さない限り、魔物は増え続け、俺たちの勝ち目が薄くなる。

『ケケケ』

「じゃまだ! どけ! アイシクル」

 増援部隊の魔物に見つかるも、近づかれる前に遠距離攻撃をする。

 氷の魔法を発動し、氷柱を出すとシャーマンたちに当てて次々と倒して行く。

 ここで敵の数を減らせば、少しでも仲間達が楽をすることができる。

 可能な限り魔物を倒しつつ、蛮族の集落に辿り着いた。

 寂れた村の中を走っていると巨大なシャーマンを発見した。

 やっぱり、予想通りにキングシャーマンがいたか。

『人間か。人間がこの村に来るのは久しいな。あそこの町の住人か?』

 キングクラスは長い年月生きていることもあり、複数の言葉を話すことができる。会話ができるのであれば、どうして町を襲撃するのか理由を知ることができる。

「どうしてあの町を攻める!」

『まぁ、待て、今は出産の真最中だ。ひと段落するまで待ってほしい。アアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 キングシャーマンが力み声を上げると、連続でいくつもの卵が産み落とされる。その卵は瞬時に割れると中から新たな生命が誕生した。

『ふう、これでよし、どうしてあの町を攻めるのかであったな。それは単純な話だ。我々は元々邪神を崇め奉る人間であった。だが、疫病が広がり、我々は全滅した』

 町長さんから聞いた話しを、キングシャーマンは語る。

『我たちは魔物となった後、静かに暮らしていた。そんなある日、ガーベラと言う魔族の女が現れた』

 やっぱり、この襲撃はガーベラが関わっていたのか。

『やつは我にこう言った。あなたたちが崇め奉っている邪神の言葉を伝えに来たと。そして彼女は水晶のように透き通った紫色の球を探し出せと我に命じた』

 ガーベラは水晶のように透き通った球体を探している。だからシャーマンたちを利用したのだろうな。

『その言葉を聞いた我は次々と子を産み、一番近いあの町を襲う計画を立てた。さぁ、これで話しは終わりだ! 敵陣のど真中に一人で来たことは褒めてやる。だが、ここで死ね!』

 キングシャーマンが叩き潰そうと手を振り下ろす。

 やっぱり戦闘は回避できないか。仕方がない。悪いけど、倒させてもらうよ。

「ファイヤーアロー!」

 後方に跳躍してキングシャーマンの手を躱すと、周りにいるシャーマンに向けて炎の矢を放つ。

 炎が当たった魔物は肉を焼かれ、地面に倒れる。

『よくも! 我の子どもたちを!』

 やつの子どもとも言えるシャーマンを倒すと、キングシャーマンは激昂し、槍で突いてくる。

 真っ直ぐな攻撃ほど簡単に避けられるものはない。

 一歩横に移動して敵の一撃を躱す。

『喰らえ! デスボール!』

 攻撃を避けられた敵は、上空に巨大な火球を生み出した。

『死ね!』

 デスボールは俺も使えるから何度も見飽きているし、対処方法もいくつか思い浮かぶんだよな。

「こいつでガッカリしてくれるなよ! サンドストーム」

 呪文を唱えると、上空にある火球に向けて柱のように砂が舞い上がる。そして火球を内部に取り入れた。

 さて、そろそろいいかな?

 柱状の砂嵐を消すと、デスボールは跡形もなく消え去っていた。

『何だと! 我のデスボールが消えた!』

「そりゃ消えるでしょう。炎が燃焼し続けるには、酸素の供給が必要だ。常に砂に覆われたことで、空気に触れることなく温度を下げて燃え尽きるのを待てば、炎は消えてなくなる」

『まさか、我のデスボールが砂程度に掻き消されるとは!』

「今度はこっちから行かせてもらう。デスフェニックス」

 ファイヤーアローの上位魔法を唱える。

 すると空中に炎が現れ、鳥の形を模っていく。

「飛べ! デスフェニックス!」

 合図を送ると、炎の鳥は飛翔してキングシャーマンに激突した。

『ぐああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 炎に包まれ、魔物は悲鳴を上げる。

「その炎はデスボールと同じ灼熱の炎、そう簡単には消えないぞ」

『くそおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 人間如きの攻撃で我がやられるとはああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 キングシャーマンは燃やし尽くされ、跡形もなく消え去る。

「さてと、マリーたちも決着が着いたことだろうし、俺も戻ってみんなと合流をするかな。スピードスター」

 俊足の魔法を唱え、地を蹴って駆けると、仲間たちと合流する。

「魔物の大量発生の原因であるキングクラスの魔物を倒してきた。これ以上の増援はない」

「それは本当ですか! 良かったですわ。ちょうどワタクシたちも、シャーマンたちを倒し終わったところですわ」

 どうやらほぼ同じタイミングで、両サイドの魔物を全滅させることができたみたいだな。

「俺たちから離れてまだ十分も経っていないはず。それなのにキングクラスの親玉を倒すなんて、シロウは本当に凄いじゃないか」

 ベオが俺に近づくと、肩に手を置いて誉める。

「俺ができることをしただけさ。それよりも」

 俺はマリーたちに視線を向ける。

「やっぱりこの襲撃にはガーベラが関わっていた。シャーマンたちを利用して、マリーたちの実家にあった玉と同じ物を探している」

「やはり、あの女が関わっていましたのね」

「ガーベラを見つけて家の家宝を返してもらわないと」

「問題はこれからどうするかだ。もし、完全に目星が突いていなかった場合は、シャーマンたちにこの町を襲わせ、自分は別の場所に向かっているかもしれない」

「でも、襲撃が失敗したことを知ったら、またここに戻ってくるかもしれませんわ。行き違いになってしまう可能性もありますわよ」

 ミラーカの意見も分かるし、エリーザの言い分も一理ある。

 さて、どうしようか。戦力を二手に分けるか、それともこの町に留まりつつ、またガーベラの情報を集めるべきか。

 悩んでいると、雲の形ではない影が差す。

 見上げると、そこにはワイバーンが両翼を羽ばたかせてその場に止まっていた。

「まさか。キングシャーマンまで倒すとは思ってもいなかったです。こうなっては私自ら町を破壊し、調べるとしましょう」

 どうやらエリーザの読みが当たったようだな。

「ガーベラ!」
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

処理中です...