Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十一章

第一話 次の目的地が決まったのでエルフの里を出たいが、里の女の娘たちが別れを惜しんでしまう件

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 エルフの里の復興から一週間が経った。俺が一番貢献していたが、エルフたちの働きも目粉めまぐるしい。その結果、予定よりも数ヶ月早く復興作業を終えることができた。

「本当にありがとう。君には感謝しかないよ」

 肩にかけているタオルで汗を拭っていると、クロエのお父さんがお礼を言う。

「いえ、これぐらいお安い御用です」

「里の復興に付き合ってもらって悪いのだが、君も予定があるのだろう? 本当に大丈夫だったのか?」

「ええ、特に明確な予定を立てていた訳ではないので、問題ないです。エルフの里を出た後は、ギルドのある町に行こうと思っていますが」

「そうか。なら、ダラスという町がある。そこに向かうといいだろう」

「貴男、やっぱりどこを探してもないわ!」

 クロエのお父さんと話していると、彼の奥さんが駆け寄って来た。

 クロエのお母さんは確か、復興作業中もずっと何かを探していたよな。何が見つからないのだろう?

「どうかしたのですか? よければ探すのを手伝いますが」

 探しものなら人数が多いほうがいい。そう思って手伝いを申し出たのだが、クロエのご両親は困ったような顔をする。

「貴男、どうしましょうか?」

「まぁ、シロウ君なら話しても問題はないだろう。だけど、この話は誰にも言わないでくれよ」

 周囲を伺いながら、クロエのお父さんが顔を寄せる。そして小声で話してくれた。

「実は、妻が探しているものは、代々伝わる家宝なんだ。緑色の球体で、水晶のように透き通っている。これ以上は詳しく話せないが、それがなくなると大変なんだ」

「なるほど、緑色の水晶のように透き通った球体ですか。確かに家宝がなくなったら大変ですね」

「ああ、だけどこのことを里の者たちに知られる訳にはいかない。だから密かに探しているんだ」

「里が壊滅するほどの爆風だったから、もしかしたら里の外に吹き飛んでしまったかもしれないわね」

「母さんの言うとおりかもしれないな。次からは里の外も探してみるとしよう。シロウ君をこれ以上この里に縛り付けておくわけにはいかない。もし、旅の道中で見つけることができたのなら、リピートバードで連絡してくれるかい?」

「わかりました。何かわかりましたら、そのときに連絡します」

 クロエのご両親が離れていくと、俺は胸の前で腕を組んで考える。

 ミラーカはクロエを悲しませないために、ガーベラに操られていたと嘘を吐いた。だけど、アーシュさんの口振りから考えるに、本当は手を組んでいたのだろうな。

 そしてアーシュさんが暴れてほぼ無人となった里の中を、俺たちに気付かれないように歩き回った。そしてクロエの実家に伝わる家宝を盗んだとも考えられる。

 一番は爆風でどこかに吹き飛んだだけであるのが好ましい。だけど現段階では、ガーベラが奪ったと考えるのが濃厚だ。

 いったいあの女の目的は何だったのだろう?

 今は答えが出せないが、これでガーベラを探して倒すもう一つの理由ができたな。まずは、次の町でギルドの依頼をこなしつつ、ガーベラの情報を集めよう。

 今後の方針を明確にすると、仲間に声をかけて里を出ることを伝えた。





 翌日、里を出ようとすると、多くのエルフたちが見送りに来てくれた。

「シロウさん、もう行ってしまうのですか」

「もっと、ここに居てくださいよ。私たち、まだ案内したいところがたくさんあるのですよ」

「もっとシロウさんとの思い出を作りたいです」

 エルフの女の子たちが里に残るように言い、俺を説得しようとする。中にはエルフ特有の美乳を押し付けてくる娘もいた。

 どうしよう? こんなに慕ってくれる女の子たちを、邪険に扱ってしまうわけにはいかない。だからと言って、もう一日里に居るわけにもいかないんだよな。

「ほら、里から出られないから、みんな離れてよ」

「シロウ、早く行きますわよ」

「マリーお姉様の言うとおりですわ!」

「多くの女の子にモテモテで、心が揺らぐ気持ちは分からなくもないが、限度というものがある。私の許容範囲を超えると、あの薬を飲ませることになるよ」

 どうしようか困っていると、クロエがエルフの女の子たちを引き離し、その間にマリーたちが俺の腕を引っ張る。

「それじゃ、皆さんお元気で」

「ああ、旅の無事を祈っている。クロエのことをよろしく頼む」

「任せてください」

 あれ? 何だか似たようなことが前にもなかったか? まぁいいか。

 クロエのお父さんに軽く頭を下げ、踵を返してエルフの里を出て行く。

「次に向かうのはダラスという町であっていましたわよね? シロウ」

「ああ。ギルドがあるから、ダラスを活動拠点にしようと思う。依頼をこなしつつ、情報集めだな」

 マリーが訊ねてきたので、もう一度今後の方針について話す。

「クロエのお父さんからも、情報収集を頼まれているからな」

「シロウさんに、何の情報収集をお願いしたの?」

「!」

 クロエの問いに、一瞬驚く。

 そう言えばクロエはエルフだ。人間とは違い、遠くても小さくとも音を聞くことができる。ポツリと呟いたつもりだったのだけど、彼女には聞かれてしまったか。

 でもどうしようか。いくらクロエにも関係があることとは言え、身内の恥を晒すようなことを話すことになるよな。今は言わないほうがいいかもしれない。

「えーと、旅先で珍しいものが見つかったら教えてほしいらしい」

「ふーん、そうなんだ」

 咄嗟に吐いた嘘なのだが、どうやらクロエは納得してくれた。

「あれ? 何か聞こえない?」

 ダラスに向けて森の中を歩いていると、クロエが何かに気づいたようだ。

 聞き耳を立ててみるが、俺には何も聞こえない。

「動物の鳴き声が聞こえる。この感じ、もしかしたら襲われているかもしれない」

「もしかしたら魔物に襲われているかもしれないね。どうするシロウ? 動物だから、無視して先に進んでも罰は当たらないと思うけど」

 ミラーカが無視してもいいのではないかと言い、俺は考える。

 人の声が聞こえないからといって、絶対にいないとは言えないよな。

「いや、クロエが聞こえたという場所に向かおう。もしかしたら声が出せないだけで、人も一緒にいるかもしれない。クロエ、どっちから聞こえた?」

「あっちの方から」

「よし、行くぞ」

 クロエが指を刺したた方へと、急いで走る。
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