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第八章
第八話 魔剣ティルヴィングの秘密
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~シロウ視点~
「ガ、ガアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!」
突如口から血を吐き出し、断末魔のような叫び声を上げるレオを見て、俺は困惑した。
いったい何が起きている? 俺の攻撃は全て躱された。一発も当たっていない。
それに彼が言っていた【強剣依存】ってなんだ? そんなスキル聞いたこともない。鑑定士である母さんからは全てのスキルを教えてもらったことはあるが、その中に【強剣依存】なんてスキルは無かったはずだ。
レオは何か勘違いをしているに違いない。
「おい、レオのやつどうしちまったんだよ」
「まさか、俺たちの目には見えないような攻撃を喰らってしまったのか?」
「ふざけるな! デンバー代表が無様な戦いを見せるな!」
観客たちがレオに対して暴言を吐き出した。どうやら彼等は、俺の攻撃が当たったように思われているようだな。
様子を伺っていると、レオはとうとう前方に倒れてしまう。
そんな彼の姿を見て、デンバー国の観客たちは騒めく。
なんだ? あの剣? レオの腕に巻き付いているのか?
彼の握っている剣に違和感を覚えた俺は、レオに近づく。
そして興味を持った剣に視線を向けていると、柄頭であるポンメルが人の瞼に似ていることに気づいた。
その瞬間、瞼のようなものが開き、血走った眼球が現れる。
「キエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
人間のものとは思えないような叫び声が聞こえ、倒れたレオは立ち上がった。しかし彼は白目を向いており、意識がないように思える。
「キエエエエエエエエエェェェェェェェェェェ!」
そして剣を上段に構えると素早く振り下ろした。その速度は早く、人間の限界に近い。俺がスピードスターを使ったときの速度と同程度の速さだ。
後方に跳躍して回避するが、刀身がリングに触れた瞬間、足場が砕け散る。そして破片が石礫のように襲いかかった。
飛んでくる破片を見極め、俺は最低限の動きでその場に立ったまま躱していく。
柄頭のポンメルの目が開いた途端に、レオの動きが化け物のように早くなりやがった。
「シロウ! 試合を観察しながら、私は彼の持っている剣は魔剣と呼ばれるティルヴィングだと思っていた! だけど、あれは本物のティルヴィングではない! 我々魔族が研究しているミミックの改良版、寄生型のミミックだ!」
俺の戦いを見守っていたミラーカが、レオの使用していた武器が魔物であることを告げる。
なるほど、彼女の説明のお陰である程度は理解した。どうしてレオが化け物のような奇声をあげ、人間の限界に近い速度とパワーを魔法なしで可能にしたのか、そのカラクリがわかった。
十字鍔であるキヨンから出ている触手のようなものが、腕に巻き付いているように見えるが、本当は肉体に突き刺さっている。
そしてその触手は肉体に入り込み、神経を通して脳を支配した。身体の権限を得た魔物は、リミッターを外し、先ほどのような尋常じゃない動きを発揮したのだ。
「これはまずいな。早くなんとかしないと、レオが自ら肉体を滅ぼすことになる」
戦闘中に彼が血を吐き出したのも、魔物が強引に身体を動かし、レオの肉体に負担をかけていたからだ。
急に倒れたことも考えると、レオは限界に近い。
「キエエエエエエエエエェェェェェェェェェェ!」
奇妙な声を上げながら、操られているレオは剣を水平にもっていく。
この構えは一閃突きだ。
そう判断した瞬間、やつは技を放ってきた。身体の動作からどんな攻撃が繰り出されるのか、見極めた俺は最低限の動きで躱す。
「シロウ! ワタクシたちも手伝いますわ!」
「足手纏いにはならないから」
「さすがに魔物が関与しているのだから、これはもう、試合とは言えないからね」
「だめだ! 皆は手出しをするんじゃない」
俺は彼女たちが参戦すること拒む。
別に強がっているのではない。レオを救出するためにも、皆が加わってもらった方が可能性は高くなる。だけど……。
「いいぞ! レオ!」
「やっちまえ!」
観客たちは気づいていない。そんな中で彼女たちがリングに上がってしまえば、ルール違反とみなされる。ここは一人でやらなければ。
まずは、レオの体内に侵入している触手を引き摺り出す。
寄生型のミミックであっても、生き物であることには変わらない。ダメージを受ければ逃げようとするだろう。その解決方法は結局レオを倒すしか方法がない。
神経を通って脳を支配しているということは、逆をいえば脳を通して神経に伝わり、その情報が魔物にも伝わっていくということだ。
寄生している肉体がダメージを負えば、自分の命を救うために宿主から離れようとするはず。
「この一撃で終わらせよう。ウエポンカーニバル!」
俺は呪文を唱える。すると空中に数多くの剣や槍、斧と言った多種多様の武器が展開された。
「放て! ウエポンアロー」
雨のように、武器がレオに降り注ぐ。
肉体を操っている魔物は、彼の身体を使って防ごうとする。だが、雨粒を全て回避することが不可能のように、レオの肉体は次第に傷を負っていく。
「キエエエエエエエエエェェェェェェェェェェ!」
これ以上は自分が殺されると判断したのだろう。寄生型のミミックはレオの身体から離れると空中を浮遊する。
そして俺に背を向けると、この場から去ろうとした。
このままあの魔物を逃してしまえば、また別の被害者が出てしまう。ここでやつを倒さなければ。
「逃すか! ウォーターカッター!」
空気中の水分子を集め、水を生み出す。それを一ミリほどの細さに変え、寄生型のミミックに向けて放つ。
『キエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェ!』
ウォーターカッターは、柄頭のポンメル部分の目に直撃し、眼球から血を噴き出した。
空中に浮遊していた魔物は、ダメージを受けてリングに落下する。けれどまだ完全に倒したわけではない。
再び空中に逃げる前に、トドメを刺す。
「ゼイレゾナンス・バイブレーション」
魔法を発動したその瞬間、寄生型のミミックの身体にヒビが入る。
やっぱり生き物であっても身体は剣だな。これであの魔物は終わりだ。
この魔法は、物質の固有振動数と同じ周波数の音を浴びせることにより、対象を破壊することを可能にする。
寄生型ミミックと同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、やつが疲労破壊を起こした。
『キエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェ!』
魔物の身体に入ったヒビは、蜘蛛の巣状に広がり砕け散っていく。
「どうにか倒せれたな。あとはレオだが、このままほっておいたら死んでしまうかもしれないよな」
俺はリングに倒れているレオに近づく。
「ブラッドプリュース、ネイチャーヒーリング」
このまま見殺しにするわけにはいかないと思った俺は、血液生産魔法と、上級回復魔法を唱える。
ふたつの魔法の効果により、レオはボロボロになる前の状態に戻った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。
何卒宜しくお願いします。
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突如口から血を吐き出し、断末魔のような叫び声を上げるレオを見て、俺は困惑した。
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それに彼が言っていた【強剣依存】ってなんだ? そんなスキル聞いたこともない。鑑定士である母さんからは全てのスキルを教えてもらったことはあるが、その中に【強剣依存】なんてスキルは無かったはずだ。
レオは何か勘違いをしているに違いない。
「おい、レオのやつどうしちまったんだよ」
「まさか、俺たちの目には見えないような攻撃を喰らってしまったのか?」
「ふざけるな! デンバー代表が無様な戦いを見せるな!」
観客たちがレオに対して暴言を吐き出した。どうやら彼等は、俺の攻撃が当たったように思われているようだな。
様子を伺っていると、レオはとうとう前方に倒れてしまう。
そんな彼の姿を見て、デンバー国の観客たちは騒めく。
なんだ? あの剣? レオの腕に巻き付いているのか?
彼の握っている剣に違和感を覚えた俺は、レオに近づく。
そして興味を持った剣に視線を向けていると、柄頭であるポンメルが人の瞼に似ていることに気づいた。
その瞬間、瞼のようなものが開き、血走った眼球が現れる。
「キエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
人間のものとは思えないような叫び声が聞こえ、倒れたレオは立ち上がった。しかし彼は白目を向いており、意識がないように思える。
「キエエエエエエエエエェェェェェェェェェェ!」
そして剣を上段に構えると素早く振り下ろした。その速度は早く、人間の限界に近い。俺がスピードスターを使ったときの速度と同程度の速さだ。
後方に跳躍して回避するが、刀身がリングに触れた瞬間、足場が砕け散る。そして破片が石礫のように襲いかかった。
飛んでくる破片を見極め、俺は最低限の動きでその場に立ったまま躱していく。
柄頭のポンメルの目が開いた途端に、レオの動きが化け物のように早くなりやがった。
「シロウ! 試合を観察しながら、私は彼の持っている剣は魔剣と呼ばれるティルヴィングだと思っていた! だけど、あれは本物のティルヴィングではない! 我々魔族が研究しているミミックの改良版、寄生型のミミックだ!」
俺の戦いを見守っていたミラーカが、レオの使用していた武器が魔物であることを告げる。
なるほど、彼女の説明のお陰である程度は理解した。どうしてレオが化け物のような奇声をあげ、人間の限界に近い速度とパワーを魔法なしで可能にしたのか、そのカラクリがわかった。
十字鍔であるキヨンから出ている触手のようなものが、腕に巻き付いているように見えるが、本当は肉体に突き刺さっている。
そしてその触手は肉体に入り込み、神経を通して脳を支配した。身体の権限を得た魔物は、リミッターを外し、先ほどのような尋常じゃない動きを発揮したのだ。
「これはまずいな。早くなんとかしないと、レオが自ら肉体を滅ぼすことになる」
戦闘中に彼が血を吐き出したのも、魔物が強引に身体を動かし、レオの肉体に負担をかけていたからだ。
急に倒れたことも考えると、レオは限界に近い。
「キエエエエエエエエエェェェェェェェェェェ!」
奇妙な声を上げながら、操られているレオは剣を水平にもっていく。
この構えは一閃突きだ。
そう判断した瞬間、やつは技を放ってきた。身体の動作からどんな攻撃が繰り出されるのか、見極めた俺は最低限の動きで躱す。
「シロウ! ワタクシたちも手伝いますわ!」
「足手纏いにはならないから」
「さすがに魔物が関与しているのだから、これはもう、試合とは言えないからね」
「だめだ! 皆は手出しをするんじゃない」
俺は彼女たちが参戦すること拒む。
別に強がっているのではない。レオを救出するためにも、皆が加わってもらった方が可能性は高くなる。だけど……。
「いいぞ! レオ!」
「やっちまえ!」
観客たちは気づいていない。そんな中で彼女たちがリングに上がってしまえば、ルール違反とみなされる。ここは一人でやらなければ。
まずは、レオの体内に侵入している触手を引き摺り出す。
寄生型のミミックであっても、生き物であることには変わらない。ダメージを受ければ逃げようとするだろう。その解決方法は結局レオを倒すしか方法がない。
神経を通って脳を支配しているということは、逆をいえば脳を通して神経に伝わり、その情報が魔物にも伝わっていくということだ。
寄生している肉体がダメージを負えば、自分の命を救うために宿主から離れようとするはず。
「この一撃で終わらせよう。ウエポンカーニバル!」
俺は呪文を唱える。すると空中に数多くの剣や槍、斧と言った多種多様の武器が展開された。
「放て! ウエポンアロー」
雨のように、武器がレオに降り注ぐ。
肉体を操っている魔物は、彼の身体を使って防ごうとする。だが、雨粒を全て回避することが不可能のように、レオの肉体は次第に傷を負っていく。
「キエエエエエエエエエェェェェェェェェェェ!」
これ以上は自分が殺されると判断したのだろう。寄生型のミミックはレオの身体から離れると空中を浮遊する。
そして俺に背を向けると、この場から去ろうとした。
このままあの魔物を逃してしまえば、また別の被害者が出てしまう。ここでやつを倒さなければ。
「逃すか! ウォーターカッター!」
空気中の水分子を集め、水を生み出す。それを一ミリほどの細さに変え、寄生型のミミックに向けて放つ。
『キエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェ!』
ウォーターカッターは、柄頭のポンメル部分の目に直撃し、眼球から血を噴き出した。
空中に浮遊していた魔物は、ダメージを受けてリングに落下する。けれどまだ完全に倒したわけではない。
再び空中に逃げる前に、トドメを刺す。
「ゼイレゾナンス・バイブレーション」
魔法を発動したその瞬間、寄生型のミミックの身体にヒビが入る。
やっぱり生き物であっても身体は剣だな。これであの魔物は終わりだ。
この魔法は、物質の固有振動数と同じ周波数の音を浴びせることにより、対象を破壊することを可能にする。
寄生型ミミックと同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、やつが疲労破壊を起こした。
『キエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェ!』
魔物の身体に入ったヒビは、蜘蛛の巣状に広がり砕け散っていく。
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俺はリングに倒れているレオに近づく。
「ブラッドプリュース、ネイチャーヒーリング」
このまま見殺しにするわけにはいかないと思った俺は、血液生産魔法と、上級回復魔法を唱える。
ふたつの魔法の効果により、レオはボロボロになる前の状態に戻った。
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