Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第六章

第七話 地面にスペアの骨を埋めておくって、お前は犬か!

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「くそう、姿を消しやがった」

 地面に潜ったスカルドラゴンを警戒し、周囲を見渡す。

 いったいどこから現れる?

 考えていると、再び地響きが聞こえ、俺の足元に強い揺れを感じた。

「真下か」

 足下の地面からスカルドラゴンが這出てくる。そう直感した俺は、後方に跳躍してその場から離れる。

 予想どおりに俺が立っていた場所から、骨のドラゴンが飛び出してきた。

「チッ、俺としたことがすっかり忘れていた」

 地面から現れたスカルドラゴンを見て、思わず舌打ちする。

 欠損していたはずの骨が元通りになっていたのだ。

 俺としたことが忘れていた。スカルドラゴンは、巣穴に骨を隠しておく修正がある。万が一失っても補充することが可能だ。やつのテリトリーにいる限りは、スペアがある限り何度でも元に戻ってしまう。

 だけど、そんなに多くの予備を持ってはいないはず。骨系の魔物は高ランクに設定されている。故に、魔物自身も人間を侮っているはずだ。

「例え失った骨を補充したところで、スペアがなくなれば補うことができない」

 そう、これはただの持久戦だ。相手の予備の骨がなくなるのが先か、俺の魔力が尽きるのが先か。ただそれだけのこと。

 まぁ、相手が先に力尽きることになるだろう。所詮は骨なのだから。

 スカルドラゴンが口を開けた。冷気の魔法攻撃がくる。

 俺の予想どおりに、この辺一帯に冷たい風が吹き、寒気を感じる。

「さ、寒いですわね。手がかじかんでまともに鞭を握っていられませんわ」

「わ、私も耳が痛い」

 急激な温度変化により、マリーとクロエは行動不能になってしまったようだ。

 確かに、これなら呪文名を言っても上手く発音できないかもしれないな。でも、俺には洞窟に入った段階で既に発動している魔法がある。

 明かり代わりに使っていたファイヤーボールの熱量を上げ、周辺の気温に変化を与える。

「あ、急に暖かくなりましたわね」

「耳が痛くない。これなら周辺の音を聞き取ることができる」

 温かくしたことで、二人が行動できるようになったようだ。

 敵が冷気の魔法を使っても、こちらのファイヤーボールの熱量さえ上回っていれば問題ない。

「さて、そろそろ反撃させてもらおう。今度は先ほどの何倍もの威力だ。カーバネットウォーター! ゼイレゾナンス・バイブレーション! 合成魔法キャビテーション!」

 巨大な炭酸水を作り、スカルドラゴンに浴びせる。そして続いて音の魔法を使い、衝撃波を発生させて魔物の骨を粉砕していく。

 合成魔法の影響を受けた骨のドラゴンは、頭部を残して粉々に砕け散った。

「やりましたわね。さすがシロウですわ!」

「やったー! さすが私の神様!」

「これは驚いた。シロウが最後に勝つと思っていたが、これほどの威力を発揮させるとは。さすが私が惚れた男だ」

 頭部だけが残った魔物の姿に、仲間たちが称賛の声を投げかける。

 これだけ粉砕させれば、倒したようなものだろう。あとは討伐の証拠品となるこの頭を持ち帰るだけだな。

 そう思い、頭部の骨に手を置く。

 すると頭部は空中に浮遊を始め、地面から骨が飛び出した。

 ほんの数十秒で、スカルドラゴンは元に戻ったのだ。

 これは驚いたな。まさかあれだけ破壊しているのに、もう一度復活できるだけの骨を隠し持っていたとは。

 もしかしたら、まだ地中にはやつの隠し持っている骨があるかもしれない。

 まったく、本当に面倒臭い敵だ。いい加減に終わらせて、報酬を受け取りに行きたいのだけど。

 完全に倒すとなれば、全身の骨を砕けばそれで終わる。だけどこの依頼は、証拠となるものを持ち帰らなければならない。つまり、完全に破壊するのはやってはならないのだ。

 全力で叩きのめすよりも、手加減をして倒すというのが、一番技術が必要でとても大変なことなのに、本当に面倒臭いことをさせやがる。

「こうなったら絶対にお前を倒す。そして報酬の権利を使って、酒場の女の子たちにちやほやさせてもらうからな」

 本当なら面倒臭い作業になるので、やりたくはない。だけどこれをしなければ、酒場で女の子たちからちやほやしてもらえないのも事実。

 俺は強引にもやる気を引き起こし、呪文名を口にする。

「デスボール!」

 直径十メートルを超える火球を生み出し、スカルドラゴンに向けて放つ。

 巨大な火球は骨のドラゴンに直撃すると、やつを燃やし始める。

「シロウがデスボールを使えられるのは驚きましたけれど、でも、あの魔法で倒せれますの?」

「普通に考えたら、ゼイレゾナンス・バイブレーションか、キャビテーションが効果的だと思います。でも、シロウさんのことですから、何か考えがあるのでしょう」

「なるほど、確かにその方法でも、スカルドラゴンにダメージを与えることができるね。でも、その代わりに時間がかかってしまう。シロウにしては珍しく陰湿なことをするね。何か彼の気に障るようなことを、あの魔物はやってしまったのかもしれない」

 後方から三人の声が聞こえてくるが、今の俺は感情が高ぶって上手く聞き取れない。

 デスボールを纏ったスカルドラゴンは、骨が熱により灰へと変わっていく。

 ファイヤーボールの上位版であるデスボールは、千八百度の熱量を持っている。そして骨が灰に変わるのは、千六百七十度以上に達したときだ。

 つまり、やつがデスボールの火球に身を包んでいる限り、補充をしたところで灰にされ、復元は不可能となる。

「さあ、復元するのならしてみろ! ただの時間稼ぎにすぎないから、やっても意味がないけどな」

 俺が声に出して言った直後、スカルドラゴンは地面から骨を取り出し、灰に変わった部分を補う。

 しかし、カバーをしたところで他の部位が灰に変わっていく。やつの行動はイタチごっこにしかすぎない。

 数分後、スカルドラゴンはスペアを全て使い切り、角の一部分を残して灰になっていた。

「ふう、ようやく終わったか」

 額から流れ出る汗を右腕で拭うと、灰の山に姿を変えたスカルドラゴンの残骸から、角を引き抜く。

 こいつを持って帰れば、討伐の証となるよな。

 魔物の角を握ったまま、俺は振り返る。そして仲間たちを見た。

「皆お疲れ、今から帰ろう」









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