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第六章
第六話 深淵の洞窟の主ってスカルドラゴンなのかよ!
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グサッ、ブシュ―!
『グギャア』
「ふあぁー」
ボーンゴブリンが魔物を倒す光景を見ながら、俺は口から欠伸を漏らす。
退屈だなぁ。俺が戦う暇がない。だけどまぁ、正直面倒臭い戦闘を避けることができているから、まぁいいか。
現在深淵の洞窟の奥に向って歩いているが、魔物との戦闘は、すべてミラーカの力で復活したボーンゴブリンたちに任せている。
「さて、こいつらも私の手駒にするとしますか」
ミラーカが指を鳴らす。その音を合図に、サナギから蝶が出てくるように、死体の肉をやぶって骸が出てくる。骨だけとなった魔物は、そのまま隊列に加わった。
死体の骨を配下にする彼女の力は凄まじいものだ。今や十人以上のパーティーになっている。
「ムウ、ミラーカさんが操っている骨のせいで、全然活躍できないじゃないですか」
クロエが文句を口にする。
先ほどから活躍の場をミラーカに奪われているものな。
彼女は基本弓からの遠距離攻撃をするが、弓はただ矢を放てばいいものではない。正しい姿勢で心を無心にしてから放つ必要がある。そのため弓を放つ準備ができたころには、既に戦闘が終わっているのだ。
「仕方がないって。弓は放つ前に準備をしなければならないのだから、その分時間がかかってしまう。だから気にする必要はない」
「でも、ミラーカさんが次々に魔物を倒して戦力を増やしているじゃないですか。彼女が活躍すればするほど、私たちの戦う機会を奪われているのですよ」
「そうかもしれないけど、いずれ活躍する機会が訪れると思うから、それまで待つしかない」
「うう、これじゃあシロウさんにアピールできないですよ」
クロエが何やら小声で喋ったようだが、俺には聞き取ることができなかった。
状況からして、ミラーカに対して恨み言を言っているのかもしれないな。できれば仲間内で険悪なムードにはなってほしくない。ここはリーダーである俺が、言い聞かせたほうがいいだろう。
「ミラーカ、さっきから俺たちが戦う機会を奪わないでくれよ」
「私としては、少しでもシロウの負担を軽くしてあげようと思っての配慮だったのだけどね。戦いたかったのであれば申し訳ない。これ以上は出しゃばらないようにするよ」
まぁ、俺からすれば、ザコ戦は彼女に任せたいところなのだけど、あれ以上クロエの機嫌を損ねる訳にはいかないからな。
「シロウさん、ありがとうございます。これから先は一緒に魔物を倒しましょう」
張り切った様子で、クロエが俺に視線を向けてくる。
「はは、そうだな」
俺は苦笑いを浮かべて彼女に言葉を返す。
はぁー、本当は面倒臭いことはやりたくないのだけど、口に出してしまった以上は戦わないといけないよな。仲間を取り纏めるためとはいえ、リーダーは大変だよ。
心の中で溜息を吐き、先に進んでいく。すると広い場所に出た。
「あら、どうやらココが一番奥のようですわね。これ以上先には道がありませんわ」
周囲を窺いながら、マリーがこれ以上先には進めないことを告げる。
「でも、不思議ですね。どこにも依頼主さんの知り合いの方にケガをさせた魔物がいません」
続いてクロエが討伐対象の魔物がいないことを言う。
そう、どう見てもここの洞窟の主が塒にしていそうな場所まで来たというのに、それらしき魔物の姿が見えない。
あるとしたら、巨大な生物の骨が落ちているぐらいだ。
それにしても本当に大きいな。頭部の骨からしてこれはドラゴンか? でも、竜種を倒すような魔物は数が限られる。絶対に階級持ちだろう。グレーター階級あたりだろうか? それだったらマズイな。最悪逃げ帰るようなことになるかもしれない。
そんなことを考えつつも、俺はドラゴンの骨に手を触れた。その瞬間、地響きがしたかと思うと、地面から骨が現れる。それらは空中で引っ付き、ドラゴンの形を象った。
「スカルドラゴンだったのか」
地面から現れた魔物の名を、口に出す。
スカルドラゴンはその名のとおり、竜の骸の魔物。骨であっても元がドラゴンであるので強敵だ。
スカルドラゴンが口を開けた瞬間、冷たい風が吹き、鳥肌が立つ。
「うそ! 骨の魔物がブレスを吐くなんて!」
魔物の攻撃にクロエが驚く。普通に考えて骨がブレス系の攻撃をすることは考えられない。
だけど、あれがブレスではなく魔法であったのなら納得がいく。
意外な攻撃に少しだけ驚いてしまったが、相手が骨の魔物ならば簡単に倒せる。何せ小型の魔物がデカくなった程度にすぎないのだからな。
「悪いが、倒させてもらおう。ゼイレゾナンス・バイブレーション」
物質の固有振動数と同じ周波数の音を浴びせ、対象の破壊を試みる。
スカルドラゴンと同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、骨の一部が疲労破壊を起こした。
「さすがにサイズ差がありすぎるか。スカルナイトのときのように、一発で倒すことができない」
こうなれば、やつの弱点を探して倒すしかないな。
魔物の弱点を探そうと考えていると、一体のボーンゴブリンが吸い寄せられるようにスカルドラゴンに近づく。するとボーンゴブリンは破壊した骨の一部に嵌り、やつと同化してしまった。
「私の駒が吸収されてしまったようだね」
「骨を破壊したところで、直ぐに補給をされてしまうというわけか」
まさか戦力の強化が仇になるとはな。だけどミラーカが配下にした骸は、数に限りがある。吸収したとしても、補えられないほどに破壊すればいいだけだ。
「ならば、効率よく破壊するまでだ。カーバネットウォーター」
水分子を集めて水を作り、それに二酸化炭素を加えて炭酸水をつくる。そして炭酸水を放ち、前足、後ろ足、背骨、羽などに付着させる。
「もう一度こいつを食らいやがれ! ゼイレゾナンス・バイブレーション」
炭酸水が触れた部位に向けて同じ周波数を放つ。
「砕け散れ! 合成魔法キャビテーション!」
二つの魔法が混ざり合い、新たな魔法が発動。
スカルドラゴンの前足、後ろ足、背骨、羽の部位の骨が砕け散り、バランスが取れなくなった魔物は地面に倒れた。
これだけ破壊すれば、いくらスカルドラゴンがボーンゴブリンを吸収したとしても、骨が不足して元には戻れないはずだ。
そう思っていたが、どうやらスカルドラゴンは諦めていないようで、俺たちの周辺にいるボーンゴブリンを吸収し、己の一部に変えた。けれど骨の数が足りずに欠損している。
ほら、やっぱり骨の数が足りないじゃないか。前足の関節部分なんか、今にも外れそうになっているぞ。
こんな魔物、さっさと倒して報酬金をもらいに行こう。
「ゼイレゾナンス――」
欠損している箇所にむけて、音の魔法を発動させようと思い、呪文を唱えかけたときだ。
いきなりスカルドラゴンが地面を掘ったかと思うと、そのまま潜って姿を消した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。
何卒宜しくお願いします。
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「ふあぁー」
ボーンゴブリンが魔物を倒す光景を見ながら、俺は口から欠伸を漏らす。
退屈だなぁ。俺が戦う暇がない。だけどまぁ、正直面倒臭い戦闘を避けることができているから、まぁいいか。
現在深淵の洞窟の奥に向って歩いているが、魔物との戦闘は、すべてミラーカの力で復活したボーンゴブリンたちに任せている。
「さて、こいつらも私の手駒にするとしますか」
ミラーカが指を鳴らす。その音を合図に、サナギから蝶が出てくるように、死体の肉をやぶって骸が出てくる。骨だけとなった魔物は、そのまま隊列に加わった。
死体の骨を配下にする彼女の力は凄まじいものだ。今や十人以上のパーティーになっている。
「ムウ、ミラーカさんが操っている骨のせいで、全然活躍できないじゃないですか」
クロエが文句を口にする。
先ほどから活躍の場をミラーカに奪われているものな。
彼女は基本弓からの遠距離攻撃をするが、弓はただ矢を放てばいいものではない。正しい姿勢で心を無心にしてから放つ必要がある。そのため弓を放つ準備ができたころには、既に戦闘が終わっているのだ。
「仕方がないって。弓は放つ前に準備をしなければならないのだから、その分時間がかかってしまう。だから気にする必要はない」
「でも、ミラーカさんが次々に魔物を倒して戦力を増やしているじゃないですか。彼女が活躍すればするほど、私たちの戦う機会を奪われているのですよ」
「そうかもしれないけど、いずれ活躍する機会が訪れると思うから、それまで待つしかない」
「うう、これじゃあシロウさんにアピールできないですよ」
クロエが何やら小声で喋ったようだが、俺には聞き取ることができなかった。
状況からして、ミラーカに対して恨み言を言っているのかもしれないな。できれば仲間内で険悪なムードにはなってほしくない。ここはリーダーである俺が、言い聞かせたほうがいいだろう。
「ミラーカ、さっきから俺たちが戦う機会を奪わないでくれよ」
「私としては、少しでもシロウの負担を軽くしてあげようと思っての配慮だったのだけどね。戦いたかったのであれば申し訳ない。これ以上は出しゃばらないようにするよ」
まぁ、俺からすれば、ザコ戦は彼女に任せたいところなのだけど、あれ以上クロエの機嫌を損ねる訳にはいかないからな。
「シロウさん、ありがとうございます。これから先は一緒に魔物を倒しましょう」
張り切った様子で、クロエが俺に視線を向けてくる。
「はは、そうだな」
俺は苦笑いを浮かべて彼女に言葉を返す。
はぁー、本当は面倒臭いことはやりたくないのだけど、口に出してしまった以上は戦わないといけないよな。仲間を取り纏めるためとはいえ、リーダーは大変だよ。
心の中で溜息を吐き、先に進んでいく。すると広い場所に出た。
「あら、どうやらココが一番奥のようですわね。これ以上先には道がありませんわ」
周囲を窺いながら、マリーがこれ以上先には進めないことを告げる。
「でも、不思議ですね。どこにも依頼主さんの知り合いの方にケガをさせた魔物がいません」
続いてクロエが討伐対象の魔物がいないことを言う。
そう、どう見てもここの洞窟の主が塒にしていそうな場所まで来たというのに、それらしき魔物の姿が見えない。
あるとしたら、巨大な生物の骨が落ちているぐらいだ。
それにしても本当に大きいな。頭部の骨からしてこれはドラゴンか? でも、竜種を倒すような魔物は数が限られる。絶対に階級持ちだろう。グレーター階級あたりだろうか? それだったらマズイな。最悪逃げ帰るようなことになるかもしれない。
そんなことを考えつつも、俺はドラゴンの骨に手を触れた。その瞬間、地響きがしたかと思うと、地面から骨が現れる。それらは空中で引っ付き、ドラゴンの形を象った。
「スカルドラゴンだったのか」
地面から現れた魔物の名を、口に出す。
スカルドラゴンはその名のとおり、竜の骸の魔物。骨であっても元がドラゴンであるので強敵だ。
スカルドラゴンが口を開けた瞬間、冷たい風が吹き、鳥肌が立つ。
「うそ! 骨の魔物がブレスを吐くなんて!」
魔物の攻撃にクロエが驚く。普通に考えて骨がブレス系の攻撃をすることは考えられない。
だけど、あれがブレスではなく魔法であったのなら納得がいく。
意外な攻撃に少しだけ驚いてしまったが、相手が骨の魔物ならば簡単に倒せる。何せ小型の魔物がデカくなった程度にすぎないのだからな。
「悪いが、倒させてもらおう。ゼイレゾナンス・バイブレーション」
物質の固有振動数と同じ周波数の音を浴びせ、対象の破壊を試みる。
スカルドラゴンと同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、骨の一部が疲労破壊を起こした。
「さすがにサイズ差がありすぎるか。スカルナイトのときのように、一発で倒すことができない」
こうなれば、やつの弱点を探して倒すしかないな。
魔物の弱点を探そうと考えていると、一体のボーンゴブリンが吸い寄せられるようにスカルドラゴンに近づく。するとボーンゴブリンは破壊した骨の一部に嵌り、やつと同化してしまった。
「私の駒が吸収されてしまったようだね」
「骨を破壊したところで、直ぐに補給をされてしまうというわけか」
まさか戦力の強化が仇になるとはな。だけどミラーカが配下にした骸は、数に限りがある。吸収したとしても、補えられないほどに破壊すればいいだけだ。
「ならば、効率よく破壊するまでだ。カーバネットウォーター」
水分子を集めて水を作り、それに二酸化炭素を加えて炭酸水をつくる。そして炭酸水を放ち、前足、後ろ足、背骨、羽などに付着させる。
「もう一度こいつを食らいやがれ! ゼイレゾナンス・バイブレーション」
炭酸水が触れた部位に向けて同じ周波数を放つ。
「砕け散れ! 合成魔法キャビテーション!」
二つの魔法が混ざり合い、新たな魔法が発動。
スカルドラゴンの前足、後ろ足、背骨、羽の部位の骨が砕け散り、バランスが取れなくなった魔物は地面に倒れた。
これだけ破壊すれば、いくらスカルドラゴンがボーンゴブリンを吸収したとしても、骨が不足して元には戻れないはずだ。
そう思っていたが、どうやらスカルドラゴンは諦めていないようで、俺たちの周辺にいるボーンゴブリンを吸収し、己の一部に変えた。けれど骨の数が足りずに欠損している。
ほら、やっぱり骨の数が足りないじゃないか。前足の関節部分なんか、今にも外れそうになっているぞ。
こんな魔物、さっさと倒して報酬金をもらいに行こう。
「ゼイレゾナンス――」
欠損している箇所にむけて、音の魔法を発動させようと思い、呪文を唱えかけたときだ。
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