Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

文字の大きさ
上 下
49 / 191
第六章

第四話 エグザイルドとしての初めての依頼をしようではないか

しおりを挟む
 俺たちはパーティー名をエグザイルドと決め、最初の依頼を探していた。

「うーん、中々良さそうなのがないな」

 ミラーカが仲間になったことだし、彼女を加えた状態で連携が取れるのかを一度見ておく必要があるよな。そうなると討伐系の依頼がいいのだけど、中々受けたいものが見つからないんだよな。

 張り出されてある依頼を見ながら、俺はどうしたものかと考える。

 実際にはないわけではないんだよな。討伐系の依頼は複数ある。だけど報酬金額が少ない。できることなら高めに設定されてある依頼を受けたいのだけど、あんまり欲を掻かないほうがいいのだろうか。

「おーい、シロウ!」

 依頼内容が書かれてある張り紙を見ていると、ギルドマスターのオルテガが声をかけてきた。

 彼が俺に声をかけてくるときは依頼を頼むときか、飲みに誘うときだ。今は真っ昼間だし、依頼のほうだろうな。

「報酬金額は?」

 どうせ話の内容が依頼だろうし、先に金額を訊いておいてもいいだろう。そう思い、俺は金額を彼に尋ねる。

「ハハハ、さすがシロウだな。俺が何を言いたいのか分かっているじゃないか。報酬金額は十万ギルだそうだ。依頼内容は深淵の洞窟に住み着いた魔物の討伐だ」

 依頼内容の書かれた紙を、オルテガは俺に手渡す。

 受け取ると、俺は紙に書かれてある内容を黙読する。

 えーと、なになに。依頼者は城下町の人じゃないか。依頼者の一言はっと。

『俺は女の子に接客をさせている酒場のマスターだ。実は友人の冒険者が深淵の洞窟に挑んだのだが、大けがをして帰ってきた。そこで彼の仇を討ってほしい。倒した証拠を持って帰れば十万ギルと、当店を訪れたときに無料で酒の提供と女の子に接客させてやるからな』

 ある意味酒場のマスターらしい報酬の仕方だな。まさか本来有料であるプランを、無料にするとは。

 依頼主の一言を読み、俺は首を傾げる。

 確かオルテガは報酬として十万ギルの話をしたが、もう一つの報酬のことは口には出していなかった。たまたま言い忘れただけなのだろうか?

「なぁ、どうしてもう一つの報酬のことを話さなかったんだ?」

 気になった俺は、ギルドマスターに訊ねる。

「シロウ、そこは空気を読んでくれよ。俺は敢えて口に出さなかったんだぜ。自分の首を絞めたいのなら、それでもいいが」

 彼の言葉を聞いた瞬間にピンときた。

 なるほど、そういうことか。俺の周囲にはマリーたちがいる。もし、もう一つの報酬を声に出して言おうものなら、彼女たちのやる気を削ぐことにつながってしまう。

「そいつは済まなかった。俺としたことが気づかなかったよ。わかった。今からその依頼を受けよう。悪いが手続きのほうはいつもの様にオルテガに任せた」

 依頼を受ける意思を示すと、彼に依頼書を返す。

 早く返しておかないと、万が一にでも女性陣に見られてしまう可能性があるからな。

「決断が早くて助かる。あとは任せておけ。お前には期待しているからな」

 依頼書を受け取ったオルテガは、そのまま受付のほうに向って行った。

「と言う訳で、今から深淵の洞窟に向かうことにした。場所は知っているけど、俺はまだ中に入ったことはない。誰か行ったことがある人はいるか?」

「ワタクシは一度も行ったことはありませんわ」

「私もスキンヘッドの男とパーティーを組んでいたときは、その洞窟には行ったことがないです」

「私も追放される前のパーティーの作戦で、この大陸に来ただけだからね。私が拠点にしていたあのダンジョン以外は知らないさ」

 どうやら全員が深淵の洞窟には行ったことがないようだな。

「俺も知識としてしか知らないけど、あの洞窟は松明が機能しないほど暗いらしい。俺の魔法で、どれだけ明るくできるのかはやってみないと分からないけど、敵が近づいたときはクロエが教えてくれ」

「わかった。任せてよ」

 クロエが自身の胸を軽く叩くと、俺はミラーカのほうを見る。

「ミラーカは具体的にはどんなことができるんだ?」

「それはシロウが望むことならいくらでもしてやるさ。咥えたり、嘗めたり、挟んだり、シロウのお望みであればなんだってするさ」

 ミラーカが俺の耳元に顔を近づけると、小さい声で囁く。

 彼女の言葉を聞いた途端、俺は心臓の鼓動が早鐘を打ち、顔に熱を感じる。思わず頭の中で想像してしまった。

「ミ、ミラーカ! ふざけないでちゃんと俺の質問に答えてくれ」

「アハハ、顔を赤くしちゃって、可愛い。お姉さん、シロウのその反応は好きだな」

 いたずらに成功した子どものように、ミラーカは満面の笑顔を浮かべる。

「そう言えば、ミラーカさんは今いくつ何ですか?」

 ミラーカがお姉さんと言ったからなのだろう。クロエが急に彼女に年齢を尋ねる。

「私かい? 私はこう見えても二百四十歳だよ。実年齢よりも若く見えるだろう?」

「それはあなたが魔族だからではないですの。魔族はエルフと同じように長寿なのですから」

「やった! これで最年長の座は、ミラーカさんにお譲りすることができます」

 ミラーカが自分よりも年上だったことを知り、それが嬉しかったようだ。クロエが喜びの声を上げる。

 見た目で言えば、クロエが一番最年少に見えるんだけどな。

 そんなことを考えていると、俺はあることに気づく。

 一番最年長はミラーカ、その次がクロエ、そしてマリー、その下が俺だ。よく考えれば、リーダーである俺が一番最年少じゃないか!

 その事実に気づいた俺はなぜか複雑な気分になった。

「クロエ、少なくともこのパーティーで二番目に年長者なのですから、あんまり子供っぽい反応をしないでくださらない?」

「あう、マリーさんに怒られました」

「それよりもミラーカ。あなた、本当はどんなことができますの?」

 一度脱線してしまった話を、マリーが軌道修正してくれた。

 正直助かったよ。俺がもう一度聞いたら、再びふざけそうな気がしたから。

「私ができることと言えば、自作のポーションでサポートをしたり、攻撃魔法で攻撃したりだね。あと、条件次第だけど一定の魔物を操作することができるよ。例えば死人をゾンビやスカルナイトに変えることもできるさ」

「さすがに死人を冒涜するようなことはしないでくれ」

 さすがに命尽きた者まで戦わせるわけにはいかないからな。でも、自作のポーションってなんだ? 市販のものとどの辺が違うのだろう。凄く気になるところだけど、なんだか訊くのが怖い。

 とにかく彼女は後衛で魔法攻撃をしてもらおう。誰かがケガをしたときは、俺が回復魔法を使えばいいだけだしな。

「その自作のポーションは、万が一のときのためにとっておいてくれ。ミラーカは、クロエと一緒に後衛で魔法攻撃を頼むよ」

 ダンジョン内での彼女の立ち位置を伝えると、俺はギルドの外に向かう。

 さて、これからエグザイルドの初依頼をやりに向かいますか。










最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。 そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。 だけどその条件がなかなか厄介だった。 何故ならその条件というのが────

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...