Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第六章

第三話 ミラーカが仲間になったので、パーティー名を決めないといけなくなった

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 俺たちはサザークの冒険者ギルドに戻って来ていた。

「では、これでミラーカさんの手続きは終わりました。シロウさんのメンバーとして、これから頑張ってください」

 受付嬢がミラーカを見ながら笑みを浮かべる。

「これでミラーカは、俺のチームの一員として行動してもらうからな。今後は勝手な行動はしないように」

 魔族の女の子を見ながら、俺は念を押す。

「分かっているよ。これで私はシロウのものにされたってわけだね」

「その言い方は語弊があるから止めろ」

 とにかく、これで一段落はついた。今日は宿に帰って休むとするか。そう言えば、ミラーカの寝床も用意しなければならないよな。あの宿屋に空き部屋ってあったけ?

「あ、シロウさん待ってください」

 一人で考え事をしながら、踵を返してギルドの外に向おうとしていると、背後から受付嬢が呼び止める。

「何かまだあったか?」

「はい。もう一つしなければならない大事なことがあります」

 もう一つしなければならない大事なこと? そんなものってあったか?

 首を傾げながら受付嬢を見ると、彼女は続けて言葉を連ねる。

「シロウさんたちはこれで四人のパーティーになりました。なので、規約上パーティー名を決める必要があります」

 受付嬢の言葉を聞いて思い出す。

 そう言えば、そんな規則があったな。

「そういうことでしたら、こんなのはどうでしょうか?」

 ギルドに来て一言も喋っていないマリーが、パーティー名を提案してきた。

 何となくだけど、マリーが何を言おうとしているのか予想ができてしまう。

「真赤いバラなんてどうでしょう?」

 うん、予想どおりの展開だ。だけど流石に赤いバラは嫌だ。

「それは却下だな。別のにしないか?」

「それならこれにしませんか! 英雄シロウと美少女たち!」

 今度はクロエが右手を上げてパーティー名を口にする。

 なんだよそのパーティー名は、〇〇と愉快な仲間たちみたいな言い回しじゃないか。

「それもダメだ」

「なら、英雄シロウのハーレムというのはいかがでしょう」

「美少女たちが気に入らなかったわけではないからな! しかも余計に悪目立ちするじゃないか!」

 思わず俺は語気を強めてしまった。

「であれば『英雄シロウは色を好む。お前たちは今日から俺のメス奴隷だ! 仲間になった以上は、夜は覚悟しておけよ』なんてものはどうだ?」

「何なんだよ! そのムダに長たらしいパーティー名は!」

 ミラーカの提案してきたチーム名に、俺は思わずツッコミを入れてしまう。
「シロウがどうして美少女しかパーティーに加えないのかという理由を、周囲にも分かってもらうようにしてみた」

「勝手に捏造するな! こうなってしまったのは偶然だ。それに俺は、そんなにゲスではないぞ!」

「そうですわ! ワタクシのものになってもらおうと、色々とアプローチをしていますのに、全然靡いてくれないのですよ!」

 マリーよ、怒るところはそこではないだろう。

「では、事実を元に提案をしますわ! Sランクパーティーを追放された俺は、追放した令嬢を助けてしまい、彼女が押しかけ女房になって困っていましたが、現在はラブラブです」

「マリーもムダに長いし、一部分捏造しているじゃないか!」

「そうですよ! 全然ラブラブではないじゃないですか!」

「確かに願望も混ぜておりましたが、そこに気づくとはさすがですわ」

「いや、誰だって気づくだろう」

 だめだ。全然まともな意見が出ない。こうなったら俺も考えるしかないか。

「シロウさんに助けられた私は覚醒し、アーチャーとして無双します。だからボールドヘッドの男よ、戻って来いと言ってももう遅い! なんてどうでしょう?」

「主体が変わっているではないか。これではクロエがチームリーダーのように捉えられてしまう。『ミラーカを倒した俺は彼女と共に魔界の統一を目指す! 魔界のすべては俺と彼女のもの!』これがいい」

「ミラーカも願望が入っているではないですか! それにそんなパーティー名だと、これからシロウさんが魔界を統一すると宣言しているようなものじゃないですか!」

 一人で真面目にチーム名を考えているが、どうしても彼女たちの言葉が耳に入ってしまい、まともな案が出てこない。

 それにどうしてそんなにムダに長いパーティー名ばかり考えるんだ。シンプルでいいじゃないか。

「皆、頼むからシンプルに考えてくれないか? 聞いていて頭が痛くなる」

「わかりましたわ。シロウがそうおっしゃるのなら、シンプルに考えます」

「さすがに少しふざけすぎてしまいましたね。反省してちゃんと考えましょう」

「そうだね。シロウの体調を崩すわけにはいかない」

 どうやらみんなまともに考えてくれるようになったようだ。これなら安心して、俺もパーティー名を考えることができる。

「マリーとシロウのラブラブ」

「英雄に助けられたエルフ」

「人族を好きになった魔族」

 三人が口にした言葉を聞き、俺は右手を額におく。

 シンプルってそういう意味ではないからな。何でさっきから物語のタイトルみたいなことを考えるんだよ。

 彼女たちに考えてもらうだけ、時間のムダなのではないのか。そう思ったときだ。

「なら、エグザイルドというのはどうでしょう?」

 クロエの提案した言葉に、俺は反応して顔を上げる。

 確かエグザイルドって、異世界の言葉で追放されし者を差す言葉だったよな。マリーは例外だけど、俺とクロエ、それにミラーカもそれぞれ別のパーティーから追放されて、自然と縁により引き寄せられた。これこそが俺たちに相応しいパーティー名じゃないか。

「それいいな」

 俺はポツリと呟く。

「シロウが気に入ったのでしたら、ワタクシは文句を言いませんわ」

「私もそれでいい。響きもいいしな」

「うそ! 適当に言った言葉なのに、採用されるとは思わなかった! 本当にそれでいいの?」

「ああ、それにしょう。俺たちのパーティー名はエグザイルドだ」

 こうして俺たちはエグザイルドと名乗ることにしたのであった。










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