Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第六章

第一話 お前本当にあの科学者風の魔族かよ!

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 プルタルコスと別れを告げ、俺たちはサザークに帰るため城下町で馬車屋を探していた。

「マリー、本当にこっちで合っているのか?」

「何ですか? その言いかたは? シロウはワタクシを信じていないのですの?」

「だってマリーさん。さっきからもうすぐと言っておきながら、かれこれ三十分になりますよ!」

 俺の代わりにクロエが答えてくれた。

 マリーがこの城下町にも詳しいと言っていたので、道案内役を頼んだのだけど、いつまで経っても目的地に着く様子がないのだ。

 本当に彼女はこの町に詳しいのか不安になり、ついあんな言葉が出てしまう。

「だ、大丈夫ですわよ。少々記憶と食い違いがあったみたいですが、知っている道に出ましたわ。なので、ご心配なく」

 本当なのだろうか。本当は信じてあげたいのだが、本心ではどうしても疑ってしまう。

「シロウ、ようやく見つけたよ。久しぶりだけど元気そうで何よりだ」

 しばらく歩いていると、赤い髪をサイドテールにしている女性がいきなり話しかけてきた。

 何の前触れもなく急に話しかけてきたので、俺はつい戸惑ってしまう。

 え、この女の人俺のことを知っている? だけど、こんな美人の女性は俺の記憶にないぞ? 口調からして俺のことを知っているようだ。でも、俺は何も思い出せない。

「シ、シロウ! この綺麗な女性は誰ですの!」

 何をそんなに焦っているのか、マリーは声音を強めて俺に尋ねてくる。

 いや、それは俺のほうが知りたいって。マリーやクロエ以外に、こんな美人は出会った記憶がないぞ。

「そ、そうです! 説明してください」

 なぜかクロエまでも、マリーと同じような態度で俺を問い詰めてくる。

 どうして彼女たちはそんなに取り乱している? いや、そもそも俺は彼女を知らない。寧ろ俺のほうが知りたいぐらいだ。

 だけどまぁ、このまま考えていても答えが出ないのは事実だ。こうなれば直接彼女の口から言ってもらうしかないだろうな。

「いや、俺の記憶にもまったく心辺りがないのだけど? なぁ、俺たちどこかで会っていたか?」

「会っているとも、あの日のことは今でも鮮明に覚えている。シロウは私の初めてを与えた。そしてあの日以来、シロウのことが頭の中から離れなくなった。だからこうして会いに来た」

 俺がこんな美人の初めてを与えられた? いったいどういうことだ? もしそうなら、俺は絶対に覚えているはず。

「シ、シロウ! それはどういうことなのですか!」

「そうです!説明してください」

 二人が厳しい目つきで俺を見つめてくる。

「待ってくれ、俺はそんな体験をした記憶がないぞ。もしそうなら俺は覚えているはずだ」

「それはいくら何でもあんまりではないか。あんなに私をついて中に入って来たではないか」

 そう言いながら、女性は自身のお腹を触る。

「シロウ!」

「シロウさん!」

「いや、いや、いや、本当に知らないって! だって俺はDTなんだぞ!」

 訳がわからず、俺の脳はパニックになってしまったようだ。言わなくていいことをカミングアウトしてしまう。

「DT? 何の話だ? 私が言ったのは、魔法が私の肉体を貫いて初めての敗北を与えられたと言う意味なのだが?」

「え?」

 彼女の言葉に、俺はあっち系のことを想像していたことに恥ずかしさを覚える。

 マリーとクロエのほうも似たようなことを考えていたようで、頬を赤らめていた。

「そうか。よく考えれば、この姿で会うのは初めてだったね。なら、これで思い出してもらえるかい?」

 女性は服から眼鏡を取り出すと耳にかけ、拍手を始めた。

「ブラボー! いやーお見事、まさか私の実験動物がこうも簡単に負けてしまうとは思ってもいなかったですよ」

 彼女の言葉を聞いた瞬間、俺は思い出した。

 まさか! そんなことがあるのか? いや、あのときスペアがどうのこうのと言っていた。ならば、そういうことなのだと考えるしかないよな。

「ダンジョンにいた魔族の学者?」

「そう、やっと思い出してくれたようだね。私の名はミラーカ。魔族の魔学部門を研究している研究者さ」

 あのときの魔族だったことを知ると、俺は構えた。マリーも腰にある鞭に手を伸ばし、クロエも弓に矢をつがえ、いつでも射てるようにしている。

 女の姿で現れたのは予想外だった。けれど、彼女が俺たちのところに現れたということは、あのときの借りを返しに来たと思うべきだよな。

 周囲を見る。この辺は運よく人通りが少ない。だけど完全にいないというわけではない。戦闘になれば確実に巻き込まれる。

 考えろ。どのようにすれば、城下町の人々たちに被害を出さずに戦えるのかを。

 俺はミラーカに視線を戻す。

 彼女は俺たちの行動を見て、なぜか苦笑いを浮かべていた。

「あー、やっぱりそうなるよね。以前は敵同士で殺し合っていたのだから。でも、信じてほしい。今日は君たちと戦いに来たわけではないんだ」

「では、なぜ俺たちの前に姿を見せた!」

 俺は語気を強めて彼女に問う。

 さすがに相手が魔族であることが前提であるため、簡単に言葉だけでは信じることができない。

 最悪の状況を考えるのであれば、俺たちを油断させるための策のひとつとも考えられる。

「そんなに怖い顔をしないでくれよ」

 敵意がないことをアピールしているのか、ミラーカが両手を前に突き出す。そして左右に手を振った。

「まぁ、やっぱり最初の出会いが最悪だったからね。好感度はかなり低めか。でも、逆に考えれば、これ以上は下がることはないから、上がっていく一方だよな」

 途中から、ミラーカは意味の分からないことをぶつぶつと言いだす。

「シロウさん。たぶんですけど、彼女は本当に戦う意思はないと思います。でも、私にとってはある意味敵です」

「ワタクシもクロエの意見に同意しますわ」

 どうやらマリーとクロエは、ミラーカの言葉の意味が理解できたようだ。彼女たちが言うのであれば、間違いないだろう。俺は深く考えすぎるところがあるからな。

「わかった。警戒は解こう。でも、何か不自然な行動をとったのなら、その瞬間拘束させてもらうからな」

「ありがとう。話ができるのであれば今はそれでいい」

 ミラーカは笑みを浮かべながらお礼を言う。

「では、俺たちの前に現れた目的を言ってもらおうか」

 俺は彼女に尋ねる。

「元々からそのつもりさ。では、単刀直入に言おう。私をシロウの仲間に加えてくれないか?」









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