Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第五章

第六話 王様と謁見するのはいいけど、俺は堅苦しいのが苦手なんだよな

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  ~シロウ視点~



 馬車の窓から風景を眺めていると、湖が見えた。

 湖が見えたってことは、ブリタニア城はもうすぐということだよなぁ。ハァー、正直気が重い。俺は堅苦しいのが苦手なんだよな。だけどまぁ、何とかなると思うことにしよう。

 心の中で軽く愚痴を言いつつ、俺は城に辿り着くのを待つ。

「マリーさん、もう少しでお城ですよ! 私、お城に入るのは初めてです!」

「あら、そうですの? ワタクシは何度か入ったことがありますわ」

「本当ですか!」

「ええ、王様は年に一度、貴族を呼んで社交パーティーを開きますの。なので、お呼ばれされたことがありますわ」

 マリーとクロエが楽しそうに話している声が耳に入ってくる。

 クロエの性格が羨ましいよ。

 そんなことを考えながら、俺はボーっと風景を眺める。

 次第に目に映る光景が移り変わり、気がつくと城下町の中に入っていたようだ。自然豊かな風景からたくさんの建物が視界に入っていた。

 そろそろ城に辿り着くころかな。

 そんなふうに考えていると、馬車が停車した。そして扉が開かれ、プルタルコスが顔を見せる。

「お城に着いた。謁見の間に案内するから、俺について来てくれ」

 今から王様と謁見か。よし、ほんの少しだけ不安はあるが気合を入れ直そう。

 俺は両手を頬に持っていき、気合を入れ直す。

 よし、気合は入った。あとは上手くいくことを願うばかりだ。

「シロウ、大丈夫ですわよ。もしものときは、ワタクシがフォローして差し上げますわ。あなたは堂々としていれば何も心配することはありません」

 どうやら緊張が顔に出てしまっていたようだな。マリーに励まされてしまった。

 そうだ。俺はこれまで多くの魔物や魔族とも戦った。王様なんかたいしたことはない。ほんのちょっと権力があるだけだ。

 馬車から降りてプルタルコスの後をついて行き、謁見の間に通される。

 騎士団長が片膝をついて頭を垂れたので、俺も彼に倣い、同様のことをした。

「待たせてすまなかったな」

 しばらくすると男性の声が聞こえてきた。たぶん王様なのだろう。

「楽にしてよい、頭を上げよ」

「ハッ、ありがとうございます」

 プルタルコスが立ち上がったので、俺も立ち上がって頭を上げる。

 玉座には、七十代だと思われるご老人が座っていた。

「まずは、プルタルコス。よくぞ英雄を連れて来てくれた。感謝する」

「勿体なきお言葉。私は騎士団として当然のことをしたまでです」

 王様の前だからなのだろうな。彼は一人称を俺から私に変えている。俺も同じようにしたほうがいいだろう。

「お蔭で助かった。もう下がってよい。ワシは英雄殿と話しがしたい」

「御意!……たぶん大丈夫だと思うが、なるべく失礼のないように頼む」

 王様に返事をした後、彼は小声で俺に言葉をかける。

 俺は無言で頷くと、プルタルコスは踵を返してこの場から去って行った。

「英雄殿、確か名前はシロウと言ったな」

「はい。シロウ・オルダーです」

「シロウ。今回は千体の魔物やファイヤードラゴンから町を救ってくれて感謝する」

「いえ、私は冒険者として、お世話になっている町を守ったにすぎません。当たり前のことをしたまでであり、たいしたことはしていません」

 なるべく失礼にならないように、言葉使いに気をつけながら言葉を連ねる。

「ハハハハハ、さすが英雄と言われるだけのことはある。あのような数を相手にしておいて、たいしたことはないとサラリと言ってしまえるとはな。そなたこそ勇者と呼ばれるにふさわしい」

 王様の言葉に俺は首を傾げる。

 どうして王様は、勇者という称号を口に出してまで、あんなに俺のことを褒めちぎる? あの戦いはランクの低い冒険者の集まりだったから、凄いように見えてしまっただけだ。きっとAランクやSランクの冒険者がたくさんいれば、俺の活躍なんか霞んでいたに違いない。俺の活躍なんてその程度だ。

「失礼ながら王様、私はあの一件以来、英雄のような扱いを受けております。ですが、あの戦いで戦った冒険者の中で、たまたま俺の実力が一番だったにすぎません。おそらく、もっとAランクやSランクの冒険者が現場にいたのなら、俺の活躍なんて、たいしたことがなかったに決まっています。なので、勇者という称号を使ってまで褒めるのは、言い過ぎな気がしますが」

「何を言っておる。仮にもそなたの言った通りに、他にもランクが高い冒険者がいたとしても、そなたのように全員にバフをかけたり、敵の魔物に複数の効果を与えるデバフをかけたりできる高ランクの冒険者は、ワシの知る限り、シロウしかいない」

 王様の言葉に、俺は驚かされた。

 いやいやいや、そんな訳がないでしょう。確かにサルコペニアは俺のオリジナルの魔法で、他の魔法使い系の冒険者には使えないけど、それぞれの魔法を広範囲に発動させることぐらい、高ランクの魔法使いにはできるはずだ。

 特に、勇者パーティーに所属している魔法使いならできるはず。

「それはさすがにないでしょう。王様、大事な逸材を忘れておりますよ」

「はて? シロウ以外にそのような凄腕の魔法使いなんぞおっただろうか」

 王様は首を傾げる。

 またまたぁ、王様も人が悪い。俺を担ぎ上げたいからと言って、一番に頭に浮かぶ人物を忘れた振りをするなんて。

「ほら、いるじゃないですか。ゆから始まるパーティーが?」

「ゆ、ゆ、ゆ、うーん。分からぬ。そなたが絶賛するようなゆから始まるパーティーなんぞ記憶にはない。大臣よ、そなたは何か心当りはあるか?」

「いーえ、そのような凄いパーティーメンバー、私も思いつきませんね」

 大臣も首を左右に振り、わからないという。

 なるほどなぁ。どうやら王様たちはわざと気づかない振りをしているようだな。そして俺の口から言わせたいらしい。それなら仕方がない。お望みどおりに、俺が告げさせてもらうとしますか。

「ほら、いるじゃないですか。勇者パーティー! この世界を魔の手から救ってくださる救世主たちが」

「おおー! そうだった。ワシとしたことがすっかりそのことを忘れておったよ。ワハハハハ」

 王様の言葉に、俺はホッとした。

 何だ。年のせいで物忘れをしていただけか。だよね、だって勇者パーティーは世界を救う救世主の集まりなんだから。

「勇者パーティーのリーダー、シロウ・オルダー。まさにそなたのパーティーこそ勇者パーティーであるな」

「何でそうなるのですか!」

 大変失礼と分かっておりつつも、俺は咄嗟に感情が抑えきれなくなってしまい、つい大声でツッコミを入れてしまう。

 やってしまった!











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