Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

文字の大きさ
上 下
38 / 191
第五章

第一話 追放されたので彼に会いに行こう

しおりを挟む
 ~シロウに倒された魔族視点~



 私はミラーカ。人間の町の襲撃作戦のために、とあるダンジョンに住み着いていた魔族だ。計画を実行するために準備をしていたのだが、シロウ・オルダーとか言う男にボコボコにされてしまった。

 私はスペアの肉体を破壊され、リンクを閉ざした。だけどあの時に感じた感情は覚えている。右手に頬を置き、私はうっとりする。

「ああ、思い出しただけで顔が熱くなりそうだ。人間でありながら、魔族である私を倒すだなんて! 彼は本当に人間なのだろうか。ああ、早くもう一度彼に会って、私のものにしたい!」

 思い出すと私のあそこが疼く。

「ぐへへ」

「さっきから何をぶつぶつと独り言を言って、気持ち悪い顔をしていやがる」

 彼との思い出に浸っていたからか、気持ちが顔に出てしまっていたようだ。

 数人の視線が私を射抜く。

 そうだった。今は私が所属している魔族のグループの会議中であった。過去の思い出に浸っている状態ではなかったな。

「すまない。気にしないでくれ」

「ゴホン、では次の議題に移るとするか。次の議題はサザークの町の襲撃作戦だが、これは失敗になった。作戦の責任者であるミラーカは何か言うことがあるか?」

 グループのリーダーが私を睨みつけながら尋ねてくる。

「ああ、私の計画の邪魔をしたのはシロウ・オルダーと言う人間だ。下等生物とは思えない素晴らしいやつさ」

「貴様! ふざけているのか!」

 語り始めると、リーダーは勢いよくテーブルを叩きつけ、顔を赤くして再び私を睨んでくる。

「別にふざけてはいないさ。私はあくまでも事実を言ったにすぎない。彼の実力は本物だ。その証拠に私のスペアの肉体が破壊された。だからほら、今は本当の姿で皆の前に現れているじゃないか」

「借りにそうであったとしても、魔族が下等な人間を担ぎ上げるな! 所詮は下等生物に毛が生えたぐらいであろう! 油断しやがって」

「ほう、私が見込んだ男を毛が生えた程度と申すか。それはリーダーであっても聞き捨てならない」

 リーダーの言葉に、私はカチンとくる。彼の実力は本物だ。油断していたというのは事実だが、本気で戦ったとして彼に勝てるとは思えない。ザッと計算しただけでも、もしかしたらリーダーよりも強い可能性がある。

「人間の男の話はともかく、今の議題はミラーカよ。彼が人間程度に負けてしまったせいで、軍資金の宝を奪われたじゃないの。あれは私たちの大事な活動費だったのよ」

 パーティー仲間である魔族の女、ガーベラが冷ややかな視線を私に向けてくる。

「それは申し訳ないと思う。だけど、勝者には報酬を得る権利がある。彼らが持ち出して当然さ」

「負けておいてよくもそんな口が利けるな!」

 私の言葉に、リーダーは怒声を上げた。

 まったく、この男は本当に短気だな。力が強いというだけでリーダーになったというだけなのに。シロウと比較すると全然だめだ。

 見た目も頭脳も、彼に劣っている。下手をすれば魔力すら彼には太刀打ちできないのではないか?

「それだけではないです。サザークの町の襲撃の際に、千体の魔物に加えてバロン階級の魔物を連れ出し、更にファイヤードラゴンも戦場に投入したと言うのに敗北した。これだけの戦力を投入しておいて、普通は負ける要素はありません。これは異常すぎる敗北ですよ」

 ガーベラが町での敗北のことを追求してくる。

 魔物の目を通して見ていたが、あの戦いも素晴らしかった。思い出しただけでも興奮してしまう。何せ、ほとんどの魔物は彼に倒されたと言っても過言ではないからだ。

 彼の活躍がなければ、今ごろ私達はあの町を占拠し、人間共を駆逐していただろう。

 揺るがないはずの勝利を覆す力を持っている。ああ、彼はまさに私が崇拝する邪神のような男だ。彼の活躍は思い出すだけでうっとりしてしまうよ。

「それだけシロウが凄いということだ。我々の予想を遥かに超えるようなことを簡単に成し遂げてしまうのだから」

「あなた、自分が何を言っているのか分かっているのですか! さっきから人間の男を褒め、自分の敗北が当たり前のように言うなんてどうかしておりますよ!」

「そうだ! ガーベラの言うとおりだ!」

「わたしは度重なる敗北に加え、反省をせずに、寧ろ敵を称賛するようなミラーカがこのチームに所属するにふさわしいとは思えません! なのでミラーカを追放することを提案します」

 仲間の女が挙手をして私を追放すると言ってきた。

「確かにお前の言うとおりだ。俺もそう思う」

 一人が手を上げて彼女の提案に賛同する意志を示すと、それが連鎖反応のようになって、次々と手を上げ出した。

「賛成多数、決まりだな。本日、この瞬間をもって、ミラーカを俺のチームから追放する! 二度と顔を見せるな!」

 リーダーが私に指を向けると、パーティー追放を宣言した。

 その言葉を聞いた瞬間、私は口角を上げる。

「そうかい、それは寧ろありがたいねぇ。このチームには正直飽きてきていたんだ。最近は私が求めるスリルというものが感じられなくなったからね」

 私は椅子から立ち上がり、彼らに背を向ける。

「ではアデュー! 次に会うときは敵同士かもしれないが、その時は遠慮しないで殺してあげるからね」

 元仲間たちに別れの挨拶をすると、私はこの場から去った。

 もちろん私が行く先はもう既に決まっている。

「再会といこうではないか。シロウ」











最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...