Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第四章

第三話 作戦会議をしたけど、結局は俺中心になるから、あまり意味がないんじゃないか

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~シロウ視点~



 冒険者たちを纏め上げ、俺は内心ホッとしていた。

 ふう、どうにかなってくれて本当によかったよ。まさかオルテガたちも、千体の魔物が襲撃しに来ていることを知っていたのは驚かされたがな。

 テーブルの上に置かれた装飾品を、多くの冒険者たちが取り囲んでいる。

 本当に偶然にも、クロエがあの宝箱を見つけてくれて助かった。あれがなければ、皆を纏めることができなかった。まぁ、俺一人でも戦い方によっては、千体の魔物とでも渡り合えるけど、それは面倒臭いからなぁ。できるだけ楽に倒したい。

「シロウ。作戦会議をしたい。二階の部屋に来てくれるか」

「わかった。マリー、クロエも来てくれ」

「もちろんですわ」

「はーい」

 彼女たちに声をかけると、俺はアイテムボックスの中に装飾品を入れる。すると冒険者たちが小さく溜息を吐いた。

 もっと見ていたかったのかもしれないが、この場に放置しておくと、くすねるやつがいるかもしれないからな。

「安心しろ。約束は守る。この戦いが終わればお前たちにくれてやる」

 もう一度冒険者たちに約束をすると、オルテガのあとをついて行き、二階に上がる。

 俺たちが入った会議室は、以前ギルドマスターに連れてこられたあの部屋だ。

 ふかふかのソファーに座り、対面しているオルテガを見る。彼は両の指を絡めると、その上に顎を乗せた。

「さて、作戦会議だが、俺が入手している情報を元に考えると、やつらは町の北側からこの町に向ってくる」

「なるほどな。なら、北側に戦力を集中させた戦略を考えるとするか。まず、俺は冒険者全員に肉体強化の魔法、俊足魔法を発動させる。筋力と速度が上がれば、ザコモンスターぐらいなら、例えランクが低くとも魔物たちと渡り合うことができるはずだ」

 真剣になりながら、俺は自分なりに考えた戦略を語る。

 すると、オルテガは目を丸くしていた。

 そんなに変なことでも言ってしまったのだろうか?

「どうした。リピートバードが矢を受けたような顔をして? 何か変なことを言ったか」

「言った! 言ったぞ! 今、冒険者全員に強化魔法をかけると言った」

 それのどこが変だと言うんだ? 味方をパワーアップさせることぐらい普通じゃないか? ああ、そうか。バフだけじゃなく、デバフもしなければいけなかったな。

「ああ、悪い。確かによく考えれば、変だったな。味方を強化するだけでは不安だよな。念のために敵の全部に弱体化の魔法もかけておくよ」

 これで彼も納得してくれるだろう。そう思っていたが、オルテガは大きく口を開け、そのまま動かなくなる。

 うん? これでもないのか。となると、ギルドマスターは何に対して驚いている?

「シ、シロウ。じょ、冗談だよな? 百人以上の冒険者にバフをかけつつ、千体の魔物にデバフをかけるなんて」

 何を言っているんだこのオッサンは? こんな非常時にふざけられるほど、今の俺はバカではないぞ。

「何でこんな非常時に冗談を言わなければならない。皆を明るくさせようと思うのであれば、もっと気の利いたことを言うって」

「ハ、ハハ。マジ……か」

 オルテガは乾いた笑い声を漏らす。

「シ、シロウさん! 今の本当なのですか! あなたどれだけ神がかっているんですか!」

 今度はクロエが驚く。

 どうして彼女までこんな表情をするんだ? 俺は普通のことしか言っていないはずなのだが?

「どうしてクロエも驚くんだ? こんなの普通だろう? 味方の強化と敵の弱体化を同時に行うのは戦いの基本じゃないか?」

「そうですけど! そうですけど規模が全然違うじゃないですか!」

 え? 規模って言ってもそんなに大袈裟なものではないだろう。

「こんなこと普通だろう?」

「「全然普通じゃない!」

「全然普通ではありませんわ!」

 三人の言葉がハモる。

 どうやら彼らにとっては、俺のやろうとしていることは普通ではないようだ。

 ただ広範囲に魔法の効果を送るだけだから、皆できるはずだけどなぁ? 実際にSランクパーティーや勇者パーティーにもやっている人もいることだし。

 そんなことを心の中で考えていると、あることに疑問に思う。

「なぁ、今更だけど、どうして勇者パーティーにお願いしないんだ? あいつらなら、千体の魔物なんて一瞬で倒してしまうだろう?」

「ああ、そのことなんだがな。最近勇者パーティーには明るい噂を聞かないんだよ。ある地点から任務の失敗を繰り返し、今は王国から見放されているらしい。聖剣も没収されたとか言う話も聞いたな」

「そうなんだ。ただ調子が悪いだけならいいけど、何かの呪いにでもかかっていたら、心配だなぁ」

 俺は顔も見たことのない人物に対して心配してしまう。だけど、たまたま調子が悪いだけなのだろう。だって勇者なんだ。俺のような凡人にはできないことを成し遂げられる存在、それが勇者なんだ。俺はそう信じたい。

「まぁ、そんな訳で、今回の戦いに勇者パーティーに依頼をする気はなかったというわけだ。どっちにしろ、百万ギルぐらいでは首を縦に振らなかったかもしれない」

「いやー、それはないだろう。だって勇者は世界を魔物の脅威から救う存在だ。世界の平和のために無償で戦ってくれるって。俺なんかの凡人は、金がないと動く気はないけどよ」

「はぁーどこが凡人なんだよ。俺からすれば、あんなことをサラリと言ってしまえるお前のほうが勇者に相応しい」

 オルテガの言葉に、俺は少し嬉しくなった。お世辞で俺の気分を良くしようとしているのだろうけど、世界の英雄である勇者だと言ってくれるのは嫌ではない。

 まぁ、俺がどんなに逆立ちをしても、勇者の足下にも及ばないのだろうが。

「何にせよ。お前だけが頼りだ。この町の平和を守ってくれ」

 オルテガから称賛とお願いを受け、俺はソファーから立ち上がると、マリーとクロエをつれて部屋を出る。











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