Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第四章

第二話 頼む! お前しか頼れる冒険者はいない。どうか皆を纏めてくれ!

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~ギルドマスター、オルテガ視点~



 扉が開き三人組の男女がギルドに入って来た。

 一人は普通体型の黒髪のショートヘアーの男、もう一人は金髪の髪の毛先をゆる巻にしている女の子、最後の一人は長い金髪のエルフの女の子だ。

 彼らを見た瞬間、俺は希望の光を見たような気がした。

 太陽光が降り注ぎ、まるで神より遣わされた救世主のように俺の目には映ったのだ。

「オルテガ、話しがある」

「シロウ、俺もだ。今大事なことを皆に言っておったところだ」

 シロウがこちらに歩いてくる。

 けれど、何か様子が可笑しいように見える。いつもの余裕を感じさせず、焦っているように見えた。

 彼に何があったのかは知らないが、とにかく今は、この緊急クエストを伝え、彼にも協力してもらわないといけない。

 俺は大きく息を吸い込む。

「オルテガ大変だ! 千体の魔物がこの町に向っている!」

「シロウ大変なことになった! この町に千体の魔物が押しよせて来ている」

 同時に言うと、数秒の間沈黙が訪れる。

「オルテガ、どうしてそのことを知っている?」

「それはこっちのセリフだ。どうしてそのことを」

「ダンジョンの中に魔族が潜んでいたんだよ。そいつを倒したときに、千体の魔物がここに来ると聞いたんだ」

 シロウの言葉に一瞬驚くも、説明する手間が省けたと俺は思った。

「それなら話は早い。緊急クエストの発令だ。お前も参加してもらうぞ」

「報酬金額は?」

「え?」

 予想していなかった彼の言葉に、俺は間抜けな声を漏らした。

「だから、報酬金額を聞いているんだよ。緊急クエスト何だろう? だったらギルドからの報酬が出るはずだ。その金額を聞いている」

 シロウの言葉に、俺は後ろめたさを覚え、視線を逸らす。

 もちろん報酬金額はある。だけど、この依頼に見合った金額ではない。もし、そのことを言ってしまったのなら、冒険者たちは更にやる気をなくす嵌めになる。

 彼に顔を向けると、シロウは冷ややかな目をした。

 正直に言えと目が訴えていた。

 もし、報酬金額を言ってしまえば、彼は引き受けてはくれないだろう。シロウはそんな男だ。これまでの依頼も、彼は基本的に高額なものを好んで選んでいた。命を懸けるにふさわしくない金額を言ってしまえば、きっと離れていくだろう。

「俺のギルドマスター生活もここまでか」

 そんなことを口から漏らしながらも、俺は覚悟を決める。

「百万ギル。それが今用意できる金額だ。それを人数で分配する」

「はぁ? 全然話しにならないじゃないか? おい、今の聞いたかよ。千体の魔物を倒して町を救った対価が、百万を分配だってよ。ざっと見ても百人はいるよな? 一人の報酬金額は一万以下だってよ」

「ふざけるな! 命を張って戦った結果がその程度の金額しかないのかよ!」

「そうだ! そうだ! やっていられるかよ! 使い捨ての道具にされるために冒険者になったわけじゃねぇんだぞ!」

 シロウの言葉で、冒険者たちが怒りをあらわにする。

 これで完全に終わったな。

 彼らはこの依頼を受けないに決まっている。だけどギルドマスターの責務は果たさなければならない。例え一人だったとしても、俺だけはこの町を守るために戦わなければならない。

「そこでだ! この報酬金額に俺の金を上乗せする。一千万ギルだ! これで少なくとも一人に得られる金額は十一万以下に跳ね上がった」

 シロウの言葉に、俺は耳を疑う。

 聞き間違えか? 今、自分の金を報酬金額に加えると言っていたのか?

「シロウ、今の言葉は本当か?」

 思わず聞き返してしまう。自分の金を他者にあげるなど、俺からすれば考えられないことだからだ。

「本当だ。だけどそれでもまだ十一万! 命を懸けるにしてはまだ足りない。そこでだ! 俺の装飾品をお前たちに譲る。とてもレアなものばかりだ。そいつを売りさばけば、それなりの金になるだろうよ」

「おい、それは本当なのかよ!」

「嘘だったらぶっ殺すぞ!」

 冒険者たちが疑いの声を上げる。彼らの反応は最もだ。そう簡単には信じられない。

「ああ、本当だ。クロエ、アイテムボックスを」

「はい」

 扉の前に待機していたエルフにシロウが声をかけると、彼女がこちらに歩いてくる。そして手に持っていたバッグを彼に渡した。

 シロウはバッグのチャックを開け、手を突っ込む。すると、テーブルの上に札束を置いた。

「おいおい、まじかよ」

「本当に一千万ギルはあるんじゃないのか」

 彼の札束を見て、俺は唾を飲み込む。

 正直に言って、彼の言葉を信用してはいなかった。きっと彼らのやる気を引き出すために嘘を言っているに違いない。そう思っていた。

「あとこれだな」

 続いて取り出したのは、金や銀、ミスリルといった素材で作られた装飾品だった。

 どれもピカピカに磨き上げられ、高価に見える。

「確かに、あれがあれば少なくとも数ヶ月は遊んで暮らせれそうだ」

「あの指輪なんか、彼女にプロポーズするときに使えるぞ」

「おおー! 母ちゃん! 俺、遂に親孝行をするときが来たぜ!」

 実物を見た冒険者たちの目に、光が戻ってくるのを感じる。

 失った戦意が取り戻され、やる気に満ち溢れていた。

「シロウ、ありがとう」

 俺は感動し、年甲斐もなく涙を流す。そして彼に感謝の言葉を述べた。

 だが、感謝すると同時に疑問に思う。

 どうして彼が、あれだけの金銀財宝を持っている?

「シロウ、ひとつ訊いてもいいか? あの装飾品はどうした? それにどうしてあんなに高価なアイテムボックスを持っている?」

「どうしたって、オルテガが言ったじゃないか。新しいダンジョンで見つかったアイテムが報酬金額になるって」

 彼の言葉を聞いて、俺は数日前のことを思い出す。

 確かに、俺は依頼書にそう書いていた。まさかあのダンジョンにあれだけの宝が隠されていたとは思わなかった。

「いいかお前ら! 裕福な生活を送りたければ絶対に千体の魔物と戦い抜け!」

「サー、イエッサー!」

 シロウの呼びかけに、冒険者たちは彼に向けて敬礼した。バラバラだった冒険者たちの気持ちがひとつになったのだ。その光景はまるで、国王騎士団と錯覚させるほどに。

「さすがだ。シロウ。俺にはお前のように皆を纏めることができなかった。お前はこの町でナンバーワンだよ」

 俺は独り言のようにポツリと言う。

「お前たちは誰一人死なない。そう宣言する。何せ、お前たちにはこの俺、シロウ・オルダーがついているのだからな!」

 彼の言葉に、俺や冒険者たちは勇気付けられた。











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