Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第三章

第十二話 俺に惚れるとかマジで勘弁してくれよ!男に恋愛感情を持たれても、俺は同姓愛に興味はないからな!

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 腹に風穴が空いて地面に倒れる男を、俺は見下ろしていた。

「どうだ。バカにしていた下等生物に負かされる気分は」

「あ、ああ、いい、素敵だ! まさかこの私が負けるなんて、思いもしなかった。今日と言う日を、邪神様に感謝だ! ハァ、ハァ」

 男は興奮しているようで、頬を赤らめ、息を荒くする。

 おい、おい、何だよこの魔族は! 気持ち悪いなぁ。俺に負けて興奮していやがる。

「た、確か、エルフの女がシロウと言ったな! シロウ、君に惚れたよ」

 魔族の男の言葉を聞いた瞬間、俺は背筋が寒くなり、鳥肌が立つ。

 き、気持ち悪い! 俺に惚れるとかマジで勘弁してくれよ! 男に恋愛感情を持たれても、困るって!

「ハァ、ハァ、き、君はいずれ、わ、私のものにしてみせ……ぎゃあ!」

「ハァ、ハァと発情しないでもらえます? シロウはワタクシのものですわよ。それ以上、シロウにいやらしい視線を向けるのでありましたら、ワタクシがトドメを刺して差し上げますわよ」

 まさかのカミングアウトに言葉を失っていると、マリーが男の顔面に鞭を叩きつけ、ゴミを見るような眼差しを彼に送っている。

「人の告白シーンに水を差すなんて、これだから人間の女は下等なんだ……ぎゃあ!」

 再び、マリーが表情を変えないまま男の顔面に鞭を叩きつけた。

「そんなに早く死にたいようですわね。なら、ワタクシがトドメを刺してさしあげますわ」

「ハハハ、それは無理だ。間接的に私を殺したとしても、私は死なない。この肉体は私のスペアに意識を送っているにすぎないからね。殺したければ好きにするといいさ」

「そうですか。では、お望み通り、ワタクシがトドメを差してあげますわ!」

「あ、そうそう。私に勝ったご褒美だ。君に情報をやろう――」

 情報だって? なんかいやな予感がする。

「マリー、止めろ!」

 俺は咄嗟にマリーの手首を掴み、彼女の動きを封じる。

「おやおや、中々の反射速度だったね。私の想い通りにはいかなかったようだ。肝心なところで殺されて、情報をあやふやにしようと思っていたのに」

「いいから、さっき言いかけていたことを直ぐに言え!」

「わかった。では教えよう。私の仲間が、この町に多くの魔物を送った。その数は千体。そしてそいつらを指揮しているのはバロン階級の魔物さ。もうすぐこの町は、多くの魔物に蹂躙される。逃げるなら今のうちさ」

「何だって!」

 俺は思わず声を上げる。千体もの魔物がこの町に向っている。その数の規模は災害級だ。それにそいつらを統率しているのは上位であるバロン階級の魔物。

「うそ! 早く皆に知らせないと」

「そうですわね。こうしてはいられませんわ。シロウ、早く地上に上がりましょう」

「ああ、もし、魔物が来たら俺が時間を稼ぐ。その間に二人は皆を避難させてくれ」

「へぇーシロウは千体の魔物と戦うんだ。それは面白い。私は魔物の目を使って高みの見物といこう。シロウ、君の活躍を楽しみにしているよ」

 その言葉を最後に、魔族の男は白目を向く。

 この肉体とのリンクを閉ざしたのかもしれないな。

「俺はオルテガにこのことを伝える。マリーとクロエは避難が始まったら、町民の誘導を頼んだ」

「わかった。でも、私達が言うことを信じてくれるのでしょうか?」

「確かにそうですわよね。千体の魔物の襲来、普通に考えれば信じ難いですもの。いくらワタクシたちが訴えたところで、信じてもらえなければ意味がないですし」

「それでも、どうにか信じてもらうように努力をするしかない。最悪のケースが起きそうになったときは、俺が魔物たちを誘導する」

 戦いというものは、常に最悪のケースを考えて行動しないといけないものだ。俺たちの言葉が皆に響かなかったときの対策も考えないといけない。

 正直、その方法を考えるのも面倒臭い。できれば、物事がうまくいってくれるのが一番なのだけど。

 そんなことを考えつつも、俺は脳内で様々なケースを考え、シミュレーションしてみる。そしてその中でも上手く行く可能性を模索していく。

 上手く行くかはわからないけど、とりあえずはこの方法でやってみるしかないだろう。

「シロウさん。あれ」

 クロエが指差したほうをみる。すると、この部屋の奥のほうに宝箱があるのを見つけた。

「宝箱だな」

「普通に考えれば、あの魔族の持ち物ですよね」

「そんなことどうでも良いですわ! 戦利品としていただいて行きましょう。シロウにいやらしい目を向けた罰ですわ」

 マリーが危機感もなしに宝箱に近づく。

「待て、ミミックの可能性もある」

 呼び止めると、マリーはピタリと動きを止めた。

「確かに、その可能性もありましたわね」

「待っていろ、俺が調べてみる」

 彼女の代わりに宝箱に近づく。

「パースペクティブ」

 俺は透視魔法を唱えた。人の目は、物質が電磁波を吸収した波長を色として見る。

 魔法で宝箱に対して電磁波の吸収、散乱が生じないようにさせ、魔法の使用者である俺にだけ透けて見えるようにした。

「これは!」

 中身にビックリした俺は、思わず強めの口調で言葉を漏らす。

「どうしたですの?」

「この宝箱の正体は何だったのですか?」

 俺の驚きの声に反応して、マリーとクロエが近づいてきた。

「いや、何でもない。この宝箱は魔物ではない」

 宝箱に触れてみると、鍵はかかってはいなかった。

 こんなものを入れておいて鍵をしないなんて不用心だな。いや、そもそもあいつは魔族。盗賊とかが来たとしても、逆に返り討ちをする自信があるからこそ、開けっ放しなのかもしれないな。

 宝箱の蓋を開けて中身を確認する。箱の内側には、透視したとおりの物が入っていた。

「うそ! こんなもの初めて見た!」

「ワタクシもいくつかは所有していますが、こんなにたくさんは見たことがありませんわ」

 中身を見て二人が驚きの声を上げる間、俺は中に入ってあったバッグを先に取り出し、その中に宝箱の中に入っていた別の物をバッグの中に収納する。

「クロエ、悪いがこれは君が持っていてくれ」

「わ、わかった。うわー、何だか責任重大な気がする」

「よし、もうここには用はない。早くダンジョンを出てギルドに向かおう」

 俺は仲間たちにダンジョンから出ることを伝えると、この場から走り去って行く。











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