Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

文字の大きさ
上 下
24 / 191
第三章

第六話 ダンジョン再攻略! スキンヘッドがいないので楽勝でした!

しおりを挟む
~シロウ視点~



「可笑しいなぁ? 約束の時間は過ぎていると思うのだが」

 俺とマリー、そしてクロエは、スキンヘッドの男のパーティーが訪れるのを待っていた。

「まったく、シロウを待たせるとかどういうつもりなのですの」

「マリーさんの言うとおりです。あのハゲ、姿を見せたら私が文句を言ってやります。きっと驚くでしょうね。呪いのせいで今まで気の小さかった私が、いきなり怒鳴りつけたら」

 なかなか来ないパーティーに対して不満をぶちまけていると、一人の男がこちらにやって来るのが見えた。

 あの男は確かスキンヘッドの仲間だ。

「おーい、待たせて悪かった」

 男が俺たちのところに来ると、肩で息をする。

「お前一人か? 他のやつらは?」

「今、リーダーを説得しているところだ。悪いのだけど今回の依頼、俺たちは降りることにした。リーダーが部屋に引きこもって出てこない以上は、俺たちだけで行動することができないからな」

「引きこもる? いったい何が起きたんだ?」

「それが、突然リーダーの薄い髪の毛が全部抜け落ちてツルツルになっていたんだ。その姿を見て、つい笑ってしまってよ。それがショックだったみたいなんだ。とりあえず伝えたからな。俺たちの分も頑張ってくれよ」

 そう言うと、男は片手を上げながら俺たちから遠ざかっていく。

「ぷっ、アハハハハハハハ! ざまーみろですわ! あんなに偉そうにして、女に暴力を振るった天罰ですわね」

「まさか本当にスキンヘッドではなくなっているなんて。凄いですねシロウの魔法って、私尊敬します」

 マリーが声を上げて笑い、クロエが俺に尊敬の眼差しを向けてくる。

「まぁ、とりあえずは、俺たちだけでダンジョンの中に入るとするか」

「そうですわね。あのうるさいのがいなくなったことですし、今度こそはここのダンジョンをクリアして、依頼を終わらせますわよ」

「はい、頑張りましょう」

 俺たち三人は、二度目のダンジョン攻略に挑む。

「ファイヤーボール」

 前回と同様に、火球を生み出す魔法で、ダンジョン内を明るく照らす。

 ダンジョン内にいる魔物に警戒をしつつ先を進んでいると、奥のほうで笛の音色が聞こえてくる。

 可笑しい。こんなに早かっただろうか? まだ前回の半分ぐらいしか進んでいないような気がするのだが。

「あれ? 変ですわね。まだそんなに進んではいないような気がしますわ」

 マリーも俺が感じたことと同じことを言う。

「音が近づいている……この感じ……二人とも避けて!」

 クロエが突如声を上げる。彼女の言葉にすぐに反応した俺は、左側に跳躍して回避した。

 その瞬間、後方の壁の一部が崩れた。

「どうやら相手は、俺たちに気づいているみたいだな」

 ロアリングフルートは、遠距離からの攻撃が得意だ。そして目に見えない攻撃の正体は音。

 やつの持っている笛は、音響兵器だ。やつが笛を吹けば放たれる音波に、人は行動能力、判断能力を奪われる。その他にも肉体的ダメージを与えることが可能だ。

 スキンヘッドの男たちがなぜ動きを止め、その後苦しみだしたのか。あれは魔物の笛の音を聞いてしまったからだ。

 やつの音響兵器から発せられる音が耳に入ると、精神が安定しなくなる。そして血流が低下したことにより、脳が過剰に反応して神経に異常をきたす。

 それにより、一時的に動きを止め、髪の毛や爪の刺激でさえも、痛みを感じてしまったと言う訳だ。

『キキキキキ』

 魔物の声が聞こえると、翼の生えた猿が姿を現した。奴は再び笛を口元にもっていく。そして音色を奏でた。

「シロウさん、頭上注意!」

 クロエが頭上に気をつけるように言う。その瞬間、天井が崩れてきた。思ったのよりも落下スピードが速い。

「スピードスター」

 俺は俊足魔法を唱え、崩壊した天井の破片を躱す。

 ロアリングフルートの音は二種類。人体に悪影響を及ぼす音と、物質を破壊する音だ。

 空気の振動が対象物の強度を上回れば、音で物を破壊することができる。

 この性質を利用し、やつは音の力だけで天井を破壊した。

 音と言うのは、目には見えない空気の振動によるもの。いくら、音に敏感なエルフであっても、あそこまでの音を把握し、的確に指示を出すことは不可能だ。

 おそらく、彼女のスキルによるものなのだろうな。

「クロエ、ひとつ確認しておきたいことがある。もしかして、スキルで音が見えたりとかするのか?」

「え? あ、はい! 私のユニークスキルは【絶対音視】音の波を見ることができるの」

「やっぱりそうか。なら、サポートは任せる」

「はい! 任せてください」

 回避のタイミングはクロエに任せ、俺はロアリングフルートに突っ込む。

 そして魔物のほうは俺に何かをしかけようと、横笛を口元にもっていく。

「シロウさん跳躍してください!」

 やつが音を奏でた瞬間、クロエが飛ぶように言う。俺は足を強化した脚力で跳躍すると、ロアリングフルートに向けて手をかざした。

「シロウさん頭上注意!」

 再び、敵が音による力で天井を破壊したようで、破片が落下してきた。

 空中ではまともに身動きが取れない。さて、どうやってこの攻撃を避けようか。

「シロウはワタクシが助けますわ」

 回避する方法を考えていると、俺の身体に鞭が巻き付く。マリーが俺を助けようとしてくれているようだ。

 だけど、彼女の華奢な腕では俺を引き寄せることはできない。

「エンハンスドボディー」

 すぐさまマリーに向けて肉体強化の魔法を発動させる。腕の筋力が上がったマリーは、普段以上の力を発揮して俺を引き寄せる。

「ありがとう。助かった」

「べ、別にお礼なんていいですわよ。チームリーダーを助けるのも、仲間として当然ですわ。でも、どうしてもお礼をしたいと言うのでしたら、特別に頭を撫でさせてあげてもいいですわ」

 言葉とは裏腹に、マリーが頭を俺に向ける。

「助けて下さりありがとうございます。お嬢様」

 苦笑いを浮かべながらも、彼女の金髪に手を置く。そして優しい手つきで彼女の頭を撫でた。

「えへへ」

 頭を撫でられて気持ちいいのか、マリーは笑みを浮かべていた。

「シロウさん! 戦闘中にいちゃつかないでください! 痛みを感じる音の攻撃が来ますよ」

 マリーの頭を撫でている最中、クロエが相手の攻撃が迫っていることを教えてくれた。

 まったく、空気ぐらい読んでほしいものだ。と言っても、魔物には通じないのだろうが。

「右に飛んでください」

 音が視認できるクロエの指示に従い、右に跳躍して敵の攻撃を躱す。

 まぁ、これぐらい苦戦を演じてやれば、あの魔物も満足してくれるだろう。

 いくら俺にとってのザコだからと言って、一瞬で殺されては悔やんでも悔やみきれないだろうし。

「さて、お遊びはこの辺にしてそろそろ勝負をつけるとしよう。食らえ、お前の得意な音の魔法だ。ゼイレゾナンス・バイブレーション」

 魔法を発動したその瞬間、ロアリングフルートの持っている横笛が砕ける。

 この魔法は、物質の固有振動数と同じ周波数の音を浴びせることにより、対象を破壊することを可能にする。

 横笛と同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、横笛が疲労破壊を起こした。

 これで敵は得物を失った。あとは翼の生えたサルにしかすぎない。

「アイシクル」

 氷の魔法を唱えた瞬間、空気中の水分が集まって水の三角錐を形成。その後氷に変化すると、魔物に向けて放つ。

 ロアリングフルートは横笛を失ったことで戸惑い、氷柱を避けることができずに直撃。

 肉体を貫かれた魔物は、その場で地面に倒れると動かなくなった。












最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ

鈴木竜一
ファンタジー
「おまえを今日限りでパーティーから追放する」  魔族から世界を救う目的で集められた救世主パーティー【ヴェガリス】のリーダー・アルゴがそう言い放った相手は主力メンバー・デレクの愛弟子である見習い女剣士のミレインだった。  表向きは実力不足と言いながら、真の追放理由はしつこく言い寄っていたミレインにこっぴどく振られたからというしょうもないもの。 真相を知ったデレクはとても納得できるものじゃないと憤慨し、あとを追うようにパーティーを抜けると彼女を連れて故郷の田舎町へと戻った。 その後、農業をやりながら冒険者パーティーを結成。 趣味程度にのんびりやろうとしていたが、やがて彼らは新しい仲間とともに【真の救世主】として世界にその名を轟かせていくことになる。 一方、【ヴェガリス】ではアルゴが嫉妬に狂い始めていて……

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。 そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。 だけどその条件がなかなか厄介だった。 何故ならその条件というのが────

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...