Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第三章

第六話 ダンジョン再攻略! スキンヘッドがいないので楽勝でした!

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~シロウ視点~



「可笑しいなぁ? 約束の時間は過ぎていると思うのだが」

 俺とマリー、そしてクロエは、スキンヘッドの男のパーティーが訪れるのを待っていた。

「まったく、シロウを待たせるとかどういうつもりなのですの」

「マリーさんの言うとおりです。あのハゲ、姿を見せたら私が文句を言ってやります。きっと驚くでしょうね。呪いのせいで今まで気の小さかった私が、いきなり怒鳴りつけたら」

 なかなか来ないパーティーに対して不満をぶちまけていると、一人の男がこちらにやって来るのが見えた。

 あの男は確かスキンヘッドの仲間だ。

「おーい、待たせて悪かった」

 男が俺たちのところに来ると、肩で息をする。

「お前一人か? 他のやつらは?」

「今、リーダーを説得しているところだ。悪いのだけど今回の依頼、俺たちは降りることにした。リーダーが部屋に引きこもって出てこない以上は、俺たちだけで行動することができないからな」

「引きこもる? いったい何が起きたんだ?」

「それが、突然リーダーの薄い髪の毛が全部抜け落ちてツルツルになっていたんだ。その姿を見て、つい笑ってしまってよ。それがショックだったみたいなんだ。とりあえず伝えたからな。俺たちの分も頑張ってくれよ」

 そう言うと、男は片手を上げながら俺たちから遠ざかっていく。

「ぷっ、アハハハハハハハ! ざまーみろですわ! あんなに偉そうにして、女に暴力を振るった天罰ですわね」

「まさか本当にスキンヘッドではなくなっているなんて。凄いですねシロウの魔法って、私尊敬します」

 マリーが声を上げて笑い、クロエが俺に尊敬の眼差しを向けてくる。

「まぁ、とりあえずは、俺たちだけでダンジョンの中に入るとするか」

「そうですわね。あのうるさいのがいなくなったことですし、今度こそはここのダンジョンをクリアして、依頼を終わらせますわよ」

「はい、頑張りましょう」

 俺たち三人は、二度目のダンジョン攻略に挑む。

「ファイヤーボール」

 前回と同様に、火球を生み出す魔法で、ダンジョン内を明るく照らす。

 ダンジョン内にいる魔物に警戒をしつつ先を進んでいると、奥のほうで笛の音色が聞こえてくる。

 可笑しい。こんなに早かっただろうか? まだ前回の半分ぐらいしか進んでいないような気がするのだが。

「あれ? 変ですわね。まだそんなに進んではいないような気がしますわ」

 マリーも俺が感じたことと同じことを言う。

「音が近づいている……この感じ……二人とも避けて!」

 クロエが突如声を上げる。彼女の言葉にすぐに反応した俺は、左側に跳躍して回避した。

 その瞬間、後方の壁の一部が崩れた。

「どうやら相手は、俺たちに気づいているみたいだな」

 ロアリングフルートは、遠距離からの攻撃が得意だ。そして目に見えない攻撃の正体は音。

 やつの持っている笛は、音響兵器だ。やつが笛を吹けば放たれる音波に、人は行動能力、判断能力を奪われる。その他にも肉体的ダメージを与えることが可能だ。

 スキンヘッドの男たちがなぜ動きを止め、その後苦しみだしたのか。あれは魔物の笛の音を聞いてしまったからだ。

 やつの音響兵器から発せられる音が耳に入ると、精神が安定しなくなる。そして血流が低下したことにより、脳が過剰に反応して神経に異常をきたす。

 それにより、一時的に動きを止め、髪の毛や爪の刺激でさえも、痛みを感じてしまったと言う訳だ。

『キキキキキ』

 魔物の声が聞こえると、翼の生えた猿が姿を現した。奴は再び笛を口元にもっていく。そして音色を奏でた。

「シロウさん、頭上注意!」

 クロエが頭上に気をつけるように言う。その瞬間、天井が崩れてきた。思ったのよりも落下スピードが速い。

「スピードスター」

 俺は俊足魔法を唱え、崩壊した天井の破片を躱す。

 ロアリングフルートの音は二種類。人体に悪影響を及ぼす音と、物質を破壊する音だ。

 空気の振動が対象物の強度を上回れば、音で物を破壊することができる。

 この性質を利用し、やつは音の力だけで天井を破壊した。

 音と言うのは、目には見えない空気の振動によるもの。いくら、音に敏感なエルフであっても、あそこまでの音を把握し、的確に指示を出すことは不可能だ。

 おそらく、彼女のスキルによるものなのだろうな。

「クロエ、ひとつ確認しておきたいことがある。もしかして、スキルで音が見えたりとかするのか?」

「え? あ、はい! 私のユニークスキルは【絶対音視】音の波を見ることができるの」

「やっぱりそうか。なら、サポートは任せる」

「はい! 任せてください」

 回避のタイミングはクロエに任せ、俺はロアリングフルートに突っ込む。

 そして魔物のほうは俺に何かをしかけようと、横笛を口元にもっていく。

「シロウさん跳躍してください!」

 やつが音を奏でた瞬間、クロエが飛ぶように言う。俺は足を強化した脚力で跳躍すると、ロアリングフルートに向けて手をかざした。

「シロウさん頭上注意!」

 再び、敵が音による力で天井を破壊したようで、破片が落下してきた。

 空中ではまともに身動きが取れない。さて、どうやってこの攻撃を避けようか。

「シロウはワタクシが助けますわ」

 回避する方法を考えていると、俺の身体に鞭が巻き付く。マリーが俺を助けようとしてくれているようだ。

 だけど、彼女の華奢な腕では俺を引き寄せることはできない。

「エンハンスドボディー」

 すぐさまマリーに向けて肉体強化の魔法を発動させる。腕の筋力が上がったマリーは、普段以上の力を発揮して俺を引き寄せる。

「ありがとう。助かった」

「べ、別にお礼なんていいですわよ。チームリーダーを助けるのも、仲間として当然ですわ。でも、どうしてもお礼をしたいと言うのでしたら、特別に頭を撫でさせてあげてもいいですわ」

 言葉とは裏腹に、マリーが頭を俺に向ける。

「助けて下さりありがとうございます。お嬢様」

 苦笑いを浮かべながらも、彼女の金髪に手を置く。そして優しい手つきで彼女の頭を撫でた。

「えへへ」

 頭を撫でられて気持ちいいのか、マリーは笑みを浮かべていた。

「シロウさん! 戦闘中にいちゃつかないでください! 痛みを感じる音の攻撃が来ますよ」

 マリーの頭を撫でている最中、クロエが相手の攻撃が迫っていることを教えてくれた。

 まったく、空気ぐらい読んでほしいものだ。と言っても、魔物には通じないのだろうが。

「右に飛んでください」

 音が視認できるクロエの指示に従い、右に跳躍して敵の攻撃を躱す。

 まぁ、これぐらい苦戦を演じてやれば、あの魔物も満足してくれるだろう。

 いくら俺にとってのザコだからと言って、一瞬で殺されては悔やんでも悔やみきれないだろうし。

「さて、お遊びはこの辺にしてそろそろ勝負をつけるとしよう。食らえ、お前の得意な音の魔法だ。ゼイレゾナンス・バイブレーション」

 魔法を発動したその瞬間、ロアリングフルートの持っている横笛が砕ける。

 この魔法は、物質の固有振動数と同じ周波数の音を浴びせることにより、対象を破壊することを可能にする。

 横笛と同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、横笛が疲労破壊を起こした。

 これで敵は得物を失った。あとは翼の生えたサルにしかすぎない。

「アイシクル」

 氷の魔法を唱えた瞬間、空気中の水分が集まって水の三角錐を形成。その後氷に変化すると、魔物に向けて放つ。

 ロアリングフルートは横笛を失ったことで戸惑い、氷柱を避けることができずに直撃。

 肉体を貫かれた魔物は、その場で地面に倒れると動かなくなった。












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